1. 「ページによって、別の会社みたいだと言われまして」
中小企業の経営者の方とお話していて、こんな言葉を聞くことがあります。
「社長挨拶は私が書いて、サービスの説明は営業の者が、採用のページは若い社員が書いたんです。そうしたら知り合いに『ページによって別の会社みたいだね』と言われまして。どこを直せばいいのか分からないんです」
ホームページの原稿を用意するとき、多くの会社が気にするのは中身です。何を書くか、どの順番で書くか、読みやすいかどうか。一方で、どんな口調で書くかは、ほとんど話し合われないまま進みます。
その結果、書いた人ごとの癖がそのまま残ります。サービスのページは硬く、採用のページはくだけていて、社長挨拶だけが格調高い。ブログには「!」と絵文字が並ぶ。1つひとつは悪くなくても、並べて読むと、同じ会社の文章に見えません。
この記事では、口調の決め方と揃え方を順番に書きます。
この記事で書くこと
- 口調が、読む人にどう受け取られているか
- 「です・ます」と「だ・である」の使い分け
- 親しみのある書き方と硬い書き方を、業種とお客様で選ぶ考え方
- ページごとに口調がばらつく問題と、揃えるところ・揃えなくていいところ
- 「させていただきます」の多用、「!」や絵文字の扱い
- 会社の口調を3行のメモにして、書く人みんなで使う方法
1文の長さや言葉の削り方など、できた原稿を読みやすくする直し方は ホームページの文章を、読みやすく直す にまとめています。この記事は、その手前で「どんな声で話す会社なのか」を決める話です。
2. 口調は、読む人が最初に受け取る「人柄」
中身より先に、口調が届く
読む人は、文章の中身を理解するより先に、口調を受け取ります。数行読んだだけで「きちんとした会社だな」「気さくな会社だな」と感じる。口調は、会社の人柄として受け取られています。
同じ内容でも、口調が違えば印象は変わります。たとえば次の2つです。例はどちらも架空です。
「お見積もりは無料にて承っております。お気軽にお申し付けくださいませ」
「お見積もりは無料です。気になることがあれば、まずは電話で聞いてみてください」
どちらが正しいということはありません。前者は改まった印象、後者は話しかけるような印象になります。読む人に合っているかどうかが問題です。
実際の対応と口調がずれると、違和感になる
気をつけたいのは、ホームページの口調と、実際にお客様と話すときの口調がずれている場合です。
サイトはとても改まった文章なのに、電話をかけると気さくな社長が出る。逆に、サイトはくだけているのに、窓口の対応は事務的。どちらも、読んで思い描いた会社と、話した会社が違うという違和感になります。
口調を決めるときの出発点は、実際の会社の話し方です。背伸びをした口調で書くと、会ったときにずれが出ます。
3. 「です・ます」と「だ・である」
まず、文末の形から決めます。ここがいちばん目に付きやすいところです。
本文は「です・ます」が基本
ホームページの本文は、「です・ます」で書くのが基本です。読む人はお客様や取引先、応募を考えている人です。話しかける相手に向けた文章なので、「です・ます」のほうが自然に届きます。
「だ・である」で本文を書くと、報告書や論文のような響きになります。内容によっては、上から言われているように受け取られることもあります。専門的な読み物として書くなら合う場面もありますが、会社の案内としては「です・ます」のほうが無難です。
「だ・である」や言い切りが合う場所
一方で、「です・ます」を使わないほうが読みやすい場所もあります。
- 見出し ― 「施工の流れ」「よくある質問」のように、言い切りや名詞で止める
- 箇条書き ― 短い項目を並べるときは、文末を付けないほうが読みやすい
- 図や表の中 ― 限られた場所に入れる言葉は、短く切る
- 仕様や条件の一覧 ― 「対応地域:神戸市内」のように項目と中身で書く
本文は「です・ます」、見出しや一覧は言い切り。場所によって使い分けるのは問題ありません。
1つの段落の中で混ぜない
困るのは、本文の同じ段落の中で混ざっている場合です。たとえば次のような文章です。例は架空です。
「当社は創業以来、地域の工事を担ってきた。お客様の声に耳を傾けることを大切にしています。それが私たちの強みである」
1文ずつ見れば間違いではありませんが、続けて読むと落ち着きません。書いた本人は気づきにくいので、原稿ができたら、文末だけを拾って読むと見つけやすくなります。
「です。」が続くときの直し方
「です・ます」で書くと、「〜です。〜です。〜です。」と文末が同じになりがちです。気になるときは、「〜ます」「〜でしょうか」「〜ください」を混ぜるか、2つの文を1つにまとめます。文末をそろえすぎないことも、読みやすさの1つです。
4. 親しみのある書き方と、硬い書き方
次に決めるのは、どれくらいの距離で話すかです。ここに正解はなく、業種とお客様で選びます。
2つの間に、段階がある
親しみと硬さは、どちらか一方ではありません。間にいくつも段階があります。大きく分けると、次の3つです。
- 改まった書き方 ― 「承ります」「いたします」「ご用命ください」
- ふつうの丁寧な書き方 ― 「受け付けています」「します」「ご相談ください」
- 親しみのある書き方 ― 「お気軽にどうぞ」「〜ですよね」「一緒に考えましょう」
迷ったら、真ん中の「ふつうの丁寧な書き方」を基準にして、場面によって少し上げ下げするのが扱いやすいと思います。
業種で選ぶ
1つの目安は、何を頼まれる仕事かです。お金や健康、権利や安全に関わる相談を受ける仕事では、落ち着いた書き方のほうが安心されやすいです。一方で、暮らしの楽しみに関わる仕事では、親しみのある書き方のほうが合うことがあります。
ただ、業種だけでは決まりません。同じ工務店でも、法人の取引が中心の会社と、個人の住まいの相談が中心の会社とでは、合う口調が違います。
お客様で選ぶ
もう1つの目安は、誰が読むかです。
法人の担当者は、ホームページの文章を社内の資料に引用することがあります。くだけすぎた文章は引用しにくくなります。年配のお客様が多い会社なら、くだけた言い回しより、ふつうの丁寧な書き方のほうが読みやすく感じられることが多いです。若い応募者に向けた採用のページなら、少し親しみを足してもかまいません。
| 主に読む人 | 合いやすい口調 | たとえばの一文 |
|---|---|---|
| 法人の取引先 | 改まった書き方〜ふつうの丁寧な書き方 | 「図面をいただければ、3営業日以内にお見積もりをお送りします」 |
| 暮らしの困りごとを抱えた個人のお客様 | ふつうの丁寧な書き方 | 「水漏れの音が気になったら、まずお電話ください。状況をお聞きして、伺う日を決めます」 |
| 楽しみを探している個人のお客様 | ふつうの丁寧な書き方〜親しみのある書き方 | 「はじめての方も、手ぶらで来ていただいて大丈夫です」 |
| お金や健康の相談をしたい人 | 落ち着いた、ふつうの丁寧な書き方 | 「ご相談の内容は、ほかの方に知られることはありません」 |
| 応募を考えている人 | ふつうの丁寧な書き方に、少し親しみを足す | 「見学だけでも歓迎です。現場の雰囲気を見てから決めてください」 |
あくまで目安です。最後の決め手は、貴社の人が実際にお客様と話すときの口調です。表の右の一文は架空の例なので、中身は貴社の事実で書いてください。
迷ったら、電話の受け答えに合わせる
いちばん外れにくいのは、電話でお客様と話すときの口調に合わせることです。電話を受けている人が、ふだんどんな言葉づかいで説明しているか。それを文字にしたものが、その会社にいちばん合う口調です。
経営者が話した内容を原稿にしてもらう進め方は、ホームページの原稿を、経営者が書かずに済ませる方法 に書きました。話した言葉から起こした原稿は、口調が自然にその会社のものになります。
5. ページごとに口調がばらばらになる
ここが、冒頭の悩みの中心です。書いた人が違えば、口調が違うのは当たり前です。全部を同じにする必要はありませんが、揃えたいところはあります。
違っていてかまわないところ
ページの役目によって、口調が少し変わるのは自然です。
- 代表挨拶 ― 代表の一人称で書くので、「私」が主語になり、思いを語る口調になる
- 採用のページ ― 応募者に向けて、ほかのページより少しやわらかくしてよい
- ブログやコラム ― 書いた人の名前が出るなら、その人らしさが出てよい
目安は、段差は1段までです。サービスのページが「ふつうの丁寧な書き方」なら、採用のページは「少し親しみを足す」くらい。改まった文章の隣に、友達に話すような文章が並ぶと、別の会社に見えます。
揃えたい4つのところ
一方で、どのページでも揃えておきたいところが4つあります。
- 自社の呼び方 ― 「当社」「私たち」「弊社」「うち」が混ざらないようにする
- 相手の呼び方 ― 「お客様」「お客さま」「皆様」「ユーザー」のどれを使うか
- 文末の形 ― 本文は「です・ます」で揃える
- 敬語の段 ― 「承ります」で書くのか「受け付けています」で書くのか
この4つがページごとに違うと、口調の差よりも目立ちます。読む人は、同じ会社が自分のことを違う名前で呼んでいることに、意外と気づきます。
社長挨拶だけが浮いてしまう
よく見るのが、社長挨拶だけが格調の高い文章になっている形です。「〜の所存でございます」「〜に邁進してまいります」のような言葉が並び、ほかのページとは別の書き手に見えます。
社長挨拶は、代表の人柄が伝わる場所です。ふだん話している言葉に近いほうが、読む人には届きます。書き方は 代表挨拶のページに、何を書くか にまとめました。
表記のルールと一緒に決める
自社の呼び方や相手の呼び方は、表記の問題でもあります。社名の書き方や住所の表記を揃える方法は、ホームページと名刺・封筒で、書いてあることが違う で書きました。表記のルールを作るときに、口調のメモも一緒に作ると、手間が1回で済みます。
6. 「させていただきます」と「!」と絵文字
口調を決めたあと、細かいところで崩れやすいのがこの3つです。
「させていただきます」が続くと、読みにくい
丁寧に書こうとすると、「させていただきます」が増えます。1つなら気になりませんが、続くと文が長くなり、へりくだりすぎて、自信がなさそうに見えることもあります。
直し方は、ふつうの「します」「です」に戻すことです。例はすべて架空です。
- 「定休日とさせていただきます」 ― 「定休日です」で伝わります
- 「ご案内させていただきます」 ― 「ご案内します」で十分に丁寧です
- 「お伺いさせていただきます」 ― 敬語が重なっています。「伺います」にします
「させていただく」が合うのは、相手の許しを得て何かをするときです。たとえば「お休みをいただきます」のような場面です。迷ったら「します」に戻すと覚えておくと、たいていは読みやすくなります。
敬語を重ねすぎない
同じように、「ご覧になられる」「おっしゃられる」のように敬語を重ねた言い方も、丁寧に見せようとして生まれます。「ご覧になる」「おっしゃる」で足ります。1文の中で敬語を2つ以上重ねていないか、読み返すときに気をつけてください。
「!」は、使う場所を決める
「!」は、明るさや勢いを出せます。ただ、本文に何度も出てくると、押しが強く見えたり、軽く見えたりします。「ぜひお問い合わせください!」「無料です!」が並ぶと、売り込まれている印象になります。
使うなら、場所を決めてください。たとえば「お知らせの見出しだけ」「キャンペーンの告知だけ」のように。本文では使わない、と決めてしまう会社もあります。どちらでも、決めて揃えることが大事です。
絵文字と顔文字は、本文では控える
絵文字や顔文字は、SNSでは自然でも、会社のホームページの本文では控えたほうが無難です。理由は3つあります。
- 見え方が端末で変わる ― 同じ絵文字でも、スマートフォンやパソコンによって形や色が違って見える
- 読み上げで名前が読まれる ― 画面を読み上げる機能を使う人には、絵文字が名前で読まれ、文の流れが途切れる
- 会社の文章としての重さが変わる ― 法人の担当者が社内で共有しにくくなる
SNSとホームページは、役割が違います。SNSでは親しみを出し、ホームページでは落ち着いて説明する。媒体ごとに口調を分けるのは、ばらばらとは違います。
専門用語やカタカナ語も、口調の一部
口調というと語尾ばかりに目が行きますが、言葉の選び方も口調の一部です。専門用語やカタカナ語が多い文章は、それだけで硬く、遠く感じられます。言い換えの添え方は 専門用語の多い仕事を、ホームページでどう説明するか に書いてあります。
7. 会社の口調を、3行のメモにして共有する
ここまで決めた口調は、紙にしないと残りません。書く人が替わるたびに、また一から悩むことになります。
長いルール集は、読まれない
口調のルールを作ろうとすると、何ページもの決まりごとになりがちです。ただ、長いルール集は、書く人が読みません。原稿を書く前に、さっと目を通せる長さにしてください。目安は3行です。
主に読む人を1つに決めます。全員に向けて書こうとすると、口調が定まりません。
自社の呼び方、相手の呼び方、敬語の段を1行にまとめます。第5章の「揃えたい4つ」をここに入れます。
崩れやすいところを、先に禁止しておきます。使わない言葉を決めるほうが、使う言葉を決めるより守りやすくなります。
3行あれば、書く人が替わっても口調の土台は揃います。細かい言い回しまで決める必要はありません。迷ったときに戻る場所があることが大事です。
メモの渡し方
3行のメモは、原稿を書く人全員に渡します。
- 社員に原稿を頼むとき ― 依頼の文と一緒に渡す。書いたあとの直しも、このメモを基準にする
- 外部に原稿を頼むとき ― 最初の打ち合わせで渡す。口調の説明を口頭で繰り返さずに済む
- 生成AIで下書きを作るとき ― 指示の中に3行をそのまま入れる。出てきた文章の口調を揃えやすくなる
社員に原稿を頼む進め方は、ホームページの原稿を、社員に書いてもらう に詳しく書きました。頼むときにこの3行を添えるだけで、戻ってくる原稿の口調がかなり揃います。
今あるページを、どの順で揃えるか
すでにホームページがある場合は、全部を一度に直そうとしないでください。読まれる順に直します。
- トップページとサービスのページ ― いちばん読まれるので、ここを基準の口調にする
- 会社概要と代表挨拶 ― 自社の呼び方が混ざりやすいので、そこだけでも揃える
- 採用のページ ― 段差が1段に収まっているかを見る
- ブログやお知らせ ― 過去の記事はさかのぼらず、これから書く記事から揃える
直したら、声に出して読んでみてください。ページをまたいで読んで、同じ人が話しているように聞こえれば揃っています。
8. 雄喜晃の伴走:お話の口調から、3行のメモを作ります
私たち雄喜晃のホームページ制作では、最初のお打ち合わせで伺った話し方を、口調の土台にします。貴社の方がお客様にどう説明しているかを伺い、それに近い口調で原稿を整えます。
私たちがやること
お話を伺ったあと、この記事で書いた3行のメモの案をお作りします。誰に向けて書くか、自社と相手をどう呼ぶか、使わない言い方は何か。案を見ていただき、直していただいたものを、すべてのページの基準にします。
社長挨拶、サービスの説明、採用のページ、ブログ。書いた人が違う原稿も、このメモに合わせて揃えてから載せます。公開したあとに社員の方が書いたお知らせやブログも、同じメモで整えて反映します。
料金と条件
料金は制作費0円、月額8,800円(税別)からです。6ページ構成のプランは月額13,800円(税別)です。サーバー、独自ドメイン、SSL、保守は月額に含まれます。月5回までの更新代行も同じ月額の中なので、お知らせやブログの原稿を送っていただければ、口調を揃えてこちらで載せます。
最低契約期間は6ヶ月です。7〜35ヶ月で解約された場合、サイトは非公開になります。36ヶ月以上ご継続いただいた場合は、サイトをお渡しします。
私たちがやらないこと
貴社の言葉を、こちらの好みの口調に書き換えることはしません。基準はあくまで、貴社の方がふだん話している言葉です。社長挨拶を、ご本人が言いそうにない立派な文章に作り替えることもしません。
また、言い回しを整えることで検索の順位が上がる、といったお約束もしません。口調を揃える目的は、読む人に同じ会社として受け取ってもらうことです。
実際にお作りしたサイトは 制作実績、料金と条件は ホームページ制作のページ に載せてあります。神戸市北区鈴蘭台を拠点に、2025年10月から活動しています。「ページによって口調がばらばらで、どこから揃えればいいか分からない」という方は、一度ご相談ください。
9. まとめ:口調は、決めて、3行にして、揃える
ホームページの文章の口調を決めるときに押さえることは、5つです。
- 口調は会社の人柄として届く ― 実際の話し方とずれると、会ったときに違和感になる
- 本文は「です・ます」、見出しや一覧は言い切り ― 場所で使い分けてよいが、1つの段落の中では混ぜない
- 親しみと硬さは、業種とお客様で選ぶ ― 迷ったら、電話の受け答えの口調に合わせる
- ページごとの段差は1段まで ― 自社の呼び方・相手の呼び方・文末・敬語の段は揃える
- 3行のメモにして渡す ― 誰に向けて、どんな距離で、何を使わないか
口調に、どの会社にも当てはまる正解はありません。貴社の人が話しているように読めるかどうかが、いちばんの基準です。
今日できることを1つ挙げます。自社のホームページを開いて、自社をどう呼んでいるかを数えてみてください。「当社」「弊社」「私たち」が混ざっていたら、それが口調を揃える最初の一歩になります。
ぜひ一度、お話を聞かせてください。貴社の話し方を、ホームページの言葉にするところからご一緒します。