1. 実績は増えたのに、そこから話が来ない
中小企業の経営者の方とお話していて、こんな言葉をよく聞きます。
「実績のページ、けっこう溜まってきたんですよ。写真も30件くらい上げてます。でも、そこを見て問い合わせが来た、という感じがぜんぜんしないんですよね」
この状態、実は珍しくありません。実績が無いことより厄介な場合すらあります。数があるのに動かないと、次に何を足せばいいのかが分からなくなるからです。
念のため切り分けておきます。実績が1件も無い状態から始める話は 実績が1件も無い会社の、実績ページの作り方 に書きました。この記事はその続きで、実績が溜まってきた会社が、1件ずつをどう書くかの話です。
そして結論を先に言うと、動かない理由はたいてい1つです。読む人が探しているものが、そこに書かれていない。写真と社名は載っているのに、判断に使える情報が入っていない。だから、見られてはいても、次の行動につながらない。
この記事で書くこと
- 読む人が実績ページで探している4つのこと
- 1件あたりに書く6項目の型
- 写真の使い方と、「結果」の書き方
- お客様の言葉のもらい方と、掲載の許可の取り方
- 件数が増えたときの並べ方と、やってはいけないこと
2. 読む人が探しているのは、4つだけ
実績ページを開いた人が何を見ているか。ここを取り違えると、いくら件数を増やしても効きません。探しているのは、次の4つです。
① うちと似た会社があるか
いちばん強いのがこれです。読む人は、自分と同じくらいの規模、同じような業種、同じくらいの地域で仕事をしている会社を探しています。似ていれば似ているほど、自分に置き換えられるからです。
有名企業の名前が並んでいても、従業員8名の会社の社長は「うちとは違う世界の話だ」と受け取ります。むしろ、規模が離れすぎていると「うちみたいな小さい案件は受けてもらえないのでは」と引かれることさえあります。
② 同じ困りごとを抱えていたか
次がこれです。何を作ったかではなく、何に困っていた人だったか。「ホームページを作りました」ではなく、「紹介で来たお客様に会社を説明する場所が無かった」という状況が書いてあると、同じ状況の人が止まります。
読む人は、成果物の写真ではなく、依頼する前の自分と同じ姿を探しています。ここが書かれていないページは、どれだけ写真が綺麗でも素通りされます。
③ いくらかかったか
金額は、書けるなら書いてください。正確な金額でなくて構いません。「30万円台」「月額の保守込みで年間◯万円ほど」といった幅で十分です。
金額がまったく書かれていないページを見た人は、問い合わせるかどうかの判断を保留します。そして、保留したものはたいてい戻ってきません。幅で書いてあるほうが、問い合わせのハードルは下がります。
④ どれくらいの期間がかかったか
これも同じです。「打ち合わせから公開まで6週間」と書いてあるだけで、読む人は自社の予定に当てはめられます。予定に当てはめられた瞬間に、検討が具体的になります。
4つのうち、いくつ書けていますか
ご自身の実績ページを開いて、直近の1件を見てみてください。この4つのうち、いくつ書いてありますか。多くの場合、書いてあるのは写真と、せいぜい「何を作ったか」だけです。
写真が悪いわけではありません。ただ、写真は4つのどれにも直接は答えていない、ということです。
3. 1件に書く型を、決めてしまう
毎回ゼロから書こうとすると、書ける日と書けない日ができます。型を決めて、埋める形にしてください。6項目です。
| 項目 | 書くこと | 書かないとどうなるか |
|---|---|---|
| ① 依頼主の業種と規模 | 「神戸市内・従業員10名前後の建設業」まで書く。社名が出せなくてもここは書ける | 自分ごとにならない。読む人が自社と重ねられず、そのまま次の会社を見に行く |
| ② 相談されたときの状況 | 依頼前に何に困っていたか。相談時の言葉をそのまま1行入れると効く | 同じ困りごとの人が立ち止まらない。成果物の紹介にしか見えなくなる |
| ③ やったこと | 担当した範囲を箇条書きで3〜5行。やらなかったことも書けるとなお良い | どこまで頼めるのかが分からず、問い合わせで一から聞き直すことになる |
| ④ かかった期間 | 「初回相談から公開まで6週間」。止まった期間があるならその理由も | 読む人が自社の予定に当てはめられない。検討が具体化せず保留になる |
| ⑤ 結果 | 数字が出せるなら数字。出せないなら、社内や現場で起きた変化を事実として | やって良かったのかが伝わらず、作業の記録で終わる |
| ⑥ お客様の言葉 | 短くてよい。話し言葉のまま、直さずに載せるほうが伝わる | こちら側の主張だけになり、第三者の確認が入らない |
6項目のうち、抜けやすいのは①と⑤です。①が抜けると誰にも刺さらず、⑤が抜けると読後に何も残りません。写真と③だけで作られた実績ページが、いちばんよくある形です。
書く順番は、上から順でよい
この6項目を、上から順に埋めていくだけです。慣れれば1件20分で書けます。ゼロから構成を考えないので、書く人が変わっても品質が揃います。
1件は、長くていい
「短くまとめたほうが読まれるのでは」と聞かれますが、実績に関しては逆です。読む人は、自分と似た1件を見つけたら、そこは最後まで読みます。興味のない9件は読み飛ばし、当たった1件だけを熟読する。そういう読まれ方をします。
だから、10件を薄く並べるより、3件を厚く書くほうが効きます。薄い30件は、判断材料が30個分あるのではなく、ゼロ個分です。
1件1ページにする
一覧に写真を並べる形だけだと、検索から個別の事例に入ってくる道がありません。1件を独立したページにしておくと、「建設業 ホームページ 神戸」のような具体的な言葉で探している人が、その1件に直接たどり着きます。実績ページは、信頼の材料であると同時に、検索の入口でもあります。
4. 業種と規模を書かないと、自分ごとにならない
6項目のうち、いちばん軽視されているのが①です。ここを書くかどうかで、同じ実績が別物になります。
社名が出せなくても、ここまでは書ける
守秘義務で社名が出せない案件は多いです。ただ、社名が出せないことと、相手が分からないことは別です。社名を伏せても、ここまでは書けます。
- 地域(神戸市内、兵庫県内、阪神間)
- 業種(建設業、金属加工、社労士事務所)
- 規模(従業員10名前後、年商◯億円規模、事業所2拠点)
- 立場(創業3年目、二代目に代替わりしたばかり)
「神戸市内・従業員10名前後の建設業」。これだけで、読む人は自分と重ねられます。社名が無いことは、ほとんど障害になりません。
規模は、ぼかしすぎない
よくあるのが「中小企業様」という書き方です。これは書いていないのと同じです。従業員3名と従業員150名では、抱えている問題がまったく違います。
「従業員10名前後」まで書いてください。正確である必要はありません。幅を持たせた表現で構わないので、桁が分かるように書く。それだけで、読む人の解像度が変わります。
地域は、思っているより効く
地域名を入れると、読む人は「近いところでやっている会社だ」と受け取ります。訪問や打ち合わせが発生する仕事ほど、これが効きます。
同時に、検索でも効きます。地域名と業種名の組み合わせで探している人は、まさに依頼を検討している段階の人です。入れない理由が特にないなら、入れておいてください。
5. 写真と「結果」を、どう書くか
写真は、完成品より使っている場面
実績写真というと、完成した状態を正面から撮った1枚になりがちです。これは意外と伝わりません。きれいですが、そこに人がいないからです。
効くのは、使っている場面の写真です。現場で作業している様子、納品先で稼働している機械、打ち合わせの卓上。人が写っていると、読む人は自分がその場にいるところを想像します。
ビフォーアフターは、業種を選ぶ
ビフォーアフターが効くのは、変化が目で分かる仕事だけです。外壁塗装、内装、清掃、修理。ここでは強力に効きます。
一方で、変化が目に見えない仕事でビフォーアフターをやると、同じような写真が2枚並ぶだけになります。その場合は、写真より数字や言葉のほうが伝わります。無理に型を合わせないでください。
写真が無いときの代わり
過去の案件で写真を撮っていなかった、というのはよくあります。そのときは、写真の枠を空けたまま公開しないでください。代わりに置けるものがあります。
- 図や手書きの説明(作業の流れを線で描いたもの)
- 使った道具・設備の写真(案件そのものでなくても、仕事の実在が伝わります)
- 数字だけの構成(寸法・点数・期間・金額。製造や加工では写真より効きます)
- 相談時のやりとりの引用(「こう言われて、こう返した」の再現)
写真の準備そのもので制作が止まる話は 写真が1枚も無い会社の、ホームページの作り方 に書きました。
なお、他社サイトの写真や、その案件と関係のない素材写真で埋めるのは避けてください。権利の問題があります。写真と文章の権利関係は ホームページの写真と文章、権利はどうなっているか に整理しました。
「結果」は、数字が出せなくても書ける
⑤の結果は、いちばん書かれていない項目です。理由は単純で、数字が出せないからです。売上が何%増えた、という話はそう簡単には出ません。
ただ、数字以外にも書けることがあります。
- 問い合わせの中身が変わった(「値段だけ聞く電話が減った」)
- 説明の手間が減った(「サイトを見てから来るので、話が早い」)
- 社内で使われるようになった(「営業がサイトを開いて説明している」)
- 採用に効いた(「応募者が事前に見てきた」)
- 紹介がしやすくなった(「取引先にURLを送るだけで済む」)
これらは全部、お客様に聞けば出てきます。そして、数字より具体的な分、読む人には伝わります。「問い合わせが月3件増えました」より、「値段だけ聞く電話が減りました」のほうが、読む人は自分の状況に重ねやすい。
変化が無かったときは、書かない
正直に言えば、目立った変化が出ない案件もあります。そのときは、結果の欄を無理に埋めないでください。それらしいことを書くと、読む人は他の記述まで疑い始めます。結果が書けない案件は、実績ページに載せない。それも1つの判断です。
6. お客様の言葉と、掲載の許可
もらい方は、頼み方で決まる
「感想をください」とだけ頼むと、たいてい「ありがとうございました」の一行が返ってきます。それでは使えません。質問の形にしてください。
聞くとよい3つの質問
- 依頼する前、何にいちばん困っていましたか
- 他にも選択肢があった中で、なぜうちに頼まれましたか
- やってみて、何が変わりましたか
この3つを口頭で聞いて、こちらが書き起こす。紙に書いてもらおうとすると、返ってこないか、当たり障りのない文章になります。話してもらうほうが、確実で、内容も濃くなります。
文章に起こしたら、必ず確認する
こちらで書き起こしたら、文章にしたものをお見せして、これで掲載してよいかを確認してください。言った言葉と、文字にしたものは、印象が変わることがあります。ここを飛ばすと、後で気まずいことになります。
確認のときに、「もっとこう言いたい」と直しが入ることもあります。直してもらった文章のほうが、たいてい良くなります。
掲載の許可は、記録に残す
口頭で「いいですよ」と言われただけだと、担当者が代わったときに揉めます。メール1通で構わないので、文字で残してください。
「先日お話しした事例掲載の件、下記の内容で弊社サイトに掲載させていただきます。社名は伏せ、『神戸市内・従業員10名前後の建設業様』という表記といたします。差し支えありましたらご連絡ください」
この形なら、相手も返信の手間がかかりません。掲載の範囲(社名を出すか、写真を使うか、金額を書くか)を、文面の中で明示するのが大事なところです。
社名が出せない場合の書き方
社名が出せないときは、伏せていることを隠さないほうが自然です。「A社様」より「神戸市内・建設業のお客様(社名非公開)」のほうが、読む人は納得します。
そして、社名が出せない理由を1行添えると、疑われません。「お客様のご意向により社名は伏せています」で十分です。
7. 増えてきたときの並べ方と、手を付ける順番
新しい順に並べない
実績が10件を超えたあたりから、並び順が効いてきます。多くのサイトが新しい順に並べていますが、これは読む人の探し方と合っていません。
読む人は「最近の仕事」を探しているのではなく、「うちと似た仕事」を探しているからです。だから、業種か、困りごとで分けてください。
- 業種で分ける(建設・製造・士業・小売)
- 困りごとで分ける(会社を説明する場所が無い/採用で見られる/古いサイトを直したい)
どちらが良いかは商売によります。相手が自分を業種で認識しているなら業種、困りごとで認識しているなら困りごとです。
20件を超えたら、絞り込みを付ける
件数が20を超えると、一覧を上から見る人はいなくなります。業種や規模で絞り込めるボタンを付けてください。凝った仕組みは要りません。業種名のボタンが横に並んでいるだけで十分です。
同時に、件数が増えたら、古い案件を落とすことも考えてください。5年前の仕事が先頭近くにあると、今の仕事の水準が伝わりません。
やってはいけないこと
3つだけ挙げます。どれも、発覚したときに失うものが大きい類のものです。
- 他社の実績を、自社のもののように載せる。「こういうものが作れます」という意図でも、読む人は自社の実績だと受け取ります
- 許可を取らずに載せる。社名も写真も、掲載してよいかは相手が決めることです
- 盛る。数字を少し大きくする、やっていない範囲を書き足す。1件でも見つかると、他の全部が疑われます
とくに3つ目は、悪意なく起きます。「だいたいこのくらいだったはず」で書いた数字が、実際とずれる。記憶ではなく記録から書く、というだけで防げます。
手を付ける順番
全部を一度にやろうとすると止まります。この順番でどうぞ。
Step 1(今月) ― 直近の3件を、6項目の型で書き直す。新しく作るより、あるものを直すほうが早い
Step 2(翌月) ― 書き直した3件のお客様に、言葉をもらう連絡をする。3件のうち1件返ってくれば上出来です
Step 3(3ヶ月目以降) ― 次に終わる案件から、6項目を埋めるのを仕事の一部にする。終わった日に20分。これが習慣になれば、実績ページは自然に育ちます
8. 雄喜晃の伴走:型は作ります、中身は貴社の言葉で
私たち雄喜晃がサイトをお作りするとき、実績ページは6項目の型を入れた状態でお渡しします。枠だけ用意して「あとはご自由に」とはしません。埋める場所が決まっていないと、書けないまま1年経つからです。
そして、実績が増えたときに足せる形にしておきます。月5回までの更新代行を月額に含めているので、案件が終わるたびに写真と6項目をお送りいただければ、こちらで形にして掲載します。実績ページは、公開時に完成させるものではなく、育てるものです。
一方で、私たちがやらないことも書いておきます。お客様の声を、こちらで作文することはしません。それらしい文章を書くのは難しくありませんが、読む人はだいたい見抜きますし、何より貴社の信用で書くことになるからです。もらえないなら載せない。ご要望があってもお断りしています。
もう1つ。取材して記事にする、という代行もしていません。書き起こしの型はお渡ししますし、質問の作り方はご一緒しますが、お客様に聞きに行くのは貴社です。そこで交わされる会話自体が、次の仕事の材料になるからです。
「実績は溜まっているが、書き方が分からないまま放置している」という会社には、私たちは間違いなくお役に立てます。まずは直近の3件を見せてください。私たち自身の事例は 制作実績 に並べています。料金と条件は ホームページ制作のページ に載せてあります。神戸市北区鈴蘭台から、近隣であれば伺います。
9. まとめ:写真の下に、あと5行
実績ページを次の依頼につなげるために必要なことは、3つです。
- 読む人が探している4つに答える ― 似た会社か、同じ困りごとか、いくらか、どれくらいかかったか
- 1件に書く6項目を型にする ― 業種と規模/状況/やったこと/期間/結果/お客様の言葉
- 並べ方を、新しい順から業種か困りごとに変える ― 20件を超えたら絞り込みを足す
この3つは、新しい案件を待たずに、今あるものだけで始められます。写真は今のままで構いません。その下に、あと5行足すだけです。
私が現場で見てきた限り、実績ページが機能している会社と、していない会社の差は、件数ではありません。1件あたりに何が書いてあるかの差です。30件並べても動かないページと、5件で問い合わせが来るページがあります。
まずは、直近の1件を開いて、業種と規模が書いてあるかを確かめてみてください。書いていなければ、そこから始めるのがいちばん早いです。
ぜひ一度、お話を聞かせてください。今ある実績を、判断材料に変えるところから、ご一緒します。