1. 契約するときには誰も聞かない質問

中小企業の経営者の方とお話していて、こんな言葉をよく聞きます。

「前に月額でホームページを作ってもらってたんですが、やめたらサイトごと消えてしまって。3年分の文章も写真も、全部向こうにあるままなんです」

契約するときに「やめたらどうなりますか」と聞く人は、ほとんどいません。始める話をしているときに終わりの話をするのは、気が引けるからだと思います。ですがこの1問が、月額制でいちばん効く質問です。

月額制のホームページは、毎月払っているのが「サイトの利用料」なのか「サイトの制作費の分割」なのかで、解約時の扱いが正反対になります。前者なら止めれば消えますし、後者なら払い終われば手元に残るのが筋です。そしてほとんどの契約は前者です。

誤解のないように書いておくと、前者が悪いわけではありません。サーバー代もドメイン代も保守も、毎月かかり続ける費用です。それを月額に含めているから安く保てている、という面が確実にあります。問題は、その前提を知らずに「3年払ったのだから自分のものだろう」と思い込んだまま解約してしまうことです。

この記事では、解約時に実際に起きる3つのパターンと、どこを見れば自社の契約がどれなのか分かるのかを整理します。あわせて、乗り換えるときの実務手順まで書きます。

月額の総額そのものについては ホームページの費用は、3年で並べないと判断できない に、0円と書かれた見積もりの読み方は 「制作費0円」のホームページは、どこで回収されているのか にまとめてあります。

2. 解約したときに起きる、3つのパターン

パターン①:サイトが非公開になる(もっとも多い)

サーバー・ドメイン・保守が月額に含まれている形では、支払いが止まると同時にそれらが止まります。ドメインにアクセスしても何も出ない状態になります。制作会社が意地悪をしているわけではなく、費用が発生し続けるものを無償で維持できないという、当たり前の話です。

このパターン自体は不当ではありません。問題は、契約時にそれを知らされていない場合です。

実際に起きるのは、こういう順序です。解約を申し出て、翌月の請求が止まったことに安心する。しばらくして取引先から「ホームページが見られないんですが」と連絡が来る。慌てて確認したら、名刺とパンフレットに刷ったURLが全部つながらなくなっていた。サイトが消えたこと自体より、消えたことに気づくのが遅れることのほうが痛いというのが実務の感覚です。

パターン②:データを渡してもらえる

HTMLや画像の一式を渡してもらい、自社で別のサーバーに載せ直せば公開を続けられる形です。継続期間に応じて渡す、という条件を付けている会社もあります。

ただし注意点があります。渡されたデータをそのまま公開できる人が社内にいるかです。ファイルを受け取っても、サーバーを契約して、ドメインを向けて、SSLを設定して、という作業が残ります。ここを外注すると数万円かかります。

また、渡されるのが「HTMLと画像の一式」なのか「管理画面から書き出したデータ」なのかでも意味が変わります。前者はそのまま別のサーバーに置けば動きますが、後者は同じシステムがないと復元できません。受け取れる形式まで確認して初めて、渡してもらえると言えます。

パターン③:契約は終わったのに、持ち出せない

いちばん厄介なのがこれです。支払いは終わっているのに、サイトを別の場所へ移せない。理由はほぼ次の3つのどれかです。

  • ドメインの名義が制作会社になっている
  • サーバーが制作会社の契約で、こちらにログイン権限がない
  • 制作物の著作権が制作会社に留保されている

金額の条件ばかり見て、この3つを確認しないまま契約するケースが本当に多いです。順に見ていきます。

3. いちばん効くのはドメインの名義

ホームページを引っ越すとき、中身のデータより先に問題になるのがドメインです。example.co.jp という住所そのものが移せなければ、これまでの検索結果も名刺に刷った表記も、全部やり直しになります。

確認の方法

ドメインには「登録者(Registrant)」という名義があります。ここが貴社になっていれば、制作会社を変えても持っていけます。制作会社になっていると、原則として貴社の意思だけでは動かせません。

契約前であれば、こう聞いてください。

「独自ドメインの登録者名義は、弊社と御社のどちらになりますか」

すでに契約中なら、ドメイン管理会社の管理画面にログインできるかどうかで判別できます。IDとパスワードを持っていないなら、名義はほぼ制作会社です。

移すときに必要なもの

他社へ移管するには、移管申請に使う認証コード(AuthCode/Auth Info) と、登録者のメールアドレスに届く承認メールへの返信が要ります。どちらも名義人でないと扱えません。契約が円満でないときほど、ここで止まります。

だからこそ、新しく取るドメインは、可能なかぎり自社名義で取っておいてください。制作会社に取得を任せる場合でも、「名義は弊社で」と一言添えるだけで、将来の選択肢が残ります。

co.jp を使っている場合

.co.jp は、日本国内で登記している会社だけが取れるドメインで、1社につき1つという決まりがあります。登記情報と結びついているぶん信頼性は高いのですが、名義が制作会社になっていると、貴社は他の co.jp を取ることもできません。すでに1つ使われている状態だからです。

.com.jp なら最悪もう1本取り直すという逃げ道がありますが、co.jp にはそれがありません。co.jp を使っている、あるいはこれから取る会社は、名義の確認を最優先にしてください。

4. サーバーと、データの置き場所

ドメインの次に見るのがサーバーです。ここも「誰の契約か」で決まります。

  • 貴社名義のサーバー:解約してもデータは残る。次の会社にそのまま引き継げる
  • 制作会社のサーバーに間借り:解約と同時にアクセスできなくなる可能性がある

月額制のサービスでは、後者がほとんどです。これ自体は合理的で、まとめて管理するから月額が安く保てるという面もあります。問題は、解約時にデータを書き出してもらえるかどうかです。

契約前に確認する言い方は、これで十分です。

「解約する場合、サイトのデータ一式をお渡しいただけますか。渡していただけるとしたら、どの形式ですか」

「HTMLと画像を一式zipで」と答えが返ってくるなら、実務的には持ち出せます。「専用の管理システムで動いているのでお渡しできません」という答えなら、それは移せない形です。その答え自体が悪いわけではなく、そういう前提だと知って契約するかどうかの問題です。

制作会社が自社の管理システム(独自CMS)でサイトを動かしている場合は、原則として持ち出せないと考えてください。見た目を再現することはできても、そのシステムの上でしか動かない作りになっているからです。月額が安い代わりにこの形を取っているサービスは少なくありません。

見分け方は簡単です。「WordPressですか、それとも自社システムですか」と聞く。WordPressや静的なHTMLなら移せます。自社システムなら移せない前提で判断してください。

5. 契約書で見る3つの条項

金額表ではなく、契約書の後ろのほうに答えがあります。見るべきは3箇所です。

① 契約期間・中途解約

最低契約期間が何ヶ月か。期間内にやめたときに違約金があるか。自動更新の有無と、解約を申し出られる時期も一緒に見てください。「更新月の2ヶ月前まで」といった条件だと、実質的にやめられる月が年に1回しかない、ということが起こります。

② 契約終了後の取り扱い

サイトを非公開にするのか、データを渡すのか。ここが書かれていない契約書がかなりあります。書かれていない=渡してもらえない、と考えておくのが安全です。契約前なら、この1文を追記してもらえないか相談する価値があります。

③ 著作権・所有権の帰属

「本件成果物の著作権は乙(制作会社)に帰属する」と書かれていることがあります。この場合、データを受け取っても、それを別の会社が改修して使うことに制限がかかる可能性があります。「甲(発注者)に譲渡する」または「甲は自由に利用できる」と書かれていれば安心です。

3つとも、読むのに5分もかかりません。契約書は金額欄だけ見て署名する書類ではない、というだけの話です。判断に迷う文言があれば、署名の前に弁護士や商工会議所の相談窓口など、利害関係のない第三者に一度見てもらうのが確実です。

なお、契約書そのものが無く、申込フォームと利用規約だけというサービスもあります。その場合は利用規約の「契約の終了」「知的財産権」の項が同じ役割を持ちます。ウェブサイトの下のほうにあるリンクから読めるはずなので、申し込む前に一度開いてください。

6. 実際に乗り換えるときの手順

すでに契約中で、別の形に移りたい場合の順番です。この順番を守らないと、サイトが数日間消えます。

Step 1:解約を申し出る前に、現状を押さえる

ドメインの名義、サーバーの契約者、データの受け渡し可否。この3つを確認します。解約を伝えた後だと相手の対応が変わることがあるので、先に確認してください。

Step 2:データとドメインの移管を先に済ませる

新しいサーバーに新しいサイトを用意し、表示できる状態まで作ります。ドメインの移管申請もこの段階で出します。まだ切り替えません。

Step 3:切り替えて、表示を確認する

ドメインの向き先を新しいサーバーに変更します。反映に数時間かかることがあるので、平日の午前中など、確認できる時間帯に行います。

Step 4:表示を確認してから、旧契約を解約する

新しい側が問題なく見えていることを確認してから、旧契約を止めます。先に解約すると、切り替え作業のあいだサイトが消えます。

このとき、Google Search Console とアクセス解析の設定も一緒に引き継いでください。ここを忘れると、過去のデータが見られなくなります。

よくある事故

  • 旧サイトのURL構成を変えてしまい、検索結果からの流入が全部404になる。ページの住所が変わるなら、旧URLから新URLへの転送(リダイレクト)を必ず設定します
  • メールが止まる。独自ドメインのメールを使っている場合、ドメインの設定を切り替えるとメールも一緒に止まることがあります。ウェブとメールは別の設定なので、両方を確認してから切り替えます
  • SSLが間に合わず「保護されていない通信」と表示される。切り替え直後に起きがちです。表示確認のときは、鍵マークまで見てください

3つとも、慌てて順番を飛ばしたときに起きます。急がないことが、いちばんの対策です。

7. 契約前に聞く、たった1つの質問

長く書きましたが、契約前であれば聞くことは1つで足ります。

「解約したら、このホームページはどうなりますか。ドメインの名義と、データの受け渡しについても教えてください」

これに具体的に、文字で答えてくれる会社なら、条件がどうであれ大きく外しません。逆に「そのときはご相談ください」で流されるようなら、そこが答えです。やめるときの話を、始めるときにきちんとできる会社かどうか。私はそこが、金額よりも信頼に効くと思っています。

8. 雄喜晃の伴走:不利な条件も、先に書いています

私たち雄喜晃の月額制でも、解約したときの条件はあります。隠さず書きます。

  • 最低契約期間は6ヶ月。7ヶ月目以降はいつでも解約でき、違約金はありません
  • 7〜35ヶ月目で解約された場合、サイトは非公開になります。サーバー・ドメイン・保守が月額に含まれているためです
  • 36ヶ月(3年)以上ご継続いただいた場合は、ドメイン代など必要経費のご負担を条件に、サイトをお渡しして公開を続けていただけます。長くご継続いただいた方には、サイトをお持ちいただくのが筋だと考えています
  • お渡しした後の修正・更新は、別途費用をいただくか、お客様ご自身で対応いただく形になります

2つ目は、こちらにとって明らかに不利な条件です。それでも料金ページに書いているのは、契約したあとに知る条件ほど信頼を損なうものはないからです。

そして、私たちがやらないこともはっきりさせておきます。囲い込みのためにドメインを押さえることはしません。独自ドメインの取得もお手伝いしますが、名義は貴社です。解約されるときも、そこで揉める形にはしていません。

「今の制作会社と連絡が取りづらくて、動かせなくなっている」という状態の会社にも、私たちはお役に立てます。まず現状のドメインとサーバーがどうなっているかを一緒に確認するところからです。実際にお作りしたサイトは 制作実績、料金と条件は ホームページ制作のページ にすべて載せてあります。

9. まとめ:やめるときの条件が、始めるときの判断材料になる

月額制のホームページで確認すべきことは、3つです。

  • ドメインの名義が自社かどうか ― ここが押さえられていると、他は全部後回しになる
  • 解約時にデータを渡してもらえるか ― 形式まで含めて文字で確認する
  • 契約書の「契約終了後の取り扱い」と「著作権の帰属」 ― 金額欄ではなく、後ろのほうを読む

この3つが押さえられていれば、月額制は使いやすい形です。押さえずに始めると、やめたい時にやめられない、あるいはやめた瞬間に全部消える、ということが起こります。

すでに契約中の方は、まずドメイン管理会社の管理画面にログインできるか試してみてください。それだけで、自社がどのパターンにいるかが分かります。

そしてもし今、名義も管理画面も相手側にあると分かったなら、慌てて解約を申し出ないでください。先に確認する、先に移す、最後に解約する。この順番だけ守れば、たいていのことは取り返せます。

ぜひ一度、お話を聞かせてください。今の契約がどうなっているかを一緒に読み解くところから、ご一緒します。