1. 「AIで書いたら、検索で不利になりますか」
中小企業の経営者の方とお話していて、最近この質問が増えました。
「原稿、AIに書かせようと思ってるんですけど。あれって検索で不利になったりしないですか。ペナルティとか」
先に、私自身の立場を書いておきます。雄喜晃でも、生成AIは道具として使っています。使っていないふりはしません。構成を作るとき、長い文章を短くするとき、表記のゆれを探すとき。実務のかなりの部分で使っています。
そのうえで申し上げると、この質問は、心配する場所が少しずれています。不利になるかどうかより先に、もっと直接的に効いてくる問題があります。
私が現場で見てきた限り、AIに書かせて困るのは、検索に嫌われるからではありません。貴社にしか書けないことが、文章から消えるからです。そして消えたことに、書いた本人が気づきにくい。読み終えると「よく書けている」ように見えてしまうからです。
原稿そのものが用意できずに止まっている場合の進め方は ホームページの原稿を、経営者が書かずに済ませる方法 にまとめました。この記事は、その先にある「書けるようになったあと、何が抜け落ちるか」の話です。
読み終わったときに、どこまで任せて、どこから自分で確認するかの線が引けている状態を目指します。
2. 検索エンジンは、AIが書いたかどうかで判定しているわけではない
まず、心配されている点そのものを整理します。
見ているのは「誰の役に立つか」
現在の検索エンジンが公表している考え方を要約すると、誰が書いたか、何を使って書いたかではなく、読む人の役に立つかどうかで評価するという立て付けです。人が書いたから良い、AIが書いたから悪い、という判定にはなっていません。
実際、AIを使わずに書かれた薄い文章は昔から評価されていませんし、AIを使って作られた資料でも、実際に役に立つものは普通に読まれています。道具の種類ではなく、中身で見られていると考えるのが、いまの実務感覚に近いはずです。
ただし、これは検索エンジン側の説明であって、保証ではありません。評価の仕組みは変わり続けます。この記事に書くのは、変わっても効き続けるところだけにします。
それでも順位が付かない、本当の理由
「AIで書いたのに順位が付かない」という相談を受けたとき、実際に原因になっていたのはこちらでした。
- すでに同じ内容のページが、何百とある。一般論を上手にまとめた文章は、すでに大量に存在します
- そのページを読まないと分からないことが、1行も無い。他で読める話しか書いていない
- 誰が書いているのか分からない。会社の実態や、書いている人の立場が見えない
この3つは、AIを使ったから起きたのではありません。手元にある材料を入れずに書いたから起きています。人が同じ書き方をすれば、同じ結果になります。
判定されないことは、安心材料ではない
ここが肝心なところです。「AIで書いても罰は当たらない」ことと、「AIで書けば通用する」ことは、まったく別です。
罰が当たらないなら、みんな使います。実際、同業他社も使っています。結果として、AIが書いた一般論だけが並んだ状態で、横に並んで比べられることになります。そのとき差が付くのは、AIが知らない情報を入れたかどうかだけです。
3. 本当に困るのは、貴社にしか書けないことが消えること
ここから、この記事の本題です。
3社並べても、違いが分からない
実際にやってみると分かります。同じ業種の会社3社について、社名だけ変えて生成AIに紹介文を書かせる。出てくる文章は、驚くほど似ます。
「私たちは、お客様一人ひとりに寄り添い、丁寧な対応を心がけております。地域に根ざした事業者として、確かな技術と信頼をお届けいたします」
この文章に、間違いは1つもありません。ただ、どの会社のサイトに置いても成立します。読んだ人が「じゃあ、ここにしよう」と決める材料が、1つも入っていません。
問い合わせをするかどうか迷っている人は、他社と何が違うのかを探しながら読んでいます。探しても見つからなければ、次のサイトに移ります。間違っていない文章でも、判断材料が無ければ役に立たないということです。
差が出るのは、AIが知らない場所だけ
生成AIが知らないことは、はっきりしています。貴社の社内にしかない情報です。
- 去年、実際に何件対応したか
- どんな相談が一番多いか
- 断ることがあるとしたら、どういう案件か
- お客様が「ここに頼んでよかった」と言うときの、実際の言葉
- 代表が、なぜこの仕事を続けているか
これらは、社内から出すしかありません。逆に言えば、ここさえ入っていれば、文章を整える作業は道具に任せてまったく問題ありません。
順番はいつも同じです。先に社内の材料を集める。あとから道具で整える。この順番が逆になっている会社が、本当に多いです。
4. 任せていい部分と、任せてはいけない部分
線引きを整理します。判断の基準は1つで、それが事実か、表現かです。
事実か、表現かで分ける
数字、金額、対応範囲、実績、お客様の言葉。これらは事実です。社内にしか正解がありません。
言い回し、順番、長さ、言い換え、表記の統一。これらは表現です。正解が社内にある必要はありません。
| 作業 | 任せてよいか | 理由と、確認のしかた |
|---|---|---|
| 構成の下書き | 任せてよい | 何をどの順で書くかの下敷き。読む人の順番で並べ直すのは得意な作業です |
| 言い回しの整理 | 任せてよい | 箇条書きのメモを読める文章に直す。中身を足していないか、だけ見ます |
| 説明の言い換え | 任せてよい | 専門用語をお客様の言葉に置き換える。意味が変わっていないかを確認します |
| 誤字と表記ゆれ | 任せてよい | 人の目より正確です。社名や商品名の表記は、最後に自分で見ます |
| 短い版を作る | 任せてよい | 同じ内容の要約や、スマートフォン向けの短い版。落ちた要素だけ確認します |
| 実績の数字 | 任せない | 知らないことを、それらしく埋めます。1つずつ社内の記録と突き合わせます |
| 料金・条件 | 任せない | 後から金額の話になる箇所です。見積書の表記をそのまま貼るのが確実です |
| 対応できる範囲 | 任せない | 広く書かれると、対応できない問い合わせが増えます。断る条件も自分で書きます |
| 事例の中身 | 任せない | 実際の案件でしか書けません。掲載の許可も、事実の確認も社内の仕事です |
| お客様の声 | 任せない | 作文した瞬間に、書いてあること全部の信用が下がります。実際の言葉だけ載せます |
| 代表の考え | 任せない | 整えるのは任せてよいのですが、中身は話した内容から起こします |
上の5つと下の6つで、確認のしかたがまるで違います。上は読んで違和感が無ければ通していい作業です。下は1行ずつ、社内の記録と突き合わせる作業で、読んで違和感が無いことは何の保証にもなりません。むしろ、それらしく書かれているぶん見つけにくくなります。
表現側は、遠慮なく任せていい
上の5つについては、むしろ任せたほうが品質が上がります。とくに表記のゆれと誤字は、人の目で全ページを見るより確実です。
書き手が経営者ご自身の場合、「うまく書こうとして手が止まる」という一番よくある詰まり方も、ここを任せれば解消します。箇条書きで事実を並べて、整えるのは道具に任せる。この形なら、10分で1ページ分の材料が出せます。
事実側は、1行も任せない
下の6つは、読んで判断してはいけません。不自然に見えないことが問題なのです。
とくに料金と対応範囲は、後から具体的な損につながります。書いていない条件を勝手に足された状態で問い合わせが来ると、断る説明から始めることになります。
5. そのまま出すと、必ず起きる3つのこと
確認せずに公開したときに起きることを、順に書きます。
① 実在しない実績が混ざる
一番多い事故です。「創業以来20年」「〇〇認定事業者」「年間300件の施工実績」。どれも、それらしく見えます。
生成AIは、知らないことを空欄にしません。文章として自然になるように埋めます。悪意があるわけではなく、そういう仕組みだからです。
問題は、公開したあとに指摘されたときです。指摘してくるのは、たいてい取引先か同業者です。そのとき「AIが書いたので」という説明は通りません。書いてあったのは貴社のサイトだからです。
② どの会社にも当てはまる文章になる
2つ目は、事故というより静かな損失です。間違いは1つも無いのに、選ぶ理由が1つも無い。
これが厄介なのは、公開しても何も起きないから気づけない点です。問い合わせが来ないことに理由が付かないまま、半年が過ぎます。
見分け方は簡単です。社名の部分を同業他社の名前に差し替えて、読み直してみてください。そのまま通用するなら、その文章は貴社の文章ではありません。
③ 同業と同じことが書いてある
3つ目は、他社も同じ道具を使っている以上、避けられない現象です。同じ質問には、似た答えが返ってきます。
結果として、地域の同業3社のサイトに、ほぼ同じ趣旨の文章が並びます。比べている人から見れば、判断のしようがありません。そして判断できないとき、人は「最初に見つけたところ」か「知り合いの紹介」に戻ります。
実績や事例をどう置くかは 実績が1件も無い会社の、実績ページの作り方 に書きました。ここは、道具では絶対に埋まらない場所です。
6. 「AIっぽさ」は、どこで読み手に伝わるのか
読む人は、はっきり言語化できなくても、なんとなく気づきます。何に気づいているのかを分解します。
読み手が気づく5つの特徴
- 形容詞が多く、名詞が少ない。「丁寧」「確かな」「安心の」が並び、何をするのかが書いていない
- 3つ並べる形が繰り返される。どの段落も「〜し、〜し、〜します」の形になる
- 固有名詞が出てこない。地名も、商品名も、機械の名前も、人の名前も出てこない
- 数量が出てこない。「多くの」「数多くの」「豊富な」で済まされ、数字が1つも無い
- 困った話が出てこない。失敗、断った案件、苦手な分野。都合の悪い話が1行も無い
5つ目が、実は一番効きます。いいことしか書いていない文章は、読む側が割り引いて読みます。逆に、対応できない範囲が正直に書いてあると、書いてある他のことも信じられます。
消し方は、固有名詞と数量を入れること
対処は単純です。抽象的な言葉を、具体的な言葉に置き換えるだけです。
- 「地域に根ざした」 → 「神戸市北区と、隣接する三田・西宮まで対応しています」
- 「豊富な実績」 → 「昨年は42件。うち3割が既存のお客様からのご紹介です」
- 「幅広く対応」 → 「木造住宅の改修が中心です。鉄骨と3階建ては対応していません」
- 「お客様に寄り添う」 → 「見積もりの前に必ず現地を見ます。図面だけでは出しません」
右側は、どれもAIには書けません。社内にしかない情報だからです。そして右側だけで、他社との違いが伝わります。
現場の言い回しを、そのまま残す
もう1つ効くのが、普段お客様に話している言葉を、直さずに残すことです。
打ち合わせで「うちはとにかく、電話に出ることだけは守ってます」とおっしゃった経営者がいました。これを整えると「迅速なご対応を心がけております」になります。整えた瞬間に、どこにでもある文章に戻ります。
道具に整えさせたあと、元の言葉に戻すべき箇所を1〜2つ選んで戻す。これだけで、文章の手触りが変わります。
7. 使うときの手順と、責任の所在
実際の手順を、順番どおりに書きます。この順番を守るかどうかで、結果がまるで変わります。
Step 1:社内の素材を先に集める
いきなり書かせないでください。先に材料を出します。会社案内、見積書、過去3ヶ月の問い合わせメール、求人票、社内の手順書。すでに手元にあるものばかりです。
材料が無いまま指示すると、足りない部分は一般論で埋まります。逆に材料を渡せば、そこから外れた文章は出てきにくくなります。
Step 2:AIに整えさせる
材料を渡して、構成と文章を作らせます。このとき、「渡した情報の範囲だけで書いてください。分からないところは空欄にしてください」と最初に伝えてください。
それでも埋めてくることはありますが、指示しないよりは確実に減ります。空欄が残っているほうが、健全な状態です。
Step 3:事実を1行ずつ確認する
ここが本番です。数字、固有名詞、金額、年、資格、対応範囲。この6種類に、上から順に印を付けていきます。
そして印を付けた箇所を、1つずつ社内の記録と突き合わせます。読み流して確認したことにしない。確認できなかったものは、消します。残したまま公開すると、それが後で効いてきます。
Step 4:声に出して読む
最後に、1回だけ声に出して読んでください。5分で終わります。
自分の会社の説明を読み上げていて、「自分では絶対にこう言わない」と感じる箇所が必ず出てきます。そこが、AIっぽさが残っている場所です。普段の言い方に戻してください。
これは文章術ではなく、照合の作業です。書いてあることと、普段お客様に言っていることが一致しているか。ずれていれば、問い合わせの電話で必ずばれます。
責任は、書いた人ではなく貴社にある
最後に、一番大事なことを書きます。
確認しないまま公開した文章の責任は、書いた道具にも、制作会社にもありません。貴社にあります。サイトに書いてあることは、貴社が言ったことです。
だからこそ、Step 3を飛ばしてはいけません。整える作業をどれだけ任せても、事実を確認する工程だけは、人がやる必要があります。ここは、道具が良くなっても変わらないと考えています。
8. 雄喜晃の伴走:道具は使います。事実の確認は人がやります
私たち雄喜晃も、原稿を作る過程で生成AIを使っています。使っていないふりはしません。構成の下書き、言い回しの整理、表記のゆれの点検。ここは道具のほうが速く、正確です。
そのうえで、中身は必ず、お話を伺った内容から起こしています。ご相談をいただいたら、事業内容と、どんな相談が多いか、断ることがあるとしたらどんな案件かを伺います。そこで出てきた言葉が、原稿の芯になります。道具が使えるのは、その周りを整える部分だけです。
一方で、私たちがやらないことも書いておきます。事実を作文しません。実績が無いのに有るように書く、対応していない範囲を書き足す、お客様の声を作る。これはしません。無いものは無いまま、あるものだけで構成します。
もう1つ。記事を量産する仕事は、お引き受けしていません。「毎月20本」のような形をご希望であれば、私たちより適した会社があります。私たちが手を動かすのは、貴社にしか書けないことを、貴社から引き出す部分です。ここは3〜6ヶ月かけてでも、一緒にやる価値があると考えています。
「AIで下書きはできたけれど、これで出していいのか判断が付かない」という経営者の方には、私たちは間違いなくお役に立てます。今ある下書きのまま、お持ちください。どこが事実で、どこが埋められた部分かを、一緒に切り分けます。実際にお作りしたサイトは 制作実績、料金と条件は ホームページ制作のページ に載せてあります。
9. まとめ:整えるのは任せて、確かめるのは自分で
ホームページの文章にAIを使うとき、押さえておくことは3つです。
- 心配する場所を変える ― 検索に嫌われるかではなく、貴社にしか書けないことが消えていないかを見ます
- 事実と表現で線を引く ― 構成・言い回し・言い換え・誤字・短縮は任せる。数字・料金・範囲・事例・お客様の声・代表の考えは任せない
- 順番を守る ― 材料を集める、整えさせる、1行ずつ確認する、声に出して読む。この4つです
この3つを押さえれば、道具としてのAIは、はっきり戦力になります。逆にこの3つを飛ばすと、間違いは無いのに選ばれない文章が、静かに出来上がります。
まずは今ある原稿で、社名を同業他社の名前に差し替えて読み直してみてください。そのまま通用してしまったら、まだ貴社の文章になっていません。足りないのは文章力ではなく、社内にある材料です。
ぜひ一度、お話を聞かせてください。貴社にしか書けないことを引き出すところから、ご一緒します。