1. 「社員紹介、要りますか」と聞かれます
中小企業の経営者の方とお話していて、こんな言葉をよく聞きます。
「社員紹介のページ、他社さんはだいたい作ってますよね。うちも作ったほうがいいんでしょうか。写真を撮るのも大変だし、正直、何を書けばいいのかも分からなくて」
この質問には、いつも同じ答え方をしています。要る会社と、要らない会社があります。そして、その分かれ目ははっきりしています。
分かれ目は人で選ばれる仕事かどうか。ここだけです。デザインの流行でも、会社の規模でもありません。人で選ばれる仕事なら社員紹介は強い武器になり、そうでないなら、同じ手間を別のページに使ったほうが効きます。
この記事では、その分かれ目の判定の仕方と、作ると決めた場合に何を載せるか、そして掲載の同意と、退職後にどうするかを書きます。最後の点は後回しにされがちですが、あとから困るのはたいていここです。
採用の文脈でのホームページの役割は 採用のためのホームページ ― 求人媒体との役割分担 にまとめてあります。
2. 人で選ばれる仕事か、そうでないか
まず判定です。難しく考える必要はありません。貴社の仕事が、「誰が担当するか」で中身が変わるかどうか。それだけを見てください。
人で選ばれる仕事
- 美容室・ネイル・エステ ― 指名という仕組みがある時点で、人で選ばれています
- 治療院・整体・歯科・クリニック ― 体に触れる仕事は、誰がやるかが判断に直結します
- 士業(税理士・社労士・行政書士など) ― 相談する相手を選んでいます
- 工務店・リフォーム・設計 ― 家に何度も来る人なので、人柄が判断材料になります
- 保険・不動産・車販売など、営業が個人につく商売 ― 担当が変わると関係が切れる仕事です
これらに共通しているのは、お客様が「この人にお願いする」と決めていることです。会社を選んでいるのではありません。だから、人が見えないと選べません。
そうでない仕事
- 部材・資材の卸 ― 品揃え、価格、納期で決まります
- 下請けの加工・製造 ― 図面どおりに作れるか、精度が出るか、納期を守れるかです
- 機械や設備が仕事をする商売 ― 印刷、運送、倉庫、検査など。設備の能力が判断材料です
- 通販・EC ― 商品と価格と配送で決まります
こちらの会社が社員紹介を作っても、読まれないわけではありませんが、判断は動きません。同じ時間を、設備の写真や対応可能な仕様の一覧に使ったほうが、確実に効きます。
判定に迷ったときの、1つの質問
境目にいる会社もあります。そのときは、こう考えてください。
お客様から「〇〇さんはいますか」と名指しの電話がかかってくることがあるか。
あるなら、人で選ばれています。無いなら、選ばれていません。私が現場で見てきた限り、この質問の答えはほぼ外れません。社内で1分あれば確かめられます。
3. 目的が2つあり、載せるものが違う
作ると決めた場合、次に決めるのは目的です。信用のためか、採用のためか。この2つは、見た目は似ていても中身がまったく違います。
| 目的 | 誰を載せるか | 何を書くか | 更新の負担 |
|---|---|---|---|
| 信用目的(お客様が見る) | 代表1人で足りることが多い。技術者が売りなら、資格を持つ人を数名まで | 経歴、資格、何年やっているか、この仕事を選んだ理由。3〜5行で足ります | 小さい。代表が変わらない限り、数年そのままで問題ありません |
| 採用目的(応募者が見る) | 応募者と年齢や経歴が近い人を2〜4名。代表だけでは足りません | 入社の経緯、1日の流れ、大変だったこと、続けている理由。1人あたり600〜1000字 | 大きい。退職や異動のたびに手を入れる必要があります |
| 両方を1ページで兼ねる | 兼ねられません。読む人が違い、知りたいことも違います | 兼ねようとすると、どちらにも届かない当たり障りのない文章になります | 中途半端に大きい。手間だけかかって効きません |
読み方は上から順にです。先に目的を1つ決めてから、載せる人を決めてください。順番を逆にして「まず全員の写真を撮る」から始めると、撮ったあとで何を書くかが決まらず、そこで止まります。実際、社員紹介が途中で止まっている会社のほとんどが、写真から始めています。信用目的なら代表1人、採用目的なら応募者に近い2〜4名。この人数を先に決めるだけで、公開までの時間が大きく変わります。
信用目的なら、代表1人で足りることが多い
お客様に向けた信用のためなら、載せるのは代表1人で足りる場面が大半です。士業でも工務店でも、お客様が確かめたいのは「責任者はどんな人か」だからです。
書く内容も長くなくて構いません。経歴、資格、この仕事を何年やっているか、なぜこの仕事をしているか。3〜5行です。顔写真を1枚添えれば、それで信用の役割は果たします。
技術者の資格が売りになる業種(設計、施工管理、整備など)だけは、資格保有者を数名まで載せると効きます。ただしそれは社員紹介というより、体制の説明です。人柄ではなく、資格と経験年数を並べる形で構いません。
採用目的なら、代表だけでは足りない
一方、応募者に向けるなら代表1人では足りません。応募者が知りたいのは「自分と同じ立場の人がどう働いているか」だからです。
代表の話は、応募者にとっては「会社の方針」であって、「自分の毎日」ではありません。入社2年目の人の1日のほうが、はるかに具体的に効きます。
4. 採用目的で聞く、4つの質問
採用向けに書くなら、本人に聞くのはこの4つで足ります。そのまま順番に聞いてください。
① 入社の経緯
前は何をしていて、どうやってこの会社を知り、なぜ決めたか。ここがいちばん読まれます。応募者は、自分と似た経路を探しているからです。
「求人サイトで見つけて、他に3社受けていました」「知人の紹介です」。飾らない事実がそのまま効きます。
② 1日の流れ
朝何時に来て、何をして、昼をどう取って、何時に帰るか。時刻を入れてください。「9時出社、17時退社」ではなく、「7時半に出て、午前中に2件回って」のように書くと、応募者が自分の生活に置き換えられます。
残業がある日とない日の両方を書くと、なお正確に伝わります。
③ 大変だったこと
ここを書けるかどうかで、ページの説得力が変わります。「最初の3か月は、専門用語が分からなくて毎日調べていました」「現場に慣れるまで半年かかりました」。
大変だった話が1つも無い社員紹介は、読む人に何も残しません。応募者は良いことしか書いていない文章を、日常的に大量に読んでいます。
④ やめようと思ったことと、そのとき何があったか
これが4つの中でいちばん効きます。やめようと思ったことが一度も無い人は、まずいません。
聞き方は、こうです。「一度もやめようと思わなかった、という人はいないと思うんですけど、そういう時期はありましたか。そのとき、何があって続いたんですか」。
続いた理由が「先輩が声をかけてくれた」「一度任せてもらえた」「給料が上がった」。どれでも構いません。事実であることのほうが大事です。この一節があるだけで、他社の社員紹介と完全に差がつきます。
きれいごとだけの社員紹介は、見抜かれます
強めに書きます。「風通しが良く、アットホームな職場です」「毎日やりがいを感じています」だけで構成された社員紹介は、応募者に見抜かれます。
理由は単純で、どの会社のページにも同じ文が載っているからです。書いてあることが同じなら、読む側は「実際には言わされているのだろう」と判断します。逆効果になることさえあります。
対策も単純です。固有名詞、時刻、数字、そのとき本人が実際に言った言葉を入れる。「アットホーム」を消して、「入社初日に、先輩が昼ごはんに連れて行ってくれました」と書く。それだけで、文章が本物になります。
5. 写真を、どう扱うか
社員紹介で止まる原因の第1位は写真です。ここを軽くする方法を書きます。
全員のプロ撮影は要りません
スタジオで全員を撮る必要はまったくありません。費用も日程調整も重く、そこで計画全体が止まります。
私が現場で見てきた限り、きれいに撮った証明写真のような写真より、働いている場面の写真のほうが効きます。理由は、応募者が見たいのが顔ではなく仕事の様子だからです。
- 作業をしている手元
- お客様と話している場面(後ろ姿でも構いません)
- 現場、車両、道具と一緒に写っているところ
- 事務所で普通に仕事をしているところ
スマートフォンで十分です。撮り方の基本は 写真が1枚も無い会社の、ホームページの作り方 に書いたとおりで、明るい時間に、窓を背にせず、横向きで撮れば失敗しません。
顔を出したくない人への配慮
顔を出したくない人は、必ずいます。理由を聞く必要はありません。前職との関係、家庭の事情、単に嫌だという感覚。どれも尊重すべきです。
出せない場合の選択肢を、先に用意しておいてください。
- 後ろ姿や手元だけの写真にする
- イニシャル表記にする(「入社3年目 T・Kさん」)
- 写真は無しで、文章だけ載せる
- その人は載せない
載せない選択を、本人が気まずくならない形で提示することが大事です。「載せてくれる人だけでいい」と最初に言っておくと、断りやすくなります。
なお、写真に写り込んだ他の人にも注意が必要です。現場の写真に取引先の担当者や、他社の作業員が写っていることがあります。権利まわりの考え方は ホームページの写真と文章、権利はどうなっているか に整理しました。
6. 掲載の同意と、退職後の扱い
ここがこの記事でいちばん大事なところです。後から困るのは、ほぼ全部ここです。
掲載前に、本人の同意を取る
口頭で「載せていい?」と聞くだけでは足りません。何が載るのかを見せてから、同意を取ってください。
具体的には、公開前に本人へ次を確認します。
- 載る内容(原稿の全文を読んでもらう。要約ではなく全文です)
- 載る写真(実際に使う1枚を見せる)
- どこに載るか(自社サイトのどのページか。他に転載する予定があるなら、それも)
- 名前の表記(フルネームか、名字だけか、イニシャルか)
原稿を読んでもらう工程は省かないでください。話した内容と、記事になった文章は必ず違います。本人が「そんなつもりで言っていない」と感じる箇所は、ほぼ確実に出ます。
退職後にどうするかを、最初に決めておく
これを先に決めていない会社が、本当に多いです。退職した人から「消してください」と連絡が来たときに、初めて考えることになります。
先に決めておくのは、この3つです。
- 退職したら、いつ消すか(「退職日から1か月以内に削除する」のように期限を決める)
- 誰が消す作業をするか(担当者名まで決める。決めないと残ります)
- 本人から申し出があったら、退職前でも消すか(「申し出があれば、理由を問わず速やかに削除する」と決めておくのが無難です)
そして、この3つを本人に伝えたうえで、同意を取ります。「辞めたあとも載り続けるのでは」という不安が消えるので、同意も得やすくなります。
書面である必要は必ずしもありませんが、メールなど、後から確認できる形で記録を残してください。「〇月〇日に、内容と写真を確認いただき、掲載のご了承をいただきました」の1通で足ります。記録があるかどうかは、数年後に効いてきます。
更新されない社員紹介は、古さを見せます
もう1つ、実務上の問題があります。退職した人が載り続けているページは、会社が止まって見えます。
来訪者から見れば、「更新されていないサイト」の証拠がそこにあることになります。取引先が見れば不安になり、応募者が見れば「情報が古い会社」と受け取ります。載せていないほうが良かった、という状態です。
これは、載せる人数を絞る理由でもあります。10人載せれば、退職のたびに10分の1ずつ古くなります。3人なら、手を入れる回数は3分の1です。
更新が続く会社と止まる会社の違いは、熱意ではなく仕組みの差です。詳しくは 更新を続けられる会社と、止まる会社の違い に書きました。社員紹介は、更新の負担がいちばん重いページだと理解したうえで作ってください。
7. 少人数の会社が、無理に「チーム」を演出しない
もう1つだけ、よく見る失敗を書いておきます。
3人の会社が、20人の会社のふりをしない
社員が3人の会社が、大企業の採用サイトを真似て「多様なメンバーが活躍しています」と書く。これは、ほぼ必ず伝わります。写真に写っている人数と、書いてある内容が合わないからです。
そして、合っていないことに気づいた人は、他の記述も疑い始めます。実績も、条件も、全部です。1つの誇張が、ページ全体の信用を下げます。
少人数であることは、書いたほうが効きます
逆に、少人数であることをそのまま書くと、刺さる人には強く刺さります。
- 「3人でやっています。全員が全部の工程をやります」
- 「制度はまだ整っていません。一緒に作ってくれる人を探しています」
- 「社長と2人で現場に行く日が、月に何度かあります」
大人数の組織が向いている人には、最初から見送ってもらったほうがお互いに良いです。採用は、来た人数ではなく、合う人が来たかどうかで測るものです。
社員紹介より先に効くもの
最後に、順番の話です。社員紹介を作る前に、先に効くものが3つあります。
- 代表の考え ― なぜこの会社をやっているか。中小企業では、ここが待遇より読まれます
- 実績 ― どんな仕事を、どんな規模でやってきたか。信用にも採用にも効きます
- 断っている仕事 ― 何をやらないか。ここを書いている会社はほとんど無いので、書くだけで差がつきます
3つ目は意外に思われますが、効きます。「この規模の案件はお受けしていません」「この種類の工事は専門外なので、他社をご紹介しています」。断る基準が書いてある会社は、判断の軸がある会社として読まれます。
この3つが空のまま社員紹介だけを作っても、効果は限定的です。順番が逆になっている会社が、本当に多いという印象を持っています。
8. 雄喜晃の伴走:要らないと申し上げることもあります
私たち雄喜晃のホームページ制作では、社員紹介ページを作らない提案をすることがあります。人で選ばれない業種で、更新する人も決まっていない場合です。作れば費用も手間もかかり、そのうえ数年後に古い情報が残るからです。
その場合は、代わりに何を作るかをご提案します。代表の考えを1ページにする、実績を増やす、体制を資格と経験年数で説明する。同じ手間で、確実に効くほうへ寄せます。
制作費は0円、月額8,800円(税別)にサーバー・ドメイン・SSL・保守が含まれています。月5回までの更新代行も含まれているので、退職に伴う削除は、ご連絡いただければこちらで対応します。社員紹介を作る場合に、いちばん止まりやすいのがこの作業だからです。
一方で、私たちがやらないことも書いておきます。社員インタビューの撮影や、映像の制作はしていません。本格的な採用ブランディングが必要な規模であれば、その領域を専門にしている会社のほうが確実です。そこは正直に申し上げます。
そして、掲載の同意を本人から取る作業を、私たちが代行することはしません。これは会社と社員の間の話であり、外部が間に入ると、かえって本人が断りにくくなるからです。私たちがするのは、確認すべき項目を整理してお渡しすることと、同意が取れた分だけを形にすることです。
「社員紹介を作るべきか迷っている」という会社には、私たちは間違いなくお役に立てます。まず、要るのか要らないのかを一緒に見るところからで構いません。実際にお作りしたサイトは 制作実績、料金と条件は ホームページ制作のページ に載せてあります。
9. まとめ:要る会社と、要らない会社があります
社員紹介ページの判断に必要なことは、4つです。
- 人で選ばれる仕事かどうかで決める ― 名指しの電話が来るかどうかが判定材料です
- 信用目的か採用目的かを、先に1つ決める ― 兼ねようとすると、どちらにも届きません
- 採用目的なら、大変だったこととやめようと思った話を聞く ― きれいごとだけの文章は見抜かれます
- 掲載の同意と、退職後の扱いを最初に決めておく ― 消す期限と担当者まで決めて、記録に残します
そして、載せる人数は絞ってください。人数が多いほど、古くなる速度も上がります。
作らないという判断も、立派な結論です。社員紹介が無いことで失注した会社を、私は見たことがありません。一方で、退職した人が載り続けているサイトは、何度も見ています。
まずは今日、「〇〇さんはいますか」という電話が来るかどうかを、社内で聞いてみてください。答えが出れば、作るかどうかは決まります。
ぜひ一度、お話を聞かせてください。要るものと要らないものを分けるところから、ご一緒します。