1. フォームの前まで来た人を、逃している
中小企業の経営者の方とお話していて、こんな言葉をよく聞きます。
「アクセスはそこそこあるみたいなんですが、問い合わせが月に1件あるかないかで。やっぱりデザインですかね」
デザインではないことが多いです。フォームの前まで来た人が、フォームで帰っているというのが、実際にはいちばん多い形です。
ここが厄介なのは、帰ったことが記録に残らない点です。入力途中で閉じた人は、こちらから見えません。ページは見られている、フォームも開かれている、でも送信は0。この状態は、数字を分けて見ていないと気づけません。
そしてもう1つ。フォームは、公開したあと誰も触りません。デザインやトップページは気にしても、フォームの項目を見直す会社はほとんどありません。制作時に「一応これも聞いておきましょう」で足された項目が、何年もそのまま残っている。いちばん改善の余地が残っている場所です。
この記事では、フォームのどこで人が手を止めるのかを分解します。やることはほとんど「減らす」ことです。足すのではありません。
問い合わせが来ない原因の切り分け全体は ホームページを作ったのに問い合わせが来ない ― 公開後90日でやること にまとめてあります。
2. 項目が1つ増えるごとに、人は減る
これは体感ではなく、構造の話です。入力欄が増えるほど、途中でやめる人は増えます。とくにスマートフォンでは、1項目ごとにキーボードを開いて、変換して、次に進む、という手間が乗ります。
よく見るフォームには、こういう項目が並んでいます。
- 会社名(必須)
- 部署名
- 役職
- お名前(必須)
- フリガナ(必須)
- 郵便番号
- ご住所(必須)
- 電話番号(必須)
- メールアドレス(必須)
- ご予算
- 希望納期
- お問い合わせ種別(選択)
- お問い合わせ内容(必須)
- どこで知りましたか(選択)
14項目です。スマートフォンで、片手で、移動中に埋める気になる量ではありません。
そして重要なのは、これらの多くが「返信するために必要な情報」ではないことです。返信するのに要るのは、宛名と連絡先と用件だけです。残りは、こちらが便利だから聞いているだけの項目です。
なぜ増えるのかというと、フォームを作る側は「後で聞き直す手間」を減らそうとするからです。気持ちは分かります。ただ、その手間を相手に前払いさせている構図になります。1件の問い合わせを丁寧に処理する手間より、来なかった9件のほうが損です。
3. 4項目で足りる
私たちがおすすめしているのは、この4つです。
- お名前
- メールアドレス
- 会社名(BtoBなら。個人向けなら不要)
- お問い合わせ内容(自由記述)
これで返信できます。足りない情報は、返信のときに聞けばいい。先に全部集めようとすると、そもそも1件も来ません。
電話番号は、任意にする
必須にすると、それだけで減ります。「電話がかかってくるのか」という警戒が働くからです。任意にして、「お電話をご希望の方はご記入ください」と添える。これで、電話で話したい人だけが書きます。
予算・納期は、聞かない
聞きたくなる気持ちは分かります。ただ、問い合わせの段階では、相手も決めていません。「予算」の欄で手が止まって、そのまま閉じられます。商談の中で聞けば済みます。
選択式は、便利だが減らす
「お問い合わせ種別」のような選択式は、こちらの整理には便利ですが、相手には「どれを選べばいいのか分からない」という迷いを生みます。迷いは離脱です。どうしても要るなら、選択肢を3つまでにしてください。
フリガナは要らない
読み方が知りたい気持ちは分かりますが、入力の手間としては1項目まるごと増えます。どうしても要る商売(士業の書類作成など)でなければ、外して構いません。メールの署名や、返信のやり取りで分かります。
住所も、たいてい要らない
見積もりに必要な場合を除けば、問い合わせの段階では不要です。訪問が要る商売なら、「おおよその地域」を自由記述で聞くだけで足ります。郵便番号から自動入力される仕組みを入れても、入力の手間は残ります。
4. 送信ボタンの手前で起きていること
項目数以外にも、手を止める理由があります。
- 送ったあと何が起きるか分からない。すぐ営業電話が来るのでは、という警戒
- 個人情報の扱いが書かれていない。プライバシーポリシーへのリンクが無い
- 入力エラーの出方が不親切。送信してから「電話番号の形式が違います」と言われ、入力内容が消える
- 必須マークが分かりにくい。どこが必須か分からず、何度も弾かれる
- 送信ボタンが見つからない。長いフォームの最下部にあり、画面外にある
とくに1つ目は、一文添えるだけで変わります。
「2営業日以内にメールでご返信します。お電話でのご連絡はいたしません」
書いてあるかどうかで、送信率は変わります。書かれていないと、相手は最悪の想定をします。
3つ目も実務でよく見ます。送信ボタンを押してから初めてエラーが出て、しかも入力内容が消える。これをやられると、まず戻ってきません。入力しながらエラーが分かる作りにしてください。
もう1つ、電話番号の入力形式を厳しくしすぎないでください。ハイフンあり・なし、括弧つき、全角。どれで入れても通るようにしておきます。形式で弾かれた経験は、そのまま離脱になります。
そして、送信ボタンの文言も効きます。「送信」より「無料で相談する」「まずは話を聞いてみる」のほうが、押した先に何があるかが分かります。ボタンの文字は、そのまま次の行動の説明です。
5. ★スパム対策で、絶対にやってはいけないこと
ここは強く書きます。「見えない入力欄」でbotを判定する方法(ハニーポット)は、使わないでください。
仕組みとしては、人には見えない入力欄を置いておき、そこに値が入っていたらbotと判定して捨てる、というものです。理屈は分かります。ですが、ブラウザの自動入力がそこに値を入れてしまいます。
そうなると何が起きるか。
- 画面には「送信しました」と緑色で表示される
- メールは飛ばない
- ログも残らない
- お客様は送ったつもりでいる
これは実際に起きました。私たちが関わった案件で、正規の問い合わせが黙って捨てられていたことがあります。名前を変えても、自動入力を止める設定を入れても、根本的には防げませんでした。撤去する以外に解はありません。
スパム対策は、Turnstile や reCAPTCHA のような、人間かどうかを判定する仕組みに一本化してください。これらは判定に失敗したときに画面上でそう分かるので、黙って捨てられることがありません。
もう1つ、「成功を装って黙って捨てる」処理は、スパム対策に限らず書いてはいけません。捨てるなら、送った側に分かる形で捨てる。これは実装の作法の問題です。
6. 届いているかを、確かめる方法
フォームでいちばん怖いのは、動いていないことに気づかないことです。確認は簡単なので、必ずやってください。
- 公開したら、自分で1件送信する。受信できるか、迷惑メールに入っていないかを見ます
- 半年に一度、同じ確認をする。メールの設定変更やサーバーの移設で、ある日止まることがあります
- 送信完了を計測する。アクセス解析で送信を数えておくと、「今月は0件」が事実かどうか分かります
- 自動返信を入れる。送った側にも届いたことが分かるので、二重送信や不安が減ります
自動返信の文面も、そっけなくしないでください。いつ返信するか、誰が対応するかを書いておくと、待っている間の不安が減ります。「担当の〇〇より、2営業日以内にご連絡いたします」の一行で十分です。
3つ目は特に効きます。「なんとなく減った気がする」ではなく、数字で見られるようになるからです。件数が本当に0なら止まっている可能性を疑えますし、届いているなら別の原因を探せます。
迷惑メールの罠
独自ドメインのメールを使っている場合、送信元の設定(SPF・DKIM・DMARC)が正しくないと、フォームからの通知が迷惑メールに入ることがあります。届かないのではなく、見ていないところに入っている、という形です。
これは制作会社に確認すれば分かります。
「フォームからの通知メールは、どのアドレスから送られますか。迷惑メール判定されない設定になっていますか」
なお、通知の宛先を代表者1人だけにしないことも大事です。担当が1人だと、その人が休んでいる間に問い合わせが止まります。2人以上に届く設定にしておくと、取りこぼしが減ります。
7. 入口はフォームだけにしない
最後に、フォーム以外の入口についてです。人によって、使いたい手段が違います。
- 電話 ― その場で決めたい人。スマートフォンでタップして発信できるようにします
- メールアドレスの直書き ― フォームが苦手な人。自分のメールソフトで書きたい人がいます
- LINE ― 個人向けの商売なら強い。心理的なハードルがいちばん低い手段です
- 地図からの経路 ― 来店型なら、これが実質的な問い合わせです
3つ以上あると、取りこぼしが減ります。どれか1つに絞る理由はありません。管理の手間を心配されることがありますが、そもそも件数が少ない段階では問題になりません。
そして、問い合わせボタンをページの下に1つだけ置かないでください。読み終わった場所から押せるように、区切りごとに置きます。人が「問い合わせよう」と思う瞬間は、ページの最後とは限りません。
スマートフォンでは、画面の下に固定で1本ボタンを置くのも有効です。スクロールしても常に見えている状態になるので、思い立った瞬間に押せます。ただし、本文を隠さない高さに抑えてください。読むのを邪魔すると逆効果になります。
8. 雄喜晃の伴走:フォームは、届くところまでが範囲です
私たち雄喜晃がお作りするサイトでは、フォームは「設置しました」で終わりにしません。公開時に自分で送信して受信を確認し、送信完了を計測できる状態にしてお渡しします。
そして、見えない入力欄によるスパム対策は使いません。過去に正規の問い合わせが黙って捨てられる事故を実際に見ているので、スパム対策はTurnstileに一本化しています。件数が減るより、届かないほうが損だからです。
一方で、私たちがやらないことも書いておきます。予約システムや、決済まで含むフォームは範囲外です。問い合わせフォームと、独自ドメインのメールアドレスの開設まではお手伝いできますが、そこから先の仕組みが必要なら、開発を得意とする会社のほうが確実です。
「フォームがちゃんと動いているか自信がない」という会社にも、私たちはお役に立てます。今のサイトのままでも、1件送ってみて確かめるところからで構いません。実際にお作りしたサイトは 制作実績、料金と条件は ホームページ制作のページ に載せてあります。
9. まとめ:足すのではなく、減らす
問い合わせフォームを直すために必要なことは、3つです。
- 項目を4つまで減らす ― 名前・メール・会社名・内容。足りない情報は返信で聞けます
- 送ったあと何が起きるかを書く ― 一文添えるだけで、送信率が変わります
- 届いているかを確かめる ― 公開時と、半年に一度。計測しておけば数字で分かります
この3つで、デザインを変えるより確実に件数が動きます。フォームは見た目の問題ではなく、手間と不安の問題だからです。
まずは今日、ご自身のフォームをスマートフォンで開いて、項目を数えてみてください。5つを超えていたら、そこが最初に手を付けるところです。
そのうえで、実際に1件送ってみてください。自分で入力してみると、どこで面倒だと感じるかが分かります。自分が面倒だと感じる場所は、お客様も面倒だと感じています。
ぜひ一度、お話を聞かせてください。今のフォームがどうなっているかを一緒に見るところから、ご一緒します。