1. 「まだ早い」と言われて、そのまま2年が経つ
創業まもない経営者の方とお話していて、こんな言葉をよく聞きます。
「ホームページ、要るとは思ってるんですよ。ただ今は仕事を取るのが先で。作っても誰も見に来ないでしょうし、落ち着いてからでいいかなと」
この判断、半分は正しいと思っています。創業直後にホームページを作っても、検索から人が来ることはまずありません。開設したばかりのサイトが検索結果に出るまでには時間がかかりますし、そもそも社名で検索する人がまだいません。「作れば問い合わせが来る」という期待で作ると、確実に裏切られます。
ですが、ホームページが効くのは検索経由の集客だけではありません。むしろ創業期には、集客以外の3つの場面で効きます。そこを知らないまま「集客に効かないから要らない」と判断してしまうのが、私が現場でいちばんよく見る取りこぼしです。
この記事では、要る場面と要らない場面を、実際の使われ方から分けます。費用の判断そのものは ホームページの費用は、3年で並べないと判断できない にまとめてあります。
2. 創業期にホームページが効く、3つの場面
① 紹介されたあとの「受け皿」
創業期の仕事は、ほぼ紹介から来ます。ここで何が起きているかというと、紹介された相手が、会う前に必ず社名で検索します。そこで何も出てこないと、紹介してくれた人の顔を立てて会ってはくれますが、判断の材料はゼロのまま当日を迎えることになります。
逆に、事業内容と代表の考え方が書かれた1枚があるだけで、初回の商談が「何をしている会社ですか」から始まらなくなります。紹介で回している会社ほど、ここの効き方が大きいです。集客の道具ではなく、紹介の効率を上げる道具として効きます。
紹介してくれる側の立場でも同じです。人に会社を紹介するとき、URLを1本送れるかどうかで紹介のしやすさが変わります。口頭で「知り合いに軽貨物やってる人がいて」と説明するより、「ここです」とリンクを送るほうが早い。紹介してくれる人の手間を減らすことが、紹介の回数を増やします。
創業期の会社にとって、これは集客施策より確実に効きます。既にある紹介の流れを太くするほうが、まだ無い検索流入を待つより早いからです。
② 与信・審査
これは見落とされがちですが、実務でかなり効きます。
- 取引先の与信審査で、会社の実在と事業内容を確認される
- 銀行や信用金庫の融資審査で、事業の中身を見られる
- 大手企業と取引を始めるとき、取引先登録の書類と一緒にURLを求められる
- 補助金・助成金の申請で、事業実態の説明を求められる
いずれも「ホームページが無いと通らない」わけではありません。ただ、あると説明が1回で済み、無いと説明が増える。創業期にいちばん足りないのは時間なので、この差は小さくありません。
実務でよく起きるのは、先方の担当者は前向きなのに、社内の承認プロセスで止まるという形です。担当者は会って話しているので実態を知っていますが、決裁する側は書類しか見ません。そのときに「この会社、サイトも無いのか」という一言が出るだけで、話が一段階遅れます。
これは会社の良し悪しの話ではなく、判断材料が足りない相手が、足りないなりに判断しようとしているというだけのことです。だからこそ、材料を1つ置いておく意味があります。
③ 採用
1人目、2人目を採る段階で効きます。求人媒体に出しても、応募を考える人は必ず社名で検索します。そこで何も出てこない会社に、人は履歴書を送りません。特に、待遇では大手に勝てない中小企業ほど、「どんな考えでやっている会社か」を伝えられるかどうかで差がつきます。
採用にはまだ早い、という段階でも、採用を始める前月に作るのでは間に合いません。サイトは公開してから信頼が付くまでに時間がかかるので、必要になる少し前に置いておくものです。
もう1つ、採用の場面で効くのは求人票に書ききれないことです。求人媒体の枠には、事業の背景も、代表が何を大事にしているかも、入りません。応募を迷っている人が最後に見るのはそこです。募集要項では条件しか伝わらないので、それ以外を置く場所が要るという構図になります。
3. 逆に、まだ要らない場合
必要論だけ書くのはフェアではないので、要らない場合も書きます。次に当てはまるなら、急ぐ必要はありません。
- 仕事が特定の元請け1社から来ていて、そこ以外と取引する予定がない 受け皿の相手がいないなら、優先度は下がります
- 屋号で商売しておらず、個人名の信用だけで回っている 士業や職人の一部はこの形が成立します
- 事業内容がまだ固まっていない ここが動いているうちに作ると、3ヶ月で全部書き直しになります
- 載せる材料が本当に何もない 実績も、写真も、扱う商品も決まっていない段階では、作っても薄い1枚にしかなりません
とくに3つ目は重要です。創業期は事業内容が動きます。動いている最中に作り込むと、作り直しの費用が発生します。方向が定まるまでは、名刺とSNSで凌ぐという判断は合理的です。
ただし、「動いているから作らない」と「動いているから小さく作る」は別です。1ページだけ作って、事業内容が変わったらそこだけ書き直す、という形なら動いている最中でも成立します。避けるべきなのは、10ページの構成をがっちり組んで数十万円を先に払うことです。
4. SNSと名刺で、どこまで代替できるか
「SNSがあるから要らないのでは」という質問もよく受けます。実際にどこまで代替できるか、正直に整理します。
| SNS | ホームページ | |
|---|---|---|
| 存在を知ってもらう | 強い | 弱い |
| 日々の発信 | 強い | 向かない |
| 会社の実在を示す | 弱い | 強い |
| 事業内容を体系的に伝える | 弱い | 強い |
| 与信・審査で使う | 使えない | 使える |
| 情報が流れずに残る | 残らない | 残る |
SNSは知ってもらう場所、ホームページは確かめる場所です。役割が違うので、どちらかで代替する関係にはなりません。
ただし優先順位はあります。発信して人を集めるのが先で、確かめられる場所は後という順序は成立します。逆に、確かめられる場所だけ作って発信をしないと、誰も見に来ないサイトができます。「サイトを作れば集客できる」という誤解の正体はここです。
名刺についても同じで、名刺は会った人にしか渡せません。会っていない人に会社を説明する手段としては、やはりURLが1本要ります。
もう1点、SNSにはアカウントが自分のものではないという性質があります。運営の方針が変われば表示のされ方が変わり、規約に触れれば止まります。実際、アカウントが突然使えなくなって、そこに貯めた発信も連絡先も一度に失った会社を見たことがあります。自社の住所を1つ持っておくのは、そのための保険でもあります。
5. 最初の1枚に、何を載せるか
作ると決めた場合、創業期の1枚に必要なものは多くありません。5つで足ります。
- 何をしている会社か ― 一文で。「〇〇向けに△△をしています」で十分
- 誰がやっているか ― 代表の名前と、なぜこの事業をしているか。創業期はここが最大の差別化要因です
- どんな仕事ができるか ― サービスの一覧。実績が無いうちは「できること」で構いません
- 連絡先 ― 会社名、所在地、メールアドレス、問い合わせフォーム
- 会社の基本情報 ― 設立年月、代表者名、所在地。与信で見られるのはここです
逆に、創業期に無理に載せなくていいものもあります。実績紹介、お客様の声、料金表。まだ材料が無いのに枠だけ作ると、空欄が並んで逆効果です。実績は1件目が出てから足せばいいので、後から追加できる形にしておくほうが大事です。
実績がまだ無いときの見せ方
実績欄を空けておくくらいなら、代わりに置けるものがあります。
- 前職での経験。会社としての実績が無くても、代表個人の経験は事実です。「前職で〇〇を△年」は書けます
- 対応できる範囲を具体的に。「何でもやります」ではなく、扱う品目・対応エリア・受けられる規模を数字で書く
- 進め方。相談から納品までの流れを書くだけで、頼む側の不安がかなり減ります
- 設備や体制。車両の台数、加工できる素材、対応できる時間帯。実績が無くても能力は示せます
実績が無いことを隠す必要はありません。創業したてであることは、探している側にとって必ずしもマイナスではないからです。融通が利く、直接代表と話せる、という利点を求めている会社は確実にあります。書き方次第で、そこは強みとして置けます。
私が現場で見てきた限り、創業期のサイトでいちばん読まれるのは代表の考えを書いた部分です。会社の実績で選べない段階では、人で選ばれるからです。ここだけは、他社の文章を真似せずに自分の言葉で書いてください。
書き方が分からない場合は、「なぜこの事業を選んだか」を、実際にあった出来事から書くのがいちばん早いです。前職で何に困ったのか、誰の役に立てなかったのか、そこから何を思ったのか。抽象的な理念より、具体的な出来事のほうが伝わります。うまい文章である必要はありません。本当にあったことが書いてあるかどうかだけが効きます。
6. お金の掛け方
創業期は資金が限られています。掛け方の原則は1つです。初期に大きく張らず、直せる形にしておく。
理由は3節に書いたとおりで、創業期は事業内容が動くからです。半年後に主力サービスが変わっている可能性が十分にある段階で、作り込んだサイトに数十万円を先に払うのは、投資として筋が悪い。
具体的には、この順で考えます。
- まず1ページ。会社概要と事業内容と連絡先が載った1枚があれば、3節に書いた3つの場面は全部カバーできます
- ページを増やすのは、書くことが増えてから。枠を先に作らない
- 更新できる形にしておく。創業期は情報がいちばん変わる時期なので、直せないサイトは半年で使えなくなります
月額制が創業期と相性がいいのは、この3つ目のためです。初期に大きく出さず、変わり続ける情報を直しながら使える。逆に、内容が固まっていて長く変えない業種なら、一括で作るほうが総額は安くなります。
あわせて、ドメインだけは早めに自社名義で取っておくことをおすすめします。サイトを作るかどうかとは別に、使いたい文字列は先に押さえられていることがあります。年間で数千円程度なので、事業内容が固まる前でも取っておいて損はありません。名義を自社にしておく理由は 月額制のホームページを解約したら、サイトはどうなるのか に書いたとおりです。
7. いつ作るか
タイミングだけまとめます。
今すぐ作ったほうがいい
- 紹介で仕事が来始めている
- 取引先登録や与信で URL を求められたことがある
- 3ヶ月以内に採用を始める
- 補助金や融資の申請を控えている
半年後でいい
- 事業内容がまだ動いている
- 元請け1社との取引だけで回っている
- 載せる材料(写真・実績・サービス内容)がまだ無い
判断の基準は「誰かに会社を説明する場面が、この3ヶ月で発生するか」です。発生するなら要ります。発生しないなら、その分の時間を営業に使ったほうが確実です。
なお、「作る」と「検索で上位に出す」は別の話です。今すぐ作る理由が説明のためなら、検索順位は当面気にしなくて構いません。順位を取りにいくのは、事業内容が固まって、どの言葉で探されたいかが決まってからで十分です。最初から両方を同時に狙うと、費用も時間も一気に膨らみます。創業期は、まず説明の道具として1枚。これで足ります。
8. 雄喜晃の伴走:創業期の会社を、実際にお手伝いしています
私たち雄喜晃自身、2025年10月に創業した会社です。創業期に何が必要で何が要らないかは、他人事ではありません。
実際にお手伝いしている会社にも、法人化して数ヶ月という段階からご一緒しているところがあります。自社サイトが無い状態から、独自ドメインの取得、独自ドメインのメールアドレスの開設、お問い合わせフォーム、アクセス解析と検索エンジンへの登録まで、まとめて引き受けました。創業期は、サイトだけあっても回りません。問い合わせが届く先と、届いたことが分かる仕組みまでが一式です。
一方で、私たちがやらないことも書いておきます。「とりあえず作りましょう」とは申し上げません。事業内容がまだ動いている段階なら、そう申し上げます。作らないほうがいい時期に作るのは、貴社にとっても私たちにとっても損だからです。
「紹介で仕事が来始めたが、会社を説明する場所が無い」という段階の経営者の方には、私たちは間違いなくお役に立てます。ご相談いただいたら、貴社のホームページのサンプルを先に無料でお作りします。見て「まだ早い」と思われたなら、そのままお断りいただいて構いません。費用は一切かかりません。
実際にお作りしたサイトは 制作実績、料金と条件は ホームページ制作のページ に載せてあります。
9. まとめ:集客のためではなく、説明のために持つ
創業期のホームページを判断するために必要なことは、3つです。
- 集客の道具として期待しない ― 創業直後に検索から人は来ません
- 紹介・与信・採用の3場面で要るかを見る ― この3ヶ月で説明する場面があるなら要ります
- 初期に大きく張らず、直せる形にする ― 事業内容が動く時期だからです
この3つで判断すると、「まだ早い」と「もう要る」の線がはっきりします。要らない時期に作らないことも、立派な判断です。
そのうえで、今まさに紹介が回り始めているなら、置いておく価値はあります。会社を説明する場所が1つあるだけで、経営者の時間の使い方が変わります。
創業期にいちばん高い資源は、経営者の時間です。同じ説明を何度もしなくて済むようにすることは、費用の話ではなく時間の話だと考えています。
ぜひ一度、お話を聞かせてください。今の段階で本当に要るかどうかを見極めるところから、ご一緒します。