1. 「3社に出したのに、比べられないんです」
中小企業の経営者の方とお話していて、こんな言葉をよく聞きます。
「ホームページの見積もりを3社に出したんですけど、25万円と68万円と、月額1万円と。並べてみたものの、これ何を比べたらいいんでしょうか」
このご相談は、本当によくあります。そして、私はいつも同じことをお伝えしています。その3枚は、まだ比べられる状態になっていません。
理由は単純です。3社に渡した条件が、それぞれ違うからです。ページ数も、文章を誰が書くかも、公開後に誰が直すかも、社ごとに違う前提で計算されている。そうやって出てきた3つの数字を横に並べても、そこに見えているのは金額の差ではなく、条件の差です。
この記事では、相見積もりを「比べられる状態」にするための手順を書きます。依頼のときに何を揃えて渡すか、返ってきた見積書のどの行を見るか、そして最後に何で決めるか。順番に整理していきます。
金額そのものの読み方は ホームページの費用は、3年で並べないと判断できない に、月額制の見積もりの裏側は 「制作費0円」のホームページは、どこで回収されているのか にまとめてあります。この記事は、その2本を「複数社を前にしたとき、どう使うか」に落とし込んだものです。
2. 比べられない理由は、たいてい依頼側にある
厳しい言い方に聞こえるかもしれませんが、見積もりが比較不能になる原因は、制作会社側ではなく依頼側にあることがほとんどです。
条件を口頭で伝えている
「うちの会社のホームページを作りたいんですが、だいたいいくらくらいですか」。この一言で見積もりを依頼すると、3社は3通りの想像で計算します。A社は5ページを想定し、B社は取材と撮影込みを想定し、C社は1ページのテンプレートを想定する。同じ質問に、違う商品の値段が返ってきているだけです。
各社が「自社の得意な形」に寄せて提案する
制作会社にも得意な形があります。デザインから作る会社、テンプレートで早く出す会社、公開後の運用まで持つ会社。条件が曖昧なとき、各社は自分の得意な形に引き寄せて見積もりを作ります。これは不誠実なのではなく、情報が足りないときの自然な埋め方です。
期間と範囲が揃っていない
初期費用だけ書かれた見積書と、初期費用ゼロで月額だけ書かれた見積書。この2枚は、そもそも数字の意味が違います。前者は制作の対価、後者は3年なり5年なりの利用料です。どちらが安いかを、その紙のまま判断することはできません。
私が現場で見てきた限り、比較できない見積もりを前にすると、人は金額の大小だけで決めます。他に判断材料が無いからです。そして、そこから先に起きることは、だいたい決まっています。
3. 依頼のときに、必ず揃えて渡す7つの項目
比べられる見積もりをもらう方法は1つだけです。全社に同じ紙を渡すこと。A4で1枚、箇条書きで構いません。次の7つが書いてあれば十分です。
① ページ数
「トップ、会社概要、事業内容、実績、お問い合わせの5ページ」のように、想定するページを列挙します。数が決まらないなら「5ページ前後」で構いません。空欄にするより、仮でも数字を置くほうが比較になります。
② 原稿は誰が書くか
これがいちばん金額を動かします。「文章は自社で用意します」なのか、「ヒアリングして書いてください」なのか。同じ5ページでも、この一行だけで見積もりが倍近く変わることがあります。
③ 写真は誰が用意するか
手元の写真を使うのか、撮影をお願いするのか、フリー素材で構わないのか。撮影を入れるとカメラマンの日当と交通費が乗ります。写真が無いこと自体は問題ではありませんが、誰が用意するかが決まっていないと、見積もりも制作も止まります。
④ 問い合わせフォームの有無
フォームを付けるか、電話番号とメールアドレスだけにするか。フォームを付けるなら、迷惑メール対策や自動返信をどうするかも、金額に効いてきます。
⑤ スマートフォン対応
今はほぼ標準ですが、見積書に明記されていない場合は必ず確認してください。「レスポンシブ対応」と書かれていれば含まれています。書いていない見積書は、含まれていないか、当たり前すぎて書いていないかのどちらかです。聞けば分かります。
⑥ 公開後の更新は誰がやるか
自社で触るのか、制作会社に頼むのか。頼むなら、1回いくらなのか、月額に含まれるのか。ここを空欄にしたまま出した見積もりは、公開した翌月から実態と合わなくなります。
⑦ 希望の公開時期
「11月の展示会までに」「特に急いでいない」。この一行で、体制も金額も変わります。急ぐなら人を増やすので上がりますし、急がないなら下がることもあります。期限があるなら、隠さず先に言ったほうが得です。
この7項目を書いた紙を、同じ内容で3社に渡す。それだけで、返ってくる見積書は横に並べられるようになります。やることはこれだけです。
4. 見積書で必ず確認する、6つの行
見積書が揃ったら、金額の欄より先に見る場所があります。次の6つです。
| 見る行 | 確かめること | 曖昧なときに聞く一言 |
|---|---|---|
| 初期費用と月額の内訳 | どこまでが初期で、翌月から何が続くのか | 「公開した翌月から、毎月いくら発生しますか」 |
| 保守の中身 | 監視だけか、文章の差し替えまで含むか | 「保守に含まれる作業を、箇条書きでいただけますか」 |
| 更新の回数と単価 | 月に何回まで無料か、超えたらいくらか | 「料金表を1行直すのは、何回まで無料ですか」 |
| ドメインとサーバーの名義 | 契約者が自社か、制作会社か | 「ドメインは弊社名義で取っていただけますか」 |
| 著作権とデータの引き渡し | 終了時にデータをもらえるか | 「契約が終わるとき、データはいただけますか」 |
| 最低契約期間と解約時の扱い | 何ヶ月縛りか、途中でやめるとサイトはどうなるか | 「12ヶ月でやめた場合、サイトは残りますか」 |
読み方は単純です。左の6行がすべて書かれている見積書は、比べられます。書かれていない行があれば、右の一言をそのまま送ってください。返事の速さと具体性そのものが、公開後の付き合い方を教えてくれます。金額の欄を見るのは、この6行が埋まってからで遅くありません。
名義と引き渡しは、金額より重い
6行のうち、後半の3つ ― 名義・データ・解約時の扱い ― は、金額表には表れません。しかし、実務で困るのはほぼこの3つです。ドメインが制作会社名義になっていると、他社に移りたいときに相手の協力が要ります。金額が5万円安いことより、この一行のほうが後で効きます。
書いていないことは、含まれていない
見積書に書かれていない作業は、原則として含まれていません。悪意ではなく、単に想定に入っていないだけです。含まれていると思い込んだまま契約すると、公開直前に追加費用の話になります。気になった項目は、契約前にメールで聞いて、返事を残しておいてください。
5. 「一式」と書かれていたら、必ず内訳を聞く
見積書でいちばん注意して見てほしいのが、この2文字です。
「ホームページ制作一式 480,000円」
この書き方自体が悪いわけではありません。工程が多すぎて1行にまとめただけ、ということもあります。ただ、この状態では他社と比較できません。480,000円の中に撮影が入っているのか、原稿執筆が入っているのか、公開後の保守が入っているのかが分からないからです。
聞き方は簡単です。「内訳をいただけますか」で十分です。この一言に丁寧に答えてくれるかどうかは、それ自体が判断材料になります。すぐに分解した表が返ってくる会社は、社内で工程を管理できている会社です。「だいたいこんな感じです」で終わる会社は、公開後の説明も同じ調子になります。
分解してもらうと、削れる場所が見つかる
内訳が出ると、もう1つ良いことがあります。予算に合わないとき、どこを削るかが自分で判断できるようになります。撮影を来期に回す、実績ページを後から足す、原稿は自社で書く。一式のままでは「もう少し安くなりませんか」としか言えませんが、内訳があれば「この工程を外したらいくらですか」と聞けます。
値引き交渉ではなく、範囲の調整です。そのほうが、双方にとって健全な話になります。
6. 3社に絞る。そして、安い理由と高い理由を聞く
5社取ると、比較で疲れて決められなくなる
相見積もりは多ければ多いほど良い、というものではありません。私の実感では、3社が上限です。5社取ると、見積書を読むだけで数週間かかり、各社への質問と返答の往復で消耗します。そして、疲れた状態で決めた結論は、たいてい「いちばん安いところ」になります。
それなら最初から1社と丁寧に話したほうが良かった、ということになりかねません。比較のための労力を、選ぶための労力より大きくしないでください。
3社の選び方は、性格の違う3社にするとうまくいきます。地元の制作会社、月額制の会社、フリーランスや知人。同じタイプを3社並べても、判断軸は増えません。
安い理由を聞く
いちばん安い見積もりが来たら、値引きを喜ぶ前に理由を聞いてください。「なぜこの金額でできるんですか」と。答えは、だいたい次のどれかです。
- テンプレートを使っていて、設計の工程が無い
- 原稿と写真をすべて依頼側が用意する前提になっている
- 公開後の保守と更新が含まれていない
- 月額や別契約で、後から回収する設計になっている
どれも悪いことではありません。貴社の条件と合っていれば、それがいちばん良い選択です。問題なのは、理由を知らないまま安さだけで選ぶことです。
高い理由を聞く
同じように、高い見積もりにも理由を聞いてください。「この金額には何が含まれているんですか」と。取材に半日かける、撮影を入れる、公開後3ヶ月は無償で直す、原稿を全部書く。理由が明確なら、高いことは欠点ではありません。
逆に、高い理由を説明できない会社は避けたほうが無難です。金額の根拠を言葉にできない会社は、公開後の判断も言葉にできません。
7. 進め方の順番 ― 3週間で決める
相見積もりは、だらだら続けるほど質が落ちます。期間を決めて進めてください。
Step 1(1週目):条件を1枚にまとめる
セクション3の7項目を、A4で1枚に書く。ここに時間をかけるほど、後がすべて楽になります。社内で意見が割れている項目があれば、この段階で決めておいてください。途中で条件が変わると、見積もりを取り直すことになります。
Step 2(2週目):3社に同じ紙を渡す
同じ紙、同じ期限、同じ質問。「2週間後までにお願いします」と伝えます。このとき、他社にも出していることは伝えて構いません。隠す必要はありませんし、伝えたほうが条件を詰めた見積もりが返ってきます。
Step 3(3週目):6行を確認し、質問を1往復する
返ってきた見積書で、セクション4の6行を確認します。空欄があれば、表の右列の一言をそのまま送る。この往復1回で、各社の性格がかなり見えます。返事が3日以内に来るか、質問に正面から答えるか。公開後に何度もやり取りする相手なので、ここは金額と同じくらい重要な情報です。
Step 4:金額を見て、決める
最後にやっと金額です。ただし、この段階では金額だけを見ることになりません。条件が揃い、内訳が出て、質問への答えが手元にある。その状態で見る金額は、初めて意味のある数字になります。
3週間です。半年かける必要はありません。順番さえ守れば、この期間で十分に判断できます。
価格だけで決めたときに、何が起きるか
念のため、順番を飛ばした場合に何が起きるかも書いておきます。私が実際に見てきた形です。
- 25万円で作ってもらったが、原稿は全部自社で書く前提で、半年たっても公開できていない
- 安さで選んだ会社が、公開後の修正を1回2万円で見積もってきて、直せなくなった
- ドメインが制作会社名義で、他社に移りたいときに手続きが進まなかった
- 3年目に「サーバーの更新料」として想定外の請求が来た
どれも、契約前に一言聞けば分かったことです。金額を下げたのではなく、後で払う場所を移しただけ、という結果になっています。
8. 雄喜晃の伴走:条件を揃えるところから、ご一緒します
私たち雄喜晃も、ホームページ制作をお受けしている一社です。ですから、この記事は「うちを選んでください」という趣旨ではありません。比べられる状態を作るところまでは、どこに頼むにしても同じだからです。
値引き合戦には参加しません。他社の見積もりを見せていただいて、それより1万円安くします、ということはしません。条件が違う見積もりに金額だけ合わせても、その差はどこかで必ず出てくるからです。同じように、相見積もりの比較そのものを代行することもしません。決めるのは貴社であるべきで、私たちが選定資料を作ると、そこに私たちの都合が入ります。
その代わり、お伝えできることははっきりしています。私たちの条件は、月額8,800円(税別)に、サーバー・独自ドメイン・SSL・保守・月5回までの更新代行まで含む形です。制作費は0円。最低契約期間は6ヶ月で、7〜35ヶ月で解約された場合はサイトを非公開にし、36ヶ月以上ご利用いただいた場合はサイトを譲渡します。ドメインは必ずお客様名義で取得します。セクション4の6行に、そのまま答えられる形にしてあります。
分析や提案だけで終わらせるつもりはありません。ご相談いただいたら、貴社のホームページのサンプルを先に無料でお作りします。見たうえで他社を選ばれても、費用はかかりません。「3社の見積もりを前に、何を基準に決めればいいか分からない」という状態でしたら、条件を1枚にまとめるところからお手伝いできます。実際にお作りしたサイトは 制作実績 に、条件の詳細は ホームページ制作のページ に載せてあります。
9. まとめ:金額を見るのは、いちばん最後でいい
ホームページの相見積もりを公平に比べるために必要なことは、3つです。
- 同じ条件を、同じ紙で渡す ― ページ数・原稿・写真・フォーム・スマホ対応・更新・公開時期の7項目
- 金額の欄より先に、6つの行を見る ― 内訳・保守・更新回数・名義・データ・解約時の扱い
- 「一式」は必ず分解してもらう ― 分解できると、削る場所も見えてくる
この3つをやると、3枚の見積書が初めて横に並びます。逆にこれをやらずに金額だけを比べると、安いほうを選んだのに高くついた、という結果になりがちです。
もう一つだけ。相見積もりは、業者を競わせる作業ではありません。貴社が何を頼みたいのかを、自分で言語化する作業です。条件を1枚にまとめる過程で、「うちはページ数より更新のしやすさが大事だった」と気づくことがよくあります。そこまで来れば、どの見積書を選んでも大きくは外しません。
お手元に見積書が並んでいるなら、まず7項目の紙を作って、同じ内容でもう一度出し直してみてください。それだけで、見え方がかなり変わるはずです。
ぜひ一度、お話を聞かせてください。何を揃えれば公平に比べられるのか、条件を並べるところからご一緒します。