1. 増えた瞬間に、社内が詰まる
中小企業の経営者の方とお話していて、こんな言葉をよく聞きます。
「サイトを直してから問い合わせが月10件くらい来るようになったんです。ありがたいんですけど、正直、社内がぐちゃぐちゃで。誰が返したのか分からなくなって、同じ人に2回連絡したこともあって」
問い合わせが増えるのは良いことです。ただ、増えた瞬間に困るのは、返す文章ではありません。「誰が・いつ・どこまで」が決まっていないことです。
月に2〜3件のうちは、社長が全部見て全部返せます。それで回ります。回らなくなるのは、だいたい月8件を超えたあたりです。個人差はありますが、1人の目と手で捌ける量には限界があります。
この記事は 問い合わせが来たあと、何時間以内に返すべきか の続きです。あちらは速さの話でした。速く返すために何時間を目標にするか、一次返信に何を書くか。この記事は、その先の体制の話です。速く返そうとしても、体制が決まっていなければ、件数が増えた途端に守れなくなります。
この記事で書くこと
- 問い合わせが増えると、社内で何が起きるか
- 先に決めておく4つのこと
- 通知の届け先を1人にしないための作り方
- 問い合わせを3つに仕分ける方法と、それぞれの返し方
- 記録の残し方と、繁忙期の逃げ道
2. 増えたときに、社内で起きる4つのこと
まず、何が起きるかを具体的に挙げます。これから増える予定の会社は、先に読んでおくと防げます。
① 二重対応が起きる
社長と営業担当の両方に通知が届いていて、両方が返信する。相手には、同じ会社から違う言い方の返事が2通届きます。金額の言い方が微妙に違ったりすると、相手は不安になります。
これは「連携が悪い」のではなく、一次対応の担当が決まっていないだけです。全員が善意で動いた結果、こうなります。
② 誰も返していない
①の逆です。複数人に通知が届いていると、全員が「誰かが返しただろう」と思います。そして3日経つ。
私が現場で見てきた限り、取りこぼしの原因としてはこちらのほうが多いです。しかも、こちらは気づけません。返信していないことに、誰も気づかないまま終わります。
③ 担当が休むと、止まる
一次対応を1人に決めたところまでは良かったのに、その人が休んだ日に止まる。とくに、通知がその人の個人のメールアドレスにしか届いていない場合、他の人は問い合わせが来たことすら知りません。
有給、出張、体調不良。年間で20日以上は必ず発生します。その日に来た問い合わせがどうなるかを、決めていない会社が多いです。
④ すぐ来た1件に時間を取られて、他が遅れる
これは意外と見落とされます。熱心な問い合わせが1件入ると、そこに手が吸い込まれます。見積もりを作り、資料を作り、電話をかける。気づくと半日経っていて、その間に来た他の3件が翌日に回る。
1件の商談化を追いかけている間に、他の3件を失う。これが、増えた会社でいちばん起きやすい損失です。
3. 先に決めておく4つ
上の4つは、決めごとを4つ置くだけで、ほぼ止まります。難しいことではありません。決めていないだけです。
① 誰が一次対応するか
1人を指名してください。「手が空いている人」ではなく、名前で決めます。そして、その人が休む日の代わりも、同時に決めておきます。
一次対応は、案件を判断できる人である必要はありません。「受け取りました、担当から◯日までにご連絡します」を返すだけなら、内容が分からなくても務まります。事務担当の方でも十分です。
② 何分・何時間以内に返すか
数字で決めてください。「なるべく早く」は守れません。現実的なのは、こうです。
- 営業時間内に来たもの ― 2時間以内に一次返信
- 営業時間外・休日に来たもの ― 翌営業日の午前中に一次返信
一次返信は中身の回答ではありません。受け取ったことと、次にいつ連絡するかを伝えるだけです。それなら2時間以内は無理な数字ではありません。
③ どこまで自分で答えてよいか
ここが決まっていないと、一次対応の人は何も返せなくなります。答えてよい範囲を、先に線引きしてください。
- 答えてよい ― 営業時間、対応エリア、おおよその納期、公開している料金
- 担当に回す ― 個別の見積もり、対応可否の判断、値引き、納期の確約
線が引かれていれば、迷いません。そして、答えてよい範囲を広げるほど、返信は速くなります。料金の目安をサイトに公開しておくと、この範囲が広がります。
④ 誰に引き継ぐか
問い合わせの種類ごとに、引き継ぎ先を決めておいてください。「工事の相談は◯◯さん」「採用は社長」「請求の話は経理」。3つか4つで足ります。
そして、引き継いだことを、どこに書くかも決めます。口頭で「さっきの件お願いします」だけだと、その場で聞き逃されたら消えます。次のセクションで触れる記録表に1行足す、で構いません。
決めるのに、30分もかかりません
この4つ、会議を開くほどのことではありません。紙1枚に書き出して、朝礼で共有すれば終わります。難しいのは決めることではなく、決めていないまま件数が増えることです。
4. 通知の届け先を、1人にしない
決めごとと同じくらい大事なのが、ここです。どんなに担当を決めても、通知が1人にしか届いていなければ、その人が休んだ日に止まります。
個人のメールアドレスを、受け口にしない
フォームからの通知先が yamada@〜 のような個人アドレスになっている会社は、とても多いです。これを、共有の受け口に変えてください。
info@〜やcontact@〜のような、会社の代表アドレスを作る- そこに届いたものを、関係者2〜3人に自動で転送する
- 担当が休んでも、他の人が見られる状態にする
独自ドメインでメールアドレスを増やす方法は 独自ドメインとメールアドレスは、どこで何を契約すればいいか に書きました。アドレスを1つ増やすのに、たいてい追加費用はかかりません。
転送だけだと、既読が分からない
転送で複数人に届く形にすると、今度は「誰が見たか」が分からなくなります。②の「誰も返していない」が起きる形です。
対策は2つあります。
- チャットツールに流す。SlackやChatworkに通知を飛ばして、対応した人がスタンプを付ける。誰が見たかが一目で分かります
- 記録表に1行足すのを、対応の起点にする。表に名前を書いた人が担当、と決めてしまう
どちらでも構いません。大事なのは、「見た」「返した」が他の人から見える状態にすることです。
通知に気づける状態にする
もう1つ。1日に100通メールが届く受信箱では、問い合わせの1通は埋もれます。件名に決まった文字列を入れておいて、振り分ける。「【お問い合わせ】」のような形です。
そして、その条件だけスマートフォンの通知をオンにしておく。外出中でも気づけます。
5. 問い合わせを、3つに仕分ける
件数が増えたときに効くのが、受け取った瞬間に仕分けることです。全部を同じ熱量で扱おうとすると、社内が持ちません。
時期・予算・担当者名のどれかが具体的に書かれている問い合わせ。ここは最優先で、2時間以内に日時の候補を出します。返信の目的は説明ではなく、話す約束を取ることです。
「来年あたり考えている」「まずは資料が欲しい」。今すぐの商談にはなりませんが、捨てると一番もったいない層です。資料を送り、記録表に次に連絡する月を書いておきます。
対応できない依頼、営業やスパム。ここを放置すると、返さなければという気持ちだけが残り、他の対応まで重くなります。断ると決めた瞬間に、その日のうちに返します。
仕分けは受け取った直後に行い、以降は種類ごとの型に沿って処理します。社内が詰まる原因は、量ではなく、全件を同じ手順で扱っていることです。②を捨てず、③を溜めない。この2つで、①に使える時間が増えます。
仕分けは、受け取った瞬間にやる
後で仕分けようとすると、溜まります。通知を見た時点で、3つのどれかを決めてください。判断に迷うものは①に入れておけば安全です。
判断の材料は2つで足ります。時期が書いてあるか。対応できる範囲か。この2つで、ほぼ分かれます。
②を捨てないための、たった1行
「来年考えています」という問い合わせは、その場では何にもなりません。だから多くの会社が、資料を送って終わりにします。そして、忘れます。
やることは1行だけです。記録表に「次に連絡する月」を書く。それだけで、半年後に「そろそろいかがですか」の連絡が出せます。
私が現場で見てきた限り、問い合わせが増えた会社が取りこぼしているのは、断られた案件ではなく、この②です。数としてはいちばん多いのに、いちばん扱いが雑になります。
全部を同じ手順で扱わない
3つに分けると、社内の負荷が変わります。①に集中でき、②は仕込みに回り、③は当日中に終わる。量が増えたのに、詰まらなくなります。
6. 対象外を、早く丁寧に断る
3つ目の話を、もう少しだけ書きます。ここは軽く見られがちですが、実は次の仕事につながる場所です。
断りは、信用を落としません
「断ったら悪い印象になるのでは」と気にされる方が多いのですが、逆です。待たせた末に断られるより、その日のうちに「今回はお力になれません」と返ってくるほうが、相手の受け取り方はずっと良い。
そして、丁寧に断られた相手は、その会社を覚えています。後日、条件が合う案件が出たときや、知り合いに聞かれたときに、名前が出てきます。断り方から紹介が返ってくることは、実際にあります。
断るときに、1行足す
断りの文面に、代わりの選択肢を1行足してください。
「恐れ入りますが、弊社は◯◯には対応しておりません。◯◯であれば△△様がお詳しいので、よろしければお名前をお伝えします」
紹介先が思いつかないときは、探し方だけでも書けます。「◯◯の資格を持っている事業者にお問い合わせいただくのが確実です」で十分です。
営業電話・営業メールの見分け方
フォームには、売り込みも入ってきます。見分け方は、慣れればすぐです。
- こちらの商売の話が一切出てこない(送信者の商品の説明だけ)
- 宛名が会社名ではなく「ご担当者様」だけ
- 同じ文面が、複数の会社に送られている形跡がある
- 返信を促すのではなく、資料の受け取りやアポイントを求めてくる
これらは、③として処理してください。返信しないことにする、と決めておけば、迷いません。
スパムが増えたときの対処
明らかな機械送信が増えたら、フォーム側で対策します。ここで注意していただきたいのが、対策の選び方です。
見えない入力欄を仕込んで、そこに入力があったら弾く、という方法が紹介されていることがあります。これは避けてください。画面読み上げソフトを使っている方が入力欄に気づいて記入してしまい、正当な問い合わせが弾かれます。しかも、弾かれたことが送信者にも運営側にも伝わりません。
使うなら、画面に表示される仕組みにしてください。Cloudflare Turnstile や reCAPTCHA のように、確認が行われていることが見える形のものです。フォームの作り自体については 問い合わせフォームで、人はどこで手を止めるのか に書きました。
7. 記録の残し方と、繁忙期の逃げ道
表計算1枚で足ります
「管理ツールを入れないと」と考える方が多いのですが、月10件程度なら、表計算ソフト1枚で十分です。列は5つ。
- 日付(受信日)
- 経路(フォーム/電話/紹介/地図/チラシ)
- 内容(1行。相手の言葉のまま)
- 担当(誰が対応しているか)
- 結果(商談/保留・◯月に再連絡/対象外)
これだけです。新しい列を足したくなったら、まず半年運用してからにしてください。列が多い表は、埋められなくなって止まります。
そして、この表があると③の状況が一目で分かります。「誰も担当欄に名前を書いていない行」が、取りこぼしです。
経路を残しておくと、次にどこへ力を入れるか分かる
5列のうち、後から効いてくるのが経路です。半年分溜まると、こんなことが見えます。
- フォームからは10件来ているが、商談になったのは1件
- 紹介は3件しか無いが、3件とも成約している
- 地図からの電話は、そもそも対象外が多い
件数が多い経路と、実になる経路は、たいてい別です。これが分かると、次にどこに時間とお金を使うかが決まります。逆に、経路を残していないと、「なんとなく広告を増やす」しかできません。
サイト側で何を測るかは ホームページを作ったあと、何を測ればいいか に書きましたが、経路の記録だけは、ツールより手書きの表のほうが正確です。電話で「チラシを見て」と言われた情報は、解析ツールには載らないからです。
繁忙期に回らなくなったときの逃げ道
決めごとを作っても、繁忙期には守れなくなります。そのときのために、逃げ道を2つ用意しておいてください。
1つ目は、自動返信で受付の時刻を伝えることです。
「お問い合わせありがとうございます。順次ご返信しておりますが、現在お時間をいただいております。3営業日以内にご連絡いたします。お急ぎの場合はお電話ください」
期待値を先に伝えるだけで、遅いと思われなくなります。繁忙期のあいだだけ、この文面に差し替える。それだけです。
2つ目は、フォームに選択肢を1つ足すことです。「ご相談の時期」という項目を作って、「すぐに」「3ヶ月以内」「まだ未定」から選んでもらう。送信された時点で、①②の仕分けが済んでいる状態になります。仕分けの手間が消えるので、繁忙期でも詰まりません。
ただし、項目を増やすと送信率は下がります。足すなら1つまでにしてください。
決めたことを、1枚の紙にする
最後に、いちばん効くことを書きます。ここまで決めたことを、A4の紙1枚にまとめて、電話の横に貼ってください。
書くのは5行だけです。
- 一次対応は◯◯さん(休みの日は△△さん)
- 営業時間内は2時間以内、時間外は翌営業日の午前中に一次返信
- 答えてよいのは、営業時間・エリア・おおよその納期・公開料金まで
- 工事は◯◯さん、採用は社長、請求は経理に回す
- 受けたら、記録表に1行書く
共有フォルダのファイルにすると、誰も開きません。紙で、目に入るところに貼る。これが、決めたことが守られるかどうかを分けます。
手を付ける順番
Step 1(今週) ― 一次対応の担当と、返信までの時間を決める。紙に書いて貼る
Step 2(今月) ― 通知の届け先を共有の受け口に変え、2人以上に届くようにする
Step 3(来月から) ― 記録表を5列で始める。3ヶ月続けば、経路ごとの成果が見え始めます
8. 雄喜晃の伴走:受け口までを作り、社内の決めごとはご一緒します
私たち雄喜晃がサイトをお作りするとき、問い合わせが「届いて、複数人が気づける」状態までを範囲としています。共有の受け口を作り、通知先を複数にし、自動返信を入れ、送信数を数えられるようにする。ここまでは制作の中に含まれます。
そのうえで、公開前に必ず伺うのが、「最初に受けるのは誰ですか」という質問です。ここが決まっていないまま公開すると、増えた分がそのまま社内の負荷になります。分析や提案だけで終わらせず、運用の入口まで一緒に決めるのが、私たちのやり方です。
一方で、私たちがやらないことも書いておきます。問い合わせへの返信そのものを代行することはしていません。一次返信の型を一緒に作り、記録表の形を整えるところまではお手伝いしますが、返すのは貴社です。最初の返信が貴社の言葉であることに、いちばん価値があると考えているからです。
もう1つ。営業の代行や、商談への同席もしていません。そこは私たちの領分ではありません。決めごとを紙1枚にして、それが回るところまでを見届ける。それが範囲です。
「問い合わせは増えたのに、社内が回らなくなってきた」という会社には、私たちは間違いなくお役に立てます。まずは、直近1ヶ月の問い合わせが誰にどう届いているかを見せてください。実際にお作りしたサイトは 制作実績、料金と条件は ホームページ制作のページ に載せてあります。
9. まとめ:文章より先に、決めごと
問い合わせが増えたあとに社内が詰まらないようにするために、必要なことは3つです。
- 一次対応の担当と、返信までの時間を決める ― 名前で指名し、休みの日の代わりも決める
- 通知の届け先を、共有の受け口にする ― 個人アドレス1つだと、その人が休んだ日に止まります
- 3つに仕分けて、返し方を変える ― すぐ商談/時期が先/対象外。②を捨てず、③を溜めない
この3つに、費用はかかりません。決めるのに30分、貼る紙が1枚です。それだけで、月10件でも回るようになります。
そして、これはサイトを作り直しても解決しません。どんなに良いサイトでも、届いた問い合わせを社内で受け止められなければ、増えた分だけ取りこぼしが増えるだけです。順番が逆になっている会社が、本当に多いです。
まずは、「今日フォームから問い合わせが来たら、誰の画面に出ますか」を社内で聞いてみてください。即答できなければ、そこが最初に決めるところです。
ぜひ一度、お話を聞かせてください。増えた問い合わせを、取りこぼさない形にするところから、ご一緒します。