1. 「素人が撮った写真しかないんです」

中小企業の経営者の方とお話していて、こんな言葉をよく聞きます。

「写真、うちにあるのは社員がスマホで適当に撮ったやつだけなんですよ。あれをホームページに載せるのは、さすがに恥ずかしいなと思って。かといってカメラマンを呼ぶ予算も無いですし」

この状態の会社は、本当に多いです。そして、写真が揃うのを待っている間に、半年が過ぎます。制作が止まる理由の第1位が写真だという話は 写真が1枚も無い会社の、ホームページの作り方 に書いたとおりで、そこでは「写真が無いまま公開する」という逃げ道を示しました。

この記事は、その先の話です。プロに頼まないまま、社内のスマートフォンで、使える写真を撮る。そのための手順だけを書きます。

先に言っておくと、この記事に機材の話は出てきません。三脚もレフ板も照明も、買わなくて構いません。写真の出来を決めているのは、機材ではなく、撮る前にやったことです。片付けと、時間帯と、枚数。この3つで、素人の写真は「載せられる写真」に変わります。

2. うまく撮れない原因は、腕ではない

社内で撮った写真が使えない理由は、だいたい3つに分かれます。腕の問題は、実はほとんど入っていません。

暗い場所で、暗いまま撮っている

いちばん多い原因です。室内灯だけの事務所や倉庫で撮ると、色が黄色く濁り、細かいところがつぶれます。スマートフォンは暗い場所を自動で明るくしようとしますが、そのぶん画質が荒れます。暗い写真は、あとから明るくしても戻りません。

片付いていない場所を、そのまま撮っている

写っているものが多すぎて、何を見せたいのか伝わらない写真です。段ボール、書類の山、床のコード、日付の古い貼り紙。撮っている本人は見慣れているので目に入りませんが、初めて見る人には、その雑然さのほうが先に目に入ります。

あとから使えない形で撮っている

縦向きだけ、被写体に寄りすぎ、1場面につき1枚だけ。撮った時点では問題無く見えても、サイトにはめ込む段階で使えないことが分かります。そして、そのときにはもう同じ状況を再現できません。

この3つは、どれも技術ではなく段取りの問題です。裏を返せば、段取りを変えるだけで、同じスマートフォンで撮った写真の質が変わります。以下、順番に書きます。

3. 撮る順番を先に決めておく

行き当たりばったりで撮ると、あとで見返したときに「必要なものが撮れていない」という事態になります。撮る前に、この順番を紙に書いておいてください。上から順に、効き方が大きい順です。

① 外観

いちばん最初に撮ります。本当に営業している会社だと分かってもらうための1枚で、これが無いサイトは実在感が出ません。看板、建物、入口が入るように、道路の反対側から撮ります。車や電柱が入っても構いません。むしろ、生活の中にある建物として写っているほうが自然です。

② 入口

外観の次は、入口を近くから1枚。初めて訪ねる人が、どこから入ればいいか分かる写真です。訪問がある業種では、これが地味に効きます。ドアの色、看板の文字、インターホンの位置が分かる程度に寄ります。

③ 中の様子

事務所、店内、工場、倉庫。広さと雰囲気が伝わればよく、きれいである必要はありません。入口から入ったところに立って、部屋の奥に向かって撮ると、広さが伝わりやすくなります。

④ 働いている場面

人が作業している様子です。ここがいちばん、他社と差がつく写真になります。ポーズを取らせず、実際に手を動かしているところを横から撮ります。「撮るから、いつもどおりやってみて」と声をかけて、3分ほど普通に作業してもらうのが早いです。

⑤ 商品や施工物

扱っているもの、作ったもの、仕上がったもの。何ができる会社かを、言葉より早く伝えます。工事業なら施工後、製造業なら製品、小売なら商品。1点ずつ撮るのと、並べて撮るのと、両方あると使い分けられます。

⑥ 人

代表者、スタッフ。優先順位はいちばん最後で構いません。顔写真を載せないと信用されない、ということはありません。抵抗があるなら無理に撮らなくてよい枠です。撮る場合は、必ず本人の了解を取ってください。

この6つのうち、①から③までは1日で撮れます。まず今日、外観だけでも1枚撮る。それだけで、最低限必要な1枚は手元に来ます。

4. いちばん効くのは、光です

撮り方の話に入ります。ここがいちばん結果を変えます。テクニックではなく、いつ、どこに立って撮るかという話です。

明るい時間に、窓の近くで撮る

室内で撮るときは、照明を足すのではなく、明るい時間に窓のそばで撮ってください。午前10時から午後3時くらいの間が安定します。窓から入る光は、蛍光灯やLEDより量が多く、色も自然です。

被写体を窓の近くまで動かせるなら、動かします。商品なら机ごと窓際に寄せる。人なら窓のそばに立ってもらう。被写体を光のあるところへ持っていくのが、いちばん簡単で確実な方法です。

逆光を避ける

窓を背にして人や商品を撮ると、顔もものも暗くつぶれます。これが社内撮影で最も多い失敗です。窓は、自分の後ろに置いてください。撮る人が窓を背負い、被写体に光が当たる向きになります。

外で撮るときも同じで、太陽を背にします。ただし、真夏の正午に真上から強い日が当たると、今度は影が濃く出ます。そういう日は、建物の影のふちなど、直射日光の当たらない明るい場所を選びます。

曇りの日は、外観がきれいに撮れる

これは意外に知られていません。建物の外観は、晴れの日より曇りの日のほうがきれいに撮れます。晴れていると、建物の片面だけが強く光り、反対側が真っ黒になります。曇りの日は空全体が大きな照明のようになるので、影が柔らかく、看板の文字も読めます。

外観の撮り直しを迷っているなら、次の曇りの日の昼に、もう一度だけ撮ってみてください。同じ建物とは思えないくらい印象が変わることがあります。

照明を足すより先に、やること

「暗いから照明を買おうか」と考える前に、次を試してください。順に効きます。

  • カーテンとブラインドを全部開ける。閉まっていることに気づいていない場合が本当に多いです
  • その場所の電気を全部つける。半分だけ点灯している事務所は珍しくありません
  • 撮る時間帯を変える。夕方に撮っていたものを、翌日の昼に撮り直す
  • 被写体を窓際に動かす。場所を変えられるものなら、これがいちばん早いです

この4つで足りないケースは、社内撮影ではほとんどありません。照明機材は、買っても置き場所と使い方で結局使わなくなります。

5. 掃除と片付けは、撮影技術より効く

写真の腕を上げるより、床を片付けるほうが、はるかに早く写真が良くなります。実際に現場でやってもらうと、本人がいちばん驚きます。

撮る前に、写り込むものを見る

カメラを構える前に、画面の中に何が入っているかを一度声に出して確認してください。よく写り込むのは次のものです。

  • 床を這っているコード。延長コード、LANケーブル、充電器。まとめるか、画面の外に出す
  • 積んである段ボールと梱包材。撮る範囲の外に移すだけで、印象が変わります
  • 私物。カバン、飲みかけのペットボトル、上着、傘
  • 他社の名前が入った箱や紙袋。意図せず他社の宣伝になっていることがあります
  • ホワイトボードの書き込み。取引先名や金額が読める状態で写ることがあります

最後の1つは、片付けの話であると同時に情報管理の話です。写真に写った文字は、拡大すれば読めます。顧客名や見積金額が写り込んだ写真をサイトに載せてしまうと、取り返しがつきません。

貼り紙の日付を見る

これは私が現場でよく指摘することです。壁に貼ってある紙の日付が古いと、写真そのものが古く見えます。去年の年末年始の営業案内、期限の切れたキャンペーンのポスター、色あせた掲示物。撮る範囲に入るものは、はがすか差し替えてください。

同じ理由で、卓上カレンダーが写り込む場合も日付に注意します。3年前のカレンダーが写っている写真は、3年前の写真に見えます。

片付けは、撮る範囲だけでいい

全部きれいにする必要はありません。画面に入る範囲だけ片付ければ十分です。事務所全体を掃除しようとすると、それだけで撮影の日が来なくなります。撮る場所を先に決めて、そこだけ15分で整える。これで足ります。

6. 撮り方の、4つの約束

ここからは、撮る瞬間の話です。覚えるのは4つだけです。

横向きで撮る

スマートフォンを横にして撮ってください。これがいちばん忘れられます。ホームページは横長の枠で写真を使う場面が多く、縦の写真は上下を大きく切ることになります。切ると、写したかったものが枠から外れます。

どうしても縦で使いたい場面(人物の全身、細長い建物)もあるので、その場合は縦と横の両方を撮っておくのが確実です。縦だけしか無いと、使いどころが一気に減ります。

寄りすぎない

撮りたいものに近づきすぎると、あとから切り抜けません。少し引いて、周りに余白を残して撮ってください。切り取るのはあとからできますが、写っていない部分を足すことはできません。

目安としては、見せたいものが画面の6割から7割くらい。残りを余白にしておくと、トップの横長にも、一覧の正方形にも、はめ込めます。

同じ場面を3枚撮る

1場面につき、必ず3枚。角度を少しずつ変えて撮ります。少し右から、正面から、少し左から。あるいは、同じ位置で1歩下がって1枚、1歩寄って1枚。

1枚だけだと、あとで「これは使えない」と気づいたときに終わりです。ぶれていた、人が変な顔をしていた、余計なものが写っていた。3枚あれば、そのうち1枚は使えます。撮る手間はほとんど変わりません。

人が写る写真は、顔がはっきり写っていなくてもいい

これは知っておくと気が楽になります。働いている場面の写真は、顔が写っていなくても十分に伝わります。むしろ、顔がはっきり写っていない写真のほうが、載せる側の心理的な負担が小さく、公開後の変更も楽です。

  • 手元だけ。工具を握っている手、書類を指している手、調理している手
  • 後ろ姿。作業台に向かっている背中、現場を歩いている姿
  • 横顔や、少し遠くから。表情が判別できない距離で、動作だけが分かる

スタッフの顔が分かる形で載せる場合は、必ず本人の了解を取ってください。退職後もその写真が残る可能性があることまで伝えておくのが親切です。この点も含めた権利まわりの整理は ホームページの写真と文章、権利はどうなっているか にまとめてあります。

商品を撮るときの下地

商品や小さな製品を撮るときは、下に敷くものを1つ決めておくと、それだけで揃って見えます。

  • 白い紙。A3のコピー用紙かカレンダーの裏。いちばん簡単で、どんな商品にも合います
  • 木の板。まな板でもテーブルの天板でも構いません。食品や手仕事のものと相性がいいです
  • その商品を実際に使う場所。現場、作業台、店の棚。使われ方が伝わります

避けるのは、生活感が背景に入ることです。事務所の机の上に置いて撮ると、後ろに書類やマグカップが写ります。撮る前に、後ろに何があるかを見てください。白い紙を1枚立てかけるだけで、背景は消えます。

図:社内で写真を撮るときの、当日から渡すまでの5段階
段階1 ─ 撮る範囲だけ片付ける

床のコード、段ボール、私物、期限切れの貼り紙を画面の外に出します。全部きれいにする必要はなく、写る範囲だけで十分です。所要は15分ほど。ここを飛ばすと、あとの工程で取り返せません。

片付けずに撮ると、腕を上げても写真は良くなりません
段階2 ─ 明るい時間に、窓を背にして撮る

午前10時から午後3時のあいだ、カーテンを開けて、撮る人が窓を背負います。被写体を光のあるところへ動かすのがいちばん確実です。外観だけは、曇りの日のほうがきれいに撮れます。

段階3 ─ 横向きで、少し引いて、1場面3枚

スマートフォンは横。見せたいものは画面の6割から7割にして、周りに余白を残します。角度を少し変えて3枚。あとから切り抜けますが、写っていないものは足せません。

縦で1枚だけ撮ると、はめ込む段階で使えないと分かります
段階4 ─ その日のうちに選ぶ

撮った直後に、1場面につき1枚を残して、あとは選外にします。時間が経つほど、どれがどの場面か分からなくなります。迷ったら、明るいほうと、余白が多いほうを残します。

段階5 ─ 明るさを少し上げ、縮めて、名前を付けて渡す

明るさを一段上げるだけで十分です。長辺2000ピクセル程度に縮め、ファイル名を内容が分かるものに変えます。撮ったままの大きさで渡すと、ページが重くなります。

読み方:上の段階ほど、写真の出来に効きます。段階1と段階2で、写真の質はほぼ決まります。段階3から5は、撮ったものを使える形にするための作業です。逆に、段階1を飛ばして段階3だけ丁寧にやっても、写真は良くなりません。

7. 撮ってはいけないものと、撮ったあとにやること

最後に、公開前に必ず確認することを2つ書きます。

撮ってはいけないもの

撮影そのものより、載せてしまってから問題になるものです。次のものは、意識して画面から外してください。

  • 他社のロゴや商品名。取引先の名前が入った箱、他社製の機械のロゴ、看板。無断で自社の宣伝に使う形になります
  • 通行人の顔。外観を撮るときに写り込みます。人が途切れるのを待つか、遠景で顔が判別できない距離にします
  • 個人情報が写った書類。机の上の請求書、名簿、宛名の入った封筒。事務所での撮影で最も多い写り込みです
  • 許可の無い他社の商品。取り扱っていない商品を並べて撮ると、扱っているように見えます
  • 他人が撮った写真の再撮影。パンフレットやカタログをスマートフォンで撮って使うのは、権利の面で避けてください

判断に迷ったときの基準は1つです。その写真に、自社以外のものが主役として写っていないか。写っているなら、撮り直すか、その部分を切り取ります。

撮ったあとにやる、3つのこと

撮って終わりにせず、渡す前に3つだけやります。難しい加工は要りません。

  • 明るさを少しだけ上げる。スマートフォンの標準の編集機能で、明るさを一段上げるだけで十分です。彩度やフィルターには触らないでください。実物と色が変わると、商品の写真では困ることになります
  • サイズを縮めてから渡す。最近のスマートフォンの写真は1枚で数MBあります。そのまま載せるとページの表示が遅くなります。長辺2000ピクセル程度に縮めれば、サイトでは十分です
  • ファイル名を分かるものに変えるIMG_4821.jpg のままでは、受け取った側が何の写真か分かりません。外観-正面.jpg作業風景-加工機.jpg のように内容を書きます

2つ目については、画像がページの重さに直結する理由を ホームページが重いと言われたときに、まず見るところ に詳しく書きました。遅いサイトの原因は、ほとんどが画像です。

撮り直しを前提にする

最後に、いちばん大事な考え方です。1回目で完璧を目指さないでください。

初めて撮った写真は、たいてい何かが足りません。それでいいのです。まず今ある写真でサイトを公開して、実際に使われている状態を見ると、「この場所には、もっと引いた写真が要る」ということが具体的に分かります。目的が分かってから撮る2回目は、驚くほど早く終わります。

おすすめは、公開してから3ヶ月後に、もう一度撮る日を決めておくことです。カレンダーに入れておけば、その日は来ます。決めていなければ、来ません。

私が現場で見てきた限り、先に公開してしまった会社のほうが、結局きちんと写真を揃えています。枠が埋まっていない状態が見えていると、撮りたくなるからです。

8. 雄喜晃の伴走:撮った写真を、使える形にするところから

私たち雄喜晃は、お客様が撮った写真を前提にサイトを作ります。「撮影が済んでからご連絡ください」とは申し上げません。手元にあるものでまず1本作り、あとから差し替えていく形にしています。

実際にご一緒するときは、「この場所に、この向きの写真が1枚要ります」という形でお伝えします。「いい写真をください」とは言いません。撮る側にとって、何を撮ればいいか分からないまま撮るのがいちばん難しいからです。撮っていただいた写真の明るさ調整と縮小は、こちらで行います。

一方で、私たちがやらないことも書いておきます。撮影そのものは、本業ではありません。写真の出来が売上に直結する業種、たとえば飲食、美容、宿泊、ブライダルのような業種では、専門のカメラマンに依頼したほうが確実です。そこは正直に申し上げます。私たちがお手伝いできるのは、プロに頼むほどではない場面で、貴社が社内で撮ったものを使える形にすることまでです。

「写真が無いから、まだ動けていない」という状態の経営者の方には、私たちは間違いなくお役に立てます。ご相談いただいたら、今ある素材だけでサンプルを無料でお作りします。見て断っていただいても費用はかかりません。実際にお作りしたサイトは 制作実績、料金と条件は ホームページ制作のページ に載せてあります。

9. まとめ:写真の出来は、撮る前に決まっている

社内のスマートフォンで、使える写真を撮るために必要なことは、4つです。

  • 撮る順番を先に決める ― 外観、入口、中の様子、働く場面、商品、人。上から順に効きます
  • 明るい時間に、窓を背にして撮る ― 照明を足すより、時間帯と立ち位置を変えるほうが早いです
  • 撮る範囲だけ片付ける ― コード、段ボール、古い貼り紙。技術より効きます
  • 横向きで、少し引いて、1場面3枚 ― あとから切り抜ける形にしておきます

この4つを守れば、機材を1つも買わずに、載せられる写真が揃います。きれいな写真が無いことより、公開されていないことのほうが、はるかに損です。

まずは今日、外観を1枚。曇りの日なら、なお良いです。そして3ヶ月後に撮り直す日を、今カレンダーに入れてください。

ぜひ一度、お話を聞かせてください。今ある写真で何ができるかを見るところから、ご一緒します。