1. 「自分で作れそうなんですけど」

中小企業の経営者の方とお話していて、こんな言葉をよく聞きます。

「今って自分で作れるツールがあるじゃないですか。月千円くらいで。あれで十分な気もするんですよね」

十分な場合はあります。自作を止める気はまったくありません。実際、そのほうが合っている会社を何社も見てきました。

ただ、判断の基準が「ツールが安いかどうか」になっていると、たいてい外します。自作の本当のコストは、ツール代ではなく、作る時間と、作った後に触り続ける手間だからです。ここを見ないまま始めると、8割方は途中で止まります。

この記事では、自作が向く会社と向かない会社を分けます。そして、途中でやめたときに何が残るのかも書きます。そこを知ってから始めれば、自作は十分に良い選択です。

先に立場を書いておきます。私たちは制作を請ける側なので、本来なら「頼んでください」と言うのが自然です。それでも自作を勧める場合があるのは、合わない会社に月額をいただいても続かないからです。判断の材料だけ出すので、決めるのは木戸さん側でお願いします、という記事です。

費用の比べ方そのものは ホームページの費用は、3年で並べないと判断できない にまとめてあります。

2. 自作で本当にかかるもの

ツールの月額は、たしかに数百円から数千円です。かかるのはそこではありません。

  • 最初に作る時間。慣れていない人が、事業内容を整理して、文章を書いて、画像を入れて、形にする。実務では20〜50時間です。1日2時間取れても1ヶ月かかります
  • 決める時間。どのテンプレートにするか、どの色にするか、どういう構成にするか。手が止まるのはここです
  • 公開後に直す時間。料金が変わった、実績が増えた。都度自分で入ります
  • 調べる時間。独自ドメインの繋ぎ方、SSL、フォームの設定、検索エンジンへの登録

経営者の時間を時給に換算すると、20〜50時間はそれなりの金額になります。制作費30万円と比べて安いかどうかは、そこを入れて計算してください。

もう1つ、見えにくいコストがあります。やり直しの時間です。テンプレートを選んで進めたあとに「思っていたのと違う」となって、別のテンプレートで作り直す。この往復が2回入るだけで、時間は倍になります。慣れていないと、往復は必ず起きます。

そして時間より効くのが、優先順位です。目の前の仕事がある中で、この作業に毎週数時間を割り当て続けられるか。「時間ができたらやります」は、来ません。これは能力ではなく、構造の話です。

3. 自作が向いている会社

次に当てはまるなら、自作は良い選択です。

  • 社内に、作業が好きな人がいる。「触るのが苦じゃない」人が1人いれば成立します
  • 時間の融通が利く。繁忙期がはっきりしていて、閑散期にまとめて作れる
  • 載せる情報が少ない。1〜3ページで足りる
  • まず出してみて、反応を見たい段階。創業直後や、新規事業の立ち上げ
  • 予算を極力かけたくない、明確な理由がある

とくに4番目は理にかなっています。方向が固まっていない段階で数十万円かけるより、自分で作って様子を見るほうが合理的です。固まってから作り直せばいい。

もう1つ、自作したことで得られるものもあります。実際に作ってみると、何を載せるべきかが分かるようになります。あとで外に頼むときに、指示が具体的になる。自作は、依頼の練習にもなります。

そして意外に効くのが、更新の速さです。自分で触れる人がいる会社は、思いついたその日に直せます。制作会社を挟むと、どんなに早くても数日かかる。情報が頻繁に変わる商売なら、自作の機動力は大きな利点です。

4. 自作が向いていない会社

逆に、次に当てはまるなら、自作はおすすめしません。

  • 経営者が1人でやろうとしている。いちばん時間の無い人が担当になる形は、まず終わりません
  • すでに仕事が回っていて忙しい。優先順位が上がりません
  • 載せる情報が多い。ページ数が増えるほど、作業量は急に増えます
  • 文章を書くのが苦手だと自覚している。テンプレートは埋まっても、中身で止まります
  • 公開の期限がある。展示会、採用、補助金の申請。期限があるものを自作でやると、間に合いません

私が現場で見てきた限り、止まるのはデザインではなく文章です。ツールはきれいな枠を用意してくれますが、そこに入れる言葉は出てきません。原稿で止まるという話は ホームページの原稿を、経営者が書かずに済ませる方法 に詳しく書きました。

もう1つ、自作でつまずきやすいのが技術的な最後の1割です。作るところまでは進んでも、独自ドメインを繋ぐ、SSLを有効にする、フォームの通知先を設定する、検索エンジンに登録する。この最後の1割で止まって、公開されないまま置かれているサイトを何度も見ています。

ここは調べれば分かる作業ですが、調べる時間が確保できるかどうかがすべてです。作るのが好きな人でも、ここは面倒に感じる領域です。

5. 途中でやめたら、何が残るか

ここは知っておいてください。自作を始めて途中でやめた場合、残るのはたいてい何もありません。

  • 作りかけのページは公開されないので、誰の目にも触れない
  • 書きかけの文章は、ツールの中にあって取り出しにくい
  • 数ヶ月分のツール代だけが出ている

この状態がいちばん多いというのが、正直なところです。悪いのは本人ではなく、「いつでもやめられる」という設計そのものです。締切も相手もいないので、後回しにする理由がいくらでもある。

対策は2つあります。

  • 期限を切る。「今月末に、できている分だけ公開する」と決める。完璧を目指さない
  • 相手を作る。社内で誰かと組む、あるいは外に頼む。進捗を聞かれる相手がいると、進みます

制作会社に頼むことの価値の半分は、実は締切と相手ができることだと思っています。技術の話ではありません。

もう1つ、外に頼むと「決めなくていい」という利点があります。テンプレートも配色も構成も、選択肢を全部見せられると人は決められません。プロが2案に絞って持ってくるほうが、早く決まります。自作でいちばん時間を食うのは、作業ではなく決断だからです。

6. 自作するなら、ここだけ外さない

自作すると決めた場合に、後で困らないための最低限を書きます。

  • 独自ドメインを、自社名義で取る。ツールが用意する 〇〇.example.com のようなURLのままにしない。後で乗り換えるとき、それがそのまま資産になります
  • SSL(https)を必ず有効にする。ほとんどのツールは無料で対応しています
  • アクセス解析とサーチコンソールを入れる。入れておかないと、後から過去のデータは作れません
  • フォームを1件送って、受信を確認する。届いていない状態で放置されているのを本当によく見ます
  • テンプレートの見本文を全部消す。「ここにテキストが入ります」が残っているサイトが実在します

5つ目は笑い話ではありません。公開前に、全ページを最後まで読んでください。とくにフッターや、使っていないページに残ります。

そして、スマートフォンで確認してください。ツールの編集画面はパソコンなので、スマホでの見え方は別に確かめる必要があります。ここは スマートフォンで見たときに、人が離れる7つのこと にまとめました。

自作でよくある、もったいない状態

  • 会社名で検索しても出てこない。サーチコンソールに登録していないと、認識されるまで時間がかかります
  • 料金がどこにも書いていない。書きにくい気持ちは分かりますが、無いと問い合わせが減ります
  • 問い合わせの手段がフォーム1つだけ。電話とメールも並べてください
  • 写真が大きすぎて表示が遅い。ツール側で自動圧縮されないこともあります

どれも作り直さずに直せます。公開してから1つずつで構いません。

7. 自作から、頼む形に乗り換えるとき

自作したものが手狭になって、外に頼むという流れもよくあります。そのときに困らないよう、押さえておくことです。

  • ドメインが自社名義なら、そのまま持っていけます。ここが最大の分かれ目です
  • 文章は流用できます。すでに書いたものは、そのまま次で使えます。無駄になりません
  • デザインとページの中身は、移せないことが多い。ツール独自の形式で保存されているためです
  • 検索の評価は、URLを揃えれば引き継げます。同じドメインで、同じURL構成にすれば大きく落ちません

逆に、ドメインがツール側のもの(〇〇.example.com)だと、ここが全部リセットされます。積み上げた検索の評価も、名刺に刷ったURLも、全部作り直しです。自作を始めるときにドメインだけ自社で取っておく理由は、ここにあります。年間数千円の保険としては、破格に安いと思います。

つまり、自作の期間は無駄になりません。ドメインと文章という、いちばん時間のかかる部分が手元に残るからです。まず自作して、回り始めたら頼むという順番は、十分に合理的な進め方です。

8. 雄喜晃の伴走:自作で足りるなら、そう申し上げます

私たち雄喜晃にご相談いただいたとき、自作で足りると判断したら、そう申し上げます。1ページで足りて、社内に触れる人がいて、期限も無い。その条件なら、月額をいただく理由がありません。

そのうえで、私たちがお役に立てるのは「作る時間が取れない」「文章で止まる」「期限がある」のどれかに当てはまる場合です。制作費0円・月額8,800円(税別)で、原稿もこちらで書き起こします。自作でいちばん時間のかかる部分を、まるごと引き受ける形です。

一方で、私たちがやらないことも書いておきます。自作したサイトの操作を教える、という形のサポートはしていません。ツールの使い方を教わりたい場合は、そのツールの公式サポートや、レッスン形式でやっている方のほうが確実です。

「半年前に自作を始めたが、まだ公開できていない」という状態の会社には、私たちは間違いなくお役に立てます。書きかけのものがあれば、それを活かす形で進められます。実際にお作りしたサイトは 制作実績、料金と条件は ホームページ制作のページ に載せてあります。

9. まとめ:安さではなく、続けられるかで決める

自作するか頼むかを判断するために必要なことは、3つです。

  • ツール代ではなく、20〜50時間を計算に入れる ― 経営者の時間は、いちばん高い資源です
  • 担当する人の名前を言えるか ― 言えないなら、自作は始まりません
  • ドメインだけは自社名義で取る ― 自作でも外注でも、これだけは共通です

この3つで判断すると、迷いません。そして自作を選んでも、期間は無駄になりません。ドメインと文章は手元に残ります。

まずは、今週このために何時間割けるかを、実際に手帳で数えてみてください。その数字が、答えを出します。

ぜひ一度、お話を聞かせてください。自作で足りるかどうかを、正直に見極めるところから、ご一緒します。