1. 「これからは動画だと言われて」
中小企業の経営者の方とお話していて、こんな言葉をよく聞きます。
「知り合いに、これからは動画の時代だからホームページにも動画を入れたほうがいいと言われまして。ただ、何を撮ればいいのか分からないし、作ってもらうと高そうで。本当に要るんでしょうか」
この迷いは、とても自然なものです。動画は目立ちますし、よそのサイトで見ると立派に見えます。一方で、撮るのも直すのも手間がかかり、置き方を間違えるとサイトが重くなります。
結論を先に書きます。動画は、写真と文章では伝わりにくいものがあるときにだけ効きます。全部の会社に要るものではありません。逆に、伝わりにくいものがはっきりしている会社なら、スマートフォンで撮った30秒の動画でも十分に役に立ちます。
この記事で書くこと
- 動画が効く4つの場面と、効かない場面
- トップページの背景動画が重くなる理由と、代わりの形
- 動画をどこに置き、どう埋め込むか
- スマートフォンで短い動画を撮るときのコツ
- 音を出さずに見る人に伝える工夫と、字幕
2. 動画が効く場面は、4つ
動画が写真や文章より強いのは、時間の流れ、声、動き、空気を伝えられるところです。言い換えると、この4つのどれかが伝わらないと困る商売で、動画は効きます。
たとえば、塗装の下地処理、部品の加工、料理の仕込み。写真では「前」と「後」しか見せられませんが、動画なら間の手間が伝わります。
たとえば、代表や担当者が1分ほど話す動画。士業や教室、介護のように、誰に頼むかで選ばれる商売で効きます。
たとえば、製品の取り付け方、予約画面の使い方。文章で10行かかる説明が、20秒で済むことがあります。
たとえば、飲食店の席の間隔、教室の明るさ、待合室の静けさ。写真では切り取られてしまう「入ったときの感じ」です。
外観、商品の正面、料金、営業時間、アクセス。止まっている情報や、読んで確かめたい情報は、動画にすると探しにくくなります。
動画にするかどうかは、写真と文章で伝えようとして、伝わらなかったものがあるかで決めます。思い当たるものが無ければ、今は動画を作らなくて構いません。
いちばん効くのは「よく聞かれること」
4つのどれに当たるかを考えるときの近道があります。電話や商談で、毎回口で説明していることを思い出してください。「どうやって取り付けるんですか」「店の中はどんな感じですか」「どんな人が担当ですか」。
毎回同じ説明をしているなら、それは写真と文章では伝わっていないということです。そこを動画にすると、見た人は説明を受けたあとの状態で連絡してきます。
1本で全部を伝えようとしない
効く場面が見つかったら、1本の動画には1つのことだけを入れます。工程も人柄も雰囲気も入れた会社紹介の動画は、どれも中途半端になりがちです。短い動画を、それが効くページにそれぞれ置くほうが伝わります。
3. 動画が効かない場面
効く場面と同じくらい、効かない場面を知っておくことが大事です。作ってから「見られていない」と分かるのが、いちばん損だからです。
読んで確かめたい情報
料金、営業時間、対応エリア、アクセス、会社の所在地。こうした情報は、読む人が自分のペースで確かめたいものです。動画の中で話していても、どこで言っていたかを探すのに時間がかかります。動画を作る場合でも、こうした情報は必ず文章で書いておきます。
長い会社紹介の動画
数分ある会社紹介の動画は、作る側には達成感がありますが、最後まで見られることはあまり期待できません。見る人は、自分が知りたいことだけを探しています。会社の歴史から始まる動画は、知りたいことにたどり着く前に閉じられます。
直せない動画
動画は、写真や文章と違って、一部だけ直すのが難しいものです。出ていた社員が辞めた、価格が変わった、店の内装を変えた。そのたびに撮り直しになります。古くなりやすい情報は動画に入れず、変わりにくいもの(工程、手つき、空気)を撮るのが長持ちさせるコツです。
作ること自体が目的になっている動画
「動画があるほうが今っぽいから」という理由だけで作ると、置く場所もあとから考えることになります。何のページの、どこに置いて、見た人に何をしてほしいか。これが言えない動画は、作る前に一度止めてください。ホームページとSNSのどちらに手間をかけるかという順番の話は ホームページとSNS、どちらに時間を使うべきか に書きました。
4. トップの背景動画は、重くなる
よくご相談いただくのが、トップページを開いたら全面に動画が流れる、あの形です。見た目の印象は強いのですが、中小企業のサイトではおすすめしにくい理由があります。
開いた瞬間に、いちばん重いものを読み込む
背景の動画は、サイトを開いた直後に読み込まれます。写真に比べて、動画はデータが大きくなりがちです。事務所のWi-Fiでは気にならなくても、外でスマートフォンから開いた人は、真っ白な画面か、止まった画面を見て待つことになります。
待っている間に閉じられたら、その下に書いた大事な説明は読まれません。サイトの重さの測り方と直し方は ホームページが重いと言われたときに、まず見るところ にまとめてあります。
流れても、伝わらないことが多い
背景の動画は、その上に文字を重ねることがほとんどです。動いている背景の上の文字は、読みにくくなります。そして、数秒ごとに切り替わる映像は、何の会社なのかを伝えるには向いていません。最初の画面で伝えるべきなのは、何の会社で、どこの会社で、何を頼めるのかです。
また、スマートフォンでは、省電力の設定などによって自動で再生されないこともあります。その場合、見る人には止まった1コマだけが表示されます。
代わりの形
トップの最初の画面は、写真1枚と、何の会社かが分かる一文にします。動画は、そのすぐ下か、効くページの中に置きます。見たい人だけが再生ボタンを押す形です。
どうしても背景に動きを入れたい場合は、次の4つを守ってください。
- 短くする ― 数秒の映像を繰り返す。長い映像を流さない
- 軽くする ― 画質を落とし、音を入れない
- 止められるようにする ― 動きが苦手な人のために、止めるボタンを置く
- 止まっても成り立つようにする ― 再生されなかったときの1枚目が、写真として見られる絵にする
5. 置き場所は、動画サービスにして埋め込む
動画を載せると決めたら、次はどこに置くかです。ここで選び方を間違えると、サイト全体が重くなります。
自社のサーバーに、直接置かない
動画のファイルを、サイトと同じサーバーにそのまま置くこともできます。ただ、見る人が多いほどサーバーの負担が大きくなり、スマートフォンの電波の状態に合わせて画質を変える、といった工夫も自分で用意しないといけません。
そこで、YouTube などの動画サービスに置き、それをページに埋め込む形が現実的です。再生の安定や画質の切り替えは、動画サービスの側が受け持ってくれます。会社の公式のチャンネルを作って置いておけば、あとから別のページに使い回すのも簡単です。
公開の範囲を決める
動画サービスに置くときは、公開の範囲を決めます。サイトに埋め込む動画だけを置きたい場合は、検索や一覧に出ない公開の方法を選べるサービスもあります。逆に、動画サービスの中でも見つけてほしいなら、普通に公開して、題名と説明文を丁寧に書きます。
あわせて、再生が終わったあとに他の動画が表示されるかどうかも確かめておきます。自社のページで再生したのに、最後に他社の動画が並ぶことがあるからです。
埋め込みも、読み込みが発生する
動画サービスに置いても、埋め込んだ時点で再生の部品が読み込まれます。1ページに何本も並べると、それだけで重くなります。
- 1ページに1〜2本まで ― 並べたいときは、一覧のページを別に作る
- 押してから読み込む形にする ― 最初はサムネイルの画像だけを置き、押したら再生の部品を読み込む
- トップページには置きすぎない ― 効くページに置き、トップからはリンクで送る
動画の中身は、文章でも書く
動画の中で話している内容は、ページの文章としては読まれません。動画を見ない人、音を出せない人もいます。動画の要点は、すぐ近くに3〜4行の文章で書いておきます。「この動画では、外壁の下地処理の手順を見ていただけます」。この一文があるだけで、再生するかどうかを選べます。
6. スマートフォンで撮る、短い動画
ホームページの動画は、プロに頼まなくても撮れます。伝えたいことが1つに決まっていれば、スマートフォンで十分です。
長さは、30秒から1分を目安に
工程や使い方の動画でも、まずは短く作ってみてください。長くなるのは、たいてい伝えたいことが2つ以上入っているときです。分けられるなら分けます。
撮るときの約束
写真と同じで、出来は撮る前にほとんど決まります。片付けと光の考え方は、写真の撮り方と変わりません。ホームページの写真を、社内のスマートフォンで撮る に書いた準備は、動画でもそのまま使えます。動画ならではの約束は、次の5つです。
- 横向きで撮る ― ホームページに置く動画の枠は、たいてい横長です。SNS用の縦の動画とは分けて考えます
- 固定して撮る ― 両手で持ち、脇を締めるか、棚や三脚に置きます。手ぶれは、見る人の酔いにつながります
- ズームしない、振り回さない ― 寄りたいときは、自分が近づきます。カメラを左右に振るのも最小限にします
- 1カットを短く ― 5〜10秒くらいのカットを何本も撮り、あとでつなぎます
- 音を確かめる ― 機械の音、換気扇、風。撮ったその場でイヤホンで聞き直します
電話でよく聞かれる説明から1つ選びます。たとえば「取り付けの手順」「店に入ってから席に着くまで」。
写り込む範囲だけを片付け、明るい時間に撮ります。写る人には、ホームページに載ることを伝えて了承をもらいます。
5〜10秒のカットを、順番どおりに何本か撮ります。同じ場面を2回ずつ撮っておくと、あとで選べます。
30秒から1分にまとめます。最初の数秒に「何の動画か」を文字で出し、話している部分には字幕をつけます。
決めておいたページに埋め込み、近くに要点を3〜4行の文章で書きます。スマートフォンで開いて、重くないかを確かめます。
特別な機材は要りません。決めること(①)と、確かめること(④⑤)に時間を使うほうが、仕上がりは良くなります。
写る人と、写り込むもの
社員やお客様が写る場合は、ホームページに載ることを伝え、了承をもらってから撮ります。退職したあとにどうするかも、先に決めておくと揉めません。写っている人の権利の考え方は ホームページの写真と文章、権利はどうなっているか にまとめました。
プロに頼むなら、撮影の日にまとめる
人柄を伝える動画や、店内の雰囲気の動画は、プロに頼むと仕上がりが大きく変わることがあります。頼むなら、写真の撮影と同じ日に、動画も撮ってもらうと段取りが一度で済みます。撮影の前に何を伝えておくかは カメラマンに撮影を頼むとき、何を伝えておくか に書いてあります。
7. 音なしで伝わるか、字幕をどうするか
動画を作ったら、最後に音を消して、最初から最後まで見てください。それで意味が通るかどうかが、動画が働くかどうかの分かれ目です。
音を出せない場所で見る人がいる
電車の中、職場の休み時間、待合室。ホームページを開く場所は、音を出しにくい場所であることが少なくありません。スマートフォンでは、音のついた動画が勝手に再生されない仕組みになっていることも多いです。音が無くても伝わる作りにしておけば、どこで開かれても困りません。
最初の数秒で、何の動画かを出す
再生を始めた人が、続けて見るかどうかを決めるのは最初の数秒です。ここで「何の動画か」を文字で出します。「外壁塗装の、下地処理の手順」「教室の入口から教室までの様子」。音が無くても、続きを見る理由が伝わります。
話す動画には、字幕をつける
代表や担当者が話す動画は、字幕が無いと音を出せない人にはまったく伝わりません。話している動画には、字幕をつけてください。
- 大きさ ― スマートフォンの画面で、目を近づけなくても読める大きさにする
- 位置 ― 画面の下に置き、顔や手元の大事な部分に重ねない
- 長さ ― 1回に出すのは短い1文。話し言葉の「えー」「あの」は削る
- 確認 ― 自動でつけた字幕は、社名、地名、専門用語をよく間違えます。必ず人の目で読み直す
字幕は、動画に直接焼き込む方法と、動画サービスの字幕機能で別に入れる方法があります。焼き込むとどこで再生しても出ますが、あとから直すときは作り直しになります。直す可能性がある内容なら、字幕機能のほうが楽です。
音が要る動画もある
店内の雰囲気の動画では、話し声や食器の音が「空気」の一部になることがあります。その場合も、最初の数秒の文字と、ページ側の説明文は入れておきます。音があればさらに伝わる、音が無くても意味は分かる。この形を目指してください。スマートフォンで見たときの使いにくさ全般は スマートフォンで見たときに、人が離れる7つのこと で確かめられます。
8. 雄喜晃の伴走:動画は、載せるかどうかの判断から一緒に考えます
私たち雄喜晃のホームページ制作では、動画を入れることを前提にはしません。最初のお打ち合わせで、電話や商談で毎回説明していることを伺い、そこに動画が効くかどうかを一緒に判断します。
私たちがやること
動画が効く場面があると分かったら、どのページの、どこに、何を見せる動画を置くかを決めます。社内のスマートフォンで撮っていただく場合は、撮る場面の一覧と撮り方の注意をお渡しします。
撮った動画は、動画サービスに置いたものを、サイトが重くならない形で埋め込みます。最初はサムネイルだけを置き、押したら読み込む形です。動画の近くには、要点を文章で書きます。動画の差し替えや、説明文の書き換えは、月5回までの更新代行の中でこちらで反映します。
料金と条件
料金は制作費0円、月額8,800円(税別)からです。6ページ構成のプランは月額13,800円(税別)です。サーバー、独自ドメイン、SSL、保守はすべて月額に含まれます。
最低契約期間は6ヶ月です。7〜35ヶ月で解約された場合、サイトは非公開になります。36ヶ月以上ご継続いただいた場合は、サイトをお渡しします。
私たちがやらないこと
見た目の印象のためだけに、トップページの全面に重い背景動画を置くことはしません。開くのが遅くなり、その下の大事な説明が読まれなくなるからです。また、動画を載せれば問い合わせが増える、といったお約束もしません。動画は、伝わりにくいものを伝える道具の1つで、それ以上のものではないからです。
「動画を入れたほうがいいと言われたけれど、何を撮ればいいか分からない」という方は、一度ご相談ください。撮らないほうがいい、という答えになることもあります。実際にお作りしたサイトは 制作実績、料金と条件は ホームページ制作のページ に載せてあります。神戸市北区鈴蘭台を拠点に、2025年10月から活動しています。
9. まとめ:動画は、伝わらなかったものにだけ使う
ホームページに動画を載せるかどうかで押さえることは、5つです。
- 効く場面は4つ ― 工程、人柄、使い方、店内の雰囲気。電話で毎回説明していることが候補
- 効かない場面を避ける ― 料金やアクセスは文章で。長い会社紹介と、すぐ古くなる内容は入れない
- トップの背景動画は慎重に ― 最初の画面は写真1枚と一文。動画は見たい人が押す形に
- 動画サービスに置いて埋め込む ― 1ページに1〜2本、押してから読み込む。要点は文章でも書く
- 音なしで伝わるように作る ― 最初の数秒で何の動画かを出し、話す動画には字幕をつける
動画は、あれば良いものではありません。写真と文章で伝えようとして、伝わらなかったものに使うと、はじめて働きます。
まずは今週、電話や商談で毎回口で説明していることを、3つ書き出してみてください。その中に、見せたほうが早いものがあれば、それが最初の1本の候補です。
ぜひ一度、お話を聞かせてください。動画が要るかどうかを決めるところから、ご一緒します。