1. 「専門用語を使わないと、説明できないんです」

中小企業の経営者の方とお話していて、こんな言葉を聞くことがあります。

「ホームページは分かりやすく、専門用語を使わずに書いてくださいと言われるんです。でも、うちの仕事は専門用語を使わないと説明できない。言い換えると、今度は同業や取引先に素人っぽく見えてしまう気がして」

製造業、設備工事、士業、医療系、IT。専門用語の多い仕事ほど、この悩みは深くなります。そして、この悩みはもっともです。専門用語を全部消せば、確かに読みやすくはなります。けれど、正確さが落ち、分かっている人には物足りない文章になります。

この記事でお伝えしたいのは、専門用語は消さなくていいということです。消すのではなく、読む人の言葉を横に添える。そして、誰に向けたページかを分ける。この2つで、ほとんどの悩みはほどけます。

この記事で書くこと

  • 専門用語で困る本当の理由は、読む人が2種類いること
  • お客様が検索で使う言葉と、社内の言葉の違い
  • 専門用語を消さずに、言い換えを添える書き方
  • 図や写真で補う方法
  • 用語集のページを作るかどうかの判断
  • 法人の専門家向けと、はじめての方向けの分け方

2. 困るのは、読む人が2種類いるから

専門用語の扱いで迷うのは、文章力の問題ではありません。同じページを、知識の量がまったく違う2種類の人が読みに来るからです。

専門家と、はじめての人

1種類目は、その分野をよく知っている人です。取引先の設計や購買の担当者、同業の協力会社、紹介元の専門家。この人たちは、専門用語で読んだほうが早く理解します。言い換えばかりの文章だと、かえって読みにくく感じます。

2種類目は、はじめてその分野に触れる人です。個人のお客様、社内で急に担当を任された総務の方、創業したばかりの経営者。この人たちは、分からない言葉が1つ出たところで読むのをやめます。調べてまで読み進める人は、多くありません。

消しても、残しても、片方が離れる

専門用語を全部消すと、専門家には「この会社は分かっているのか」と思われます。全部残すと、はじめての人が離れます。どちらかに合わせると、もう片方を失う。これが、迷いの正体です。

ですから、答えは「消すか、残すか」ではありません。残したまま、はじめての人にも読める形にすることです。文章全体の読みやすさの直し方は ホームページの文章を、読みやすく直す にまとめてあるので、この記事では専門用語の扱いに絞って書きます。

3. お客様が検索で使う言葉は、社内の言葉と違う

言い換えを添える前に、お客様がどんな言葉で探しているかを知っておく必要があります。社内の言葉と、お客様の言葉は、思っている以上に離れています。

お客様は、困りごとの言葉で探す

社内では、仕事を正式な名前で呼びます。けれど、はじめての人は正式な名前を知りません。知らないので、自分の困りごとをそのまま検索窓に打ち込みます。

たとえば、設備の会社が「給排水衛生設備工事」と呼んでいる仕事を、お客様は「トイレの水が止まらない」と検索します。司法書士の事務所が「相続登記」と呼んでいる手続きを、お客様は「親の家 名義変更」と調べます。正式な名前だけで書かれたページは、困りごとで探している人に見つけてもらえません。

言葉には、3つの段がある

整理すると、同じ仕事を指す言葉には、だいたい3つの段があります。

  • 困りごとの言葉 ― 「水が止まらない」「部品が届かない」「家の名義を変えたい」
  • 一般的な呼び名 ― 「水まわりの修理」「部品の加工」「名義変更」
  • 正式な専門用語 ― 「給排水衛生設備工事」「切削加工」「相続登記」

はじめての人は上の段で探し、専門家は下の段で探します。1つのページに、3つの段の言葉がそろっているのが理想です。

表:社内の言葉と、お客様の言葉の距離(例はすべて架空の書き方です)
業種社内の言葉お客様の言葉ページでの書き方
設備工事給排水衛生設備工事トイレの水が止まらないたとえば見出しは「水まわりの修理」、本文で正式な名前を添える
製造業切削加工、公差金属の部品を1個から作ってほしいたとえば「金属を削って部品を作る(切削加工)」と括弧で並べる
士業相続登記親の家の名義を変えたいたとえば「亡くなった方の家や土地の名義を変える手続き(相続登記)」
医療系根管治療歯の奥がずきずき痛むたとえば「歯の根の中を清掃する治療(根管治療)」。表示のルールは別に確認が要る
ITサーバー保守、障害対応社内のシステムが急に止まったたとえば「システムが止まったときの復旧(障害対応)」と場面から書く

右端の書き方は、どれも専門用語を消していません。お客様の言葉を前に出し、専門用語を括弧で後ろに置いているだけです。実際の言葉は、貴社のお客様が使っている言葉で書いてください。

お客様の言葉を、どこで拾うか

お客様の言葉は、考えて作るものではありません。すでに貴社に届いている言葉の中にあります。

  • 電話の最初のひとこと ― 用件を言う前の「〇〇が困っていて」が、そのまま検索の言葉です
  • 問い合わせのメールやフォームの文面 ― お客様が自分の言葉で書いています
  • サーチコンソールの検索語句 ― どんな言葉で貴社のサイトが表示されたかが分かります
  • 見積もり依頼書や図面の余白の書き込み ― 法人のお客様でも、社内の呼び名が書かれていることがあります

1か月ほど、電話の横に紙を置いて書き留めるだけでも、かなり集まります。集めた言葉を、社内の言葉と並べて表にする。それが、このあとの書き換えの元になります。

4. 専門用語は消さずに、言い換えを添える

お客様の言葉が集まったら、ページを書き換えます。やることは、専門用語を消すことではなく、横に添えることです。

見出しはお客様の言葉、本文で専門用語を添える

いちばん効くのは、見出しにお客様の言葉を使うことです。見出しは、読む人が最初に目にする場所です。ここで「自分の話だ」と思ってもらえれば、本文に専門用語が出てきても読み進めてもらえます。

本文の最初で、専門用語を添えます。「この工事は、正式には給排水衛生設備工事と呼ばれます」。専門家は、この一文で「分かっている会社だ」と受け取ります。はじめての人は、言葉を1つ覚えて先へ進めます。

最初に出てきたところで、一度だけ説明する

専門用語は、ページの中で最初に出てきたところで、一度だけ説明します。2回目からは、専門用語のままで構いません。

形は2つです。

  • 括弧で添える ― 「公差(図面に書かれた寸法の、許される誤差の幅)」
  • 「〜とは」の一文を置く ― 「冗長化とは、1台が止まっても別の1台で動き続けるように、予備を用意しておくことです」

括弧は短い説明に、一文は少し長い説明に向いています。説明が3行を超えるなら、文章ではなく図にするほうが早く伝わります。図の話は次の章で書きます。

同じものを、別の言葉で呼ばない

見落とされやすいのが、1つのものを、ページの中で何通りにも呼んでしまうことです。あるところでは「現調」、別のところでは「現地調査」、さらに「下見」。社内では同じものだと分かっていても、はじめての人は3つの別の作業だと思います。

1つのものには、1つの呼び名を決めて、サイト全体でそろえてください。略語を使うなら、最初に正式な名前を書いてから略します。

横文字の専門用語は、とくに丁寧に

ITや医療系では、横文字の専門用語が多くなります。「オンプレミス」「クラウド」「インプラント」。横文字は、漢字と違って字面から意味を推測できません。漢字の専門用語より、一段丁寧に説明してください。年配のお客様が多い場合の言い換え方は 年配のお客様が多い会社の、ホームページの直し方 に例を並べました。

5. 図や写真で、言葉の足りないところを補う

専門用語の説明が長くなるのは、目に見えないものを言葉だけで説明しようとしているからです。見せられるものは、見せたほうが早く伝わります。

図にすると早く伝わるもの

次のようなものは、文章より図が向いています。

  • 仕組みや構造 ― 壁の中の配管の通り方、部品の断面、手続きに関わる人の関係
  • 作業の順番 ― 受注から納品まで、相談から手続きの完了まで
  • 大きさや量 ― 小さな部品は、硬貨や指先と並べると大きさが一目で分かります
  • 選び方の違い ― 工法Aと工法Bの違い、プランごとの範囲の違い

図は、きれいでなくて構いません。手書きの下書きでも、伝えたいことが整理されていれば十分な材料になります。

写真には、名前の札を付ける

写真も効きます。ただ、写真をそのまま載せるだけでは、はじめての人には何が写っているのか分かりません。写真の中の大事な部分に、矢印と名前を添えてください。

「これが、今回交換した部品です」「この黒い部分が、さびの出ている箇所です」。一言の札があるだけで、写真は説明の役目を果たします。写真は、貴社の現場や作業場で撮ったものがいちばん伝わります。

図や写真だけにしない

1つだけ注意があります。図や写真の中にだけ説明を書いて、本文に書かないのは避けてください。画像の中の文字は、検索エンジンにも、画面の読み上げにも伝わりにくいからです。図の下に、図が言っていることを1〜2行の文章で添えておきます。

6. 用語集のページを、作るかどうか

専門用語が多いと、「用語集のページを作ったほうがいいのでは」という話になります。作るかどうかは、3つの質問で決めてください。

作るかどうかを決める3つの質問

  • 同じ専門用語が、いくつものページに何度も出てくるか
  • お客様が、用語そのものの意味を調べに来ているか(サーチコンソールの検索語句で確かめられます)
  • 説明しないと、問い合わせのときに話が通じない用語があるか

3つとも当てはまらないなら、用語集は要りません。本文の中で、最初に出たところで説明すれば足ります。

作っても、本文の説明は省かない

用語集を作るときにいちばん多い失敗は、本文の説明を省いて、用語集へのリンクだけを置くことです。用語集へ飛んだ人は、元のページに戻ってこないことが多いのです。

本文の中では、短い言い換えを省かずに添えてください。用語集は、もう少し詳しく知りたい人のための場所です。本文の代わりではありません。

用語集は、辞書にしない

用語集を作るなら、貴社の仕事に関わる言葉だけに絞ります。業界の用語を全部集めた辞書のようなページは、作るのも直すのも大変で、読む人も探しにくくなります。

1語の説明は2〜3行まで。並べ方は、50音順か、仕事の流れの順のどちらかにします。仕事の流れの順に並べると、読むだけで仕事の全体がつかめるページになります。

よく聞かれる質問とその答えは、用語集ではなく、よくある質問のページに置きます。分け方の考え方は 「よくある質問」を作ると、電話の本数が変わる に書きました。

7. 法人の専門家向けと、はじめての方向けを分ける

最後に、第2章の「2種類の読む人」に戻ります。言い換えを添えても、求めている情報の中身そのものが違う場合があります。そのときは、ページや入口を分けます。

図:同じ仕事でも、読む人によって知りたいことが違う(例は架空)
① 法人の専門家向け
設計・購買・同業のご担当の方へ

専門用語のまま、仕様に近い情報を並べます。たとえば、対応できる材質や大きさ、精度、設備の一覧、取得している資格や許認可。表で一覧にすると、比べやすくなります。

知りたいのは「頼める条件に合うか」
② はじめての方向け
はじめてご相談の方へ

困りごとの言葉から入り、何をしてくれるのか、どう進むのか、だいたいいくらかを書きます。専門用語は括弧で添える程度にし、相談の前に用意するものを添えます。

知りたいのは「自分の困りごとを頼めるか」
③ 混ぜたまま
1つのページに、全部を同じ重さで

仕様の表と、はじめての人への説明が交互に出てきます。専門家は必要な数字を探して読み飛ばし、はじめての人は表のところで読むのをやめます。

どちらにとっても、読みにくい

①と②は、同じ仕事を別の入口から説明しているだけです。中身を分けるのではなく、入口と順番を分けます。どちらの人が多いかは、貴社の問い合わせの中身で確かめてください。

入口で分ける

いちばん分かりやすいのは、トップページやサービスのページに2つの入口を並べる形です。「設計・購買のご担当の方へ」「はじめてご相談の方へ」。読む人が、自分で選んで進みます。

入口の言葉は、読む人の立場で書いてください。「法人のお客様」「個人のお客様」でも構いませんが、法人の中にもはじめての担当者はいます。知識の量で分けたほうが、迷う人は少なくなります。

1つのページの中で、上と下に分ける

ページを分けるほど情報が多くない場合は、1つのページの中で、上をはじめての人向け、下を専門家向けにします。上には困りごとの言葉で概要と進め方を、下には「仕様と対応範囲」という見出しで表を置きます。

専門家は、見出しを見て下まで飛ばします。はじめての人は、上だけ読んで相談できます。同じページで、両方が困らない順番です。サービスのページの組み立て方は サービス紹介のページは、どの順番で書けばいいか にまとめてあります。

取引先向けの情報は、仕様に近いほど伝わる

法人の取引先向けの情報は、文章より、仕様に近い数字や一覧のほうが伝わります。設備の一覧、対応できる大きさ、取得している資格。担当者は、社内で説明するための材料を探しています。下請けの仕事が中心の会社で何を載せるかは 下請けの仕事が中心の会社に、ホームページは効くのか に書きました。

業種ごとの表示のルールにも気をつける

医療系や士業など、一部の業種では、ホームページに書いてよいことや書き方に、業種ごとのルールがあります。言い換えた言葉が、効果を言い切る表現になっていないかにも注意が要ります。業種によって違うので、所管の窓口や専門家に確認してください。

8. 雄喜晃の伴走:社内の言葉とお客様の言葉を、並べるところから始めます

私たち雄喜晃のホームページ制作では、専門用語の多い会社のサイトを作るとき、最初に「社内の言葉」と「お客様の言葉」を並べた表を一緒に作ります。

私たちがやること

  • お客様の言葉を集める ― 電話や問い合わせで実際に聞く言葉を伺い、社内の言葉と並べた表にします
  • 言い換えを添えて、原稿を整える ― 見出しはお客様の言葉で、本文の最初に専門用語を添える形に直します
  • 読む人ごとの入口を組む ― 専門家向けとはじめての方向けを、入口かページの上下で分けます
  • 図や写真を、説明の形に整える ― 手書きの下書きや、貴社で撮っていただいた写真に、名前の札や説明の文章を添えて載せます

料金と条件

料金は制作費0円、月額8,800円(税別)です。6ページ構成のプランは月額13,800円(税別)です。サーバー、独自ドメイン、SSL、保守は月額に含まれます。月5回までの更新代行も同じ月額の中なので、新しく集まったお客様の言葉を見出しに足すような直しも、ご連絡いただければこちらで反映します。

最低契約期間は6ヶ月です。7〜35ヶ月で解約された場合、サイトは非公開になります。36ヶ月以上ご継続いただいた場合は、サイトをお渡しします。

私たちがやらないこと

  • 専門的な内容が正しいかどうかを、こちらで判断することはしません。言い換えた文章は、公開の前に貴社で中身を確かめていただきます
  • 読みやすさのために、事実を曲げた言い換えはしません。正確さを落としてまで短くすることはしません
  • 業種ごとの表示のルールについて、判断を代わりに下すこともしません。気になる表現は、所管の窓口や専門家に確認していただくようお願いしています
  • 検索順位や問い合わせの増加をお約束することもしません

実際にお作りしたサイトは 制作実績、料金と条件は ホームページ制作のページ に載せてあります。神戸市北区鈴蘭台を拠点に、2025年10月から活動しています。

「うちの仕事は説明が難しいから、ホームページでは伝わらない」と感じている方は、一度ご相談ください。

9. まとめ:消すのではなく、添えて、分ける

専門用語の多い仕事をホームページで説明するときに、押さえることは5つです。

  • 読む人が2種類いると知る ― 専門家とはじめての人。どちらかに合わせると、もう片方が離れる
  • お客様の言葉を集める ― 困りごとの言葉・一般的な呼び名・専門用語の3つの段をそろえる
  • 専門用語は消さずに、言い換えを添える ― 見出しはお客様の言葉、最初に出たところで一度だけ説明する
  • 説明が3行を超えたら、図や写真にする ― 写真には名前の札を付け、図の下に文章も添える
  • 入口か、ページの上下で分ける ― 用語集は3つの質問に当てはまるときだけ作る

専門用語が多いことは、弱みではありません。それだけ専門的な仕事をしている、という証拠です。足りないのは、はじめての人がそこまでたどり着くための足場だけです。

まず、今日できること

今週かかってきた電話を思い出して、お客様が最初に言った言葉を3つ書き出してみてください。その言葉が、貴社のサイトの見出しに1つでも入っているかを確かめます。入っていなければ、そこが最初に直す場所です。

専門用語のせいで、ホームページの説明が書けずに止まっている、という方は、一度ご相談ください。