1. 「まだ古い住所のままですよ、と言われまして」

中小企業の経営者の方とお話していて、こんな言葉をよく聞きます。

「去年の春に移転したんですが、先週お客様から、御社のサイトまだ前の住所ですねと言われて。慌てて見たら、会社概要は直っていたんですけど、フッターと地図が前のままでした」

移転、社名変更、代表交代。会社にとっては大きな出来事ですが、ホームページの側では、直す場所が思った以上に散らばっています。そして厄介なのは、直し忘れたことに自分では気づけない点です。

私が現場で見てきた限り、直し忘れは、必ずと言っていいほど「サイト以外」で見つかります。取引先からの指摘、届かなかった郵便物、地図アプリに出る古い住所。社内で気づくことは、ほとんどありません。毎日見ている画面は、見ているようで読んでいないからです。

この記事では、直す場所を一覧にして、順番を決めます。やることは多いですが、一つひとつは数分で終わります。難しいのは作業ではなく、抜けを作らないことです。

ドメインやメールまわりが絡む話は ドメインやサーバーの更新を忘れて、サイトが止まったとき に、地図側の情報については Googleマップとホームページ、どちらを先に整えるか にまとめてあります。

2. なぜ、直し忘れるのか

作業を始める前に、抜けが生まれる仕組みを共有させてください。ここを分かっていると、確認する場所が自然に決まります。

「会社の情報」が1箇所にまとまっていない

多くのサイトでは、住所や電話番号が複数のページに、別々に書かれています。会社概要に1回、お問い合わせページに1回、フッターに1回、プライバシーポリシーに1回。作ったときには自然な流れでも、直すときは全部を回らないといけません。

制作会社が丁寧に作っている場合、フッターだけは1箇所を直せば全ページに反映される作りになっています。ただ、それ以外は個別に書かれているのが普通です。

直す人と、変更を知っている人が違う

移転の意思決定をするのは経営者で、サイトを直すのは制作会社か、社内の担当者です。「サイトも直しておいて」の一言で伝わったつもりになるところに、抜けの入り口があります。

伝えるときに「住所が変わりました」だけだと、住所しか直りません。電話番号もFAXも変わっていることが、伝わっていないことがあります。移転で番号が変わる場合はとくに注意が要ります。

見えているのに、読んでいない

毎日開いている自社のサイトほど、細かい文字は読まなくなります。フッターの小さな住所、プライバシーポリシーの末尾の事業者名。表示されているのに、目が滑って通り過ぎます

だからこそ、自分で見て回るのではなく、一覧を作って上から潰すという進め方をお勧めしています。記憶に頼らないための手順です。

3. サイトの中で直す場所の一覧

まず、サイト内で直す場所を並べます。全部で10箇所前後です。上から順に確認してください。

表:会社の情報が変わったときに、サイト内で直す場所
場所直すもの見落としやすい理由
トップの帯・ヘッダー電話番号、住所の短縮表記、社名ロゴ画像で作られていることが多く、文字として直せない
会社概要ページ商号、所在地、電話、設立、代表者名、資本金ここは大体直る。直ったことで安心してしまう
お問い合わせページ住所、電話、受付時間、送信先メールアドレスフォームの送信先設定は画面に出ないので気づけない
フッター(全ページ共通)社名、住所、電話、コピーライト表記小さい文字で、毎日見ているのに読んでいない
地図の埋め込みGoogleマップのピン位置、拡大率住所の文字だけ直して、地図の埋め込みが前のまま残る
プライバシーポリシー事業者名、連絡先、個人情報の問い合わせ窓口公開時に一度書いたきり、誰も開いていない
特定商取引法に基づく表記販売業者名、代表者名、所在地、電話番号通販機能がある会社だけの項目で、存在を忘れがち
画像に焼き込んだ文字バナー、地図画像、案内図、店頭写真の看板サイト内検索でも見つからず、目で見るしかない
PDFの会社案内・資料会社案内、料金表、パンフレット、申込書ダウンロード用に置いたまま、更新の対象から外れている
メールの署名・自動返信文フォーム送信後の自動返信、担当者の署名送信した人にしか見えないので、社内で気づけない

読み方は上から順です。上の4つは目に付きやすく、たいてい直ります。抜けるのは、地図の埋め込みより下の6つです。とくに画像の中の文字とPDFは、ページを開いても文字として認識されないので、探しても出てきません。この6つを紙に書き出してから作業を始めると、抜けが減ります。

フォームの送信先は、必ず自分でテストする

表の中で一つだけ、画面から確認できない項目があります。お問い合わせフォームの送信先メールアドレスです。

社名変更でドメインを変えた場合、フォームの送信先が古いアドレスのままだと、送信は成功するのに、誰にも届きません。訪問者の画面には「送信しました」と出るので、相手も気づきません。これがいちばん実害の大きい抜けです。

直す順番は、上から3つを最優先に

全部を一度に直せない場合は、トップの帯/会社概要/お問い合わせページの3つを先に直してください。訪問者が実際に見る場所であり、実害が出る場所でもあります。残りは同じ週のうちに片付ければ十分です。

4. 画像とPDFの中の文字は、探しても見つからない

ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。

サイト内検索でも grep でも出てこない

古い住所が残っていないかを調べるとき、サイト内を検索するのは有効な方法です。制作会社に頼めば、ファイル全体を横断して文字列を探す(grep)こともできます。

ただし、この方法で見つかるのは、文字として書かれている箇所だけです。画像の中に描かれた文字は、コンピュータから見れば絵の一部でしかありません。どれだけ検索しても、1件もヒットしません

同じことがPDFにも言えます。紙の資料をスキャンして作ったPDFは、中身が画像なので検索に引っかかりません。

画像に焼き込まれやすいもの

実際に古い情報が残りやすいのは、次のような場所です。

  • トップページの大きなバナー ― 「○○市○○町に移転しました」という以前のお知らせ
  • アクセス案内の地図画像 ― 手描き風の案内図を画像で作っているケース
  • 店頭や事務所の外観写真 ― 看板に旧社名や旧電話番号が写り込んでいる
  • チラシをそのまま載せた画像 ― 電話番号と住所が入っている
  • 求人ページのバナー ― 勤務地が旧住所のまま

目で1ページずつ見るしかない

対処法は一つしかありません。全ページを開いて、目で見ることです。

やり方を具体的に書きます。サイトの全ページを一覧にして、上から順に開き、画像だけを見ていく。文章は読まなくて構いません。写真、バナー、図。そこに文字が入っていたら、内容を確認する。ページ数が20程度なら、1時間かかりません。

このとき、印刷して赤ペンで囲むのがいちばん確実です。画面上で見ると、やはり目が滑ります。紙に出して、旧情報を丸で囲んで、そのまま制作会社に渡せば作業の指示書になります。

5. サイトの外で直す場所

サイトを直し終えても、まだ半分です。取引先が見ているのは、貴社のサイトだけではありません

検索で先に出てくる場所を、先に直す

会社名で検索したとき、自社サイトより上に別のページが出ることがあります。そこが古いままだと、サイトを直した意味が薄れます。

  • Googleビジネスプロフィール(Googleマップの店舗情報) ― 住所、電話、社名。地図アプリの案内はここを見ています
  • 各種の登録サイト ― 業界団体の会員名簿、商工会議所、求人媒体、ポータルサイト、比較サイト
  • SNSのプロフィール ― X、Instagram、Facebook、LINE公式アカウントの説明欄とリンク先

Googleビジネスプロフィールは、移転のときにいちばん実害が出る場所です。ここが古いままだと、お客様が旧住所に到着してしまいます。地図側の整え方は Googleマップとホームページ、どちらを先に整えるか に書きました。

紙と帳票も、同じタイミングで

  • 名刺 ― 在庫が残っていても、切り替え日以降は新しいものを使う
  • 封筒・伝票・領収書 ― 印刷済みの在庫をどう扱うか決めておく
  • チラシ・パンフレット ― 配布中のものは回収するか、訂正シールを貼るか
  • 請求書のひな形 ― Excelやシステムの雛形に、旧社名・旧住所が残っていないか
  • 会計・受発注システムの自社情報 ― 出力される帳票に反映されます

請求書のひな形は、取引先の経理に直接届くものなので、間違いが目立ちます。切り替え日の前に必ず確認してください。

一覧を作って、担当を1人決める

サイトの外は範囲が広いので、表にして担当者名を書くのが結局いちばん早いです。項目/担当/期限/完了の4列で足ります。

ここを「気づいた人が直す」にすると、必ず抜けます。更新が続く会社と止まる会社の差は、熱意ではなく仕組みの差です。その考え方は 更新を続けられる会社と、止まる会社の違い に詳しく書きました。

6. 移転・社名変更・代表交代、それぞれの追加分

ここまでは3つに共通する話です。ここからは、場面ごとに追加で出てくることを整理します。

移転のとき:旧住所からの案内をいつまで残すか

移転の場合、新しい住所に差し替えて終わり、にはしないほうがいい場面があります。

古い名刺やチラシを見て、旧住所に来てしまう方がいるからです。会社概要か、アクセスのページに「○年○月○日に移転しました。旧住所は○○です」と1行残しておくと、検索でたどり着いた人が迷いません。

残す期間の目安は、1年程度と考えています。名刺やパンフレットが一巡するのに、それくらいはかかるためです。1年経ったら消して構いません。

移転のとき:新旧の地図と、お知らせ1本

移転から数ヶ月は、旧住所と新住所の両方を地図で示すと親切です。とくに近距離の移転で、以前の場所を知っている取引先が多い場合は効きます。

あわせて、お知らせを1本出してください。「移転のお知らせ」というタイトルで、移転日、新住所、新しい電話番号、地図、営業開始日を書く。これがあると、取引先に案内するときにURLを送るだけで済みます。同じ内容を何十回もメールで説明する手間が消えます

社名変更のとき:ドメインを変えるかどうか

社名が変わると、ドメインも変えたくなります。ここは慎重に判断してください。

ドメインを変えると、検索での評価を積み上げ直すことになり、名刺もメールアドレスも全部変わります。社名とドメインが完全に一致していなくても、実務上の不都合はほとんどありません。判断の目安は次の2つです。

  • 旧社名が、新しい事業と明らかに食い違っている ― 変える価値があります
  • 単に表記が変わっただけ、法人格が変わっただけ ― 変えないほうが軽く済みます

社名変更のとき:変えるなら、転送と並行運用

ドメインを変えると決めた場合、次の2つを必ず用意してください。

① 旧ドメインからの転送を、最低1年。旧ドメインを解約せずに保持し、旧URLにアクセスした人を新URLへ自動で転送します。これがないと、名刺やメールに残った旧URLがすべて行き止まりになります。転送の設定は制作会社に「301リダイレクトをページ単位で設定してください」と伝えれば通じます。

② メールアドレスも並行運用。新旧の両方でメールを受け取れる状態を、こちらも1年程度は保ってください。サイトが見られなくなるより、メールが届かなくなるほうが実害は大きいです。

社名変更のとき:検索結果に旧社名が残る期間

社名を変えても、検索結果にはしばらく旧社名が表示されます。検索エンジンが情報を集め直すまでに時間がかかるためで、故障ではありません。

一般に言われている目安では数週間から数ヶ月ですが、サイトの規模や更新の頻度で変わります。焦って何度も直すより、新社名で1本お知らせを出し、その後は通常どおり更新を続けるのが結局いちばん早いです。取引先には、当面は旧社名で検索されることを前提に、旧社名も併記しておくと親切です。

代表交代のとき:挨拶文と、名前の入った表記

代表が交代した場合、直す場所は移転より少ないですが、残っていると目立ちます

  • 代表挨拶のページ ― 文章と署名。前任者の言葉が残っていると、いちばん気づかれます
  • 代表者名の入った表記 ― 会社概要、プライバシーポリシー、特定商取引法の表記
  • 代表の写真 ― 挨拶ページ、採用ページ、実績紹介の中の写真

代表交代のとき:前任者をどう扱うかを先に決める

前任者が会長として残るのか、完全に退くのか。扱いを先に決めてから作業に入ってください。決めずに始めると、ページごとに扱いがばらつきます。

写真については、退任した方の写真が残っていないかを全ページで確認してください。採用ページや実績ページの集合写真に写っていることがあります。ここは画像なので、やはり目で見るしかありません。

7. 切り替えの順番と、直したあとの確認方法

最後に、進め方を時系列で整理します。

Step 1:登記の前に出さない

いちばん大事な原則です。登記が完了する前に、サイトで新しい情報を公開しないでください

移転日や商号変更の日は、登記の手続きによって前後することがあります。先に公開してしまうと、まだ効力のない情報が外に出ている状態になります。取引先が新住所に郵便を送って戻ってくる、といったことも起きます。

Step 2:切り替え日を決めて、一斉に

準備は前もって進めて構いませんが、公開は日付を決めて一斉に行います

  • サイトの修正は、事前に作業しておいて公開だけ当日に
  • Googleビジネスプロフィールの変更も同じ日に
  • SNSのプロフィールも同じ日に
  • 取引先への案内メールも同じ日に

バラバラに直すと、どこかで新旧が混在します。混在している期間があると、取引先はどちらが正しいのか分からなくなります。日付を1つ決めてしまうのが、結局いちばん手間が少ないです。

Step 3:旧情報でサイト内を検索する

切り替えの翌日に、確認作業をします。3つやってください。

① サイト内を旧情報で検索する。旧住所の町名、旧社名、旧電話番号の下4桁。この3つで検索して、1件も出なければ文字としての残りはありません。制作会社に頼めば、ファイル全体を横断して調べてもらえます。

② Googleで「旧社名 サイト名」で調べる。検索結果に旧社名が残っている場所が見つかります。自社サイト以外の、登録サイトやポータルの抜けはここで出てきます。社名だけでなく、旧住所の町名でも検索してみてください

③ 問い合わせフォームから、自分でテスト送信する。実際に1件送って、届くことを確かめます。自動返信のメールが来る設定なら、その文面に旧社名が残っていないかも同時に確認できます。この3つ目を飛ばす会社が多いのですが、実害がいちばん大きいのはここです。

Step 4:1ヶ月後に、もう一度見る

切り替えから1ヶ月ほど経ったら、もう一度全ページを目で見てください。この時期になると、直後には気づかなかった画像の中の文字が見つかります。頭が冷えているぶん、初回より見つかります。

あわせて、取引先から「まだ古いままですよ」と言われた箇所は、必ず記録しておくこと。それが、次に何かが変わったときのチェックリストになります。

8. 雄喜晃の伴走:抜けやすい場所を、一緒に潰します

私たち雄喜晃には、「移転したので直してほしい」というご相談も来ます。まずやるのは、直す場所の一覧を一緒に作ることです。サイトの中と外を並べて、担当と期限を書いて、切り替え日を決める。作業そのものより、抜けを作らない設計のほうが大事だと考えています。

私たちがお作りしたサイトであれば、住所・電話・社名の変更は月5回までの更新代行の範囲で対応します。制作費は0円、月額8,800円(税別)にサーバー・独自ドメイン・SSL・保守を含めていますので、変更のたびに別途お見積もりを出すことはありません。あわせて、画像の中に社名や住所を焼き込まない作り方をしています。次に何かが変わったときに、直せない箇所を残さないためです。

一方で、しないことも書いておきます。登記や商業登記の手続きそのものは、私たちの業務ではありません。司法書士の先生の領域ですので、そちらにお願いしてください。私たちが扱うのは、登記が済んだあとの表示の話だけです。また、移転を機にサイトの作り直しをお勧めすることもしません。住所と地図を直せば済む話に、制作費をいただく理由がないからです。変更を口実に商談を広げるのは、私たちのやり方ではありません

「移転することは決まっているが、サイトのどこを直せばいいか分からない」という会社には、私たちは間違いなくお役に立てます。切り替え日の前に一度、一覧を並べるところからで構いません。実際にお作りしたサイトは 制作実績 に、料金と条件は ホームページ制作のページ に載せてあります。

9. まとめ:一覧を作って、日付を決めて、確かめる

移転・社名変更・代表交代のときにやることは、3つです。

  • 直す場所を一覧にする ― サイトの中で10箇所、外で7箇所前後。記憶ではなく紙で管理する
  • 画像とPDFは、目で1ページずつ見る ― 検索では絶対に見つかりません
  • 切り替え日を1つ決めて、一斉に出す ― 登記の前には出さない。新旧の混在を作らない

この3つを押さえれば、直し忘れはほとんど無くなります。逆に、「気づいた人が直す」で進めると、必ずどこかに旧情報が残ります。そして残った箇所は、取引先からの指摘で見つかります。

直したあとは、旧情報でサイト内を検索し、Googleで旧社名を調べ、問い合わせフォームから自分でテスト送信してください。この3つで、実害のある抜けはほぼ拾えます。

まずは今、自社のサイトのフッターを見て、そこに書かれている住所と電話番号が今の情報かどうかを確かめてみてください。移転していない会社でも、電話番号が変わっていることは意外とあります。

ぜひ一度、お話を聞かせてください。直す場所の一覧を、一緒に作るところからご一緒します。