1. 「新しくしたのに、問い合わせが減りました」

中小企業の経営者の方とお話していて、こんな言葉をよく聞きます。

「去年リニューアルして、見た目はすごく良くなったんです。でも、そこからアクセスが半分くらいに減って。デザインが合わなかったんでしょうか」

このご相談を受けたとき、私がまず確認するのはデザインではありません。公開前と公開後で、ページのURLが変わっていないかどうかです。

リニューアル後にアクセスが落ちるケースの多くは、見た目の問題ではありません。それまで人が来ていた入り口が、そのまま消えていることが原因です。デザインを戻しても直りませんし、広告を足しても、消えた入り口は戻ってきません。

この記事では、URLが変わると何が切れるのかを整理したうえで、失わずに移すための手順を書きます。作業自体は難しくありません。やるかやらないかだけの違いです。

そもそも作り直しが必要かどうかの判断は リニューアルすべきか、直すだけで足りるか に整理してあります。まだ迷っている段階なら、先にそちらをご覧ください。

2. URLが変わると、何が切れるか

URLは、ページの住所です。住所が変われば、そこを指していたものが全部行き先を失います。サイトの外側にあるものほど、こちらからは直せません。

検索結果からの流入

いちばん大きいのがこれです。検索エンジンは、それまで積み上がった評価をURL単位で持っています。example.co.jp/service/ というページが「〇〇 修理 神戸」で上位に出ていたとして、そのURLが消えれば、その順位も一緒に消えます。

新しいページが同じ内容を持っていても、検索エンジンから見れば別のページです。「引き継ぎました」と伝える仕組みが無ければ、評価はゼロから積み直しになります。

他社のサイトから張られているリンク

商工会議所の会員一覧、取引先の「関連会社」ページ、業界団体のリンク集、地域のポータルサイト。貴社が知らないところからリンクが張られていることは、思っているより多いです。

これらは、相手のサイトの中にあります。URLが変わったからといって、相手が直してくれるわけではありません。連絡して直してもらうこともできますが、数が多ければ現実的ではありません。

SNSの投稿と、名刺やチラシのQRコード

過去のSNS投稿に貼ったリンク、会社案内に印刷したQRコード、展示会で配ったチラシ。紙に印刷したものは、もう直せません。

QRコードは特に注意が要ります。名刺の裏に印刷したQRが、リニューアル後に「ページが見つかりません」に飛ぶ。渡した相手が読み取った瞬間に起きます。印刷物との関係は 移転・社名変更・代表交代のときに、サイトで直すところ にも書きましたが、URLでも同じことが起きます。

ブックマーク・Googleマップ・広告のリンク先

  • お客様や取引先のブックマーク。「いつも見ていたページ」が消えます
  • Googleビジネスプロフィールに登録したURL。地図から貴社を見つけた人が、最初に押すのがここです
  • 広告の遷移先。リスティング広告やSNS広告を出しているなら、リンク先が切れた広告に、お金を払い続けることになります

3つ目は、費用が直接出ていくので、いちばん痛い形です。広告を出しているなら、リニューアルの前に必ず遷移先の一覧を確認してください。

3. 「404が出る」より怖いのは、トップに全部飛ばす形

URLが変わったときの失敗には、2つの形があります。後者のほうが厄介です。

形① そのまま404になる

旧URLを開くと「ページが見つかりません」と表示される形です。見た目には最悪に見えますが、問題が可視化されているという点では、まだ扱いやすい状態です。検索エンジンにも「このURLは無い」と伝わりますし、Search Consoleにもエラーとして出ます。気づけます。

形② 旧URLを、全部トップページに飛ばす

こちらのほうが多く、そして厄介です。「エラーが出ると格好悪いので、とりあえず全部トップに飛ばしておきました」という対応です。

一見、親切に見えます。でも、来た人の側から見ると、こうなります。

検索で「〇〇 料金」と調べて、貴社の料金ページが出てきた。押した。トップページが開いた。料金ページを探そうとして、メニューを2回押して、見つからなくて、戻る。

探していたページに行けなかった人は、そのまま帰ります。そして、こちらには何のエラーも出ません。404の件数はゼロ、サーバーも正常、Search Consoleも静かです。気づけないまま、静かに人が減り続けます。

検索エンジンから見ても、扱いは良くありません。内容の違うページへまとめて飛ばす形は、評価の引き継ぎとして扱われないことがあります。エラーは出ないのに、順位だけが落ちるという、いちばん原因の分かりにくい状態になります。

4. やることは3つ。順番も決まっています

やるべきことは、多くありません。対応表を1枚作る。1対1で転送する。効いているか確かめる。この3つです。

図:URLを変えるときの5段階。上から順に進めます
① 旧URLと新URLの対応表を1枚つくる

いま存在するページを全部書き出し、その隣に移動先を書きます。表計算ソフトで2列あれば足ります。ここを飛ばすと、以降の全部が抜け漏れます。

制作会社に頼めば一覧は出ます。判断するのは貴社です
② 1対1で転送を設定する

旧URLを開いた人と検索エンジンを、対応する新URLへ送ります。恒久的な転送(301)を使い、まとめてトップページへ送る形にはしません。

全部トップに飛ばすと、エラーは消えても人は帰ります
③ 効いているか、自分で確かめる

対応表の旧URLを実際にブラウザに貼り付けて開きます。狙ったページに着くか、トップに落ちていないか。件数が多ければ、流入の多い上位20件だけでも構いません。

④ Search Console に新しい形を伝える

新しいサイトマップを送信し、カバレッジのエラーを見ます。ドメインごと変える場合は、あわせてアドレス変更ツールを使います。

送るだけです。順位を上げる作業ではありません
⑤ 数字を見る。慌てない

公開前の数字を控えておき、公開後に比べます。戻るまでに時間がかかることがあるので、翌週の数字だけで判断しないようにします。

①を飛ばして②から入るのが、いちばん多い失敗です。対応表が無いと、何が転送できていないのかを誰も把握できません。逆に表さえあれば、③以降は確認作業になります。

誰がやるかを、先に決めておく

この5段階は、制作会社がやることもあれば、貴社が確認役に回ることもあります。問題は、どちらもやっていない状態です。

見積もりを取るときに、一言だけ聞いてください。

「旧URLからの転送設定は、お見積もりに含まれていますか。対応表は作っていただけますか」

含まれているなら安心です。含まれていないなら、追加で頼むか、少なくとも「やらないとどうなるか」を理解したうえで進めることになります。

5. 対応表の作り方

いちばん手間がかかるのが、この工程です。ただ、一度作れば、後の作業は全部これを見ながら進められます。

旧URLを、全部書き出す

出どころは2つあります。

  • サイトマップ。example.co.jp/sitemap.xml にアクセスすると、そのサイトのページ一覧が出てくることが多いです。制作会社に「サイトマップをください」と頼んでも出ます
  • Search Console の一覧。「検索パフォーマンス」でページ別の表示回数とクリック数が見られます。実際に人が来ているページが分かるので、こちらのほうが重要です

この2つを突き合わせると、存在するページ人が来ているページの両方が揃います。前者は網羅性、後者は優先順位です。

表は、2列で足りる

表計算ソフトで、左に旧URL、右に新URLを並べるだけです。凝ったものは要りません。3列目に「月間クリック数」を足しておくと、確認作業の順番が決まります。

クリック数の多い順に並べ替えて、上から確認する。これだけで、限られた時間の使い方が最適になります。

行き先が無いページを、どうするか

旧サイトにあったページが、新サイトには無い、という場合があります。その扱いは3通りです。

  • 内容が近い別のページがあるなら、そこへ送る(例:旧「サービス一覧」→新「サービス」)
  • 近いページが無く、人も来ていないなら、送らずに404で構いません。無理に飛ばすほうが害になります
  • 人が来ているのに行き先が無いなら、新サイトにそのページを作る。これが本来の答えです

3つ目は見落とされがちです。人が来ているページを、リニューアルで消すという判断は、それ自体が損失です。デザインを新しくするために、来ている入り口を閉じる理由はありません。

制作会社に頼むときの言い方

自分で作れないなら、そう伝えて構いません。

「旧サイトのURL一覧と、新サイトの対応先を1枚の表にしていただけますか。転送設定の前に、こちらでも確認したいので」

確認したい、と伝えるのが要点です。丸投げにせず、1回だけ目を通す。それだけで、抜けはかなり減ります。

6. 転送は「恒久的な転送」で、期限を切らない

転送には種類があります。実務で使うのは1つだけです。

301(恒久的な転送)を使う

「このページは、こちらに引っ越しました。今後もずっとです」という意味の転送です。検索エンジンは、これを受け取ると旧URLの評価を新URLに引き継ぎます。

もう1つ、302(一時的な転送)というものがあります。「今だけこちらを見てください」という意味で、評価は引き継がれません。工事中のときなどに使うもので、リニューアルでは使いません。

設定するのは制作会社かサーバーの管理画面です。貴社がやるのは、「恒久的な転送(301)でお願いします」と一言伝えることだけで足ります。

1対1で対応させる

  • 旧「/service/」→ 新「/service/」(変わらないなら、そのまま)
  • 旧「/service01.html」→ 新「/service/repair/」
  • 旧「/blog/2024/05/post-123.html」→ 新「/media/spring-campaign/」

1つの旧URLに対して、1つの行き先。これが原則です。面倒に見えますが、対応表ができていれば作業は機械的です。

期限を切らずに、残し続ける

「いつまで転送を残せばいいですか」とよく聞かれます。答えは、できるだけ長く、できれば消さないです。

  • 検索エンジンが新URLを完全に認識するまでに時間がかかります
  • 他社サイトのリンクや、印刷物のQRコードは、何年も生き続けます
  • 転送の設定は、置いておくだけならコストがほぼゼロです

最低でも1年。可能なら、そのまま残してください。「リニューアルから1年経ったので転送を切りました」という判断が、2年目にアクセスが落ちる原因になることがあります。

転送が効いているかの、確かめ方

難しい道具は要りません。

  • 旧URLをブラウザのアドレス欄に貼り付けて、開く。狙ったページが表示されるか
  • アドレス欄が新URLに書き換わっているか。書き換わらずに旧URLのままなら、転送ではなく別の仕組みが動いている可能性があります
  • トップページに落ちていないか。ここがいちばん見つかる不具合です

公開日に、対応表の上位20件を10分で確認する。この10分が、後の数ヶ月を左右します。

7. 公開後に見るもの ― 数字、Search Console、ドメイン変更

公開して終わりではありません。見るものは決まっているので、多くの時間は要りません。

公開前に、必ず控えておく数字

比べるためには、前の数字が要ります。公開前に、次の3つを控えてください。

  • 月間の問い合わせ件数
  • サービスページに来た人数
  • Search Console の合計クリック数と、ページ別の上位20件

この3つで足ります。どれを見るかの考え方は ホームページを作ったあと、何を測ればいいか に整理しました。公開してから「前はどうだったか」を調べようとしても、もう比べられません。控えるのは公開前です。

戻るまでにかかる時間

正直に書きます。URLが変わったあと、検索からの流入が元の水準に戻るまでには、時間がかかることがあります。数週間で戻ることもあれば、数ヶ月かかることもあります。

サイトの規模、ページ数、もともとの評価の積み上がり方によって変わるので、「何日で戻ります」と言い切れる人はいません。転送が正しく設定されていても、いったん下がってから戻る動きになることがあります。

だからこそ、公開翌週の数字だけで判断しないでください。慌てて構成を戻したり、追加で手を入れたりすると、かえって落ち着きません。転送が効いていることを確認したら、あとは月単位で見ます。

Search Console でやること

2つだけです。

  • 新しいサイトマップを送信する。「サイトマップ」の画面で、新サイトのサイトマップのアドレスを登録します。制作会社に「サイトマップのURLを教えてください」と聞けば済みます
  • カバレッジ(ページのインデックス状況)のエラーを見る。公開後の1〜2週間は、週に1回見てください。想定していないURLがエラーになっていれば、対応表の漏れです

順位を上げるための作業ではありません。「新しい形になりました」と伝えて、伝わっているかを確認するだけの作業です。

ドメインごと変わる場合の、追加でやること

社名変更などでドメイン自体を変える場合は、さらに3つ増えます。

  • アドレス変更ツールを使う。Search Console には、サイトの引っ越しを伝える機能があります。新旧どちらのドメインも登録したうえで使います
  • メールを並行して運用する。旧ドメインのメールを、しばらく受け取り続けてください。サイトより、メールのほうが取りこぼしが痛いです。1年は残す前提で考えてください
  • 名刺と印刷物を差し替える。URLが載っているものを全部洗い出します。会社案内、封筒、請求書のひな形、展示会のパネル

3つ目は、在庫がなくなるまで旧URLのものが出回るということでもあります。だから転送を消せません。

そもそも、URLを変えなくて済むならそれが一番

ここまで書いてきて、いちばんお伝えしたいのはこれです。URLを変えずに済むなら、変えないでください。

デザインを新しくするために、URLを変える必要はありません。見た目を変えて、ページの構成(どのページが、どの住所にあるか)はそのまま保つという作り方ができます。この形なら、転送も対応表も要りません。失うものが無いからです。

URLを変える理由があるとすれば、次のような場合です。

  • ページの構成そのものを変える(事業内容が変わり、カテゴリの切り方が変わる)
  • ドメインを変える(社名変更、.co.jp への移行)
  • 使っている仕組みを変えて、URLの形が固定される

これらに当てはまらないなら、URLは据え置きで相談してください。制作会社によっては、新しい仕組みに合わせて自動的にURLが変わる前提で進むことがあります。「今のURLは変えられますか、変えずにできますか」と最初に聞く。この一言で、後の工程が丸ごと不要になることがあります。

8. 雄喜晃の伴走:まず、いまの入り口を数えます

私たち雄喜晃がリニューアルのご相談をいただいたとき、デザインの話より先に、いまどのページに人が来ているかを確認します。Search Console を一緒に開いて、クリックが入っているページを上から並べる。作業としては20分ほどです。

そのうえで、変えなくていいURLは変えません。新しくするのは見た目と中身で、住所は据え置く。どうしても構成を変える必要がある場合だけ、対応表を作って1対1で転送します。公開後にカバレッジのエラーが出ていないかを確認するところまでが範囲です。

一方で、私たちがやらないことも書いておきます。大規模なサイトの、数千ページ単位の移行設計は範囲外です。そういう規模なら、移行を専門に扱う会社のほうが確実です。また、順位が戻る時期をお約束することもしません。そこは誰にも約束できないので、言わないことにしています。

「リニューアルしたら数字が落ちた。何が起きているのか分からない」という状態の会社には、私たちは間違いなくお役に立てます。まず何が切れているかを一緒に見るところからで構いません。実際にお作りしたサイトは 制作実績、料金と条件は ホームページ制作のページ に載せてあります。

9. まとめ:新しくするのは見た目で、住所は据え置く

リニューアルでアクセスを失わないために必要なことは、3つです。

  • URLを変えなくて済むなら、変えない ― デザインを変えるために住所を変える必要はありません
  • 変えるなら、対応表を1枚作って1対1で転送する ― まとめてトップに飛ばす形は、エラーが出ないぶん気づけません
  • 転送は恒久的な形で、期限を切らずに残す ― 最低1年、できればそのまま

この3つを押さえておけば、リニューアルで失うものはほとんどありません。逆にここを飛ばすと、良いサイトができたのに、そこへ来る人が減るという結果になります。

まずは、Search Console を開いて、いまクリックが入っているページを上から20件書き出してみてください。それが、貴社が守るべき入り口の一覧です。

ぜひ一度、お話を聞かせてください。いまある入り口を数えるところから、ご一緒します。