1. 「沿革って、全部書かないと失礼な気がして」
中小企業の経営者の方とお話していて、こんな言葉をよく聞きます。
「うちは創業して長いので、沿革はちゃんと載せたいんです。ただ、何を書けばいいのか。工場を建てた年、設備を入れた年、社員旅行の行き先まで残っていて。全部書かないと、先代に失礼な気もするんですよね」
長く続いてきた会社ほど、この迷いは深くなります。どの出来事にも誰かの苦労が詰まっているからです。削ることが、その苦労を軽く扱うように感じてしまうのだと思います。
ただ、ホームページの沿革は、社史とは役目が違います。社史は社内の人と関係者のために残す記録です。ホームページの沿革は、初めて貴社を知った人が、頼んで大丈夫かを確かめるための材料です。読む人が違えば、選ぶ出来事も変わります。
私たち雄喜晃は、2025年10月6日に設立したばかりの会社で、沿革はまだ数行です。だからこそ、長く続く会社の沿革の重みがよく分かります。その重みが読む人に届く形を、この記事で整理します。
この記事で書くこと
- 年表を並べるだけだと、何が伝わらないのか
- お客様に関係のある出来事の選び方と、一行の添え方
- 創業の話を「なぜこの仕事か」に絞って短く書く型
- 代替わりした会社の書き方
- 古い写真の使い方と、盛らないための確かめ方
会社概要のページに沿革を何行載せるかは 会社概要のページに、何を載せるか で「5〜8行に絞る」とまとめました。この記事は、その5〜8行をどう選び、どう書くかの話です。
2. 年表を並べるだけだと、何が起きるか
先に、よく見る沿革の形を確かめておきます。左に年月、右に出来事。それが何十行も続く形です。
読む人には、行の重さが分からない
年表の一行一行は、社内の人にとってはどれも大切な出来事です。ところが、初めて読む人にはその重さが分かりません。「本社を移転」と「創立30周年記念式典」が、同じ大きさで並んでいるからです。
読む人は、どの行が今の仕事に関係するかを自分で探すことになります。探してまで読む人は多くありません。年表は「長く続いている会社らしい」という印象だけを残して、読み飛ばされます。
社内の記念日と、お客様の関心は違う
社内で大事にしている出来事と、お客様が知りたい出来事は、重なる部分もありますが、ずれもあります。
- 社内で大事な出来事 ― 周年行事、社屋の落成、社員数の節目、表彰
- お客様が知りたい出来事 ― 今の仕事をいつから始めたか、何ができるようになったか、誰が責任者か
前者は社内報や記念誌で残せます。ホームページの沿革には、後者を中心に並べてください。
読む人が、沿革で確かめていること
ホームページの沿革を開く人は、だいたい次の3つを確かめています。
- 続いてきたか ― 途中で途切れず、同じ仕事を続けてきたか
- 何が変わってきたか ― 仕事の範囲が広がったか、やり方が変わったか
- 今の会社とつながっているか ― 昔の話が、今頼んだときに受け取るものと関係しているか
3つ目がいちばん抜けやすいところです。昔の出来事が今の仕事とどうつながっているかは、書かないと伝わりません。ここを一行添えるだけで、年表が会社の説明に変わります。
3. お客様に関係のある出来事だけを選ぶ
ここからが本題です。年表から、ホームページに残す行を選びます。
選ぶ基準は「今のお客様が受け取るものに、つながっているか」
基準は1つです。その出来事が、今のお客様が受け取っている仕事や安心に、つながっているかどうか。
たとえば工場を建てた年は、それによって受けられる仕事の大きさが変わったなら残します。社員旅行の行き先は、どれだけ楽しい思い出でも、お客様が受け取るものには関係しないので外します。迷ったら、「この行を読んだお客様は、何が分かるか」と自分に聞いてみてください。答えが出ない行は、外して大丈夫です。
残すことが多い出来事
業種によって違いますが、残すことが多いのは次のような出来事です。
- 今の仕事を始めたとき ― 創業と、今の主力の仕事を始めた時期が違うなら、両方
- できることが広がったとき ― 許可を取った、設備を入れた、拠点を増やした
- やめたことがあるとき ― ある事業をやめて、今の仕事に絞った
- 代表が代わったとき ― 誰が今の責任者かは、頼む人にとって大事な情報です
3つ目の「やめたこと」は、書くのをためらう方が多い項目です。ただ、何かをやめて今の仕事に絞った話は、その仕事に本気で取り組んでいる理由として読まれます。言い訳めいた書き方をせず、事実として一行で書けば十分です。
一行に「だから今、何ができるか」を添える
選んだ行には、短い説明を添えます。出来事そのものではなく、その出来事によって、今お客様に何ができるようになったかを書きます。
| 年表のままの一行 | 添える一言 | 読む人に伝わること |
|---|---|---|
| たとえば「第二工場を新設」 | 長さ6メートルまでの部材を、社内で一貫して加工できるようになりました | 頼める仕事の大きさが分かる |
| たとえば「建設業許可を取得」 | この年から、元請けとして工事全体をお受けしています | 直接頼めるかどうかが分かる |
| たとえば「小売部門を閉鎖」 | 店舗をやめ、法人のお客様向けの加工に絞りました | 何に力を入れている会社かがはっきりする |
| たとえば「代表取締役に〇〇が就任」 | 先代のもとで現場を20年担当してきた者が、引き継ぎました | 今の責任者が誰で、どんな人かが見える |
| たとえば「創立30周年記念式典」 | (ホームページの沿革からは外す) | 社内には大切でも、お客様が受け取るものとはつながりにくい |
右の列が書けない行は、ホームページの沿革からは外して構いません。外した行は社内の記録として残せば十分です。添える一言は、出来事の説明ではなく、今のお客様に何ができるかを書きます。年数や設備の中身は、貴社の事実で書いてください。
添える一言は、1行で収まる長さにします。長くなりそうなら、それはサービスのページや強みのページで書く話です。会社の強みをどう見つけて書くかは 「うちの強み」を、ホームページにどう書くか にまとめました。沿革の一行は、強みの「根拠になった出来事」として、そちらからつなぐこともできます。
4. 創業の話は「なぜこの仕事か」を短く
沿革とは別に、創業のいきさつを書きたいという方もいらっしゃいます。書くのは良いことです。ただ、長くなりやすいので、形を決めておきます。
長い物語は、最後まで読まれない
創業者の方の話は、たいてい1時間では終わりません。それをそのままページにすると、読む人は途中で「で、今は何をしてくれる会社なのか」を探し始めます。
ホームページで創業の話を読む人は、物語を楽しみに来ているわけではありません。この会社がなぜこの仕事をしているのかが分かれば、それで十分です。長さの目安は、3〜5文、多くても400字程度です。それ以上は、記念誌や採用向けのページに回します。
3つの段で組む
短く書くには、型があると楽です。次の3つの段で組みます。
創業者が、それまでの仕事や暮らしの中で見たことを1文で書きます。大きな志より、具体的な場面のほうが伝わります。
きっかけを受けて、何を始めたかを書きます。日付や場所は、沿革の表に任せて構いません。
ここがいちばん大事な段です。創業のときに決めたことが、今のお客様が受け取るものにどう残っているかを書きます。
3つの段で、3〜5文に収まります。③が書けるかどうかで、創業の話が今の会社の説明になるかが決まります。中身は、貴社の実際のいきさつで書いてください。
苦労話と美談に寄せない
創業の話は、放っておくと苦労話か美談になりがちです。どれも本当の話だと思います。ただ、苦労の量は、読む人が頼むかどうかの判断材料にはなりにくいのです。
苦労話を書くなら、その苦労から何を決めたかまで書いてください。「納期を守れなかった経験から、受ける量を決めて、それ以上はお断りするようにしました」。こう書けば、苦労が今の約束に変わります。
代表挨拶との分担
創業の話と代表挨拶は、近い内容になりやすいので、分担を決めておきます。
- 沿革・創業の話 ― 事実の流れ。いつ、何を始め、何が変わったか
- 代表挨拶 ― 今の代表の考え。何を大事にして、これからどうしたいか
同じ話を2つのページで繰り返すと、どちらも薄くなります。代表挨拶の書き方は 代表挨拶のページに、何を書くか に書きました。創業の話はそちらから一文で触れて、詳しくは沿革のページへ送る、という形にすると重なりません。
5. 代替わりした会社の書き方
親から子へ、創業者から社員へ、あるいは外から引き継いだ方へ。代表が代わった会社の沿革には、もう一段の工夫が要ります。
創業者と今の代表、両方の名前を出す
代替わりした会社でよく見るのが、創業者の話だけが書かれていて、今の代表がどこにも出てこない形です。逆に、今の代表の話だけで、創業者が消えている形もあります。
どちらも、読む人は戸惑います。沿革には、創業者と今の代表の両方の名前と、交代した年を書いてください。誰が始めて、誰が今の責任者なのか。この2点が分かるだけで、会社の今の姿が見えます。
引き継いだものと、変えたものを分けて書く
代替わりのあとに読む人が気にするのは、前と同じように頼めるのかです。ここに答えるには、引き継いだものと変えたものを分けて書くのがいちばん伝わります。
- 引き継いだもの ― たとえば、職人の顔ぶれ、品質の基準、地域のお客様とのお付き合い
- 変えたもの ― たとえば、見積もりの出し方、受付の時間、扱う品目
変えたものを書くのは勇気が要りますが、書かないと「前と同じだと思って頼んだら違った」ということが起きます。変えたことを先に書いておくほうが、長くお付き合いのあるお客様にも誠実です。
先代を持ち上げすぎない、否定もしない
代替わりの沿革で難しいのが、先代の扱いです。持ち上げすぎると、今の代表が見えなくなります。かといって、変えたことを強調するあまり、先代のやり方を否定するような書き方になると、古くからのお客様が離れることがあります。
目安は、先代については事実を、今の代表については考えを書くことです。「先代は〇年から△年まで、この工場で〇〇を続けてきました」。評価は書かず、事実だけを置きます。今の代表の考えは、代表挨拶のほうで書きます。
外から引き継いだ場合は、書く範囲を先に確かめる
親族や社員ではなく、外部の方や会社が事業を引き継いだ場合もあります。この場合、引き継いだいきさつをどこまで書いてよいかを、先に関係者と確かめてください。
引き継ぎのときの取り決めで、公表の範囲が決まっていることがあります。書き方に迷う場合は、引き継ぎに関わった専門家に確認してから載せるほうが安全です。代表が交代したときに直す場所は、沿革だけではありません。会社概要や名刺との表記も含めて、移転・社名変更・代表交代のときに、サイトで直すところ に一覧にしてあります。
6. 古い写真の使い方
長く続いている会社には、古い写真が残っていることがあります。創業当時の作業場、先代が写った集合写真、昔の看板。これは、言葉より伝わる材料です。
1枚に、いつ・どこ・誰を添える
古い写真は、説明が無いと何の写真か分かりません。1枚ごとに「いつ・どこ・誰」を一行で添えてください。たとえば、次のような一行です(例は架空)。
「昭和50年代、創業時の作業場。左から2人目が創業者」
年が正確に分からなければ、「〇〇年代」と幅を持たせて書けば十分です。分からないことを推測で埋めるより、幅で書くほうが正直です。
今の写真と並べる
古い写真がいちばん効くのは、同じ場所や同じ仕事の、今の写真と並べたときです。昔の作業場と今の工場。先代が使っていた道具と、今の設備。並べると、読む人は会社が続いてきた時間と、変わってきたことを一度に見られます。
写真を取り込むときの注意
紙の写真は、スキャナーが無ければスマートフォンで撮って取り込めます。そのときは次の3つに気をつけます。
- 真上から撮る ― 斜めから撮ると、四角い写真が台形に写ります
- 照明の映り込みを避ける ― 光沢のある写真は、窓際の明るい日陰で撮ると反射が出にくくなります
- 元の写真は、取り込んだら仕舞う ― アルバムから剥がすときに傷めやすいので、無理に剥がさずそのまま撮ります
写っている人と、撮った人のこと
古い写真にも、写っている人と撮った人がいます。写っている人が今も関係者であれば、載せる前に一声かけてください。退職された方やご家族が写っている場合は、とくに気をつけます。
また、写真館やカメラマンが撮った写真は、撮った側に権利が残っていることがあります。古い写真だから自由に使えるとは限りません。扱いが気になる場合は、業種や事情によって違うので、専門家に確認してください。写真の権利の考え方は ホームページの写真と文章、権利はどうなっているか にまとめてあります。
7. 盛らない ― 確かめてから載せる
最後に、沿革でいちばん気をつけたいことです。盛らないことです。沿革は事実の記録として読まれるので、ここに盛った表現が混ざると、ほかのページまで疑われます。
創業と設立は、分けて書く
よくあるのが、創業年を古く見せる書き方です。前身の個人事業や、親の代の別の商売まで含めて「創業〇年」と書くと、あとで食い違いが出ることがあります。
創業と設立は、分けて書いてください。「〇年 個人で〇〇を始める」「〇年 株式会社として設立」。前身が別の仕事なら、それも分けて書きます。分けて書いても、続いてきた年月の長さは十分に伝わります。
根拠を示せない言葉は使わない
「業界初」「地域で最初」「No.1」。こうした言葉は、根拠を示せないなら使わないほうが安全です。読む人は、どうやって確かめたのかを気にしますし、示し方によっては表示に関するルールの上で問題になることもあると言われています。業種によって違うので、気になる表現は所管の窓口や専門家に確認してください。
根拠の無い一番より、確かめられる事実のほうが信じてもらえます。「〇年から同じ場所で続けています」で十分です。
取引先の名前は、許可を取ってから
沿革に「〇〇株式会社と取引開始」と書きたくなることがあります。名の知れた取引先なら、なおさらです。ただ、相手の社名を載せるのは、相手の了解を取ってからにしてください。了解が取れなければ、「大手の設備メーカーと取引を開始」のように、業種で書けば足ります。
書類と照らし合わせる
沿革を書いたら、手元の書類と照らし合わせます。登記の書類、許可証、古い契約書や会社案内。年月が書類と合っているかを、1行ずつ確かめてください。
記憶で書いた年は、意外とずれています。とくに許可の取得年や移転の年月は、書類と1年違うことがよくあります。会社概要や採用ページ、会社案内の紙とも食い違わないように、同じ年表を元にして書きます。
置き場所と、手を付ける順番
書けた沿革をどこに置くかは、量で決めます。
- 5〜8行に収まる ― 会社概要のページの中に置く
- 写真や創業の話も載せる ― 「あゆみ」のような独立したページにして、会社概要から一行でつなぐ
- トップページ ― 沿革は置かず、「〇年から〇〇で続けています」の一文だけにする
手を付ける順番は、次のとおりです。
- Step 1(今月) ― 今の年表から、今のお客様につながる行を5〜8行選び、一言を添える
- Step 2(翌月) ― 創業の話を3つの段で組み、古い写真を3〜5枚選んで取り込む
- Step 3(公開前) ― 登記や許可証と1行ずつ照らし合わせ、写っている人に一声かける
8. 雄喜晃の伴走:お話と書類から、一緒に拾います
私たち雄喜晃のホームページ制作では、沿革の欄を、年表をそのまま貼り付けて埋めることはしません。最初のお打ち合わせで創業からのいきさつを伺い、その中から今のお客様につながる出来事を一緒に選びます。
私たちがやること
経営者の方のお話を伺い、手元の年表や会社案内、登記や許可証の写しと照らし合わせながら、沿革の行を選びます。選んだ行に「だから今、何ができるか」の一言を添え、創業の話を3つの段で短く組み直します。古い写真は、貴社で取り込んでいただいたもの、撮っていただいたものを、向きや明るさを整えて載せます。キャプションの文言も一緒に考えます。
代替わりした会社の場合は、引き継いだものと変えたものを分けて書くところまでお手伝いします。代表挨拶や会社概要と内容が重ならないように、ページ同士の分担も決めます。
料金と条件
料金は制作費0円、月額8,800円(税別)からです。6ページ構成のプランは月額13,800円(税別)です。サーバー、独自ドメイン、SSL、保守はすべて月額に含まれます。月5回までの更新代行も同じ月額の中なので、新しい拠点ができた、許可を取った、といった沿革に足す出来事が起きたときも、ご連絡いただければこちらで反映します。
最低契約期間は6ヶ月です。7〜35ヶ月で解約された場合、サイトは非公開になります。36ヶ月以上ご継続いただいた場合は、サイトをお渡しします。
私たちがやらないこと
確かめられない出来事を、それらしく書き足すことはしません。根拠の示せない「業界初」「No.1」のような言葉で沿革を飾ることも、創業の話を美談に作り替えることもしません。年月が分からない行は、分からないまま幅で書くか、外すかをご相談します。検索の順位をお約束するような話もしません。
実際にお作りしたサイトは 制作実績、料金と条件は ホームページ制作のページ に載せてあります。私たち自身の沿革はまだ数行ですが、神戸市北区鈴蘭台を拠点に、2025年10月から一社ずつお手伝いしています。
「長く続いてきたことを、ちゃんと伝えたい。でも年表を並べるだけでは違う気がする」という方は、一度ご相談ください。
9. まとめ:年表ではなく、今につながる節目を
会社の沿革と創業のいきさつをホームページで伝えるときに押さえることは、5つです。
- お客様に関係のある出来事だけを選ぶ ― 基準は「今のお客様が受け取るものに、つながっているか」
- 一行に、今何ができるかを添える ― 出来事の説明ではなく、それで何ができるようになったか
- 創業の話は3つの段で短く ― きっかけ、決めたこと、今も続けていること。3〜5文で
- 代替わりは、両方の名前と、引き継いだもの・変えたもの ― 先代は事実で、今の代表は考えで書く
- 盛らずに、書類と照らし合わせる ― 創業と設立を分け、根拠の無い言葉は使わない
長く続いてきたことは、それだけで読む人に安心を渡せる材料です。全部を並べなくても、選んだ節目に意味を添えれば、その時間の長さは伝わります。
今日できることを1つだけ挙げます。今の年表を印刷して、今のお客様に関係のある行にだけ印をつけてみてください。印のついた行が、そのままホームページの沿革の下書きになります。
ぜひ一度、お話を聞かせてください。貴社がここまで続けてきたいきさつを、読む人に届く形にするところから、ご一緒します。