1. ボタンはあるのに、押されている気がしない

中小企業の経営者の方とお話していて、こんな言葉をよく聞きます。

「ページの最後に『お問い合わせはこちら』のボタンは付けてあるんです。目立つ色にもしました。でも、そこから来ている感じがしなくて。ボタンの色をもっと派手にしたほうがいいんでしょうか」

色を変える前に、見ていただきたいところがあります。ボタンに書いてある言葉と、ボタンのすぐ周りに書いてある一文です。

ボタンは、押した人に何かを約束する場所です。ところが「お問い合わせはこちら」は、押したら何が開き、誰から何が来るのかを約束していません。分からないものは、押すのを後回しにされます。

この記事で書くこと

この記事は、ボタンとその周りの言葉に絞って書きます。

  • 「お問い合わせはこちら」が押されにくい理由
  • 押したあと何が起きるかが分かる言葉の作り方
  • ボタンの数と、並べ方
  • 押す前の不安を消す、ボタンの下の一文
  • ページの途中に置くか、最後だけにするか
  • スマートフォンで画面の下に固定するボタン

ボタンを押した先のフォームの中身は、別の記事で扱っています。項目の数は 問い合わせフォームの項目は、いくつまで減らせるか、入力の途中で手が止まる理由は 問い合わせフォームで、人はどこで手を止めるのか にまとめました。この記事は、そのフォームに着く前の一歩の話です。

2. 「お問い合わせはこちら」が押されにくい理由

まず、なぜこの言葉が押されにくいのかを分けて見ます。理由は3つあります。

押した先が見えない

「お問い合わせ」は、行為の名前です。押した先に何があるかは書いていません。フォームが開くのか、電話がかかるのか、メールソフトが立ち上がるのか。読む人には見えません。

人は、先が見えない扉を開けるのをためらいます。営業の連絡が来るかもしれない扉なら、なおさらです。今日はやめておこう、と閉じたページは、たいてい二度と開かれません。

「問い合わせ」は、用件がまとまっている人の言葉

「問い合わせる」は、聞きたいことがはっきりしていて、文章にまとめられる人の言葉です。ところが、サイトを見ている段階の人は、頼むかどうかも、何を聞けばいいかも、まだ決まっていないことがよくあります。自分はまだその段階ではない、と感じて離れます。

どのページにも、同じ言葉が並んでいる

トップにも、サービスにも、会社概要にも、同じ「お問い合わせはこちら」。ところが、料金を読んだ人は「この金額で頼めるか」を、実績を読んだ人は「同じような仕事を頼めるか」を考えています。その考えに合った言葉がボタンに無いと、読んだ内容と押す行為がつながりません。

3. 押したあと何が起きるかが分かる言葉にする

ここからが本題です。ボタンの言葉は、押した人が次にすることを、その人の側の言葉で書くのが基本です。

「何を」「どうする」を書く

形は単純です。何を、どうするか。この2つが入っていれば、押した先が想像できます。

  • 無料で見積もりを頼む ― 何が起きるか(見積もりが来る)と、お金がかかるか(かからない)が分かる
  • 空き日程を聞く ― 予約ではなく、まず空きを聞くだけだと分かる。決める前の人でも押せる
  • まず電話で相談する ― 手段が電話であること、相談の段階でいいことが分かる
  • 資料を受け取る ― 話をする前に、読んで考えたい人が押せる

どれも、主語が読む人です。「お問い合わせ」はこちらが受ける側の言葉ですが、「見積もりを頼む」は頼む人の言葉です。ボタンの文字は、押す人が頭の中で言っている言葉に合わせます。

言いたいことが多くても、ボタンに全部は入れません。ボタンには動作だけを書き、条件や補足はボタンの下の一文に回します。スマートフォンの幅で1行に収まる長さが目安です。

約束と中身を一致させる

1つだけ、気をつけていただきたいことがあります。ボタンに書いた言葉と、押した先の中身を一致させてください。

「空き日程を聞く」と書いて、押した先が普通のお問い合わせフォームだと、読む人は戸惑います。日程を選ぶ欄が無いからです。「無料で見積もりを頼む」と書いて、返ってきたのが「まずは打ち合わせを」だけだと、約束と違うと受け取られます。

言葉を変えたら、押した先のフォームの一行目の見出しや、送ったあとの返信の文面も、同じ言葉にそろえてください。ボタン、フォーム、返信が同じ言葉でつながっていると、読む人は迷いません。

表:よくあるボタンの言葉を、押した先が分かる言葉に直す(例はすべて架空)
よくある言葉直した言葉の例直した理由
お問い合わせはこちらたとえば工事の会社なら「無料で見積もりを頼む」押すと何が来るかと、費用がかからないことが一度に分かる
ご予約はこちらたとえば教室なら「体験の空き日程を聞く」「予約」は決めた人の言葉。迷っている人も押せる入口になる
詳しくはこちらたとえば「料金の内訳を見る」「施工の流れを見る」何が詳しく分かるのかが書かれていないと、押す理由にならない
送信たとえば「この内容で相談を送る」最後のボタンも動作を書く。何を送ったかが本人に残る
今すぐお申し込みたとえば士業の事務所なら「まず30分、話を聞いてもらう」いきなり申し込みは重い。最初の一歩を小さく見せる

右の列の言葉は、どれも押す人が次にすることを、押す人の言葉で書いたものです。中身は貴社の実際の受け方に合わせてください。「30分」「無料」と書くなら、そのとおりに受けられることが前提です。

業種によって、最初の一歩の重さが違う

どの言葉を選ぶかは、業種で変わります。目安は、読む人がいちばん軽く踏み出せる一歩は何かです。

  • 工事・リフォーム ― 見積もりが最初の一歩になりやすい。「現地を見てもらう」まで書くと、来てもらう前提だと分かる
  • 教室・サロン・店舗 ― 空きを聞く、体験を聞くが軽い。予約の確定は、その次で構いません
  • 士業・相談業 ― 「話を聞いてもらう」が軽い。何分くらいの話かが書いてあると、さらに踏み出しやすくなります
  • 製造・卸 ― 「図面を送って相談する」「サンプルを頼む」など、取引の実際の入口をそのまま書く

迷ったら、電話で最初によく聞かれる質問を思い出してください。それがそのまま、ボタンの言葉の材料になります。

4. ボタンの数と、並べ方

言葉が決まったら、次は数です。ボタンは多ければ押されるわけではありません。

1つの場所に置くのは、1種類が基本

同じ場所に「見積もりを頼む」「資料を受け取る」「電話で相談する」「チャットで聞く」と4つ並んでいると、読む人はまず選ぶ作業をしなければなりません。選ぶ作業が増えると、選ばないまま閉じる人が出てきます。

基本は、1つの場所に1種類です。いちばん来てほしい形のボタンを1つ置きます。どの形で受けるかは、受ける側の手が回るかどうかで決めてください。入口の数そのものの考え方は 問い合わせを「メールだけ」にしている会社が、取りこぼしているもの で、2本を目安に整理しています。

2つ並べるなら、重さの違うものを

2つ並べたい場合もあります。そのときは、重い一歩と軽い一歩を1つずつにします。

  • 重い一歩 ― 「無料で見積もりを頼む」。頼む気持ちがある程度固まっている人向け
  • 軽い一歩 ― 「まず質問だけ送る」「資料を受け取る」。まだ決めていない人向け

同じ重さのボタンが2つ並ぶと、違いが分からず迷います。重さが違えば、読む人は今の気持ちで選べます。

主と副は、見た目で分ける

主のボタンは色で塗り、副のボタンは控えめにします。同じ色、同じ大きさで並べると、どちらを押すべきかが伝わりません。スマートフォンでは、横に並べたボタンが縦に積まれることがあります。上に来るほうが先に読まれるので、主のボタンを上(左)に置きます。

電話とフォームを並べるとき

電話とフォームを並べるなら、たとえば「お急ぎの方はお電話で(平日9時〜18時)/ゆっくりご相談したい方はフォームから」のように役割を添えます。急ぐかどうかで選べると、読む人が迷いません。電話の番号の見せ方や、かけてもらうまでの段階は 「ホームページから電話が鳴らない」を、電話の側から直す に詳しく書きました。

5. 押す前の不安を消す、ボタンの下の一文

ここが、費用がかからないのに、いちばん効くところです。ボタンのすぐ下に、一文だけ添えます。

心配ごとに、一文で答える

ボタンの前で手が止まる人は、たいてい何かを心配しています。書かれていないと、悪いほうに想像します。よくある心配と、それに答える一文を並べます。一文はどれも架空の例なので、貴社の実際の受け方に合わせて直してください。

  • 営業の電話が来るのでは ― 「こちらからお電話することはありません。ご返信はメールでお送りします」
  • いつ返事が来るのか ― 「2営業日以内にご返信します」
  • お金がかかるのでは ― 「お見積もりとご相談は無料です」
  • 何を書けばいいか分からない ― 「『こういうことで困っている』の一言だけで構いません」
  • 断りにくくなるのでは ― 「お見積もりのあとに、お断りいただいても構いません」

全部を並べる必要はありません。貴社のお客様がいちばん気にしていそうなものを1つか2つ選んで、ボタンの真下に置きます。3つ以上並べると、今度は読まれません。

守れることだけを書く

この一文は約束です。守れないことは書かないでください。

「当日中にご返信」と書いて翌々日になれば、書かないより悪い印象が残ります。「お電話はしません」と書いたなら、社内の全員がそれを知っている必要があります。ここに書く数字は、いちばん忙しい週でも守れる数字にしてください。

「無料」と書く場合も同じです。条件つきで無料なら、条件も書きます。現地調査は無料でも遠方は交通費がかかる、という場合は、そのとおりに書いてください。表示のしかたについての決まりは業種によって違うので、気になる場合は所管の窓口や専門家に確認されることをおすすめします。

フォームの中にも、同じ約束を

ページの途中のボタンの下の一文は、フォームを開いてもらうためのものです。フォームの送信ボタンの近くにも、同じ約束を置いて構いません。同じ約束が2回出てくると、読む人は安心します。

6. ページの途中に置くか、最後だけにするか

次は置き場所です。ボタンをページの最後にだけ置いている会社は多いのですが、それだと取りこぼしが出ます。

最後だけだと、途中で決めた人が探す

料金を読んだところで「ここに頼もう」と決める人もいれば、実績の写真で決める人もいます。その人がボタンを探して画面を送り、見つける前に別の用事を思い出す。決めた瞬間にボタンが目の前に無いと、その決心は長くはもちません。

置くのは、判断材料のすぐ後

だからといって、段落ごとにボタンを置くと、今度はしつこく見えます。置く場所の目安は3つです。

  • 最初の画面 ― すでに頼む気で来た人のために。何の会社かの一文と一緒に、1つだけ
  • 判断材料のすぐ後 ― 料金、実績、仕事の流れ。読んで「頼めそう」と思う場所の直後
  • ページの最後 ― 最後まで読んだ人のために。ここは要点を一行添えて置く

真ん中の「判断材料のすぐ後」がいちばん効きます。読んで決めた、その場所で押せるようにしておくということです。

図:1つのページの中で、ボタンを置く3つの場所(例は架空の工事会社のサービスページ)
① 最初の画面

「西区・北区の外壁塗装。現地調査とお見積もりは無料です」の一文と、ボタン「無料で見積もりを頼む」。すでに頼むつもりで来た人が、読まずに押せる場所です。

ここで押す人は少なくても、置いておく意味があります
▼
② 料金と実績のすぐ後

料金の目安と施工の写真を見せた直後に、ボタン「この条件で見積もりを頼む」。その下に「こちらからお電話はしません」の一文。読んで決めた人が、その場で押せる場所です。

言葉を、直前に読んだ内容に合わせて変えるのがこの場所の要点です
▼
③ ページの最後

「現地を見て、2営業日以内にお見積もりをお送りします」と要点を一行添えて、ボタン「無料で見積もりを頼む」。重い一歩の横に、軽い一歩として「まず質問だけ送る」を控えめに並べます。

最後だけにボタンを置くと、途中で決めた人がボタンを探すことになります

3か所とも、押した先は同じフォームで構いません。変えるのはボタンの言葉と、その下の一文だけです。直前に読んだ内容に合わせて言葉を変えると、読んだことと押すことがつながります。

ページごとに、言葉を変える

置く場所が決まったら、ページごとに言葉を変えます。全部のページに同じボタンを複製するのは、作る側は楽ですが、読む側には響きません。

  • 料金のページの後 ― 「この条件で見積もりを頼む」
  • 実績のページの後 ― 「同じような工事を相談する」
  • 会社概要のページの後 ― 「まず話を聞いてもらう」
  • 採用のページの後 ― 「職場の見学を申し込む」

押した先は同じフォームで構いません。入口の言葉が違うだけで、読んだ人の気持ちに沿ったボタンになります。

ボタンが押されているかを確かめる

置いたら、押されているかを確かめます。GA4 では、ボタンが押された回数を数える設定ができます。設定が難しければ、まずはフォームから届いた件数を、言葉を変える前と後で比べるだけでも構いません。

件数は季節でも動くので、何ヶ月か並べて見てください。原因がボタン以外にある場合の切り分け方は ホームページを作ったのに問い合わせが来ない ― 公開後90日でやること にまとめてあります。

7. スマートフォンの、画面下に固定するボタン

最後は、スマートフォンで画面の下に貼りつくボタンです。スクロールしても消えずに残るので、決めた瞬間にいつでも押せます。第6章の「決めた場所で押せる」を、画面の側で実現する方法です。

入れるのは、2つまで

固定ボタンに入れるのは、多くても2つです。たとえば「電話する」と「見積もりを頼む」。3つ以上並べると1つずつが小さくなり、押し間違いが起きます。電話をあまり受けられない会社なら、フォームの1つだけでも十分です。

本文を隠さない

固定ボタンでいちばん多い失敗は、本文の下のほうを覆ってしまうことです。ページの最後の行や、最後のボタンが固定ボタンの裏に隠れて読めない。こうなると、かえって邪魔になります。

  • 高さは控えめに ― 画面の下に指1本ぶんくらい。大きすぎると、読める範囲が狭くなる
  • ページの最後に余白を足す ― 最後の行が固定ボタンの裏に隠れないように
  • 開いた瞬間に被せない ― 最初の画面の大事な一文を覆っていないか確かめる

スマートフォンで見たときに人が離れる理由は スマートフォンで見たときに、人が離れる7つのこと にまとめました。固定ボタンは、置き方を間違えるとその1つになります。

電話のボタンは、受けられる時間を書く

電話のボタンを固定するなら、受け付けの時間を添えてください。夜中に押して誰も出ないと、押さなかった場合より印象が悪くなります。ボタンのすぐ近くに「平日9時〜18時」のように書いておくだけで、時間外の人はフォームを選んでくれます。

自分のスマートフォンで、全ページ押してみる

固定ボタンを付けたら、自分のスマートフォンで全ページを開いて、実際に押してみてください。確かめることは3つです。

  • 押せるか ― 電話のボタンで、実際に発信の画面が出るか
  • 隠していないか ― ページの最後まで送って、最後の行とボタンが読めるか
  • 押した先が正しいか ― フォームのボタンが、正しいフォームに飛ぶか

固定ボタンはスマートフォンでしか出ません。確かめる場所を、読む人と同じ画面にしてください。

8. 雄喜晃の伴走:ボタンの言葉は、貴社の受け方から決めます

私たち雄喜晃がホームページを作るときは、ボタンの言葉を最後に埋める飾りとしては扱いません。貴社がどういう形で問い合わせを受けられるかを伺ってから、言葉を決めます。

私たちがやること

最初のお打ち合わせで、どんな連絡がどの手段で来ることが多いか、電話に出られる時間、返信にかかる日数、見積もりが無料かを伺います。そこから、ボタンの言葉、下の一文、置く場所、スマートフォンの固定ボタンまでを決めて、ページに組み込みます。

公開後に「見積もりを頼む」を「現地を見てもらう」に変える、下の一文を差し替える、といった直しは、月5回までの更新代行の中でお受けしています。

料金と条件

料金は制作費0円、月額8,800円(税別)からです。6ページ構成のプランは月額13,800円(税別)です。サーバー、独自ドメイン、SSL、保守はすべて月額に含まれます。

最低契約期間は6ヶ月です。7〜35ヶ月で解約された場合、サイトは非公開になります。36ヶ月以上ご継続いただいた場合は、サイトをお渡しします。

私たちがやらないこと

先に書いておきます。貴社が守れない約束を、ボタンの下の一文に書くことはしません。「当日中にご返信」と書けば押されやすくなるかもしれませんが、守れなければ逆効果です。書く数字は、貴社と相談して守れるものに決めます。

また、「残りわずか」「今だけ」のように、事実ではないのに急がせる言葉でボタンを飾ることもしません。ボタンの言葉を変えたことで、押される数や問い合わせの件数がいくつ増えるとお約束することもいたしません。

実際にお作りしたサイトは 制作実績、料金と条件は ホームページ制作のページ に載せてあります。神戸市北区鈴蘭台を拠点に、2025年10月から活動しています。

「ボタンは付けたのに、押されている気がしない」という方は、一度ご相談ください。

9. まとめ:ボタンの文字は、押した先の説明です

「お問い合わせはこちら」のボタンを見直すときに押さえることは、5つです。

  • 押した人が次にすることを書く ― 「無料で見積もりを頼む」「空き日程を聞く」のように、何を・どうするかを押す人の言葉で
  • 1つの場所に1種類、並べるなら重さを変える ― 重い一歩と軽い一歩を1つずつ。主と副は見た目で分ける
  • ボタンの下に、不安を消す一文を置く ― 営業電話、返事の時期、費用。いちばん気にされるものを1つか2つ。守れることだけ
  • 判断材料のすぐ後に置く ― 最初の画面、料金や実績の直後、ページの最後。言葉はページごとに変える
  • スマートフォンの固定ボタンは2つまで ― 本文を隠さず、電話には受付時間を添え、自分の画面で押して確かめる

ボタンの色や大きさは、そのあとで構いません。まず見直すのは、何と書いてあるかです。

今日できることを1つだけ挙げます。自社のサイトのボタンを全部、紙に書き出してみてください。どのページの、どこに、何と書いてあるか。全部が「お問い合わせはこちら」だったら、まず料金のページの後のボタンを1つだけ、押した先が分かる言葉に変えてみてください。

ぜひ一度、お話を聞かせてください。貴社の受け方に合ったボタンの言葉を、一緒に決めるところからご一緒します。