1. 減らしたのに、問い合わせは増えなかった

中小企業の経営者の方とお話していて、こんな言葉をよく聞きます。

「フォームの項目が多いと聞いたので、思い切って3つまで減らしたんです。でも件数は変わらなくて。むしろ、来た問い合わせの中身が薄くなって、やり取りの回数が増えた気がします」

これは珍しい話ではありません。項目を減らすことと、問い合わせが増えることは、別の話です。減らして増える会社もありますし、減らしても変わらない会社もあります。そして、減らしたぶんの手間が、こちら側の返信に移っただけという場合もあります。

この記事は 問い合わせフォームで、人はどこで手を止めるのか の続きです。あちらはつまずく場所の話でした。長すぎる、エラーの出方が不親切、送信ボタンが見つからない。この記事は、その手前にある項目を何個にするかの決め方です。

先に結論を書いておきます。減らしていいのは、あとで聞ける項目だけです。数そのものを目標にすると、聞かないと動けないことまで落ちます。

この記事で書くこと

  • 最小構成の3つと、そこから足すか引くかで考える方法
  • 足していい項目の条件(1つだけあります)
  • 業種別に、1つだけ足すとしたら何を足すか
  • 必須にしてはいけない項目と、その理由
  • 確認画面・送信後の説明・スパム対策の扱い

2. 最小構成は3つ。ここから足すか引くかで考える

まず基準を1つ置きます。問い合わせフォームの最小構成は、次の3つです。

  • お名前
  • 連絡先(メールアドレス、または電話番号のどちらか)
  • お問い合わせ内容(自由記入)

この3つがあれば、こちらから返信できます。逆に言えば、どれか1つでも欠けると返せません。ですから、この3つは減らす対象から外れます。

項目数の議論が噛み合わないのは、「何個が正解か」から始めるからです。正解の個数はありません。3つを床にして、そこから足すか引くかで考えると、判断が一気に楽になります。

なぜ3つで足りるのか

一次返信に必要な情報が、この3つで揃うからです。宛名が書ける、送る先がある、何の用件か分かる。これ以上の情報は、返信の文面を良くするためのものであって、返信できるかどうかを決めるものではありません。

実務でいちばん多い間違いは、商談で聞けばいいことを、フォームで先に聞いてしまうことです。聞く場所が1つ前にずれています。フォームは商談の代わりではなく、商談を始めるための入口です。

3つより減らせるか

減らせます。ただし、減らし方には向き不向きがあります。

  • 名前を外す ― 匿名の相談を受ける業種(士業の初期相談など)では成立します。ただし返信の文面は固くなります
  • 内容を外す ― 「資料請求」「見学の予約」のように、用件が1つに決まっているページなら成立します
  • 連絡先を外す ― これは成立しません。返す手段がなくなります

2つのフォームが効くのは、用件がページ側で確定している場合です。資料請求ページに「名前と連絡先だけ」のフォームを置くのは理にかなっています。一方で、トップページの「お問い合わせ」から用件を外すと、届いたあとに何も分からない1件になります。

「減らせば増える」が崩れるとき

項目を減らしても件数が動かない会社には、だいたい別の理由があります。

  • そもそもフォームまで到達している人が少ない(原因は項目ではなく、ページの中身や流入)
  • 送信ボタンの周りに、送ったあと何が起きるかが書かれていない
  • フォームが実は動いていない(通知メールが迷惑メールに入っている)

ここを確かめずに項目だけを削っても、変わりません。切り分けの順番は ホームページを作ったのに問い合わせが来ない ― 公開後90日でやること にまとめてあります。

3. 足していい項目は、条件が1つだけある

ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。項目を足していいかどうかは、好みでも慣習でもなく、1つの条件で決まります。

条件:その場で答えてもらわないと、一次返信が書けないもの

これだけです。答えがないと、こちらが最初の返信を書けなくなる項目は、足してよい。逆に、無くても一次返信が書ける項目は、足さない。

例を挙げます。工事の会社で「現場の場所」が分からないと、対応できるエリアかどうかが判断できません。エリア外なら、そもそも、お見積もりの話に進めません。つまり、最初の返信の内容が変わってしまうわけです。これは足していい項目です。

一方で「ご予算」は、無くても一次返信が書けます。「ありがとうございます、まずは一度お話をお聞かせください」と返せます。ですから、足さない。

足していい例

  • 対応できるかどうかが変わる情報 ― エリア、取り扱いの範囲、希望の時期
  • 返信先が変わる情報 ― 法人か個人か(請求や書類の宛先が変わる業種の場合)
  • 返信の担当が変わる情報 ― 相談の分野(複数の専門に分かれている会社の場合)

共通しているのは、一次返信の内容そのものが変わるという点です。文面が丁寧になるのではなく、書く内容が変わります。

足さなくていい例

  • ご予算、希望納期 ― 相手もまだ決めていないことが多く、商談で聞けます
  • 会社名、部署、役職 ― 返信の署名や、やり取りの中で分かります
  • どこで知りましたか ― こちらの集計には役立ちますが、相手には1つの手間です

最後の「どこで知りましたか」は、気持ちとしては入れたくなります。ただ、計測で取れる情報を、相手に手入力させている構図になります。流入元はアクセス解析で分かりますから、フォームで聞く必要は薄いです。

迷ったときの数え方

足すかどうか迷ったら、紙に1行書いてみてください。この欄が空欄のまま届いたら、私は最初の返信を書けるか。書けるなら、足さない。書けないなら、足す。これで9割は決まります。判断を「多いか少ないか」から「書けるか書けないか」に移すのが、この条件の役割です。

4. 業種別に、1つだけ足すとしたら何か

実際にお作りしてきたサイトで、最小構成の3つに「1つだけ足すならこれ」というものを挙げます。業種で必ず決まるものではありませんが、出発点として使えます。

工事・リフォーム・設備

足すのは、住所、または現場の場所です。番地までは要りません。市区町村までで足ります。

理由は対応エリアです。エリア外からの問い合わせに、見積もりの話を書いて返しても、お互いの時間が消えます。市区町村が分かるだけで、一次返信を「対応できます」と「申し訳ありませんが」で書き分けられます。

士業(税理士・司法書士・社会保険労務士など)

足すのは、相談の分野です。相続、会社設立、労務、許認可といった区分です。

事務所の中で担当が分かれている場合、これが無いと最初の返信が一般的な挨拶文になります。分野が分かれば、担当者の名前を入れて返せます。選択式にして、最後に「その他」を置くのがいちばん軋みません。

飲食・来店型の店舗

足すのは、希望の日時と人数です。これはむしろ、無いと返せません。

空席の確認が返信の中身そのものなので、日時と人数は一次返信の前提です。ただし、ここまで来ると問い合わせフォームではなく予約の受付になります。枠の管理が単純な店なら、予約の仕組みを入れるほうが向いていることもあります。

採用の問い合わせ

足すのは、応募職種です。

複数の職種を募集している会社で、これが無いと「どの募集でしょうか」という往復が1回発生します。応募してくれた人を1往復ぶん待たせるのは、採用ではかなり損です。

なお、採用の問い合わせは通常の問い合わせと分けて受けたほうが整理しやすくなります。考え方は 採用のためのホームページ ― 求人媒体との役割分担 に書いてあります。

5. 必須にしてはいけない項目

項目を置くかどうかとは別に、必須にするかどうかという判断があります。ここは置くより影響が大きいです。必須マークは、入力できない人をその場で止めます。

表:よく置かれている項目を、必須にするかどうかで仕分ける
項目必須にするか理由
お名前必須宛名が書けません。これだけは代わりがありません
連絡先(メール)必須返す先がなくなります。ここは譲れません
お問い合わせ内容必須用件が分からないと、一次返信が書けません
電話番号任意にする必須にすると、電話が苦手な層が丸ごと落ちます
会社名任意にする署名や、やり取りの中で分かります
ご予算置かないこの段階では相手も決めていません。商談で聞けます
詳細なご住所置かない市区町村まででよく、番地は見積もりの段で足ります
フリガナ・部署・役職置かない返信に要りません。1項目ずつ手間だけが乗ります

上の3行が最小構成です。次の2行は置いてよいが任意、下の3行は外す候補です。業種によって1つだけ上の組に足すことがありますが、足す理由は「一次返信が書けないから」に限ります。この表のまま使うのではなく、貴社の一次返信の文面を1本書いてみて、そこで要るものだけを上に移してください。

電話番号を必須にすると、何が起きるか

これはかなり効きます。電話番号を必須にすると、電話が苦手な層が丸ごと落ちます。番号を書けないのではなく、書いたら電話がかかってくると考えて、そこで閉じます。

年代や業種によって比率は変わりますが、メールやチャットで話を進めたい人は確実に一定数います。その人たちにとって、電話番号の必須欄は「この会社は電話で来る」という宣言に見えます。

ですから、任意にしてください。そして、任意にするだけでは足りません。理由を1行添えるのが要点です。

「お電話をご希望の方はご記入ください。ご記入がない場合はメールでご返信します」

この1行があると、書かない人は安心して空欄で送れますし、電話で話したい人は書きます。選べる状態にするだけで、どちらも落ちません。

予算を必須にしない

「予算を聞かないと提案できない」というお考えは分かります。ただ、問い合わせの段階で予算が決まっている人はごく一部です。

決まっていない人が予算の欄で手を止めると、そこで終わります。決まっていない人のほうが、本来は提案の余地が大きい相手です。いちばん話したい人を、最初の画面で落としていることになります。

会社名を必須にしない

BtoBなら要るように見えますが、個人のメールアドレスから相談してくる決裁者は実際にいます。社内で検討段階のうちは、社名を出したくないという心理も働きます。

置くのは構いません。必須にしないでください。

詳細な住所を必須にしない

番地まで必須にすると、入力の手間が一気に増えます。訪問が前提の業種でも、最初に要るのは「どのあたりか」だけです。市区町村を選択式にするか、自由記入で「○○市」まで書いてもらえば足ります。

番地は、訪問日を決める段で聞けば十分です。

6. 選択式にするか、自由記入にするか

項目数を減らすと、残った項目の作り方が効いてきます。ここは入力の手間を半分にできる場所です。

選択式にすると答えやすくなるもの

  • 相談の分野(相続/会社設立/労務 など)
  • おおよその地域(市区町村の一覧)
  • 希望の連絡手段(メール/電話)
  • 人数や個数のような、範囲で足りるもの

共通点は、答えが有限で、相手が迷わないことです。選択肢を見た瞬間に自分の答えが分かるなら、タップ1回で済みます。

ただし、選択肢を増やしすぎると逆効果です。10個の選択肢は、自由記入より重い。3〜5個に収めて、最後に「その他」を置いてください。

自由記入のほうがいいもの

  • お問い合わせ内容
  • 現場や物件の状況のような、こちらが想定しきれないこと
  • 希望の時期のような、幅のある答え

選択式にすると、用意した枠の外にいる人が書けなくなります。そして実務では、枠の外にいる相談のほうが大きい案件だったりします。

白紙の「ご相談内容」は書けない

自由記入にすると決めたら、もう1つやることがあります。白紙の欄は書けません。「ご相談内容」というラベルと空の箱だけを置くと、何をどこまで書けばいいのか分からず、手が止まります。

ここは、例を薄く入れておくのが効きます。入力欄に薄い文字で表示される案内(プレースホルダー)に、「例:築25年の木造2階建てです。外壁の塗り替えを検討していて、まずは費用の目安を知りたいです」と入れておく形です。

例が1つあるだけで、何を書けばいいかが伝わります。注意点は2つあります。初期値として文字を入れてしまわないこと(そのまま送信されます)。そして、例を長くしすぎないこと。例と同じ分量を書かないといけないと思われると、逆に重くなります。

7. 送信ボタンの周りで、決めること

項目が決まったら、残りは送信の手前です。ここは項目数と同じくらい結果が動きます。

確認画面は要るのか

これは両論あります。先に申し上げると、業種と金額によって答えが変わります。

1画面で送れるほうが、完了しやすくなります。確認画面を挟むと、そこで一度手が止まり、「あとでいいか」と離れる人が出ます。ボタンを押してから完了までの距離が短いほど、送信は増えます。

一方で、確認画面には誤送信と書き間違いを減らす働きがあります。メールアドレスの打ち間違いは実際によく起きます。そして打ち間違いは、こちらから気づけません。返信できないまま終わります。

判断の目安はこうです。

  • 問い合わせの中身が軽く、件数を増やしたい ― 1画面で送れるようにする
  • 書類や金額が絡み、1件の重みが大きい ― 確認画面を挟む
  • どちらとも言えない ― 1画面にして、メールアドレスの欄だけ入力しながら形式を確認する作りにする

3つ目が、実務ではいちばん収まりがいいです。画面を増やさずに、間違いだけを拾う形になります。

送ったあとに何が起きるかを、ボタンの近くに書く

これは費用がかからないのに、効き方が大きい一手です。いつ、誰から、どんな手段で返事が来るかを、送信ボタンのすぐ上か下に書いてください。

「2営業日以内に、担当の木戸よりメールでご返信します。お電話でのご連絡はいたしません」

書かれていないと、相手は最悪の想定をします。すぐ営業電話が来るのではないか、名簿に載るのではないか、と。一文あるだけで、押す前の迷いが減ります。

返す速さの目安そのものについては 問い合わせが来たあと、何時間以内に返すべきか にまとめてあります。ここに書く約束は、守れる数字にしてください。書いた時間を守れないほうが、書かないより損です。

スパム対策は、2つのどちらかに寄せる

項目を減らすと、スパムの話が必ず出ます。ここは短く、はっきり書きます。

使うのは、Turnstile か reCAPTCHA のどちらかです。人間かどうかを判定する仕組みで、判定に失敗したときに画面上でそう分かります。送った側が気づける、というのが大事な点です。

そして、見えない入力欄でbotを判定する方法(ハニーポット)は使わないでください。明確に非推奨です。人には見えない欄に値が入っていたら捨てる、という仕組みですが、ブラウザの自動入力がそこに値を入れてしまいます。

そうなると、画面には「送信しました」と出て、メールは飛ばず、ログも残らず、お客様は送ったつもりでいる、という状態になります。私たちが関わった案件で実際に起きました。欄の名前を変えても、自動入力を止める設定を入れても、根本的には防げませんでした。撤去する以外に解はありません。

ついでに申し上げると、成功を装って黙って捨てる処理は、スパム対策に限らず書いてはいけません。捨てるなら、送った側に分かる形で捨てる。これは実装の作法の問題です。

増やす判断は、受け取ったあとの手間と天秤にかける

最後に、判断の軸をもう1つ足します。項目を増やしていいかどうかは、離脱だけで決まりません。増やして、受け取ったあとの手間が減るなら、増やしていいのです。

例えば、月に30件の問い合わせがあり、そのうち20件がエリア外だとします。市区町村の選択を1つ足せば、エリア外の人は自分で気づいて離れますし、届いた1件ごとの判断も速くなります。この場合、項目を増やすほうが得です。

逆に、月に3件の問い合わせしかない会社が、整理のために5項目足すのは損です。3件を丁寧に処理する手間より、来なかった件数のほうが重いからです。

ですから、項目数の答えは件数で変わります。件数が少ないうちは減らす、増えてきたら仕分けのために1つ足す。この順番です。増えたあとの社内の段取りは 問い合わせが増えたあと、社内で何を決めておくか に書いてあります。

8. 雄喜晃の伴走:項目は、一次返信から逆算して決めます

私たち雄喜晃がお作りするサイトでは、フォームの項目を先に決めてから作ることはしません。最初に、貴社が送る一次返信の文面を一緒に1本書きます。そのうえで、その文面を書くために要る情報だけを項目にします。順番を逆にすると、必ず項目が増えます。

電話番号は既定で任意にして、理由の一行を添えた形でお渡しします。そして、見えない入力欄によるスパム対策は使いません。正規の問い合わせが黙って捨てられる事故を実際に見ているので、Turnstileに一本化しています。件数が減るより、届かないほうが損だからです。

一方で、私たちがやらないことも書いておきます。予約の枠管理や決済まで含む仕組みは、範囲外です。問い合わせフォームと独自ドメインのメールアドレスの開設まではお手伝いできますが、そこから先が必要なら、開発を得意とする会社のほうが確実です。それから、項目を代わりに決めて置き換えるだけの作業も受けていません。どの情報を聞くかは営業の設計そのものなので、貴社と一緒に決めないと意味がないからです。

「今のフォームの項目が多い気がするが、どれを外していいか分からない」という会社は、一度ご相談ください。今のサイトのままでも、項目を数えるところからで構いません。実際にお作りしたサイトは 制作実績、料金と条件は ホームページ制作のページ に載せてあります。

9. まとめ:数を削るのではなく、返信から逆算する

問い合わせフォームの項目数を決めるために必要なことは、3つです。

  • 3つを床にする ― 名前・連絡先・内容。ここは減らす対象から外れます
  • 足す条件を1つに絞る ― その場で答えてもらわないと、一次返信が書けないもの。それ以外は足さない
  • 必須を増やさない ― とくに電話番号は任意にして、理由の一行を添える

この3つで、項目の議論が「多いか少ないか」から抜けます。減らせば増える、とは限りません。減らしていいのは、あとで聞ける項目だけです。

まずは今日、貴社のフォームをスマートフォンで開いて、項目を数えてみてください。そのうえで、いちばん最近届いた問い合わせへの一次返信を読み返してみてください。その返信を書くために使った情報が、必要な項目です。使わなかった欄が、外せる候補です。

ぜひ一度、お話を聞かせてください。一次返信の文面から項目を決め直すところを、ご一緒します。