1. 「うちは、メールで受けています」
中小企業の経営者の方とお話していて、こんな言葉をよく聞きます。
「問い合わせはメールで受けています。電話だと作業中に出られないので。フォームも作ったほうがいいんでしょうか。正直、メールで十分だと思っているんですが」
メールで受けたい理由は、よく分かります。作業の手を止めずに済む。記録が残る。落ち着いて返事が書ける。受ける側から見れば、とても合理的な選択です。
ただ、入口を1つにすると、その入口が苦手な人は丸ごと来なくなります。そして来なかった人は、どこにも記録が残りません。だから、取りこぼしていることに気づけないまま、何年も経ちます。
電話をどう受けるかは 「ホームページから電話が鳴らない」を、電話の側から直す に、フォームのどこで人が止まるかは 問い合わせフォームで、人はどこで手を止めるのか に書きました。この記事は、その手前の判断です。問い合わせの入口を、何本用意するか。
入口ごとに来る人の違い、業種別にどの2本を選ぶか、増やす前に決めておくこと、そして増やしても来ないときに見るところまで書きます。
2. 入口を1つにすると、苦手な人は丸ごと来ない
入口ごとに、来る人が違う
問い合わせの入口は、どれも同じ「連絡手段」に見えます。けれど、使う人の状況と気持ちは、入口ごとにまったく違います。
- 電話 ― 急いでいる人、話しながら決めたい人。いま困っていて、今日中に答えがほしい
- フォーム ― 営業時間外に見ている人、文章で整理してから伝えたい人。夜や休日に、落ち着いて送りたい
- LINE ― 気軽に聞きたい人、若い層。電話するほどではないが、ちょっと聞いてみたい
- メールアドレスの直接表記 ― 図面や写真を添付したい人、取引先の担当者。社内の決まったやり方で連絡したい
この4つは、互いに代わりになりません。電話をかけたい人は、メールアドレスしか無いサイトでは、メールを書く人にはならないことが多いのです。多くの場合、電話番号が載っている別の会社を探します。
苦手な入口しか無いと、人は「他を探す」
人が問い合わせをやめる理由は、たいてい大げさなものではありません。「いまこの手段は使いにくい」と感じただけで、別のサイトに移ります。
- 運転の合間に見ていて、文章を打つ余裕がない
- 勤務中で、電話をかけられない
- 何をどう書けばいいか分からず、メールの画面を前に手が止まる
- 写真を送りたいのに、フォームには添付欄が無い
どれも、その人の事情です。こちらが「メールで十分伝わるはず」と思っていても、相手の事情の中では、その入口が使えないことがあります。
来なかった人は、数字に出ない
これがいちばん厄介なところです。問い合わせが月に3件来ていれば、「メールでちゃんと来ている」と感じます。けれど、本当は電話がしたかった人や、LINEで聞きたかった人が何人いたかは、どこにも記録されません。
来なかった人の数は、測れません。だから判断の材料は、「どの入口が無いと、どんな人が来なくなるか」を想像することになります。この記事は、その想像を具体的にするためのものです。
3. メールアドレスだけの会社が、取りこぼしているもの
とくに見直していただきたいのが、問い合わせ先としてメールアドレスだけを書いている形です。思っているより、取りこぼしが大きい入口です。
スマートフォンで押しても、メールが書けない
メールアドレスをタップすると、端末に標準で入っているメールアプリが開きます。ところが、そのアプリを設定していない人は少なくありません。普段は別のメールアプリやブラウザでメールを読んでいる人にとっては、設定画面が出てくるだけです。
パソコンでも同じことが起きます。メールソフトを使っていない人がアドレスをクリックすると、使ったことのないソフトが立ち上がります。そこで多くの人は閉じます。
アドレスを長押ししてコピーし、自分のメールアプリを開いて貼り付ける。この手間を越えてくれるのは、もともと強く依頼したいと決めている人だけです。比べている段階の人、ちょっと聞いてみたいだけの人は、ここで落ちます。
アドレスが画像になっていて、コピーすらできないサイトもあります。その場合は、手で打ち込むしかありません。
何を書けばいいか分からない
フォームなら、名前・連絡先・内容と、書く場所が決まっています。メールは件名も本文も白紙から始まります。
- 件名に何と書けばいいのか
- どこまで詳しく書けばいいのか
- 名乗りから書くべきか、用件から書くべきか
- 失礼な書き方になっていないか
仕事でメールを書き慣れている人には何でもないことですが、個人のお客様にとっては、これが案外重い作業です。電話なら30秒で済む用件のために、5分かけて文面を考えることになります。
対策として、アドレスのそばに「件名に『見積もり希望』とだけ書いて、ご住所とお困りの内容を一言いただければ十分です」と添えておく方法があります。何を書けばいいかを先に示すだけで、白紙の重さは軽くなります。
送ったあと、届いたかどうか分からない
フォームは、送信すると完了の画面が出ます。メールは、送ったあと何も起きません。返事が来るまで、届いたのか、迷惑メールに入ったのか、見てもらえていないのか、判断する方法がありません。
返事が遅れると、送った側は「届いていないのかも」と考えて、別の会社にも連絡します。メールで受けるなら、自動で「受け取りました」と返す設定をしておくと、この不安は消えます。
それでも、メールアドレスを載せる意味はある
ここまで書くと、メールアドレスは載せないほうがいいように見えるかもしれません。そうではありません。メールでしか送れないものがある人にとっては、いちばん使いやすい入口です。
図面、現場の写真を何枚も、仕様書、発注書。こうした添付ファイルを送りたい人は、フォームより直接のメールを好みます。取引先の担当者は、社内の決まりでメールを使うことも多いはずです。
問題は、メールアドレスを載せることではなく、メールアドレスしか載せていないことです。ほかの入口と並べて置けば、メールは強い入口になります。
4. 電話・フォーム・LINE、それぞれに来る人
では、メールのほかに何を用意するか。主な3つの入口について、来る人と向く業種を並べます。
いま困っていて、今日中に答えがほしい人が使います。文章にするより話したほうが早い用件が集まります。工事、修理、運送、来店型の店など、急ぎが発生する商売に向きます。
夜や休日に、落ち着いて書きたい人が使います。書く場所が決まっているので、メールより書き出しやすい入口です。士業、BtoB、見積もりに情報が要る仕事に向きます。
電話するほどではないが聞いてみたい人、若い層が使います。普段の連絡と同じ感覚で送れるので、ハードルがいちばん低い入口です。小売、美容、教室など個人向けの商売に向きます。
3枚とも、来る人の状況が違います。どれが優れているかではなく、貴社のお客様がどの状況で連絡してくるかで選んでください。メールアドレスの直接表記は、この3つのどれかと組み合わせて、添付を送りたい人向けの4本目として置くのが使いやすい形です。
電話で来る人
電話を選ぶ人は、時間を優先しています。水が漏れている、鍵が開かない、明日の空きを知りたい。待つ余裕がないので、返事を待つ必要のある入口は使いません。
受ける側がいちばん負担に感じるのも電話です。作業中に出られない、という理由で外している会社も多いと思います。ただ、出られないことと、電話の入口を消すことは別の話です。留守番電話で用件を残してもらい、決まった時刻に折り返す。それだけで電話の入口は成り立ちます。受け方の具体は 「ホームページから電話が鳴らない」を、電話の側から直す にまとめてあります。
フォームで来る人
フォームを選ぶ人は、自分の都合のよい時間に、整理して伝えたい人です。仕事が終わった夜、家族と相談したあとの休日。電話がつながらない時間に、いちばん活躍する入口です。
メールより書きやすいのは、項目が決まっているからです。ただし、項目が多すぎると、メールより重くなります。どこで人が手を止めるかは 問い合わせフォームで、人はどこで手を止めるのか を参照してください。
LINEで来る人
LINEを選ぶ人は、問い合わせというより、相談の手前にいます。「こういうのってできますか」「だいたいいくらくらいですか」。正式に依頼する前の、軽い質問が集まります。
軽い質問は、受ける側には手間に見えるかもしれません。けれど、この軽い質問の中に、まだ他社と比べ始める前の見込み客が混ざっています。ここで気持ちよく答えられると、正式な依頼のときに最初に思い出してもらえます。
5. 全部やらなくていい。2本が目安
入口ごとに来る人が違うなら、全部用意すればいいのか。そうとは限りません。
増やすほど、受ける側の負担が増える
入口を1本増やすたびに、見る場所が1つ増えます。電話の着信履歴、フォームの通知メール、LINEのメッセージ、問い合わせ用のメールボックス。4つあれば、4か所を毎日確認する必要があります。
見る場所が増えると、見落としが起きます。とくに、件数の少ない入口ほど見なくなります。月に1件しか来ないLINEは、1週間誰も開かないまま、ということが実際に起きます。そして見落とされた1件は、来なかった1件より印象が悪くなります。
だから私は、まず2本をおすすめしています。来る人の違う入口を2つ並べれば、ほとんどの人は自分に合うほうを選べます。そして受ける側も、2か所なら毎日見られます。
業種別、何を2本にするか
どの2本を選ぶかは、お客様がどの状況で連絡してくるかで決まります。目安を挙げます。
- 工事・修理 ― 電話+フォーム。急ぎは電話で、見積もり依頼は写真の説明も含めてフォームで受けます
- 飲食 ― 電話+予約。問い合わせの大半は予約なので、ネットで予約を受けられる形と電話を並べます。ネット予約を入れるかどうかは 予約をネットで受けるか、電話のままにするか に書きました
- 士業 ― フォーム+電話。相談内容を整理して送りたい人が多いので、フォームを主にして、急ぎの人のために電話を添えます
- BtoB(製造・卸・専門業者) ― フォーム+メール。最初の連絡はフォームで、図面や仕様書のやり取りはメールで受けます
- 小売・個人向けサービス ― LINE+電話。在庫や入荷の確認、ちょっとした質問はLINEで、急ぎや複雑な相談は電話で受けます
業種より大事なのは、実際に貴社にどんな連絡が来ているかです。過去3ヶ月の問い合わせを、電話・メールなど手段ごとに数えてみてください。いちばん多い手段は必ず残し、その次に「本当は来ていたはずの手段」を1本足す、という考え方でも選べます。
3本目を足すのは、2本が回ってから
フォームの記事では、入口は複数あるほうが取りこぼしが減ると書きました。それは今も変わりません。ただし、受ける側が回る範囲で、という条件が付きます。
2本の入口を、毎日見て、決めた時間内に返せている。その状態が3ヶ月続いたら、3本目を検討してください。回っていない状態で入口を足すと、取りこぼしが減るのではなく、見落としが増えます。
6. 入口を増やすなら、受ける人と返す時間を先に決める
入口を足すと決めたら、サイトを直す前にやることがあります。誰が受けて、何時間以内に返すかを決めることです。
入口ごとに、見る人を決める
「全員で見る」は、「誰も見ない」と同じです。入口ごとに、見る人を1人決めてください。
- 電話の着信履歴 ― 誰が、何時に見て折り返すか
- フォームの通知 ― 誰のメールに届き、誰が返事を書くか
- LINE ― 誰の端末で見て、誰が返すか
- メール ― 問い合わせ用のアドレスを、誰が開くか
1人で全部を見ても構いません。大事なのは、休んだ日に代わりに見る人まで決めておくことです。決めごとの全体は 問い合わせが増えたあと、社内で何を決めておくか に整理しました。
返す時間を、入口のそばに書く
入口を並べたら、それぞれのそばにいつ返事が来るかを書いてください。
お電話:平日 9:00〜18:00(作業中で出られないときは、当日中に折り返します)
フォーム・メール:翌営業日までにお返事します
LINE:営業時間内に順次お返事します
書いておくと、相手は自分の急ぎ具合に合わせて入口を選べます。急いでいる人は電話を、急がない人はフォームを選ぶ。入口の選び分けを、お客様の側でしてもらえるようになります。
そして、書いた時間は守ってください。書いた時間を超えると、書かなかったときより不信感が大きくなります。何時間以内に返すのがよいかは 問い合わせが来たあと、何時間以内に返すべきか にまとめてあります。
LINEで受けるときの注意
LINEは入口として強い一方で、受け方を間違えると、あとで困ることが多い手段です。3つだけ押さえてください。
- 担当者の個人のLINEで受けない。担当者が辞めたり異動したりすると、お客様とのやり取りが履歴ごと会社から消えます。私生活の連絡と混ざり、夜中や休日にも通知が届くことになります
- 事業者向けの公式アカウントで受ける。会社のアカウントとして作れば、複数の人で同じやり取りを見られます。担当が替わっても、履歴は会社に残ります
- 営業時間外の自動返信を設定する。夜に送った人に「営業時間外のため、明日の〇時以降にお返事します」と返るだけで、放置されたとは感じません
もう1つ、LINEで見積もりの金額を即答しないことも決めておくと安心です。気軽な入口ほど、気軽に金額を答えたくなります。けれど、条件を聞かずに答えた金額は、あとで食い違いの元になります。「概算の幅」までにして、正式な見積もりは別に出す、と線を引いておいてください。
7. チャットボット、経路、それでも来ないとき
チャットボットは要るか
入口の話をすると、チャットボットについてもよく聞かれます。結論から書くと、小さな会社では、たいてい要りません。理由は4つあります。
- 件数が少ない。月に数件から数十件の問い合わせなら、人が直接返したほうが早く、正確です
- 質問が個別すぎる。「うちの場合はいくらですか」に、決まった答えは返せません。結局、人につなぐことになります
- 答えを用意し続ける手間がかかる。料金や対応範囲が変わるたびに、ボットの答えも直す必要があります。直し忘れると、古い情報を案内し続けます
- 小さな会社に期待されているのは、人が答えることだから。機械的な受け答えが続くと、かえって距離を感じさせます
よくある質問に自動で答えたいのであれば、まず「よくある質問」のページを整えるほうが確実です。考え方は 「よくある質問」を作ると、電話の本数が変わる に書きました。ボットを入れるかどうかは、問い合わせが人の手で回らなくなってから考えれば十分です。
どこから来たか、分かるようにしておく
入口が複数になると、「どの入口から何件来たか」を見たくなります。これが分かれば、次にどこへ力を入れるか判断できます。ただし、何も仕掛けないと、あとから振り返る方法がありません。
- フォーム ― 送信後の完了ページを分けておくと、アクセス解析で件数が数えられます
- 電話 ― 番号のそばに「ホームページを見た、とお伝えください」と添えると、傾向がつかめます
- LINE ― サイト用の友だち追加のリンクを、店頭のものと分けておくと区別できます
- メール ― サイトに載せるアドレスを1つに決めておくと、そこに来たものがサイト経由だと分かります
そして、いちばん確実なのは手で記録することです。表計算1枚に、日付・入口・内容・結果を書き溜めてください。何を測ればいいかは ホームページを作ったあと、何を測ればいいか にまとめてあります。
入口を増やしても来ないときは、中身の問題
入口を2本にして、受ける人と返す時間も書いた。それでも問い合わせが増えない。その場合、原因は入口ではなく、入口に着く前のところにあります。
- そもそもサイトが見られていない
- 見られているが、何の会社か伝わる前に閉じられている
- 読まれているが、問い合わせる理由が見つからない
この切り分け方は ホームページを作ったのに問い合わせが来ない ― 公開後90日でやること に書きました。入口を5本並べても、中身が伝わっていなければ1本も使われません。入口の数で解決しようとし続けるより、一度、中身のほうを見直してください。
手を付ける順番
最後に、順番をまとめます。
- 過去3ヶ月の問い合わせを、手段ごとに数える。いま実際にどこから来ているかを知ります
- 2本を選び、見る人と返す時間を決める。サイトを直す前に、社内で決めます
- サイトに2本を並べ、返す時間を書く。どちらかを小さくせず、同じ扱いで並べます
- 3ヶ月、経路を記録する。回っているか、どちらに多く来るかを見ます
- 回っていれば、3本目を検討する。回っていなければ、受け方を直すのが先です
8. 雄喜晃の伴走:入口の数は、受けられる数から決めます
私たち雄喜晃がホームページをお作りするときは、最初に「いま、どこから問い合わせが来ていますか」と伺います。そのうえで、業種とお客様の状況から入口を2本選び、受ける人と返す時間を一緒に決めてから、サイトに並べます。フォームを置く場合は、実際に送信して届くところまで確かめます。
入口のそばに書く「いつ返事が来るか」の一文も、貴社の実際の受け方に合わせて書きます。書いた時間を守れる形で書くことを大事にしています。
一方で、私たちがやらないことも書いておきます。問い合わせの受け付けそのものを代行することはしません。電話代行やメッセージの返信代行が必要なら、専門の会社のほうが確実です。また、入口を増やすことを、こちらから勧めることもしません。受ける体制が回らないうちに入口を足すと、見落としが増えるだけだからです。3本目を足すかどうかは、記録を見ながら一緒に判断します。
公開後に、受付時間を変えたい、LINEの案内を足したい、といったご依頼は、月5回までの更新代行の中でこちらで直します。月額8,800円(税別)に、サーバー・ドメイン・保守と一緒に含まれています。
「メールで受けているが、本当にこれで足りているのか分からない」という会社は、一度ご相談ください。実際にお作りしたサイトは 制作実績、料金と条件は ホームページ制作のページ に載せてあります。
9. まとめ:入口は、来る人の数だけ要るわけではない
問い合わせの入口を決めるために必要なことは、3つです。
- 入口ごとに来る人が違うと知る ― 電話は急ぐ人、フォームは時間外の人、LINEは気軽に聞きたい人、メールは添付を送りたい人。1つだけでは、ほかの人が丸ごと来ません
- 2本から始める ― 業種とお客様の状況で選びます。増やすほど、受ける側の負担と見落としが増えます
- 受ける人と返す時間を、先に決める ― 入口を足すのは、受け方が決まってからです
メールアドレスだけの形は、受ける側には楽でも、送る側には思ったより重い入口です。メールをやめる必要はありません。もう1本、来る人の違う入口を隣に置くだけで、届く相手が変わります。
まずは、過去3ヶ月の問い合わせを、電話・メールなど手段ごとに数えてみてください。そのうえで、サイトに載せていない手段を書き出してみてください。載せていない手段は、それを使いたい人にとって、入口が無いのと同じです。
ぜひ一度、お話を聞かせてください。貴社が受けきれる入口を、一緒に選ぶところから始めましょう。