1. 「何でもやります」が、いちばん伝わらない
中小企業の経営者の方とお話していて、こんな言葉をよく聞きます。
「うち、扱ってる品目が200くらいあるんです。ホームページに全部載せたいんですけど、多すぎて手が付けられなくて。とりあえず『何でもやります』とだけ書いてあります」
この状態、本当によくあります。長く続いている会社ほど、扱うものが増えていきます。頼まれて始めた仕事、たまたま在庫を持つことになった商材、昔からの取引先のためだけに続けている加工。気づいたら、自社を一言で説明できなくなっているわけです。
そして多くの場合、ホームページはそこで止まります。全部載せようとすると終わらず、絞ろうとすると「どれも切れない」となる。結局、当たり障りのない会社概要だけのサイトになります。
この記事で書くのは、減らす方法ではありません。扱うものを減らす必要はありません。必要なのは、順番を決めることと、入口を作ることの2つだけです。この2つがあれば、200品目でも成立します。
作り始める前に決めておくこと全体については ホームページを作る前に、決めておく5つのこと にまとめてあります。
2. 範囲の広さは、判断材料になっていない
まず、なぜ「何でもやります」が伝わらないのかを整理します。理由は単純で、読む人が探しているものと、書いてある内容がずれているからです。
読む人は、自分の困りごとに合う会社を探している
サイトを開いた人の頭の中にあるのは、たいてい1つの具体的な用件です。「この部材が手に入るか」「この機械の修理を受けてくれるか」「この規模の工事をやってくれるか」。その1つに答えが出るかどうかだけを見ています。
そこに「幅広く対応いたします」と書いてあっても、判断は進みません。広いということは、自分の件が含まれているかどうかが分からないということでもあるからです。含まれていない可能性を潰すには、結局こちらから聞くしかない。その一手間を惜しんで、別の会社を見に行きます。
数が多いこと自体は、たしかに強みです
誤解のないように書いておくと、品目の多さは実際に強みです。まとめて頼めること、1社で完結すること、急ぎのときに融通が利くこと。取引が始まったあとで効いてきます。
ただし、それは取引が始まったあとの話です。入口では効きません。入口で効くのは「自分の件を扱っているかどうか」の1点だけです。強みを見せる場所と、選ばれる場所は違うと分けて考えてください。
全部載せると、何屋か分からなくなる
もう1つ、実際に起きることがあります。トップページに20も30も並べると、読む人の頭の中で、その会社の輪郭が消えます。
人は、一度に3つか4つまでしか受け取れません。それ以上並ぶと、個別に読まずに「いろいろやっている会社」という1つの塊にまとめてしまいます。塊にまとめられた瞬間、記憶にも検索にも残らなくなります。
3. 並べ替える基準は、売上の大きい順ではない
順番を決める、と書きました。ここがこの記事でいちばん大事なところです。
売上順に並べると、今の姿がそのまま固定される
多くの会社が、無意識に売上の大きい順に並べます。自然な発想ですが、これをやるとサイトが「今のままでいい」という宣言になります。
売上の大きい品目は、たいてい既存のお客様から来ています。すでに知られている、すでに取引がある。そこを一番目立つ場所に置いても、新しい問い合わせは増えません。新規の人は、その品目を検索していないからです。
これから増やしたい順に並べる
代わりに使う基準は、これです。この先3年で、比率を上げたい仕事は何か。
- 利益率が高いのに、件数が少ない仕事
- 自社の設備や人が余っていて、もっと受けられる仕事
- 下請けではなく、直接受けられる仕事
- 続けたいのに、今は年に数件しか来ない仕事
この基準で並べ替えると、順番が大きく変わります。そして、変わったほうが正解です。ホームページは今の売上を説明する資料ではなく、これから来てほしい人に向けた入口だからです。
決められるのは、経営者だけ
この並べ替えは、制作会社にはできません。社内の担当者にも決めきれません。どの仕事を伸ばすかは、経営判断そのものだからです。
私が現場で見てきた限り、ここで時間がかかる会社ほど、あとが速いです。逆に「全部同じ扱いで」と決めずに進むと、公開後に必ず作り直しになります。迷ったら、1つだけ選んでください。「これが増えたら会社が変わる」という品目を1つ。そこから順番は作れます。
4. トップに出すのは、3つまで
順番が決まったら、次は出す数です。
なぜ3つか
3つという数字に理論的な根拠があるわけではありません。ただ、実務の感覚として3つを超えると、読む人が選ばなくなります。スマートフォンの画面で見たときに、一度に視界へ入るのが3つ前後、という理由もあります。
4つでも5つでも構いませんが、7つ並べるなら3つに絞ったほうが、結果として全部の品目に人が届きます。トップは全部を見せる場所ではなく、次のページへ渡す場所だからです。
残りは「一覧ページ」に送る
残った品目は、消すわけではありません。取扱品目の一覧ページを1枚作って、そこに全部入れます。トップからは「取扱品目の一覧(全200点)」のように、件数を書いたリンクを1本置くだけです。
件数を書くのには意味があります。「一覧」だけだと何件あるか分からず、押す理由が生まれません。「全200点」と書いてあれば、多いこと自体が伝わり、しかも押したくなります。品目の多さは、ここで初めて強みとして効きます。
「その他」という見出しを使わない
やりがちなのが、トップに3つ並べたあとに「その他」と書いてしまうことです。これはもったいない。その他と書かれたものを開く人は、ほとんどいません。
「取扱品目一覧」「対応できる工事の一覧」「取り扱いメーカー一覧」。中身が想像できる名前を付けてください。それだけで、開かれる率が変わります。
5. 一覧ページは、分け方を1つに決める
一覧ページの作り方に入ります。ここでいちばん多い失敗が、分け方を混ぜることです。
分け方は、この3つのどれか
- 用途で分ける ― 何をしたい人向けか。「補修に使う」「新設に使う」「点検に使う」
- 業種で分ける ― どんな会社が使うか。「建設業向け」「食品工場向け」「運送業向け」
- 価格帯で分ける ― いくらの話か。「〜5万円」「5〜30万円」「30万円以上」
どれが正しいということはありません。貴社のお客様が、実際に電話口で最初に言う言葉に合わせてください。「〇〇に使うやつありますか」と聞かれることが多いなら用途、「うち食品工場なんですけど」から始まるなら業種です。
2つ混ぜると、読む人が迷います
問題は、混ぜたときです。用途で3つ分けたあとに、業種のくくりを2つ足す。この形を実際によく見ます。
そうすると、同じ品目が2箇所に出てくるか、どちらにも入らない品目が出てくるかのどちらかになります。読む人は「さっき見たのと同じでは」と感じ、探すのをやめます。分け方は1つに決めて、最後まで貫いてください。
どうしても2つの見方が要る場合は、分け方を2つ作るのではなく、後述の絞り込みで対応します。
20件を超えたら、検索か絞り込みを付ける
品目が20件を超えると、縦に並べただけでは探せません。目安として、20件が分かれ目です。
- 20件までは、そのまま並べて構いません
- 20件を超えたら、キーワード検索か、チェックボックスでの絞り込みを1つ付けます
- 100件を超えたら、絞り込みは必須です
ただし、作り込みすぎないでください。条件を掛け合わせる高機能な検索は、作るのに費用がかかり、しかも品目が増えるたびに設定が必要になります。中小企業のサイトでは、単純なキーワード検索1つと、大分類のチェックボックスだけで足ります。それ以上は、たいてい使われません。
表で並べるのが、いちばん読みやすいことも多い
意外に思われますが、品目が多いときは、カード型に並べるより表のほうが探しやすいです。品目名・用途・価格帯・納期を横に並べた表を、スマートフォンで見たときに1件ずつ縦に積まれる形にしておく。これだけで、200件でも耐えます。
見た目の派手さはありませんが、探しに来た人にとっては、そのほうが速いです。
これから増やしたい順に並べ、上位3つだけをトップに置きます。売上の大きい順ではありません。残りは「取扱品目一覧(全◯点)」という1本のリンクで一覧に送ります。
用途・業種・価格帯のどれか1つで分けます。20件を超えたらキーワード検索か絞り込みを1つ付けます。作り込みすぎないこと。条件の掛け合わせ検索は費用も更新の手間も増えます。
何に使うか/いくらか、または見積もりになる条件/納期の目安/対応できない範囲。この4つが揃って初めて判断できます。写真が無くても、この4つが書いてあれば問い合わせは来ます。
検索から来る人は、トップにも一覧にも寄らず個別ページに直接着地します。個別ページの下に、必ず問い合わせの入口を置いてください。電話番号とフォームへのリンクの2つで足ります。
読み方は上から下へです。この4段階のどこか1つが欠けても、多い品目は活きません。とくに多いのは、段階1と段階2まで作って段階3で力尽きる形です。一覧に200件並んでいるのに中身が空だと、探した人は「無かった」と受け取ります。段階3を全品目ぶん一度に埋める必要はありません。上位の3つから順に、埋まったものから公開していけば構いません。
6. 1品目ごとに、何を書くか
個別ページの中身です。ここが多い会社ほど手薄になります。
書くのは、この4つ
- 何に使うか ― 用途。「◯◯の補修に使います」「◯◯の工程で使われます」
- いくらか、または見積もりになる条件 ― 定価があるなら金額。無いなら「数量と仕様で変わります。100個からで、単価は◯円台からです」のように幅と条件
- 納期の目安 ― 在庫があるのか、取り寄せなのか、製作するのか。「在庫品は翌営業日出荷、製作品は2〜3週間」
- 対応できない範囲 ― サイズの上限、数量の下限、対応できない材質や地域
4つ目を書く会社は少ないのですが、いちばん親切で、いちばん効きます。対応できない範囲が書いてあると、読む人は「じゃあ自分の件は対応してもらえる」と逆に確信できます。断りの手間も減ります。
「お問い合わせください」だけの品目は、無いのと同じ
強めに書きます。品目名と写真だけがあって、あとは「詳しくはお問い合わせください」。この形は、載せていないのとほぼ同じです。
理由は2つあります。1つは、読む人が判断できないので、聞く前に離れること。もう1つは、検索エンジンに拾われる言葉がその1ページに何も無いことです。品目名だけのページは、検索結果にも出ません。
金額が出せないのは分かります。仕様で変わる商材はいくらでもあります。それでも、「何で金額が決まるか」は書けるはずです。「数量と材質で決まります」「現地の状況で変わるので、写真を送っていただければ概算をお返しします」。これだけで、無いのと同じ状態からは抜けられます。
全品目ぶんの写真は、無くて構いません
品目が多い会社ほど、写真が全部は揃いません。これは現実的な問題で、揃うのを待つと永遠に公開できません。
現実的な埋め方は、この順です。
- 上位3つの品目だけ、きちんと撮る。残りは無理をしない
- 仕入れ品は、メーカーの資料が使えるか確認する。使用許諾の範囲は必ず先に聞きます
- 写真の代わりに、規格表や寸法の表を置く。探しに来た人にはそのほうが役に立ちます
- 同じカテゴリの代表写真を、一覧側に1枚だけ置く。全品目に個別写真は不要です
素材が無い状態での作り方は 写真が1枚も無い会社の、ホームページの作り方 に詳しく書きました。写真が無いことは、公開しない理由にはなりません。
下請けの仕事、名前を出せない取引の書き方
品目が多い会社には、たいてい「表に出せない仕事」があります。取引先の名前を出せない、最終製品が何かを言えない、そもそも守秘義務がある。
これも書き方はあります。固有名詞を外して、条件だけを書く。
- 「大手食品メーカー向けに、月◯万個の規模で継続受注しています」
- 「関西の建設会社様の協力会社として、年間◯件を担当しています」
- 「完成品メーカー様の指定図面に基づく加工を、20年以上続けています」
社名も製品名も出ていませんが、規模・継続年数・立ち位置は伝わります。読む人が知りたいのは取引先の名前ではなく、「この規模の仕事を任せられる会社か」だからです。
実績の書き方そのものは 実績ページに何を書くと、次の依頼につながるか に整理してあります。社名を出せなくても、業種と規模まで書けば判断材料になります。
迷ったら、電話で聞かれることをそのまま書く
書くことが決まらないときの、いちばん確実な方法です。この1か月で、電話やメールで聞かれた質問を書き出してください。
「これ在庫ありますか」「小ロットでもいけますか」「図面が無いんですけど大丈夫ですか」。同じ質問を3回以上受けているなら、それは間違いなく個別ページに書くべき内容です。すでに答えた文章がメールの中にあるので、原稿を新しく書く必要もありません。
7. 更新できる形にしておく
最後に、公開後の話です。ここを外すと、せっかく作った一覧が1年で古くなります。
制作会社に頼む形だと、必ず止まります
品目が多い会社は、品目が増えたり、廃番になったり、価格が変わったりする頻度も高いです。そのたびに制作会社へ連絡して、見積もりを取って、修正を待つ。この形だと、3回目くらいで頼まなくなります。
そして更新されない一覧は、載っていないより悪い状態になります。廃番品が残り、価格が古く、新しい主力品が載っていない。問い合わせが来ても「それはもう扱っていません」と答えることになります。
対策は、制作の段階で決めておくことです。
- 品目の追加・修正を、社内で触れる形にしてもらう(管理画面から入力する形か、表計算から読み込む形)
- 1品目の追加が5分でできるか、公開前に自分で試す
- 価格と納期は、画像ではなく文字で入れる(画像で作ると誰も直せません)
3つ目は本当によくあります。きれいな価格表を画像で作ってしまうと、1円の変更でも制作会社に頼むことになります。
誰が、いつ更新するかまで決める
形が整っていても、担当と頻度が決まっていないと止まります。更新が続く会社と止まる会社の違いは、熱意ではなく仕組みの差です。詳しくは 更新を続けられる会社と、止まる会社の違い に書きました。
品目の多い会社の場合、現実的なのは月1回、30分だけ見る日を決めておくことです。廃番になったものを消し、価格が変わったものを直す。新しく書き足すのは、そのついでで構いません。
検索から来る人は、一覧に着地しません
もう1つ、公開後に効いてくる話です。検索から来る人の多くは、トップページにも一覧ページにも来ません。「◯◯(品目名) 神戸」のように具体的に検索して、個別ページに直接着地します。
つまり、その人にとっては個別ページがトップページです。そこに問い合わせの入口が無いと、探して回るか、離れるかになります。
- 個別ページの下に、電話番号とフォームへのリンクを必ず置く
- 「この品目についてのお問い合わせ」と、品目名が入る形にしておく
- 関連する品目へのリンクを2〜3本置く(近いものを探している可能性が高いため)
2つ目は地味ですが効きます。問い合わせの本文に品目名が自動で入っていると、返信の速さが変わります。どの品目の話か聞き返す往復が1回減るからです。
8. 雄喜晃の伴走:順番を決めるところから、ご一緒します
私たち雄喜晃のホームページ制作では、品目やサービスが多い会社のご相談を、よくお受けしています。最初にやるのは、デザインでも構成でもなく、どの仕事を増やしたいかを伺うことです。ここが決まらないと、順番が決まらないからです。
制作費は0円、月額8,800円(税別)の中に、サーバー・ドメイン・SSL・保守が含まれています。月5回までの更新代行も含まれているので、品目の追加や価格の変更は、メール1本でこちらが反映します。更新のたびに見積もりが出る形にはしていません。品目が多い会社ほど、ここが止まる原因になるからです。
一方で、私たちがやらないことも書いておきます。数千点の商品を扱う本格的なECサイトや、在庫管理システムと連動する通販サイトは、私たちの範囲外です。そこは専用のサービスや、その領域を専門にしている会社のほうが確実です。私たちがお役に立てるのは、カタログとして品目を見せて、問い合わせや電話につなげる形までです。
もう1つ。「どの品目を伸ばすか」を、私たちが決めることはしません。それは経営判断です。私たちがするのは、決めるための材料を並べることと、決まったあとに形にすることです。ここを代行してしまうと、後から必ず噛み合わなくなります。
「扱っているものが多すぎて、ホームページが作れていない」という会社には、私たちは間違いなくお役に立てます。品目のリストがある状態でご相談いただければ、上位3つを仮に決めた形でサンプルを無料でお作りします。見て断っていただいても費用はかかりません。実際にお作りしたサイトは 制作実績、料金と条件は ホームページ制作のページ に載せてあります。
9. まとめ:減らすのではなく、順番と入口を作る
扱うものが多い会社が、ホームページを機能させるために必要なことは、4つです。
- 並べ替えの基準を、売上順から「これから増やしたい順」に変える ― サイトは今の売上を説明する資料ではありません
- トップに出すのは3つまで。残りは件数を書いた一覧へ送る ― 多さは、一覧の入口で強みになります
- 一覧の分け方は1つに決める ― 用途か業種か価格帯か。2つ混ぜると探せなくなります
- 個別ページに、用途・金額の条件・納期・対応できない範囲を書く ― この4つが無い品目は、載っていないのと同じです
そして、更新できる形にしておくこと。品目が増えるたびに外部に頼む形だと、必ず止まります。
まずは今日、「この先3年で増やしたい仕事はどれか」を3つだけ紙に書いてみてください。順番はそこから決まります。全部を載せる方法を考えるより、はるかに早く進みます。
ぜひ一度、お話を聞かせてください。何屋なのかが1行で伝わる形を、一緒に作っていきましょう。