1. 「サーバーって、どこがいいんですか」

中小企業の経営者の方とお話していて、こんな言葉をよく聞きます。

「サーバーってどこがいいんですかね。比較サイトを見たんですけど、どこも自分のところが一番速いって書いてあって、結局分からなくなりました」

このご相談、比べ方の順番が逆になっていることがほとんどです。比較サイトが並べているのは、料金と速度と容量です。ところが、中小企業のサイトで後から効いてくるのは、その3つではありません。

先に決めるのは、どのサービスを使うかではなく、誰の名義で契約するかです。ここさえ決まっていれば、サービスは後から変えられます。逆に名義を押さえていないと、どんなに良いサーバーを選んでも、いざというときに動かせません。

この記事では、契約が3つに分かれていることを整理したうえで、サーバーとドメインをそれぞれ何で比べればいいのかを書きます。特定のサービス名は推しません。観点だけをお渡しして、選ぶのは貴社に任せるという形にします。

契約そのものの全体像は 独自ドメインとメールアドレスは、どこで何を契約すればいいか に整理してあります。あわせて読んでいただくと、輪郭がはっきりします。

2. 契約は、3つに分かれている

「ホームページの契約」とひとまとめに言われますが、実際には3つの別々の契約です。1社にまとめることもできますし、3社バラバラでも動きます。まずここを分けてください。

① ドメイン ― 住所そのもの

example.co.jp という文字列を、1年単位で借りる契約です。名刺にも請求書にも検索結果にも出る、いちばん外に出ている資産です。

3つの中で、これだけは他と性質が違います。サーバーは引っ越せます。SSLは取り直せます。でもドメインは、同じ文字列を後から別の場所で取り直すことができません。誰かが持っていれば、それで終わりです。

② サーバー ― サイトを置いておく場所

作ったページのファイルを置いて、24時間公開しておくための場所です。月額のものが大半で、中小企業のサイト規模なら、月数百円から数千円の範囲に収まります。

ここは比較的、気軽に引っ越せる部分です。データさえ手元にあれば、別の会社に移して同じサイトを表示できます。

③ SSL ― 通信を暗号化する証明書

アドレスが https:// で始まり、鍵のマークが出る状態にするためのものです。これが無いと、閲覧者のブラウザに「保護されていない通信」と表示されます。

いまは無料のSSLがサーバー側に組み込まれていることが多く、単独で契約する場面は減りました。ただし「組み込まれている」だけで自動更新されているとは限らないので、そこは後述します。

3. サービス名より先に決めるのは、名義

3つの契約を並べると、確認すべきことが見えてきます。誰の名義で契約されているかです。

表:3つの契約と、確認しておく一言
契約誰の名義にするか切れると何が起きるか確認する一言
ドメイン必ず自社名義。ここだけは譲らないサイトもメールも同時に止まる。復旧できなくなる期限がある「登録者名義は弊社で。管理画面のIDもいただけますか」
サーバー制作会社名義でも可。ただし条件を1つ付けるサイトが表示されなくなる。データが消える場合もある「解約時に、サイトのデータ一式をいただけますか」
SSLサーバー側に任せてよい。単独契約は基本不要警告画面が出て、多くの人が引き返す。フォームも送られない「自動更新になっていますか。切れたら誰が気づきますか」

3行のうち、名義を絶対に譲れないのは1行目だけです。ドメインさえ自社名義なら、サーバーもSSLも後から動かせます。逆にドメインが相手名義だと、他の2つを整えても身動きが取れません。

なぜ、代理契約だと動かせなくなるのか

制作会社が自社の名義でまとめて契約する形は、珍しくありません。手続きが早く、支払いも一本化できるので、悪意があるとは限りません。

ただ、離れるときに困ります。ドメインの登録者が制作会社になっていると、移管の手続きは相手にしか行えません。相手が手続きをしてくれなければ、貴社は自分の住所を動かせない。連絡が取れなくなれば、なおさらです。実際に連絡が途絶えたときにどう動くかは 制作会社と連絡が取れなくなったときに、まずやること に書きました。

もう1つ、.co.jp には固有の事情があります。1社につき1つしか取得できないため、名義が他社になっていると、貴社は別の .co.jp を新しく取ることすらできません。ここは他のドメインには無い制約です。

いま、どうなっているかの調べ方

すでに契約済みの場合でも、確認する方法はあります。

  • ドメイン管理会社の管理画面に、自社でログインできるか。IDとパスワードを持っていないなら、名義は相手である可能性が高い
  • ドメインの更新請求が、誰宛に届いているか。自社に届いていないなら、支払っているのは相手です
  • 契約書に、契約終了後の取り扱いが書いてあるか。書いていない場合は、口頭で確認して記録に残す

確認しただけで揉めることはありません。「今後のために整理しておきたい」と伝えれば、まっとうな会社は情報を出してくれます。渋られたなら、それも判断材料の1つです。

4. サーバーを選ぶときに見る、5つの観点

ここからが本題です。サーバーを比べるとき、中小企業のサイトで実際に効いてくる観点は5つです。速度と容量は、この5つの後で構いません。

① 費用の桁

金額そのものより、を見てください。月数百円なのか、数千円なのか、数万円なのか。

一般的な会社案内のサイト、ページ数にして10〜30枚、写真が数十枚という規模なら、月数百円から数千円の範囲で足ります。ここで月数万円の見積もりが出てきたら、何が含まれているのかを聞いてください。保守や更新代行が込みなら妥当ですが、サーバー代だけでその額なら、説明を求める価値があります。

② 自動バックアップの有無と、復元のしやすさ

「バックアップを取っています」だけでは足りません。聞くべきは、その次です。

  • 何日分さかのぼれるか(7日分か、14日分か、30日分か)
  • 戻すときの操作を、自社でできるか。それとも申請が必要か
  • 戻すのに追加費用がかかるか

実務でいちばん困るのは、バックアップはあるのに、戻すのに数日と数万円かかるという形です。更新に失敗した、表示が崩れた、というときに、その場で1つ前に戻せるかどうかで、被害の大きさが変わります。

③ 障害が起きたとき、誰に聞けるか

サーバーは止まります。どこの会社を選んでも、年に何度かは短い障害があります。問題は止まることではなく、止まったときに何が分かるかです。

  • 障害情報を出すページがあるか(あれば、慌てて問い合わせずに済む)
  • 問い合わせ窓口はメールだけか、電話もあるか
  • 返答の目安時間が書いてあるか

自社で直接契約する場合は、この窓口が貴社の窓口です。制作会社経由なら、制作会社が窓口になります。どちらの形なのかを、契約前にはっきりさせておいてください。「サーバー会社に聞いてください」と「こちらで確認します」では、実務の負担がまったく違います。

④ 管理画面を、自社で触れるか

ログインできるかどうか、という話です。触る機会は年に数回かもしれませんが、その数回が、たいてい急ぎの用件です。

  • ドメインの追加やメールアドレスの追加ができるか
  • SSLの状態が見られるか
  • アクセスが集中したときのログが見られるか

全部を自社で操作する必要はありません。ログインできる状態にしておくこと自体が備えになります。

⑤ 解約するとき、データを書き出せるか

いちばん見落とされる観点です。契約するときに、解約の話を持ち出しにくいのは分かります。ただ、ここを確認しないまま数年使うと、乗り換えたくなったときに選択肢が無くなります。

聞き方は、これで足ります。

「解約する場合、サイトのデータ一式をいただくことはできますか。形式は何になりますか」

渡せる形になっているサーバーなら、いつでも別の場所に引っ越せます。渡せない形(その会社独自の仕組みで動いていて、外に出すと再現できない)なら、乗り換え=作り直しになると知ったうえで契約してください。それ自体は悪いことではなく、知らずに契約することだけが問題です。

補足:「速い」という比較に振り回されないために

比較記事の多くは、表示速度を主役に置きます。ただ、その差が体感に出るのは、アクセスが集中するサイトの場合です。1日に数千人、数万人が来るサイトなら、サーバーの性能差は明確に効きます。

一方、1日の来訪が数十人から数百人という規模では、サーバー間の性能差より、次の要素のほうがずっと大きく効きます。

  • 画像の重さ(1枚2MBの写真が10枚並んでいれば、どのサーバーでも遅い)
  • 埋め込みの数(動画、地図、SNS、チャットは、それぞれ別の場所を呼びに行きます)
  • スマートフォンの回線状況

つまり、自社の規模では差が出にくい領域で比較されていることがあります。速度そのものを軽視する話ではありません。先に見るところが違うというだけです。表示が遅いと言われたときにどこから手を付けるかは ホームページが重いと言われたときに、まず見るところ に整理しました。

5. ドメインを選ぶときに見る観点

ドメインは、サーバーほど比較する要素がありません。どこで取っても、同じ文字列が同じように使えます。見るのは、次の3つです。

どの種類を取るか(.co.jp / .jp / .com)

  • .co.jp ― 日本で登記している法人だけが取得できます。1社につき1つ。登記情報との照合があるため、信頼性は最も高い。年間で数千円台
  • .jp ― 日本国内に住所がある個人・法人が取れます。.co.jp より安く、条件も緩い
  • .com ― 世界共通。誰でも取れて、最も安い部類。選択肢も多い

どれを選んでも、検索の順位が変わることはありません。変わるのは、見た人が受ける印象と、取得の条件だけです。

法人で、取引先に法人であることを示す場面が多いなら .co.jp に意味があります。個人事業や、これから法人化する段階なら .com.jp で十分です。後から .co.jp に変えることもできます(そのときは転送の設定が要ります)。

取れる条件を、先に確認する

.co.jp は登記が前提です。設立前の会社では取れません。会社設立の直後に取るのが、いちばん素直な順番になります。

また、すでに他社が使っている文字列は取れません。「うちの社名なんだから取れるはずだ」とはなりません。使いたい文字列があるなら、早めに押さえておく意味はあります。年間で数千円です。

更新費用は、年ごとに変わることがある

ここが意外と知られていません。ドメインの更新費用は、取得時の金額と同じとは限りません。初年度が安く、2年目以降が上がる設定になっていることがあります。また、種類によっては年ごとに標準価格が改定されます。

金額としては年間で数千円の話なので、経営を左右するものではありません。ただ、「去年と同じ額が引き落とされる」と思い込んでいると、カードの限度額や期限切れで決済に失敗することがあります。

自動更新を、必ずオンにしておく

これは観点というより、やっておくことです。

  • 自動更新の設定をオンにする
  • 支払いのカードの有効期限を確認する(更新は1年後です。カードの期限が先に来ることがあります)
  • 更新通知の宛先を、会社の共有アドレスにする

3つ目が効きます。担当者の個人アドレスで契約していると、その人が辞めた時点で、更新の通知が誰にも届かなくなります。実際に止まったときに何が起きるかは ドメインやサーバーの更新を忘れて、サイトが止まったとき に段階ごとにまとめてあります。

6. 1社にまとめるか、分けるか

「ドメインとサーバーは同じ会社にしたほうがいいですか」とよく聞かれます。どちらでも動きます。それぞれに理由があるので、並べておきます。

まとめる利点

  • 請求が1本になる。更新日も揃えやすく、支払い漏れが起きにくい
  • 設定が自動で済む。ドメインとサーバーの紐付け(DNSの設定)が、画面の操作だけで終わることが多い
  • 問い合わせ先が1つ。「どちらの問題か分からない」ときに、たらい回しになりません

小規模で、社内に詳しい人がいない会社ほど、まとめる利点のほうが実務的に効きます。

分ける利点

  • 片方を変えても、もう片方が動かない。サーバーを乗り換えるとき、ドメインはそのまま使えます
  • 名義を分けられる。サーバーは制作会社名義、ドメインは自社名義、という形が取れます
  • サーバー会社に何かあっても、住所は残る

2つ目が、この記事の主題です。「サーバーは任せたい。でもドメインは自社で持ちたい」という要望を通すには、分けるのがいちばん素直です。

制作会社に「込み」で頼む場合に、確認する3つ

月額制のサービスでは、サーバーもドメインもSSLも月額に含まれていることがよくあります。これ自体は便利な形です。ただ、契約前に3つだけ確認してください。

  • ドメインの名義は、貴社になりますか。「弊社名義でまとめて管理します」という答えなら、その前提で契約するか、名義だけ分けてもらうかを選ぶ
  • 解約するとき、サイトのデータをいただけますか。形式も一緒に聞いておく
  • 管理画面に、自社でログインできますか。触らなくても、入れる状態かどうかを聞く

この3つは、契約前なら30秒で済む質問です。契約後に聞くと、話が重くなります。渋られた場合も、それは「悪い会社だ」ということではなく、その会社の運用がそういう形だという情報です。知ったうえで選べば問題ありません。

7. 乗り換えるときに、実際に起きること

いま契約しているところから別の場所へ移す場合、何が起きるかを先に知っておくと、慌てずに済みます。大がかりな作業ではありませんが、当日の段取りは要ります。

切り替えには、空白の時間がある

ドメインがどのサーバーを指しているかという情報(DNS)は、世界中の機器に一時的に記憶されています。切り替えても、その記憶が入れ替わるまでに数時間から1〜2日かかります。

その間、見る人によって新しいサイトが表示されたり、古いサイトが表示されたりします。両方を同時に動かしておくのが基本的な進め方です。新しい側の準備が完全に終わってから切り替え、古い側は1〜2週間そのまま残しておく。こうすると、空白の時間が生まれません。

切り替えの日取りにも作法があります。繁忙期を避け、平日の午前中に行う。何かあったとき、その日のうちに対応できる時間帯を選んでください。

メールを取りこぼしやすい

サイトより神経を使うのが、メールです。同じドメインでメールを使っている場合、切り替えの前後に届いたメールが、古い側に入ってしまうことがあります。

  • 切り替え前に、古い側のメールを手元に取っておく
  • 切り替え後、数日は古い側の受信箱も開いて確認する
  • 重要な取引先には、切り替え日を事前に伝えておくと安全

サイトが数時間見えなくても大きな損失にはなりませんが、問い合わせのメールが1通消えるほうが痛いです。順番としては、メールを先に確認してください。

SSLは、移設先で取り直しになる

SSLの証明書は、サーバーごとに発行されます。移設したら、新しいサーバー側で発行し直すことになります。

作業自体は難しくありません。ただ、発行を忘れたまま切り替えると、警告画面が出ます。「保護されていない通信」と表示された時点で、多くの人は引き返します。切り替え当日の確認項目に、必ず入れてください。

確認は、自分でできます。切り替え後に、自分のサイトを開いて鍵のマークが出ているか見る。それだけです。ついでに、フォームから自分でテスト送信して、通知が届くところまで確かめておくと確実です。

8. 雄喜晃の伴走:ドメインの名義は、貴社にします

私たち雄喜晃の月額8,800円(税別)には、サーバー・ドメイン・SSL・保守が含まれています。制作費は0円で、貴社に別途サーバーを契約していただく必要はありません。

そのうえで、自社の方針を正直に書いておきます。ドメインの登録者名義は、貴社にします。費用は月額に含めますが、名義まで私たちが押さえることはしません。囲い込みのために住所を握るのは、私たちのやり方ではないからです。管理画面の情報もお渡しします。

一方で、契約の条件もそのまま書きます。最低契約期間は6ヶ月です。7〜35ヶ月で解約された場合、サイトは非公開になります。サーバー代を私たちが負担している以上、そこは止まります。36ヶ月以上ご継続いただいた場合は、サイトそのものを譲渡します。この条件を、契約前に必ずお伝えしています。

やらないことも書いておきます。社内のネットワークやパソコンの設定、メールソフトの使い方といったIT全般の面倒は見ていません。そこは情報システムを見る会社のほうが確実です。また、アクセスが1日数万人という規模を前提としたサーバー設計も範囲外です。そういう要件なら、インフラを専門に扱う会社にご相談ください。

「今どこと契約しているのかも分からない」という状態の会社にも、私たちは間違いなくお役に立てます。まず現状を一緒に読み解くところからで構いません。実際にお作りしたサイトは 制作実績、料金と条件は ホームページ制作のページ に載せてあります。

9. まとめ:サービスは変えられる、名義は変えられない

サーバーとドメインの契約先を決めるために必要なことは、3つです。

  • 契約が3つに分かれていることを知る ― ドメイン・サーバー・SSL。同じ会社でも別々でも動きます
  • ドメインの名義だけは、自社にする ― サーバーは引っ越せます。名義は自分では変えられません
  • サービスは、5つの観点で比べる ― 費用の桁・バックアップと復元・障害時の窓口・管理画面・解約時のデータ

この3つを押さえておけば、どのサービスを選んでも、後から動けます。逆にここを飛ばすと、良いサーバーを選んでいても、必要なときに手が出せません。

まずは、いま契約しているドメインの管理画面に、自社でログインできるかどうかを確かめてみてください。できるなら、たいていのことは何とかなります。できないなら、そこが最初の一手です。

ぜひ一度、お話を聞かせてください。いまの契約がどうなっているかを読み解くところから、ご一緒します。