1. 「知らなかった」で済まないことが、たまにあります

中小企業の経営者の方とお話していて、こんな言葉をよく聞きます。

「サイトに載っている写真、前にいた担当者がどこかから持ってきたものだと思うんです。今さら確認しようがなくて、そのままになってます」

私が現場で見てきた限り、権利のトラブルは、悪意から起きることがほとんどありません。誰かが盗もうとしたわけではなく、誰も確認しないまま次に進んでしまっただけです。作った人が辞め、頼んだ会社が変わり、確認した記録だけが残らない。それが数年積み重なると、出所の分からない素材だけがサイトに残ります。

先にお伝えしておきますが、私は弁護士ではありません。個別の案件について法律的な判断が必要な場面では、必ず弁護士や専門の窓口にご相談ください。この記事で書くのは、制作の現場で実際に確認している手順と、確認が抜けたときに何が起きるかの整理です。

ホームページにまつわるお金と契約の全体像は 「制作費0円」のホームページは、どこで回収されているのか に書きました。この記事はその隣にある、素材の出所という論点を扱います。

読み終わったときに、「うちのサイトの、どの写真とどの文章を確認すればいいか」が分かる状態を目指します。

2. なぜ、確認が抜けたまま公開されるのか

確認が抜けるのには、はっきりした理由が3つあります。どれも、注意力の問題ではありません。

頼んだ相手が確認していると思っている

制作会社に頼んでいる場合、経営者の方は「プロが確認しているはず」と考えます。制作会社の側は「支給された素材なので、権利はお客様が持っているはず」と考えます。両方がそう思っていると、誰も確認しません

支給素材の扱いは、契約書に一行だけ書いてあることが多い項目です。「支給された素材の権利処理はお客様の責任とします」。その一行に気づかないまま数年経つ、というのが一番よくある形です。

前の担当者が置いていったものが残っている

社内で作った時代のサイトを、そのまま引き継いでリニューアルする。このとき、写真だけは前のサイトから移すことがよくあります。移した瞬間に、出所の記録は完全に消えます。

同じことが、フォルダの中でも起きます。共有サーバーの「素材」フォルダに、誰がどこから入れたのか分からない画像が数百枚ある。そこから選んで使うと、確認する手がかりがありません。

「小さい会社は見られていない」という思い込み

これが一番危ない思い込みです。実際には、画像の出所を機械的に探す仕組みが、いまはごく普通に使われています。会社の規模とは関係なく、公開されているページであれば見つかります。

見つかったあとの連絡は、たいてい書面で来ます。知らなかったという説明は、掲載していた事実そのものを消してくれません。だからこそ、公開する前に確認しておくほうが、圧倒的に安く済みます。

3. 権利は、3つに分けて考える

「著作権が心配」という言い方をしている限り、何を確認すればいいかは決まりません。権利は、確認する相手ごとに3つに分かれます。

分けると、確認する相手が決まる

写真の権利は撮った人に。文章の権利は書いた人に。写っている人の権利は、写っている本人に。相手が違うので、1回の確認で3つとも済ませることはできません。

とくに間違えやすいのが、写真と、写っている人が別々だという点です。カメラマンから「自由に使っていい」と言われていても、写っている従業員の同意が別に要ります。逆に、本人が「載せていいですよ」と言っていても、写真そのものを撮った人の許可がなければ使えない場合があります。

図:ホームページの素材にかかる権利は、3つに分かれます
① 写真の権利
撮った人にあります

シャッターを押した人に権利が生まれます。自社の商品や事務所を撮ってもらった場合でも、費用を払った側に自動で移るわけではありません。使える範囲は契約で決まります。

確認する相手:カメラマン・制作会社
② 文章の権利
書いた人にあります

他社サイトの文章、カタログの説明文、記事の一節。どれも書いた人の権利です。ライターや制作会社に書いてもらった原稿も、使える範囲は契約で決まります。

確認する相手:書いた人・制作会社
③ 写っている人の権利
本人にあります

従業員、お客様、通行人。写真の権利とは別に、写っている本人の同意が要ります。掲載をやめてほしいと言われる可能性が、あとから出てくるのがこの権利です。

確認する相手:写っている本人

この3つは重なります。従業員が写っている写真をカメラマンに撮ってもらった場合、①と③の両方を確認する必要があります。1つ確認したから安心、という形にはなりません。逆に、自社の商品だけを自分で撮った写真は、3つとも自社の中で完結します。

3つとも、時間の流れ方が違う

写真と文章の権利は、契約した時点でほぼ確定します。あとから変わることは、めったにありません。

一方で、写っている人の権利だけは、時間とともに変わります。入社したときは載せていいと言っていた人が、退職後は載せてほしくないと考える。これは態度が変わったのではなく、関係が変わっただけです。だから、この3つ目だけは定期的に見直す必要があります。

4. ネットで拾った画像を使ってはいけない理由

一番多い相談が、これです。順を追って整理します。

検索結果に出てくる画像は「使っていい画像」ではない

検索して出てきた画像は、公開されているだけで、使ってよいという意味ではありません。右クリックで保存できることと、使ってよいことは無関係です。ここは感覚的に混同されやすいところです。

同じ理由で、SNSに上がっている画像も同じ扱いです。誰でも見られる状態になっていることと、転載してよいことは別です。

請求が来るときの、実際の流れ

流れはだいたい決まっています。

  • 画像の出所を探す仕組みが、貴社のページを見つける。人が目視で探しているわけではありません
  • 権利を持っている側から、書面またはメールで連絡が来る。掲載していたページのURLと、掲載期間が特定された状態で届きます
  • 掲載期間に応じた金額の提示がある。正規に契約していた場合の料金を基準にした計算が示されることが多いです
  • 削除しただけでは終わらない。削除は当然として、過去に掲載していた期間の話が残ります

ここで効いてくるのが「いつから載せていたか」です。公開日が古いほど、話は大きくなります。だから、気づいた時点で確認するのが一番安く済みます。

やってしまいがちな4つ

悪気なく起きるものを挙げます。どれも実際によく見ます。

  • Googleマップに出ている写真を、自社サイトに持ってくる。地図上の写真にも撮った人がいます。自社の店舗が写っていても、撮ったのがお客様なら、その方の写真です
  • お客様のSNS投稿を、そのまま実績として転載する。「うちの商品を褒めてくれている」投稿でも、書いたのはお客様です。使う前に一言お願いするだけで済みます
  • 地図の画面をそのまま画像として貼る。アクセスページでよく見ます。地図サービスには、埋め込んで表示する正規の方法が用意されています。そちらを使えば問題になりません
  • フォントの使用条件を確認していない。見出しをデザインした画像を作るとき、パソコンに入っていた書体をそのまま使う。書体には商用利用の条件があるものがあります

4つ目は見落とされがちですが、チラシや看板に展開したときに問題が出やすいところです。ウェブだけなら条件を満たしていても、印刷物では別条件、ということがあります。

写真そのものが手元に無い場合の作り方は 写真が1枚も無い会社の、ホームページの作り方 にまとめました。拾ってくるより、そちらのほうが結果として早いです。

5. フリー素材の「無料」には、条件がついています

素材サイトを使うこと自体は、まったく問題ありません。問題は、条件を読まずに使うことです。

確認する4つの条件

素材サイトごとに規約が違います。見るべきは、この4点です。

  • 商用利用ができるか。個人利用に限る、という素材があります。会社のサイトは商用にあたります
  • クレジット表記が要るか。「撮影者名の記載が必要」という条件のものがあります。書かずに使えば条件違反です
  • 人物が写った写真を、そのまま再配布してよいか。人物写真は制限が厳しめのことが多く、加工の可否も分かれます
  • ロゴやサムネイル、商標に使ってよいか。ロゴへの使用を禁じている素材サイトはかなりあります

このうち、4つ目で事故が起きると影響が長く残ります。ロゴは名刺、封筒、看板、車両にまで展開されるからです。素材写真やイラストをロゴに取り込むのは、避けたほうが無難です。

規約は、ダウンロードした日のものを保存しておく

見落とされがちですが、素材サイトの規約は改定されます。数年後に「この使い方は当時からダメだった」と言われたときに、手元に何もないと説明ができません。

やることは簡単で、素材をダウンロードした日に、規約のページをPDFで保存しておくだけです。素材ファイルと同じフォルダに入れておけば、探す手間もありません。

あわせて、どの素材をどこから取ったかの一覧を作っておくと、担当者が変わっても引き継げます。表計算ソフトで、ファイル名・取得元・取得日・使っている場所の4列があれば十分です。

生成AIで作った画像も、同じ棚に置いて考える

生成AIで作った画像を使う会社も増えました。挿絵や背景として使う分には実務上の問題は少ないのですが、使うサービスごとの利用条件は、素材サイトと同じように確認が要ります。商用利用の可否や、生成した画像の扱いはサービスによって違います。

それとは別に、自社のスタッフや施工事例として置くのは避けてください。これは権利の話というより、見た人に事実と違う印象を与えるという問題です。

6. 撮ってもらった写真は、誰のものか

ここが一番、確認されないまま流れている論点です。

撮影した人に権利があります

費用を払って撮ってもらった写真でも、撮影者に権利が生まれます。お金を払ったから自社のものになる、という単純な話ではありません。実際にどこまで使えるかは、契約や見積書の条件で決まります。

制作会社に「サイト制作一式」で頼んだ場合、写真の使用範囲がサイト内に限られていることがあります。これは制作会社が不親切なのではなく、業界の一般的な形です。カメラマンへの支払いが、使う範囲に応じて変わるためです。

チラシや名刺にも使えるかを、契約時に確認する

だから、確認するのは1点です。

「撮っていただいた写真は、ホームページ以外にも使えますか。チラシ、名刺、会社案内、Googleマップ、SNSでも使いたいのですが」

これを撮影の前に聞いてください。撮影後に聞くと、追加費用の交渉になります。撮影前なら、最初から広い範囲で見積もってもらえます。金額が変わっても、たいていは撮り直すより安いです。

写真は使い回すほど単価が下がります。1回の撮影を、サイト・地図・印刷物・SNSの4箇所で使う前提にしておくと、次の年に困りません。

写っている人の権利(肖像権)

写真の権利とは別に、写っている人の同意が要ります。従業員、お客様、たまたま写り込んだ通行人。

現場での運用は、こうしておくと揉めません。

  • 撮影の日に、写る全員に口頭で説明する。「サイトと会社案内に使います」と、使う場所まで言う
  • 簡単な同意の書面を1枚もらう。名前と日付、使う範囲、掲載をやめてほしいときの連絡先。A4で1枚です
  • 顔を出したくない人には、無理をさせない。手元だけ、後ろ姿だけでも写真としては十分に成立します
  • お客様が写る場合は、その場で必ず確認する。あとから連絡を取るのは、想像よりずっと大変です

お客様の事例を載せるときの許可の取り方は 実績が1件も無い会社の、実績ページの作り方 に詳しく書きました。掲載の許可は、案件が終わった直後がいちばん取りやすいです。

退職した人の写真が、まだ載っていないか

これは、ぜひ今日確認していただきたい点です。スタッフ紹介のページに、すでに辞めた方が載り続けている会社は、かなりあります。

法律的にどうかという以前に、事実と違う情報が公開されているという問題があります。問い合わせてきた人が「この方にお願いしたい」と言ってきたときに、説明が要ります。

そして、退職された方から削除の連絡が来たときに、更新できる人が社内にいないと、対応が何週間も遅れます。これは権利の問題が、そのまま運用の問題につながる典型例です。

対策は仕組みにするのが一番です。退職手続きのチェックリストに「サイトの掲載を確認」の一行を足す。それだけで、この問題はほぼ起きなくなります。

7. 文章の権利と、契約が終わったあとのこと

写真の話が長くなりましたが、文章にも同じ構造があります。

他社サイトの文章を、そのまま真似しない

同業他社のサイトの文章を、言葉を少し変えて使う。これは実際によく起きています。書けないまま締め切りが来て、参考にしているうちに、ほぼ同じになってしまう。

権利の面で問題になるのは当然として、もう1つ、実利の面でも損をします。他社と同じことが書いてあるページは、検索する側から見て読む理由がありません。同じ内容が並んでいれば、先に公開されていたほうが評価されます。後から真似したページが上に行くことは、まずありません。

つまり、真似は権利の問題であると同時に、集客の面でも報われないやり方だということです。書けないときの進め方は ホームページの原稿を、経営者が書かずに済ませる方法 にまとめてあります。

貴社のサイトの文章と写真を、契約が終わったあとも使えるか

月額制のサイトを使っている場合、確認しておくべき点があります。契約が終わったときに、文章と写真のデータを引き渡してもらえるかどうかです。

これは会社によって扱いが違います。データを渡す会社もあれば、渡さない会社もあります。どちらが正しいという話ではなく、契約でどうなっているかがすべてです。

確認する言い方は、これで足ります。

「契約が終わったあと、こちらから提供した写真と文章、それから作っていただいた文章は、別の場所で使えますか。データはいただけますか」

雄喜晃の場合を書いておくと、36ヶ月以上ご利用いただいた場合はサイトそのものを譲渡します。7〜35ヶ月で解約された場合はサイトを非公開にしますが、お預かりした写真と文章はお客様のものなので、お返しします。契約の全体は ホームページ制作のページ に書いてあります。

Step 1(今日):載っているものを一覧にする

ここから、順番の話をします。全部を一度にやろうとすると終わりません。

まず、今のサイトの写真を一覧にしてください。ページごとに、何枚あって、それぞれ出所が分かるか。分かるものに丸、分からないものに三角を付けるだけです。30分で終わります。

Step 2(今月):出所が分からないものを差し替える

三角が付いたものから手を付けます。差し替えの選択肢は3つです。スマートフォンで自分で撮り直す、条件を確認した素材に置き換える、そもそも外して文字と図で持たせる。

急いで判断が要るのは、トップページと、上位に表示されているページの写真だけです。奥のページは順に進めれば足ります。

Step 3(次の契約時):使える範囲を書面に残す

次に撮影を頼むとき、次に制作を頼むとき。使える範囲を見積書か契約書に1行入れてもらってください。「納品物はウェブ・印刷物・SNSで使用可」。この一行があるだけで、数年後の確認が要らなくなります。

ここまでの3つを終えれば、出所が分からない素材は残りません。そして一度整理してしまえば、あとは新しく足すときに確認するだけです。

8. 雄喜晃の伴走:出所が分かる素材だけで作ります

私たち雄喜晃は、お預かりした素材の出所を、必ず確認してから使います。「これはどこから持ってこられたものですか」と伺うのは、疑っているからではありません。数年後に困るのは貴社のほうだからです。

出所が分からない写真については、代わりの案を出します。撮り直せるものはスマートフォンで撮っていただき、撮れないものは文字と図と数字で持たせる。素材が減っても、ページが弱くなるわけではありません。

一方で、私たちがやらないことも書いておきます。法律的な判断はしません。私は弁護士ではないので、「この使い方は法的に問題ありません」という言い方は一切しません。判断が要る場面では、そう申し上げたうえで専門家をご案内します。分析や提案だけで終わらせない代わりに、越えない線ははっきりさせておきます。

そして、すでに起きてしまった件の交渉も、私たちの仕事ではありません。すでに書面が届いているような場面では、まず弁護士にご相談ください。私たちがお役に立てるのは、その手前の段階です。

「サイトに載っている素材の出所が、もう分からない」という会社には、私たちは間違いなくお役に立てます。今の状態のままご相談ください。今あるサイトを一緒に見て、確認すべき箇所を洗い出すところから始めます。実際にお作りしたサイトは 制作実績 に載せてあります。

9. まとめ:確認する相手を、先に決める

権利のトラブルを避けるために必要なことは、3つです。

  • 権利を3つに分ける ― 写真の権利、文章の権利、写っている人の権利。確認する相手がそれぞれ違います
  • 無料にも条件があると考える ― 商用利用、クレジット表記、人物の扱い、ロゴへの使用。この4点だけ見ます
  • 使える範囲を、契約の時点で書面に残す ― 撮影後や解約時に聞くと、交渉になります

この3つを押さえておけば、「知らなかった」で困る場面は、ほとんど無くなります。逆に言えば、確認していないという1点だけが、トラブルの入口です。

まずは今日、サイトのトップページに載っている写真が、どこから来たものかを思い出してみてください。すぐに答えられなければ、そこが最初の確認場所です。

繰り返しになりますが、私は弁護士ではありません。個別の判断が必要な場面では、必ず専門家にご相談ください。

ぜひ一度、お話を聞かせてください。安心して使い続けられる形を、一緒に作っていきましょう。