1. 「載せられる実績が無いんです」

中小企業の経営者の方とお話していて、こんな言葉をよく聞きます。

「実績のページを作りましょうと言われたんですが、うち、お客様の名前を出せる案件が無くて。載せられるものが何もないんです」

これ、2つの別々の問題が混ざっています。

  • 本当に実績が無い(創業直後、新規事業)
  • 実績はあるが、出せない/記録していない(守秘義務、写真を撮っていない、記録が残っていない)

後者のほうが圧倒的に多いです。20年やっている会社でも、「載せられるものが無い」とおっしゃいます。仕事はしてきたのに、それを見せる形にしてこなかっただけです。

そして重要なのは、実績が無いことより、実績欄が空欄で置かれていることのほうが不利だという点です。枠だけあって中身が無いページは、無いほうがましです。

この記事では、実績が無い状態で何を置くか、そして1件目をどう作るかを書きます。写真が無い場合の進め方は 写真が1枚も無い会社の、ホームページの作り方 に書きました。

2. 実績ページで、見る側が確かめていること

そもそも、なぜ実績を見るのか。自慢を見に来ているわけではありません。確かめているのは3つです。

  • 自分と似た案件をやったことがあるか(規模、業種、地域)
  • どのくらいの費用と期間でできるのか
  • 本当にやっているのか(実在の確認)

つまり、有名企業の名前が並んでいることに価値があるわけではありません。自分と近い規模・近い内容の案件が1つあるほうが、大企業の実績が10件並ぶより効きます。

ここが分かると、置けるものが見えてきます。社名を出さなくても、規模と内容と金額の目安が書いてあれば、確かめたいことは満たせるからです。

逆に言えば、社名だけがずらりと並んだ実績ページは、意外と機能していません。見る側は「立派だな」とは思っても、自分の案件を頼めるかどうかは判断できないからです。名前より、中身のほうが読まれます。

3. 実績の代わりに置けるもの

社名を出さずに、あるいは実績そのものが無くても置けるものを挙げます。

① 社名を伏せた事例

「兵庫県内・従業員15名の製造業様」という書き方です。業種・規模・地域・依頼内容・期間・おおよその費用。この6つがあれば、事例として十分に機能します。守秘義務がある場合はこの形にします。

② できることの具体

実績が無くても、能力は書けます。対応できる寸法、扱える素材、対応エリア、保有している設備、資格。「何ができるか」は事実なので、実績が無くても書けます。

③ 前職での経験

会社としての実績が無くても、代表個人の経験は事実です。「前職で〇〇を△年、××件担当」は書けます。創業直後の会社では、これがいちばん強い材料になります。

④ 仕事の進め方

相談から納品までの流れを書く。実績が無くても、どう進むかは示せます。初めて頼む側の不安のかなりの部分は、ここで解消されます。

⑤ 考え方・方針

何を大事にしているか、どういう仕事は受けないか。実績で選べない段階では、人と考え方で選ばれます。ここは実績より強く効くことがあります。

⑥ 使っている道具・設備の写真

車両、機械、工具、事務所。「本当にやっている」の証明になります。実績写真より撮りやすい。

この6つのうち3つあれば、実績ページの代わりになります。タイトルを「制作実績」ではなく「対応できること」「仕事の進め方」に変えれば、空欄も生まれません。

番外:他社の事例を「参考」として置くのは避ける

「こういうものが作れます」という意味で、他社の仕事を載せたくなることがあります。これは避けてください。見る側は自社の実績だと受け取りますし、後で説明しても信頼は戻りません。能力を示したいなら、他社の写真ではなく、自社の設備と工程を書くほうが確実です。

4. 1件目を、記録する

ここからが本題です。実績は、後から作れません。終わった仕事の写真は撮れないし、当時の状況も思い出せません。

だから、次の1件から記録を始めてください。やることは3つだけです。

  • 着手前と完了後の写真を撮る。スマートフォンで構いません。同じ角度で撮ると比較になります
  • 数字を控える。期間、規模、点数、金額。あとで「おおよそ」に丸めればいい
  • お客様の一言をもらう。「助かりました」の一言でも十分です。その場で聞くのがいちばん確実です

この3つを、仕事のたびに10分やる。それだけで、半年後には5件の実績ページができます。

記録する場所も決めておいてください。スマートフォンのアルバムに案件名でフォルダを作るだけで十分です。凝った仕組みは要りません。続かない仕組みは、無いのと同じです。

あわせて、社内の誰が記録するかも決めてください。現場に出ている人が撮るのがいちばん自然ですが、頼むときは「実績ページに載せるので」と目的を伝えてください。目的が分かると、撮り方が変わります。

私が現場で見てきた限り、実績ページが作れない会社の共通点は、記録の習慣が無いことです。逆に言えば、習慣にした会社は1年で見違えます。能力の差ではなく、記録の差です。

5. 掲載の許可を、どう取るか

「お客様に載せていいか聞くのが気まずい」というご相談もよく受けます。言い方を決めておけば、そこまで難しくありません。

聞くタイミング

納品直後がいちばん通ります。満足度がいちばん高い瞬間だからです。時間が経つほど言い出しにくくなります。

聞き方

「よろしければ、弊社のホームページに事例として掲載させていただけませんか。社名を出さずに『〇〇業のお客様』という形でも構いません」

社名なしの選択肢を先に出すのがコツです。断る理由が減ります。それでも難しければ、写真だけ、あるいは数字だけ、と段階を下げていけます。

断られたときの備え

  • 社名を伏せて掲載してよいか、別途聞く
  • 写真だけ、社名なしで使えないか聞く
  • 無理なら、その案件は諦めて次に切り替える

全部載せる必要はありません。5件のうち2件載せられれば十分です。

なお、契約書に守秘義務がある場合は、契約書が優先です。気まずさの問題ではなく、契約の問題なので、そこは確認してから聞いてください。

もう1つ。「お客様の声」を自分で書かないでください。それらしい文章を作るのは簡単ですが、読む人はだいたい見抜きます。もらえないなら、載せない。無いことより、作ったことのほうが失うものが大きいです。

6. 1件を、どう書くか

実績を書くときの型を出しておきます。この6項目で足ります。

  • お客様(社名 または「〇〇業・従業員△名・兵庫県」)
  • 依頼内容(何を頼まれたか)
  • 背景(なぜ必要だったか。ここが読まれます)
  • やったこと(担当した範囲。箇条書きで)
  • 期間と費用の目安
  • お客様の声(一言でよい)

3番目の「背景」がいちばん効きます。「〇〇を作りました」だけでは、読む側は自分に置き換えられません。「創業したばかりで会社を説明する場所が無かった」という背景があると、同じ状況の人が反応します。

そして、1件を厚く書くほうが、10件を薄く並べるより効きます。写真1枚と社名だけが並んだページは、見る側が判断に使えません。

もう1つ、1件ごとに独立したページにすると、検索から直接その事例に人が来るようになります。「〇〇業 △△(地域)」のような具体的な言葉で探している人が、事例ページに当たる。実績ページは、信頼のためだけでなく、検索の入口としても効きます。一覧に並べるだけでなく、1件1ページの形を検討してみてください。

7. 業種別の、見せ方の違い

同じ実績ページでも、業種で見られるところが違います。

  • 工務店・リフォーム ― 着工前と後の写真、工期、金額。小さい工事の事例を必ず混ぜる
  • 製造・加工 ― 寸法、素材、公差、ロット。写真より数字が効きます
  • 運送・物流 ― 何を、どこからどこへ、どのくらいの頻度で。車両の種類
  • 士業・コンサル ― 相談内容と、その後どうなったか。数字が出せなくても経過は書けます
  • 飲食・小売 ― 実績ページ自体が要りません。メニューと写真と営業時間のほうが効きます

最後の1つは重要です。業種によっては、実績ページを作らないほうがいい場合があります。悩む前に、自分の業種で必要かどうかを考えてみてください。業種別の優先順位は 業種別・ホームページに必ず載せるもの に書きました。

8. 雄喜晃の伴走:無いものは、無いまま作ります

私たち雄喜晃がサイトをお作りするとき、実績が無い会社に実績欄を作ることはしません。空欄が並ぶくらいなら、「対応できること」「仕事の進め方」「代表の考え」で構成します。無いものを有るように見せる作り方はしません。

そして、1件目が出たときに足せる形にしておきます。月5回までの修正更新を月額に含めているので、実績が増えるたびにご連絡いただければ、こちらで追加します。実績ページは、公開時に完成させるものではなく、育てるものです。

私たち自身も、創業から1年経っていない会社です。実績は1件ずつ増やしてきました。いま 制作実績 に並んでいるものも、最初は1件もありませんでした。その順番を通ってきているので、無い状態からの進め方はお話しできます。

一方で、私たちがやらないことも書いておきます。架空の事例や、他社の実績を自社のもののように載せることはしません。ご要望があってもお断りします。発覚したときに失うものが、得られるものより大きいからです。

「載せられる実績が無くて止まっている」という会社には、私たちは間違いなくお役に立てます。今あるものだけで一度形にして、そこから足していきましょう。料金と条件は ホームページ制作のページ に載せてあります。

9. まとめ:無いなら、無い前提で組む

実績が無い状態で進めるために必要なことは、3つです。

  • 実績欄を空欄で置かない ― 「対応できること」「進め方」「考え方」に置き換える
  • 次の1件から記録を始める ― 写真・数字・一言。1件10分で足ります
  • 掲載の許可は納品直後に、社名なしの選択肢とセットで聞く

この3つで、半年後には実績ページが立ち上がります。実績が無いことは、公開しない理由になりません。

まずは、次に終わる仕事で、完了後の写真を1枚撮ってみてください。それが1件目です。

ぜひ一度、お話を聞かせてください。今あるもので何が組めるかを見るところから、ご一緒します。