1. 「相場が分からない」は、調べ方の問題ではない

中小企業の経営者の方とお話していて、こんな言葉をよく聞きます。

「ホームページの相場を調べたんですけど、30万円と書いてあるところもあれば、200万円と書いてあるところもあって。うちはどっちなんだと」

これは調べ方が足りないのではなく、そもそも相場という言葉が機能していないのだと思います。ホームページには「これ1本でいくら」という基準がありません。ページ数、文章を誰が書くか、写真を撮るか、公開後に誰が直すか。この組み合わせで金額は何倍にも動きます。

ですから、比べるべきは金額そのものではありません。同じ期間・同じ条件に並べ直したときの総額です。この記事では、一括払いと月額制を3年と5年で並べ直して、どちらを選ぶべきかが自分で判断できる形にします。

先にお伝えしておくと、この記事の結論は「月額制が安いです」ではありません。期間と使い方によっては、一括のほうが確実に安くなります。月額でサイトをお作りしている側が書く記事なので、そこは自社に不利な数字も含めて出します。

なお「制作費0円」と書かれた見積もりを前にしている方は、先に 「制作費0円」のホームページは、どこで回収されているのか を読んでいただくと、この記事の数字が読みやすくなります。

2. 相場は確かにある。ただし幅が広すぎて使えない

制作会社各社が公開している相場をならすと、だいたいこうなります。

  • フリーランスに依頼:10万円以下で受ける人もいる
  • 小規模なコーポレートサイト(10ページ未満・原稿は自社で用意):30〜80万円
  • 同じ規模で、文章もライティングから依頼:50〜100万円
  • マーケティングやSEOの設計まで含める:100〜200万円
  • 大手の制作会社:数百万円規模

この幅は、手を抜いている会社と丁寧な会社の差ではありません。含まれている工程の数の差です。同じ「30万円」でも、文章は自社で全部書く前提の30万円と、取材して書いてもらう30万円は、まったく違う買い物です。

ここで1つ、はっきりさせておきたいことがあります。高いほど成果が出る、という関係はありません。200万円かけたサイトが1件も問い合わせを生まないことも、30万円のサイトが毎月問い合わせを取ることも、どちらも実際に起きます。金額を決めているのは工程の量であって、成果ではないからです。

成果を決めるのは、誰に何を伝えるかが定まっているかどうかと、公開後に直し続けたかどうかです。ここは金額とほとんど相関しません。予算を上げるより先に、この2つを固めるほうが効きます。

見積書を並べるときは、まず金額の欄ではなく作業範囲の欄を横に並べてください。金額の差の理由は、たいていそこに書いてあります。

金額が動く6つの要因

同じ「コーポレートサイト」でも、次のどれを含むかで見積もりは倍以上動きます。

  • ページ数 ― 1ページのLPか、会社概要・事業内容・実績・採用まである6〜10ページか
  • 文章を誰が書くか ― 自社で全部用意するのか、ヒアリングして書き起こしてもらうのか
  • 写真 ― 手元の素材でやるのか、カメラマンを入れて撮影するのか
  • デザインの作り方 ― テンプレートを当てるのか、ゼロから設計するのか
  • 機能 ― 問い合わせフォームだけか、予約・会員・多言語まで載せるのか
  • 公開後 ― 納品して終わりか、更新や改善まで含むのか

このうちいちばん金額を動かすのは、文章と写真です。デザインの差だと思われがちですが、実務では中身を用意する工程がいちばん時間を食います。逆に言えば、貴社側で文章と写真を用意できるなら、見積もりは下がります。見積もりを取る前に「どこまで自社でやれるか」を決めておくと、比較が一気に楽になります。

3. 見積書に出てこない、3つの費用

一括で作る場合、見積書の金額がそのまま総額になることはまずありません。抜けているのは次の3つです。

① 公開後の保守・サーバー・ドメイン

サーバー代とドメイン代で年1万〜3万円ほど。加えて保守契約を結ぶと、月額3,000〜10,000円が一般的です。制作費の見積書には入っていないのに、公開した翌月から発生します。

見落としやすいのは、この保守が「何をしてくれる保守なのか」です。サーバーの死活監視だけの保守もあれば、文章の差し替えまで含む保守もあります。同じ月5,000円でも中身がまったく違うので、金額だけ見て安心しないでください。

② 更新の費用

文章を1箇所直す、料金表を差し替える、スタッフの写真を入れ替える。これらを制作会社に頼むと、1回あたり5,000円〜数万円です。年に4回直すだけで、それなりの額になります。

そして金額以上にこたえるのが、頼みにくさです。1回5,000円かかると思うと、「まあ今度でいいか」と後回しになります。その積み重ねで、料金表が2年前のまま、代表挨拶が創業時のまま、というサイトができあがります。費用が更新を止めているという状態は、実務ではかなり頻繁に起きています。

③ 作り直しの費用

これがいちばん見落とされます。一括で作ったサイトは、数年で古くなります。スマートフォンの見え方の基準が変わり、検索エンジンの評価軸が変わり、載せている情報が事実と合わなくなる。3〜5年でもう一度作り直すのが、この形の実質的なサイクルです。

古くなる、というのは見た目の流行の話だけではありません。実務でいちばん効くのは載っている情報が事実と違っていくことです。料金が変わった、扱う商品が増えた、営業時間が変わった、担当者が代わった。問い合わせをしようとした人が最初に見る場所に古い情報があると、そこで判断が止まります。

私が現場で見てきた限り、初期費用を安く抑えた会社ほど、この作り直しが早く来ます。安く作れるということは、そのぶん設計や中身に手が入っていないということでもあるからです。

作り直しの費用は、初回とほぼ同額かかります。3年ごとに30万円なら、実質は月あたり8,300円です。一括払いは、実は分割払いの一種だった、という見方もできます。

4. 3年で並べる

では実際に並べます。条件は「小規模なコーポレートサイト、原稿は自社で用意」で揃えます。

初期費用月額3年の総額
制作会社に一括(小規模の下限)30万円5,000円(保守)48万円
月額制・1ページのLP0円8,800円31.7万円
月額制・6ページのサイト0円13,800円49.7万円

3年で見ると、1ページのLPなら月額制が明確に安く、6ページのサイトになるとほぼ互角になります。ここに「更新を何回頼むか」を足すと、月額制のほうが有利に傾きます。更新が月額に含まれている形であれば、直した回数だけ差が開くからです。

逆に、公開したら3年間ほとんど触らないつもりなら、この差はほぼ生まれません。更新しない前提なら、一括のほうが構造としては合っています。

更新の回数を足すと、こう変わります。年4回、1回1万円で外注した場合です。

3年の総額(更新なし)3年の総額(年4回更新)
一括30万円+保守5,000円48万円60万円
月額制・1ページのLP31.7万円31.7万円(月額に込み)
月額制・6ページのサイト49.7万円49.7万円(月額に込み)

更新を年4回入れるだけで、3年の差が10万円動きます。更新が月額に含まれる形かどうかは、金額表の中でいちばん効く条件です。見積もりを比べるときは、必ず「年に何回直すつもりか」を自分で決めてから並べてください。

5. 5年で並べると、逆転することがある

自社に有利な期間だけ切り取るのはフェアではないので、5年でも並べます。

5年の総額
一括30万円+保守5,000円60万円
月額制・1ページのLP(8,800円)52.8万円
月額制・6ページのサイト(13,800円)82.8万円

6ページのサイトを5年使うなら、一括のほうが安くなります。これは月額制の弱点です。長く使うほど、払い続ける形は総額で不利になる。当たり前の話ですが、月額制の会社はあまりこの表を出しません。

ただし、この表には入っていないものが2つあります。5年間の更新の手間と費用、そして5年目に作り直しが来る可能性です。一括の60万円は「5年間ずっと同じサイトのまま」という前提の数字です。そこを織り込むと、実際にはもう少し近づきます。

言いたいのは「だから月額制が得です」ではありません。5年という時間軸を出した瞬間、金額だけでは決まらなくなる、ということです。

もう1つ、5年の表を見るときに押さえておきたい点があります。一括で払った30万円は、成果が出なくても戻ってきません。月額制なら、合わないと分かった時点で止められます。金額の大小とは別に、判断をやり直せるかどうかという違いがあります。創業まもない会社や、新規事業でこれから反応を見る段階なら、ここは無視できない差です。

6. 「安く作る」が高くつく、典型的な形

金額の話をするとき、いちばん高くつくのは実は次のパターンです。

  • 20万円で作ってもらったが、公開後に誰も触れず、1年で情報が古くなった
  • 直したいが制作会社との連絡が途切れていて、どこを触ればいいか分からない
  • 結局2年後に別の会社で作り直し、また30万円払った

これで2年間に50万円使って、手元に残ったのは「動いていないサイト」です。金額を下げたのではなく、成果をゼロにしたうえで支払いだけ発生させたことになります。

もう1つ、よくある形があります。

  • 知り合いの紹介で安く作ってもらった
  • その人が本業で忙しくなり、連絡が取れなくなった
  • サーバーもドメインもその人の名義で、こちらから何もできない

金額の問題ではなく、動かせなくなる問題です。誰に頼むかを決めるとき、金額と同じ重さで「連絡が続く相手か」を見てください。ドメインとサーバーの名義がどちらになるかは、契約前に必ず確認すべき点です。

順番が逆になっている会社が、本当に多いです。先に決めるべきは金額ではなく、公開したあと誰がこのサイトを動かすのかです。そこが決まっていない状態で見積書を比べても、比べる意味がありません。

7. 分かれ目は「更新する人がいるかどうか」

ここまでを1つの判断軸にまとめます。

一括払いが向いている会社

読み進める前に、1つだけ先に決めておいてください。公開してから1年間で、サイトを何回直すつもりか。この数字が入るだけで、下の判断はほとんど自動的に決まります。0回なら一括、4回以上なら月額。その間なら、更新の単価で比べる。ここまで単純化して構いません。

  • 社内にサイトを触れる人がいる(または触る気がある)
  • 載せる情報が数年変わらない業種
  • まとまった初期投資を出せる資金余力がある
  • 長く使い倒すつもりがはっきりしている

一括で作るなら、契約前に「更新は誰がやるか」を社内で決めておいてください。ここが決まっていない一括は、上に書いた「動いていないサイト」になります。

月額制が向いている会社

  • 公開後に社内で誰も触れないことが分かっている
  • 料金・実績・お知らせなど、更新が発生する情報を載せる
  • 初期にまとまった額を出すより、月々のコストとして扱いたい
  • まず出してみて、反応を見ながら育てたい

月額制を選ぶなら、最低契約期間と解約後の扱いを必ず文字で確認してください。ここは 「制作費0円」のホームページは、どこで回収されているのか に、確認すべき5つの質問としてまとめてあります。

どちらが正しいという話ではありません。判断の基準は、貴社に更新する人がいるかどうか。そこ1点です。

もし「触れる人はいないが、初期投資はしたい」という場合は、一括で作ったうえで、更新だけ別で契約するという形もあります。総額としては月額制に近づきますが、資産としてサイトが手元に残る点は違います。どの形を選ぶにしても、更新の担い手を空欄のままにしないことが唯一の必須条件です。

8. 雄喜晃の伴走:数字を並べるところから、ご一緒します

私たち雄喜晃のホームページ制作は、作って納品して終わりではありません。月額8,800円(税別)に、サーバー・独自ドメイン・SSL・保守・月5回までの修正更新まで含めています。上の表でいえば、更新の費用が総額に加算されない形です。

一方で、はっきり申し上げておきたいことがあります。5年、10年と同じ内容で使い続ける前提なら、一括で作るほうが総額は安くなります。そういう業種と使い方が確かにあります。そこを隠して月額制を勧めることはしません。

私たちがお役に立てるのは、「サイトは要るけれど、公開したあと社内で誰も触れない」という会社です。公開後にアクセス状況を見ながら一緒に直していく前提で月額をいただいているので、分析や提案だけで終わらせません。

そして、金額の説明より先に実物を見ていただくのがいちばん早いと思っています。ご相談いただいたら、貴社のホームページのサンプルを先に無料でお作りします。見て断っていただいても費用はかかりません。実際にお作りしたサイトは 制作実績 に、料金の内訳は ホームページ制作のページ にまとめてあります。

9. まとめ:金額ではなく、期間と役割で決める

ホームページの費用を判断するために必要なことは、3つです。

  • 同じ期間に並べ直す ― 3年と5年、両方で総額を出す
  • 見積書に出てこない3つを足す ― 保守・更新・作り直し
  • 公開後に誰が動かすかを先に決める ― ここが決まると、形は自動的に決まる

この3つをやると、見積書が2枚あっても迷わなくなります。逆にこれをやらずに金額だけを比べると、安いほうを選んだのに高くついた、という結果になりがちです。

念のためもう一度書いておきます。5年以上、同じ内容のまま使うなら一括のほうが安いです。それが貴社の使い方なら、迷わずそちらを選んでください。月額制が効くのは、更新が発生する会社と、公開後に社内で誰も触れない会社です。

今お手元に見積書があるなら、まず紙に3年と5年の総額を書き出してみてください。それだけで、かなり見え方が変わるはずです。

ぜひ一度、お話を聞かせてください。貴社にとってどの形がいちばん損がないか、数字を並べるところからご一緒します。