1. 「補助金が使えるなら作ろうと思って」

中小企業の経営者の方とお話していて、こんな言葉をよく聞きます。

「補助金が出るって聞いたので、それでホームページを作ろうと思ってるんです。申請ってどのくらいかかるものですか」

使える制度は確かにあります。ただ、多くの方が想像しているのと、実際のお金の流れがかなり違います。そこを知らずに進めると、「思っていたのと違った」で止まります。

先に結論を3つ書きます。

  • 交付決定より前に発注すると、その分は対象外になります。思い立った日に発注できません
  • 補助金は後払いです。いったん全額を自分で払い、あとから戻ってきます
  • ホームページの費用だけでは申請が成立しない制度があります。他の経費と組み合わせが要ります

この3つを知ったうえで進めるなら、補助金は十分に使う価値があります。この記事では、申請の前に押さえておくことを、実務の順序で整理します。

なお、具体的な補助率・上限額・締切は年度と枠で変わります。この記事では変わりにくい構造の話を書きます。金額は必ず、その年度の公募要領で確認してください。

費用そのものの考え方は ホームページの費用は、3年で並べないと判断できない にまとめてあります。

2. ホームページに使われる代表的な2つ

小規模事業者持続化補助金

商工会・商工会議所の管轄で、小規模事業者の販路開拓を支援する制度です。ホームページ制作は 「ウェブサイト関連費」 という費目で申請します。

押さえるべき点が2つあります。

  • ウェブサイト関連費だけでは申請できません。他の経費(チラシ、展示会出展、機械装置など)と組み合わせる必要があります
  • この費目には上限があります。補助金として受け取れる額の上限が決まっているため、サイトに数百万円かけても、この費目から出るのは一定額までです

補助率は枠によりますが、通常枠でおおむね3分の2。残りは自己負担です。

数字で見ると、こういう感覚です。ウェブサイト関連費の上限が補助金額で30万円だとすると、補助率3分の2で逆算して、発注額でおよそ45万円ぶんまでがこの費目の枠ということになります。それ以上かけても、超えた分は全額自己負担です。

「補助金があるから、その分いいものを」と発注額を上げても、補助される額は増えません。ここを勘違いすると、想定より持ち出しが増えます。

IT導入補助金

こちらは登録されたIT導入支援事業者が扱うツールを導入するための制度です。ホームページも対象になり得ますが、制作会社が支援事業者として登録されていることが前提になります。

つまり、先に制度を決めてから制作会社を選ぶという順序になります。頼みたい会社が決まっていて、その会社が登録していなければ、この制度は使えません。

もう1つ、IT導入補助金は本来業務効率化のためのITツール導入を支援する制度です。単なる会社案内のサイトは趣旨から外れやすく、予約機能や顧客管理と組み合わせた形のほうが通りやすい傾向があります。ここも制作会社に確認してください。

そのほか

自治体独自の補助金もあります。市区町村単位で、ホームページ制作費の一部を補助する制度を持っているところがあります。金額は小さめですが、要件が緩く、競争率も低いことが多いので、まず地元の商工会議所に聞いてみる価値があります。

3. お金の流れが、思っているのと違う

ここがいちばん誤解されます。補助金は、先にもらえるお金ではありません。

順番はこうです。

  1. 申請する
  2. 交付決定を受ける
  3. 交付決定の後で発注・契約する
  4. 制作が終わる
  5. 全額を自分で支払う
  6. 実績報告を出す
  7. 審査を経て、あとから補助金が入金される

5番と7番の間に、数ヶ月空きます。つまり、100万円のサイトを作って3分の2が補助される制度でも、一度は100万円を自社から出す必要があります。

ここでもう1つ注意があります。支払いは原則として銀行振込で、振込の控えが証拠になります。現金払いや、代表者個人の口座からの支払いは認められないことがあります。法人の口座から、記録が残る形で払う。当たり前のようですが、確認しておく価値はあります。

「補助金があるから今は手元にお金がなくても大丈夫」という考え方だと、ここで詰まります。資金繰りの計画に入れておいてください。

4. 交付決定前に発注してはいけない

もう1つ、実務でいちばん多い失敗がこれです。

交付決定より前に発注・契約・支払いをした分は、補助の対象になりません。制作会社に「先に始めておいてください」と言ってしまうと、その工事は補助の対象から外れます。

これは形式的なルールに見えますが、制度の趣旨として「補助金があるから実施できた」ことを求めているためです。先に始めていたなら、補助金が無くてもできたはずだ、という理屈になります。

実務上こうなります。

  • 申請から交付決定まで、制度によって1〜3ヶ月程度かかります
  • その間、制作は一切始められません
  • 交付決定が出てから発注し、そこから制作期間が乗ります
  • 実績報告の締切までに、公開まで終わっている必要があります

つまり、「来月には公開したい」という案件に補助金は使えません。急ぎなら自費で作る、という判断のほうが合理的です。逆に、半年先を見て動けるなら十分に間に合います。

よくある誤解

  • 「見積もりをもらうのも発注に当たるのでは」 ― 見積もりを取ること自体は問題ありません。申請には見積書が要ります
  • 「相談だけならいいのか」 ― 構いません。契約と支払いが交付決定より後であることが条件です
  • 「不採択だったら見積もりは無駄になるのか」 ― 制作会社は慣れているので、そこは織り込んで動いてくれます。先に「補助金の申請に使う見積もりです」と伝えておくとスムーズです

5. 対象になりにくいもの

費目として認められにくいものも知っておいてください。

  • サーバー代・ドメイン代・保守費などのランニングコスト。制度によっては期間内の分だけ按分で認められることもありますが、原則は対象外と考えるほうが安全です
  • 月額制のサービス。初期費用が発生しないため、そもそも補助の対象になる経費が立ちません。これは制度の欠陥ではなく、補助金が「一時的な投資」を支える仕組みだからです
  • 販路開拓につながらない更新。単なる会社紹介の刷新や、内部向けの改修は、対象外と判断されることがあります
  • 補助事業期間内に公開まで至らなかったもの。作りかけは対象になりません

2つ目は、私たちにとって不利な事実なので、はっきり書いておきます。雄喜晃の月額制のホームページは、これらの補助金とは相性が悪いです。補助金を前提に進めるなら、初期費用型の制作会社に一括で発注するほうが確実です。そこは正直に申し上げます。

6. あとから効いてくる制約

もう1つ、申請時には気にならないのに、あとから効いてくるものがあります。処分制限財産です。

一定額(税抜50万円が目安)以上で作った資産は、一定期間、事務局の承認なしに廃棄・譲渡できません。ホームページの場合、期間はおおむね5年です。

実務でどう効くかというと、

  • 3年後にリニューアルしたくなっても、手続きが要る場合がある
  • 事業を譲渡・売却するときに、サイトの扱いに手続きが挟まる

使えないわけではなく、手続きが要るという話です。ただ、知らずに進めて後から気づくと面倒なので、頭の隅に置いておいてください。

もう1つ。補助金で作ったことを、サイトに明記するよう求められる場合があります。制度によって条件が違うので、公募要領で確認してください。

あわせて、実績報告の書類作成にそれなりの手間がかかります。見積書、発注書、納品書、請求書、振込の控え、公開したサイトの画面。制作会社が慣れているかどうかで、この手間は大きく変わります。申請を考えているなら、契約前に一言聞いてください。

「補助金を使う予定ですが、実績報告に必要な書類はご用意いただけますか」

7. 使うべきか、使わないべきか

判断の目安を書きます。

補助金を使う価値がある場合

  • 半年先を見て動ける。急いでいない
  • サイト以外にも投資予定がある。チラシ、展示会、設備。組み合わせて申請できます
  • まとまった金額を一度出せる。後払いに耐えられる資金がある
  • 書類仕事に付き合ってくれる制作会社がいる

使わないほうが早い場合

  • 3ヶ月以内に公開したい
  • ホームページ以外に使う予定がない(費目の組み合わせが作れない)
  • 立て替えの資金余力がない
  • 申請と報告の手間を割く人がいない

私が現場で見てきた限り、「補助金が使えるかどうか」で作るか作らないかを決めている会社は、たいてい作りません。申請の手続きで止まるからです。逆に「作ると決めていて、使えるなら使う」という順序の会社は、ちゃんと使えています。

もう1つ、申請の実務で効くことを書いておきます。申請書に書くのは、サイトの仕様ではなく事業計画です。「誰に、何を売るために、どう販路を広げるのか」を書きます。ここが具体的なほど通ります。ホームページの機能を細かく書いても評価は上がりません。

そして、この事業計画を書く作業自体に価値があります。誰に何を売るのかを言葉にしないと書けないので、書き上がった時点で、サイトに載せる内容もほぼ決まります。申請を「面倒な手続き」ではなく「整理の機会」として使えると、通っても通らなくても手元に残るものがあります。

順番が逆になっている会社が、本当に多いです。先に決めるのは、補助金ではなく、作るかどうかのほうです。

8. 雄喜晃の伴走:使えないときは、そう申し上げます

私たち雄喜晃のホームページ制作は月額制なので、5節に書いたとおり、これらの補助金とは相性が悪いです。補助金を前提に進めたい場合は、初期費用型で作ってくれる制作会社のほうが確実だと申し上げます。案件を取るために「たぶん使えます」と言うことはしません。

そのうえで、こういうご相談には対応できます。「補助金を使うほどの規模ではないが、何かしら始めたい」という場合です。制作費0円・月額8,800円(税別)なので、そもそも一度に大きなお金を出す必要がありません。後払いを待つ資金繰りも、申請の手間も発生しません。

補助金と月額制は、どちらが優れているという話ではなく、資金の出し方が違うだけです。まとまった投資ができて半年待てるなら補助金、月々の費用として扱いたいなら月額制。そこを一緒に整理するところからで構いません。

「補助金を調べているうちに1年経ってしまった」という状態の会社にも、私たちはお役に立てます。ご相談いただいたら、貴社のホームページのサンプルを先に無料でお作りします。見て断っていただいても費用はかかりません。実際にお作りしたサイトは 制作実績、料金と条件は ホームページ制作のページ に載せてあります。

9. まとめ:金額ではなく、手順とお金の出方で判断する

補助金でホームページを作るかどうかを判断するために必要なことは、3つです。

  • 交付決定の前に発注できない ― 申請から公開まで、半年は見ておく
  • 後払いである ― いったん全額を自社で出す必要があります
  • 月額制やランニングコストは対象になりにくい ― 初期費用型の制作と組み合わせる制度です

この3つを知ったうえでなら、補助金は十分に使う価値があります。知らずに進めると、資金繰りと納期のどちらかで必ず詰まります。

制度の細かい条件は毎年変わります。まずは地元の商工会議所か商工会に相談するのがいちばん早いです。自治体独自の制度も、そこで教えてもらえます。

ぜひ一度、お話を聞かせてください。補助金を使うべき案件かどうかを、正直に見極めるところから、ご一緒します。