1. 「英語のページを作るほどではないんですが」
中小企業の経営者の方とお話していて、こんな言葉を聞くことがあります。
「外国の方からの電話や問い合わせが、少しずつ増えているんです。英語のページを作るほどではないと思うんですが、今の日本語のままで伝わっているのか、気になっていて」
外国の方への対応というと、まず英語のページや翻訳のボタンを思い浮かべる方が多いと思います。ただ、その前にできることがあります。今の日本語そのものを、分かりやすく直すことです。
日本で暮らしたり働いたりしている外国の方には、英語が母語ではない人も少なくありません。そうした人には、慣れない英語より、短くてやさしい日本語のほうが伝わることがあります。
こうした書き方は「やさしい日本語」と呼ばれ、自治体の案内や防災の情報などでも使われてきました。この記事では、その考え方をホームページの文章に当てはめる方法を書きます。
ほかの記事との違い
外国の方への対応は、ホームページの多言語対応は、本当に必要か でも書きました。そちらは、英語のページが要るかどうかを商圏から判断し、作るなら1枚だけ作る、という話です。
ホームページの文章を、読みやすく直す は、日本語で読む人に向けて、長い文や社内の言葉を直す話でした。
この記事は、その間にある話です。日本語が母語ではない人にも届くように、日本語のまま書き方を変える方法を書きます。例文はすべて「たとえば」の架空のものです。
この記事で書くこと
- 翻訳する前に、日本語をやさしくする理由
- 全部ではなく、料金・予約・場所からやさしくする順番
- 1文を短くし、1つの文に1つのことだけを書く
- ふりがな、カタカナ語、二重否定、敬語の扱い
- 数字・日付・時間・お金の書き方
- 翻訳ツールにかけても崩れにくい文と、採用のページでの使い方
2. 翻訳する前に、日本語をやさしくする理由
翻訳ツールの入口は、貴社の日本語
外国の方は、分からないページをすぐに閉じるとは限りません。ブラウザやスマートフォンの翻訳を使って、自分の言葉に直して読む人もいます。
このとき、翻訳にかけられるのは貴社の日本語です。元の日本語が長く、主語が抜けていて、敬語が重なっていると、訳された文も崩れます。訳がおかしいのは翻訳ツールのせいに見えます。ただ、入口の日本語を直すと、出口の訳も読みやすくなることが多いのです。
つまり、やさしい日本語で書くことは、日本語で読む人のためだけではありません。翻訳を通して読む人のための下ごしらえにもなります。
日本の人にも読みやすくなる
やさしい日本語は、外国の方のためだけのものでもありません。短い文と分かりやすい言葉は、お年寄りや子ども、急いでスマートフォンで読んでいる人にも読みやすくなります。
少し幼く見えないかと心配される方もいます。後で書くように、「です・ます」を残せば、丁寧さは保てます。
英語のページとは、役割が違う
英語のページは、多くの場合1枚か数枚です。それ以外のお知らせや採用のページは、日本語のまま読まれます。英語のページは「入口の案内」、やさしい日本語は「サイト全体の読みやすさ」。どちらかを選ぶのではなく、役割が違うと考えてください。
3. 全部ではなく、大事な情報からやさしくする
サイトの文章を、全部書き直す必要はありません。外国の方が困るのは、たいてい決まった場所です。
最初に直すのは、料金・予約・場所
まず直すのは、読み違えると困る情報です。
- 料金 ― いくらか、税込みか税別か、何が含まれているか
- 予約 ― 要るか要らないか、どこから、いつまでに
- 場所 ― 住所、最寄り駅からの行き方、入口の目印
- 営業時間と休み ― 何時から何時まで、休みの日はいつか
- できないこと ― 現金だけ、対応できない内容、持ち込みの決まりなど
この5つが伝われば、外国の方は「行けるか」「頼めるか」を自分で決められます。会社の理念や沿革は、後回しで構いません。
ページの上に、短い案内を置く
ページ全体を直す時間がないときは、ページのいちばん上に、やさしい日本語の短い案内を置く方法もあります。たとえば料金のページの上に、3〜4行だけ置きます。
「料金は 1回 5,000円です(税込み)。予約が いります。電話か フォームで 予約してください」
このように、言葉の区切りに空白を入れると、どこで言葉が切れるかが分かりやすくなります。ただ、サイト全体に使うと読みにくくなるので、短い案内の中だけにとどめるのがよいと思います。
料金・予約・場所・営業時間・できないこと。ここが伝われば、来られるかどうかを自分で決められます。
フォームの項目名と案内文、電話の受付時間。「何を書けばいいか」で手が止まらないようにします。
外国の方を雇っている、雇いたい会社は、仕事の内容と条件のところを直します。お知らせは、これから書くものから揃えます。
全部を一度に直す必要はありません。1つ目の5つの情報だけでも、外国の方が困る場面は減ります。例文はすべて架空なので、中身は貴社の事実で書いてください。
4. 1文を短く、1つの文に1つのことだけ
1つの文に、言いたいことを1つ
やさしい日本語でいちばん効くのは、文を短くすることです。目安は、1つの文に、言いたいことを1つだけにすることです。
たとえば、次のような文です。
直す前:「ご予約は前日までにお電話にて承っておりますが、当日でも空きがあればご案内できる場合がございますので、お気軽にお問い合わせください」
この1文には、言いたいことが3つ入っています。予約は前日まで。当日でも入れることがある。まず聞いてほしい。分けると、こうなります。
直した後:「予約は、前の日までに電話でしてください。当日でも、空いていれば入れます。まず電話で聞いてください」
日本語で読む人にとっても、後のほうが速く読めます。
「〜が、」「〜ので、」でつながない
文が長くなる原因の多くは、つなぎの言葉です。「〜が、」「〜ので、」「〜ため、」「〜の上、」で文をつなぐと、どこまでが1つの話か分からなくなります。
とくに「〜が、」は、逆のことを言うときにも、ただ話をつなぐときにも使われます。話がひっくり返るのか、続くのかが分かりにくい言葉です。逆のことを言うときは、文を切って「でも」「ただし」で始めると伝わります。
主語と、誰がするのかを書く
日本語は、主語を書かなくても通じる言葉です。ただ、それは同じ場にいる人どうしの話です。
「到着されましたら、受付にお声がけください。順番にご案内します」
この文には、誰が着くのか、誰が案内するのかが書いてありません。日本語で読む人は前後から読み取ります。一方で翻訳ツールは主語を勝手に補うことがあり、案内する人とされる人が入れ替わった訳になることもあります。
「着いたら、受付で名前を言ってください。私たちが、順番に案内します」と書くと、迷いません。
5. 言葉を選ぶ:ふりがな、カタカナ語、二重否定、敬語
ふりがなは、付け方を決める
漢字は、日本語を学んでいる人にとって大きな壁です。ただ、全部をひらがなにすると、かえって読みにくくなります。言葉の切れ目が分からなくなるからです。
ふりがなの付け方は、大きく3つあります。
- 大事な言葉だけ、かっこで読み方を添える ― 「予約(よやく)」「定休日(やすみの日)」のように。いちばん手軽です
- 漢字の上に小さく読み方を付ける ― 見た目は整います。ただ、翻訳にかけると読み方まで一緒に訳され、文が崩れることがあります
- 難しい漢字の言葉を、やさしい言葉に替える ― 「ご来店」を「お店に来る」、「ご記入」を「書く」のように。ふりがなが要らなくなります
おすすめは、3つ目を先に考えて、それでも残る大事な言葉に1つ目を使う形です。
カタカナ語は、英語とは限らない
カタカナ語は、英語が分かる人なら読めると思われがちです。実際には、日本で作られた言葉や、元の英語と意味がずれた言葉が多くあります。
たとえば「アフターフォロー」「リフォーム」「マンション」「ノルマ」。英語を母語とする人にも、そのまま意味が通じるとは限りません。
カタカナ語を使うときは、日本語の言い換えを横に添えるか、やさしい日本語に替えてください。たとえば「アフターフォロー」なら「工事のあとの点検」、「リフォーム」なら「家を直す工事」のように書きます。専門用語の言い換えの添え方は、専門用語の多い仕事を、ホームページでどう説明するか に書いた方法がそのまま使えます。
二重否定と、あいまいな言い方
「〜できないわけではありません」のような二重否定は、日本語で読む人でも一瞬止まります。日本語が母語でない人には、できるのか、できないのかが逆に伝わることもあります。
できるなら「できます」、できないなら「できません」と書いてください。条件があるなら、条件を先に書きます。「平日なら、できます」のように。
同じように、あいまいな言い方も読み違えのもとです。
- 「お早めに」 ― 「3日前までに」のように、日にちで書く
- 「なるべく」「できるだけ」 ― 守ってほしいことなら、「〜してください」と書く
- 「ご遠慮ください」 ― 遠慮の意味が伝わりにくい。「〜しないでください」と書く
- 「〜の場合がございます」 ― どんなときにそうなるのかを書く
敬語は、重ねずにほどく
いちばん崩れやすいのが敬語です。「〜していただけますでしょうか」「ご予約を承っております」「お越しくださいませ」。どれも丁寧ですが、言葉が重なっていて、何をしてほしいのかが後ろまで読まないと分かりません。
やさしい日本語では、「〜してください」「〜できます」「〜です」にほどきます。
- 「ご記入いただけますでしょうか」 ― 「書いてください」
- 「ご予約を承っております」 ― 「予約できます」
- 「お越しくださいませ」 ― 「来てください」
- 「お問い合わせくださいませ」 ― 「連絡してください」
「失礼にならないか」と心配される方もいます。ただ、「です・ます」で書いていれば、乱暴には見えません。尊敬語や謙譲語を重ねなくても、丁寧さは文末で保てます。
会社全体の口調との合わせ方は、ホームページの文章を、どんな口調で書くか にまとめています。やさしい日本語の案内は、その記事でいう「ふつうの丁寧な書き方」に寄せると、ほかのページとの段差が小さくなります。
6. 数字・日付・時間・お金の書き方
読み違えていちばん困るのが、数字のところです。数字の書き方は国や地域によって習慣が違います。日本の書き方をそのまま使うと、誤解が生まれることがあります。
日付は、「月」「日」を文字で書く
「10/5」と書くと、日本では10月5日と読みます。ただ、国によっては日と月の順番が逆で、5月10日と読む人もいます。日付は「10月5日(月曜日)」のように、「月」「日」を文字で書いてください。曜日も添えると、確かめやすくなります。
年は西暦で書きます。「令和〇年」のような和暦は、すぐには分からないことがあります。和暦が要る場面では、西暦を横に添えてください。
時間は、「から」「まで」をはっきり
「10時〜18時」の「〜」は、記号として読み飛ばされることがあります。「10時から18時まで」と書くと、翻訳にかけても崩れにくくなります。
午前と午後も、はっきりさせます。「6時」だけでは、朝か夕方か分からないことがあります。「午後6時」か「18時」のどちらかに揃えてください。
「3日前まで」「前日まで」のような期限も、人によって数え方が違います。たとえば「10日に来る場合は、7日までに」と、例を1つ添えると誤解が減ります。
お金は、税と含まれるものを書く
料金は、算用数字で書きます。「三千円」のような漢数字は、日本語を学んでいる人には読みにくいことがあります。「3,000円」と書いてください。
そのうえで、税込みか税別かを書きます。「税別」という言葉自体が分かりにくいので、「税込み(税金を入れた値段)」のように添えると親切です。何が含まれていて、何が別にかかるのかも、料金のすぐ近くに書きます。
「名様」「徒歩」は、動きの言葉に
人数は「3名様」より「3人」、時間は「徒歩5分」より「歩いて5分」のほうが伝わります。漢字2文字の言葉を、動きの言葉に直すと伝わりやすくなると覚えておくと、ほかの場所でも使えます。
| 直すところ | 直す前 | 直した後 |
|---|---|---|
| 長い文 | ご予約は前日までに承っておりますが、空きがあれば当日もご案内可能です | たとえば「予約は、前の日までにしてください。空いていれば、当日も入れます」 |
| 敬語 | ご記入いただけますでしょうか | たとえば「書いてください」 |
| 二重否定 | 土日も対応できないわけではありません | たとえば「土曜日と日曜日も、できます。前の日までに連絡してください」 |
| あいまいな言い方 | キャンセルはお早めにご連絡ください | たとえば「やめるときは、2日前までに電話してください」 |
| 日付 | 10/5(月) | たとえば「10月5日(月曜日)」 |
| 時間 | 10時〜18時(L.O.17時) | たとえば「10時から18時まで。注文は17時までです」 |
| お金 | 三千円(税別) | たとえば「3,000円。税金は別にかかります」 |
右の列のように直しても、「です・ます」が残っていれば、失礼な文にはなりません。例はすべて架空なので、金額や日にちは貴社の事実で書いてください。
7. 翻訳にかけても崩れにくい文と、採用のページ
崩れやすい文の形
翻訳ツールが読み違えやすい文には、いくつかの形があります。
- 主語のない文 ― 誰がするのかを、翻訳ツールが勝手に補う
- 名詞で止める文 ― 「駐車場あり」「要予約」は、文として訳されにくい。「駐車場があります」「予約がいります」と書く
- 長い修飾 ― 名詞の前に説明がいくつも重なると、どこにかかるかが崩れる
- 言葉の遊び ― 語呂合わせや掛け言葉は、訳すと意味がなくなる
- 画像の中の文字 ― 画像に焼き込んだ文字は、ブラウザの翻訳では訳されない
料金表やメニューを画像だけで載せていると、翻訳を使う人には読めません。大事な情報は、文字で載せてください。
訳して、戻して、読んでみる
書いた文が崩れていないかは、自分で確かめられます。
- 書いた日本語を、翻訳ツールで英語などに訳す
- 訳された文を、もう一度日本語に訳し戻す
- 戻ってきた日本語が、元の意味と同じかを読む
訳し戻した文で意味が変わっていたら、元の日本語のどこかに崩れやすい形が入っています。主語を足す、文を切る、名詞で止めるのをやめる。直してから、もう一度かけてみてください。
ただし、これは崩れやすさを見つける方法です。訳の正しさを保証するものではありません。料金や条件のように間違えると困る情報は、できれば、その言葉が分かる人に一度読んでもらってください。
外国の方を雇う会社の、採用のページ
やさしい日本語がとくに役に立つのが、採用のページです。外国の方を雇っている、または雇いたい会社では、応募を考えている人が日本語で募集の内容を読みます。
採用のページで、やさしく書きたいところは次のとおりです。
- 仕事の内容 ― 1日に何をするか。専門の言葉には言い換えを添える
- 働く時間と休み ― 何時から何時まで、休みは何曜日か、週に何日か
- 給料 ― 時間あたりか月あたりか。何が引かれるのか
- 日本語がどのくらい要るか ― 会話だけでよいのか、読み書きも要るのか
- 困ったときの相談先 ― 誰に、どうやって聞けばよいか
4つ目は、書いていない会社が多いところです。どのくらいの日本語が要るのかが分かると、応募する人は自分で判断できます。その文自体がやさしい日本語で書かれていれば、「この会社なら分かるように話してくれそうだ」と感じてもらえます。
採用のページ全体の組み立ては、採用のためのホームページ ― 求人媒体との役割分担 に書きました。なお、外国の方を雇うときの在留資格や働き方の決まりは、業種や仕事の内容によって違います。採用のページに条件を書く前に、所管の窓口や専門家に確認してください。
8. 雄喜晃の伴走:大事な情報から、やさしい日本語に直します
私たち雄喜晃のホームページ制作では、外国の方のお客様や従業員がいる会社の場合、まず料金・予約・場所のページから、やさしい日本語に直す案をお作りします。
私たちがやること
最初のお打ち合わせで、どんな外国の方が、どんな用事でサイトを見ているかを伺います。お客様なのか、取引先なのか、働きたい人なのか。読む人によって、先に直すページが変わるからです。
そのうえで、この記事で書いた順番で原稿を直します。1文を短くし、敬語をほどき、日付と料金の書き方を揃えます。直した文は翻訳ツールにかけて、訳し戻した結果も一緒にお見せします。
料金と条件
料金は制作費0円、月額8,800円(税別)からです。6ページ構成のプランは月額13,800円(税別)です。サーバー、独自ドメイン、SSL、保守は月額に含まれます。月5回までの更新代行も同じ月額の中なので、営業時間や料金が変わったときも、やさしい日本語のまま書き換えて反映します。
最低契約期間は6ヶ月です。7〜35ヶ月で解約された場合、サイトは非公開になります。36ヶ月以上ご継続いただいた場合は、サイトをお渡しします。
私たちがやらないこと
外国語に訳した文章の正しさを、私たちが請け負うことはしません。翻訳ツールで確かめるのは、日本語の崩れやすさを見つけるためです。英語などのページを載せる場合は、その言葉が分かる方に確認していただくようお願いしています。
また、在留資格や雇用の条件について、こちらで判断することもしません。採用のページに載せる条件は、貴社で確認された内容をそのまま、やさしい日本語に直します。文章を直すことで検索の順位が上がる、といったお約束もしません。
実際にお作りしたサイトは 制作実績、料金と条件は ホームページ制作のページ に載せてあります。神戸市北区鈴蘭台を拠点に、2025年10月から活動しています。「英語のページを作る前に、今の日本語で伝わっているか確かめたい」という方は、一度ご相談ください。
9. まとめ:翻訳の前に、日本語をほどく
外国の方にも読めるホームページにするために、押さえることは5つです。
- 翻訳の入口は、貴社の日本語 ― 元の文がやさしければ、訳された文も崩れにくい
- 料金・予約・場所から直す ― 全部でなくていい。読み違えると困る情報から
- 1文に1つのこと、誰がするのかを書く ― 「〜が、」でつながず、文を切る
- 敬語をほどき、二重否定をやめる ― 「〜してください」「できます」「できません」で書く
- 数字と日付は、誤解の余地をなくす ― 「10月5日(月曜日)」「10時から18時まで」「3,000円(税込み)」
やさしい日本語は、外国の方だけでなく、お年寄りや急いでいる人にも読みやすい書き方です。英語のページを作るかどうかを決める前に、できることがあります。
今日できることを1つ挙げます。料金のページの文章を、翻訳ツールで英語にして、もう一度日本語に戻してみてください。意味が変わったところが、最初に直すところです。
ぜひ一度、お話を聞かせてください。貴社のお客様や従業員に伝わる日本語にするところから、ご一緒します。