1. 「理念のページ、ちゃんと作ったほうがいいんでしょうか」
中小企業の経営者の方とお話していて、こんな言葉を聞くことがあります。
「よその会社のサイトを見ると、経営理念とかミッションとか、立派な言葉が並んでいるでしょう。うちも創業のときに作った理念はあるんです。額に入れて事務所に掛けてある。ただ、正直なところ、社員が覚えているかどうか。あれをそのまま載せていいものか迷っていて」
この迷いは、まっとうです。理念はあるけれど、使われているかは分からない。載せれば会社らしく見える気もするし、載せたところで誰が読むのかとも思う。載せるか載せないかの前に、その理念が今の会社で生きているかどうかが引っかかっているのだと思います。
結論から書くと、理念は、載せ方次第で読まれるページになります。ただし条件があります。並べただけの理念は、ほとんど読まれません。そして、社内で使っていない理念は、載せないほうがいいこともあります。この記事では、その判断と書き方を順に整理します。
この記事で書くこと
- 並べただけの理念が読まれない理由
- 載せるか載せないかを決める問い
- 理念・ミッション・行動指針の役割の分け方
- 理念が仕事のどこに表れているかを、1つずつ添える書き方
- 言葉を難しくしないことと、採用で読まれる理由
2. 並べただけの理念が、読まれない理由
先に、よく見る理念のページがなぜ読まれないのかを見ておきます。
どの会社も、同じ言葉を使っている
「誠実」「信頼」「挑戦」「感謝」「お客様第一」「地域社会への貢献」。理念のページを何社か開くと、同じ言葉が、少しずつ並べ方を変えて出てきます。
どれも大切な言葉です。ただ、不誠実を掲げる会社はありませんし、信頼を軽んじる会社もありません。全員が使う言葉は、読む人にとって「書いていないのと同じ」になります。社名を同業他社に入れ替えても意味が通る文章は、貴社のことを何も伝えていません。
言葉が大きすぎて、仕事が見えない
もう1つの理由は、言葉の大きさです。「人と社会の未来に、新たな価値を創造する」。立派ですが、この会社が明日どんな仕事をするのかは、読んでも分かりません。
読む人が理念のページに来るのは、多くの場合、「この会社はどういう考えで仕事をしているのか」を確かめるためです。考えが仕事につながって見えないと、読む人は判断の材料を得られないまま、ページを閉じます。
3つの言葉が、区別されずに並んでいる
経営理念、ミッション、ビジョン、バリュー、行動指針、社是、クレド。呼び名がいくつも並び、それぞれの違いが書かれていないページもよく見かけます。
書いた側には違いがあっても、読む側には同じような言葉の繰り返しに見えます。結果として、どれも読み飛ばされます。言葉を増やすほど、1つ1つが薄くなります。
3. 載せるか、載せないかを決める
では、載せるべきかどうか。判断の軸は、言葉の出来ではありません。その理念が、社内で実際に使われているかどうかです。
3つの問いで確かめる
次の3つを、正直に確かめてみてください。
- 社員が、だいたいの意味を言えるか ― 一字一句でなくて構いません。何を大事にする会社かを、自分の言葉で言えるかどうか
- 判断に迷ったときに、持ち出されるか ― 「うちはこういう考えだから、この仕事は受けない」という会話が、実際にあるか
- 採用の面接で、話題にしているか ― 応募してきた人に、理念を説明したことがあるか
3つとも「いいえ」なら、その理念は、今のところ額の中にしかありません。
社内で使っていない理念は、載せない
厳しく聞こえるかもしれませんが、社内で使っていない理念は、載せないほうが安全です。
理由は、読む人が理念を約束として受け取るからです。「お客様の声に、誠実に向き合います」と書いてあれば、問い合わせた人はそれを期待します。社内で誰も意識していなければ、その期待はどこかで裏切られます。理念を載せたことで、かえって「書いてあることと違う」と言われる材料が増えてしまいます。
採用でも同じです。理念に惹かれて入社した人が、社内で誰もその話をしていないと気づいたとき、がっかりするのは当然です。
載せない代わりに、考えは代表挨拶で書く
理念のページが無くても、会社の考えを伝える場所はあります。代表挨拶です。整った理念文の形でなくても、代表が何を大事にして、そのために何をしているかを書けば、読む人には十分に伝わります。書き方は 代表挨拶のページに、何を書くか にまとめました。
理念を作り直している途中の会社も、整うまでは代表挨拶に任せて構いません。決まっていない言葉を、決まったもののように載せないことが大事です。
先代の理念を、そのまま残したいとき
代替わりした会社では、先代が作った理念をどう扱うかで迷うことがあります。言葉は古いけれど、外すのは気が引ける。そういう場合は、作られた年と、今の会社がそれをどう受け取っているかを添えて載せる形があります。
「この言葉は、創業者が〇〇年に定めたものです。今の私たちは、これを『△△』という意味で受け取り、□□という形で続けています」。こう書けば、古い言葉も今の仕事とつながって読めます。先代の言葉を書き換えずに、今の会社の考えも伝えられます。
4. 理念・ミッション・行動指針の役割を分ける
載せると決めたら、まず言葉の役割を分けます。呼び名は会社によって違いますが、中身は大きく3つに分かれます。
会社が何を大事にしているかの根っこです。めったに変わりません。たとえば「直したものを、長く使ってもらう」。
理念を、相手と仕事の中身に置き換えたものです。たとえば「地域の工場の設備を、止まる前に点検して、止まったら当日伺う」。
社員一人一人の動き方の決めごとです。たとえば「分からないことは、その場で答えず、確かめてから返す」。
3つは、上から下へ具体的になります。全部そろえる必要はありません。中小企業なら、理念を1つと、行動指針を3〜5つ。これだけでも十分に伝わります。
全部そろえなくていい
理念、ミッション、ビジョン、バリュー、行動指針と、全部の欄を埋めようとすると、言葉がどんどん増えます。増えた言葉のぶんだけ、1つ1つが軽くなります。
社員が数人から数十人の会社なら、理念を1つと、行動指針を3〜5つ。これで足ります。ミッションは、理念の下に一文で添えるくらいで十分です。呼び名も、社内でふだん使っている言い方に合わせてください。社内で「うちの心得」と呼んでいるなら、ページでも「心得」で構いません。
行動指針は、守れる数だけ
行動指針は、つい10も20も並べたくなります。あれもこれも大事だからです。ただ、覚えられない数の指針は、誰にも守られません。社員が言えるのは、多くても5つくらいまでだと考えてください。
増えてしまったときは、似たものをまとめるか、すでに当たり前にできているものを外します。残すのは、守るために少し意識が要るものです。そのほうが、読む人にも会社の色が伝わります。
呼び名より、問いで並べる
並べ方の工夫も1つあります。見出しを「経営理念」「ミッション」とするだけでなく、「私たちが大事にしていること」「誰のために何をするか」「日々の動き方」のように、答えている問いを添えてください。読む人は、呼び名の違いを知らなくても、何が書いてある欄かが分かります。
5. 1つずつ、仕事のどこに表れているかを添える
ここが、この記事でいちばんお伝えしたいことです。理念や行動指針を1つ書いたら、それが仕事のどこに表れているかを、1つずつ添えてください。
| 理念・指針の言葉 | 仕事のどこに表れているか | 添えると何が変わるか |
|---|---|---|
| 誠実に向き合う | たとえば「見積もりでは、やらなくてよい工事も、やらなくてよいとお伝えします」 | 言葉だけでは比べられないが、行動なら読む人が確かめられる |
| 地域とともに | たとえば「〇〇市と△△町に絞って、当日中に伺える距離を守っています」 | 「地域」がどこか、何をしているかが具体的に分かる |
| 挑戦を続ける | たとえば「毎年1つ、新しい資格を社員が取りに行く費用を会社が出しています」 | 求職者が、入ったあとの働き方を想像できる |
| お客様の声を大切に | たとえば「納品から1ヶ月後に、こちらから使い心地を伺うお電話をしています」 | 姿勢が約束の形になり、信じる材料になる |
左の言葉は、どの会社にも書けます。真ん中の一文は、貴社にしか書けません。中身は、実際にやっていることだけで書いてください。
添える一文は、実際にやっていることだけ
ここで気をつけたいのは、添える一文を、これからやりたいことで書かないことです。理念の横に書かれた行動は、読む人には「今やっていること」に見えます。やっていないことを書くと、それは理念ではなく作り話になります。
書く前に、「これは先月も、先々月も、実際にやっていたか」を確かめてください。やっていると言える行動が1つも出てこない理念は、3節に戻って、載せるかどうかを考え直す合図です。
見つからないときは、現場に聞く
仕事の表れは、経営者より現場のほうがよく知っています。「うちの理念が出ているな、と思う場面はあるか」と社員に聞くと、意外な答えが返ってきます。
「急ぎのお客様を、社長が待たせるなと言うから、昼休みでも電話に出ている」。こうした話は、理念のページに添える一文の、いちばん良い材料です。聞いた言葉は、言い回しも含めて書き留めておいてください。強みの探し方と同じ考え方で、「うちの強み」を、ホームページにどう書くか にも、現場から拾う方法を書きました。
代表挨拶との分担
代表挨拶でも、大事にしていることに行動を添える書き方をお勧めしています。違いは、誰の言葉かです。代表挨拶は代表個人の言葉、理念のページは会社として決めた言葉です。代表挨拶では理念が生まれた理由を語り、理念のページでは理念そのものと仕事の表れを並べる。こう分けると、内容が重なりません。
6. 言葉を難しくしない
理念の文章は、どうしても硬くなりがちです。額に入れる言葉だと思うと、つい漢字の多い、格調の高い表現を選びたくなります。
社員が口にできる言葉で書く
目安は、社員がふだんの会話で口にできる言葉かどうかです。「顧客満足の最大化を通じて、社会の持続的発展に寄与する」は、会話では出てきません。「直したあとも、長く使ってもらえる仕事をする」なら、現場でも言えます。
社員が言えない言葉は、社員に使われません。使われない言葉は、3節で書いたとおり、載せる理由が弱くなります。
漢語、カタカナ語、四字熟語を減らす
硬くなる原因は、だいたい3つです。漢字の熟語が続くこと、カタカナ語が多いこと、四字熟語で締めること。
- 漢字の熟語 ― 「創造」「貢献」「追求」が続いたら、1つを動詞の言い方に直す
- カタカナ語 ― 「イノベーション」「ソリューション」は、何を指すかを日本語で書く
- 四字熟語 ― 使うなら、その意味を一行で添える
英語のスローガンを掲げている会社もあると思います。その場合は、日本語でどういう意味かを、すぐ下に一文で書いてください。英語の響きは残しつつ、読む人が意味を取り違えずに済みます。
長さは、一息で読める程度に
理念は、一息で読める長さに収めてください。3行を超えると、読む人は途中で目を離します。長くしたくなったら、それは理念ではなく説明の部分です。説明は、5節の「仕事の表れ」のほうに回します。
声に出して読んでみる
書き上げたら、一度声に出して読んでみてください。つかえるところ、言いにくいところは、たいてい硬すぎる言葉が入っています。朝礼で読み上げても照れない言葉か、というのも1つの目安です。社員の誰かに読んでもらい、意味を聞き返されたところを直すと、さらに確かです。
7. 採用で、よく読まれる
理念のページは、お客様より、応募を考えている人によく読まれるページです。
求職者が確かめていること
応募を迷っている人は、待遇と同じくらい「どんな考えの会社か」「入ったら、どう動くことを求められるか」を気にしています。求人媒体で見つけた会社を社名で検索し、理念や代表挨拶を読んでから応募を決める。そういう流れは珍しくありません。
このとき、行動指針はとくに読まれます。行動指針は、入社したあとの働き方の予告だからです。「分からないことは、確かめてから返す」と書いてあれば、急かされて適当に答える職場ではなさそうだと受け取れます。
合わない人が、応募の前に分かる
理念を仕事の表れと一緒に載せておくと、考え方が合わない人は、応募の前に気づきます。それは損ではありません。入社してから合わないと分かるより、お互いにとって負担が小さくて済みます。
面接で「理念のページを読んで、どこに共感しましたか」と聞けるのも、載せておく利点です。応募した人がどこを読んできたかで、話の入り方が変わります。採用の場面でのホームページの役割は 採用のためのホームページ ― 求人媒体との役割分担 にまとめました。
置き場所と、ほかのページとの分担
置き場所は、会社概要の近くか、独立したページです。採用ページからは、必ずリンクしておいてください。求職者は採用ページから入ってくることが多いので、そこから理念へたどれないと、読まれる機会を逃します。
ほかのページとの分担も決めておきます。理念が生まれたいきさつは、沿革や創業の話のほうで書くと収まりがよくなります。書き方は 会社の沿革と創業のいきさつを、ホームページでどう伝えるか にあります。理念のページには、理念そのものと、仕事の表れだけを置きます。
理念を変えたら、サイトも直す
理念や行動指針を見直したら、サイトも同じ日に直してください。社内で配った新しい理念と、サイトの古い理念が食い違っている状態は、社員にも求職者にもすぐ気づかれます。会社案内や採用のパンフレットにも同じ言葉が入っていないか、あわせて確かめます。
8. 雄喜晃の伴走:社内で使っている言葉を、そのまま形にします
私たち雄喜晃がホームページをお作りするとき、理念のページを空欄を埋めるための作文で作ることはしません。最初のお打ち合わせで、理念が社内でどう使われているかを伺い、載せるかどうかから一緒に決めます。
私たちがやること
経営者の方や現場の方から、判断に迷ったときの話、お客様への対応で大事にしていることを伺います。その中から、理念や行動指針が仕事に表れている場面を拾い、理念の言葉と、仕事の表れの一文を並べる形に組み立てます。言葉が硬い場合は、意味を変えない範囲で読みやすい言い方をご提案します。代表挨拶、沿革、採用ページと内容が重ならないように、ページ同士の分担も決めます。
料金と条件
料金は制作費0円、月額8,800円(税別)からです。6ページ構成のプランは月額13,800円(税別)です。サーバー、独自ドメイン、SSL、保守はすべて月額に含まれます。月5回までの更新代行も同じ月額の中なので、理念や行動指針を見直したときの書き換えも、ご連絡いただければこちらで反映します。
最低契約期間は6ヶ月です。7〜35ヶ月で解約された場合、サイトは非公開になります。36ヶ月以上ご継続いただいた場合は、サイトをお渡しします。
私たちがやらないこと
貴社の理念そのものを、こちらで作ることはしません。理念は経営の判断なので、私たちが決める立場にはありません。それらしいカタカナ語や大きな言葉で飾ることも、実際にやっていない行動を「仕事の表れ」として書き足すこともしません。採用の応募数や検索の順位をお約束するような話もしません。
実際にお作りしたサイトは 制作実績、料金と条件は ホームページ制作のページ に載せてあります。神戸市北区鈴蘭台を拠点に、2025年10月から一社ずつお手伝いしています。
「理念はあるけれど、額の中にしかない気がする」という方は、一度ご相談ください。
9. まとめ:理念は、仕事と並べて載せる
経営理念やミッションをホームページに載せるときに押さえることは、5つです。
- 社内で使っている理念だけを載せる ― 社員が言えない、判断で持ち出されない理念は、まず代表挨拶に任せる
- 役割を分けて、数を絞る ― 理念を1つと、行動指針を3〜5つ。呼び名より、答えている問いで並べる
- 1つずつ、仕事の表れを添える ― 実際にやっていることだけで書く
- 言葉を難しくしない ― 社員が会話で口にできる言葉で、一息で読める長さに
- 採用ページからつなぐ ― 行動指針は、入社後の働き方の予告として読まれる
並べただけの理念は、どの会社のものか分からない言葉になります。仕事の表れを1つ添えるだけで、貴社の社名でしか成立しない言葉に変わります。
今日できることを1つだけ挙げます。社員の方を1人つかまえて、「うちの会社が大事にしていることは何だと思うか」と聞いてみてください。返ってきた言葉が理念と近ければ、載せる準備はできています。遠ければ、それがページより先に整えることの合図です。
ぜひ一度、お話を聞かせてください。貴社が大事にしてきたことを、仕事の表れと一緒に伝わる形にするところから、ご一緒します。