1. 「英語の社名、どれが正しいんでしょう」
中小企業の経営者の方とお話していて、こんな言葉をよく聞きます。
「海外の取引先から、請求書の社名と、メールの署名の社名が違うけれど同じ会社か、と聞かれまして。見てみたら、名刺の裏とロゴでも綴りが違うんです。英語の社名なんて、ちゃんと決めた覚えがないんですよね」
この話は、珍しくありません。日本語の社名は、登記をするときに一字一句決まります。ところが英語の社名は、誰かが決めないかぎり、決まらないまま使われ続けます。
名刺を作った人、ロゴを作った人、請求書のひな形を作った人が、それぞれその場で英字を選びます。誰も間違えたわけではありません。決まっていないので、作った人が決めているだけです。
この記事の役割
近い話を書いた記事がいくつかあるので、役割を先に分けておきます。
- ドメインの名前の決め方 ― 独自ドメインの「名前」を、どう決めるか に書きました。ドメインそのものの選び方です
- 英語のページを作るかどうか ― ホームページの多言語対応は、本当に必要か に書きました
- この記事 ― その手前の話です。英語の社名そのものを1つに決めて、名刺からサイトまで同じものを使うための手順を書きます
この記事で書くこと
- 英語の社名が、どこに出ているか
- ローマ字の書き方が揺れる場所
- 「株式会社」を英語でどう表すか
- 決めた英語表記を、会社概要にどう書くか
- ドメイン名・メールアドレスとの関係
- そろえる順番
2. 英語の社名は、思っているより多くの場所に出ている
国内だけで商売をしている会社でも、英字はあちこちに出ています。
名刺の裏とロゴ
名刺の裏の英語の面と、ロゴの中の英字です。ロゴの英字は、いちばん長く使われる英語表記です。看板、車、作業着、封筒にも同じロゴが載るからです。
ドメインとメールアドレス
ホームページの住所と、社員全員のメールアドレスの後ろにつく部分です。ここには社名のローマ字や略称が入っています。毎日、いちばん多くの人の目に触れている英字と言えます。
サイトの下の方と、請求書
ホームページのいちばん下の「© 2026 〇〇」のような著作権の一行にも、英語の社名が入ります。請求書のひな形、会社案内のPDF、メールの英語の署名にも出てきます。
海外の取引先とのやり取り
海外と取引のある会社では、英語の社名が契約書、発注書、送り状に載ります。ここで表記がずれていると、冒頭の言葉のように「同じ会社ですか」という確認が入り、書類の照合で止まることもあります。
| 出ている場所 | 実際に書かれていた表記 | 誰が決めたか |
|---|---|---|
| ロゴ | たとえば「SHIN-EI」。会社の種類の言葉は入っていない | 創業のときに、ロゴを作った人 |
| 名刺の裏 | たとえば「Shinei Kogyo Co.,Ltd.」 | 名刺を刷った印刷会社の担当者 |
| ドメイン・メール | たとえば「shinnei-k.co.jp」。nが2つになっている | ドメインを取ったときの担当者 |
| サイトの著作権の一行 | たとえば「© SHINEI INDUSTRY」 | サイトを作った制作会社 |
| 請求書(英語版) | たとえば「Shin'ei Kogyo K.K.」 | 経理の方が、海外の取引先向けに |
| 決めたあと | たとえば「Shinei Kogyo Co., Ltd.」を正式な表記とし、ロゴは略した形「SHINEI」と決める | 経営者が決め、会社概要と表記ルールに1行で残す |
どの表記も、それぞれの場面では間違いではありません。困るのは、並べたときに同じ会社だと分かりにくいことです。綴り、会社の種類の言葉、業種の言葉の3つが、場所ごとに違っています。
誰も「正解」を持っていない
この表のような状態の会社で「どれが正しいですか」とお聞きすると、たいてい答えが返ってきません。正解が社内のどこにも書かれていないからです。名刺や封筒の表記全体のずれについては ホームページと名刺・封筒で、書いてあることが違う に書きました。英語表記は、その中でもいちばん決まっていないことが多い項目です。
3. ローマ字の書き方は、3つの場所で揺れる
英語の社名を決めるとき、最初に決めるのは綴りです。日本語の社名をローマ字にする書き方は、1通りではありません。どれも使われている書き方なので、どれかが間違いというわけではないのが、揺れる理由です。
のばす音
「こうよう」「おおた」「ゆうき」のような、のばす音です。
- 書かない ― Koyo、Ota、Yuki
- 母音を重ねる ― Kouyou、Oota、Yuuki
- h を入れる ― Kohyoh、Ohta
- 記号を付ける ― 母音の上に横棒を付ける書き方もありますが、パソコンやメールで崩れやすいので、社名には向きません
書かない形は短い反面、「こよう」か「こうよう」かが分からなくなります。重ねる形は日本語に忠実ですが、海外の方には読みにくく見えることがあります。
「ん」の後ろ
「ん」の後ろに何が来るかで、書き方が分かれます。
- 後ろが「あいうえお」や「や行」のとき ― 「しんえい」は Shinei とも Shin’ei とも Shin-ei とも書きます。区切りを入れないと「しねい」と読まれることがあります
- 後ろが「ば行」「ぱ行」「ま行」のとき ― 「しんぽ」は Shinpo とも Shimpo とも書きます
- 「ん」を重ねてしまう ― 区切りを避けようとして Shinnei と書くと、今度は「しんねい」と読まれます
し・ち・つ・ふ・じと、小さい「ゃゅょ」
「し」は shi と si、「ち」は chi と ti、「つ」は tsu と tu、「ふ」は fu と hu、「じ」は ji と zi。「じょう」は jo、jou、jyo とも書きます。ここも、会社ごとに選び方が違います。
決めるときの目安
どれを選ぶかは、次の順で考えると決めやすくなります。
- すでに長く使っている綴りがあれば、それを優先する ― とくにロゴとドメインです。この2つは変えるのに手間がかかります
- 海外の方が読んだときに、元の音に近いか ― 区切りの記号や h を入れるかどうかは、ここで決めます
- 電話で伝えられるか ― 記号が多いと、口で伝えにくくなります
ドメインを決めるときの綴りの揺れは、独自ドメインの「名前」を、どう決めるか で表にしてあります。どれを選んだかより、会社として1つに決まっているかどうかのほうが、相手の迷いに効きます。
4. 「株式会社」を、英語でどう表すか
綴りの次は、「株式会社」の部分です。ここも、名刺と請求書で違っていることが多いところです。
よく使われる形
株式会社の英語表記として、よく使われているのは次のような形です。
- Co., Ltd. ― 日本の中小企業でよく見る形です
- Inc. ― 短く、ロゴにも収まりやすい形です
- Corporation、Corp. ― 少し改まった印象の形です
- K.K. ― 「株式会社」のローマ字の頭文字です
合同会社なら LLC や G.K. のような形が使われることがあります。有限会社は、Co., Ltd. や Ltd. と書く会社もあります。
どれを選んでも、まず困らない
国内の中小企業の場合、どの形を選んでも、それだけで困ることはまずありません。困るのは、名刺では Co., Ltd.、請求書では Inc.、契約書では K.K. のように、混ざっていることのほうです。
ただし、英語の社名をどこまで正式なものとして扱えるかは、場面によって違います。商号そのものにローマ字を使って登記している会社もあります。契約書や海外での手続きでの扱いは、業種や国によっても違うので、司法書士や弁護士などの専門家、所管の窓口に確認してください。この記事では、社内でそろえる話までにとどめます。
前株も後株も、英語では後ろに付く
日本語では「株式会社しんえい工業」と「しんえい工業株式会社」で、株式会社の位置が違います。ところが英語では、会社の種類の言葉は、名前の後ろに付けるのが一般的です。
前株の会社も後株の会社も、英語では「Shinei Kogyo Co., Ltd.」の形になります。前に付けている表記を見かけたら、直しておくと読みやすくなります。
点とカンマと、大文字・小文字まで決める
意外と揺れるのが、記号と大文字です。
- 点とカンマ ― 「Co., Ltd.」「Co.,Ltd.」「Co. Ltd.」。カンマの後ろに空白を入れるか、点を省くか
- 大文字と小文字 ― 「SHINEI KOGYO CO., LTD.」と全部大文字にするか、「Shinei Kogyo Co., Ltd.」と頭だけ大文字にするか
ロゴは全部大文字、文章の中は頭だけ大文字、という使い分けで構いません。ただ、使い分けるなら、そのルールまで決めておくことです。
業種の言葉を、英語にするか、ローマ字のままにするか
「工業」「建設」「精工」「商店」のような業種の言葉を、英語に置き換えるかどうかも決めておきます。
- ローマ字のまま ― 「Shinei Kogyo」。日本語の社名と音が同じなので、電話で名乗った名前と一致します
- 英語に置き換える ― 「Shinei Industries」。海外の方には、何の会社かが伝わりやすくなります
どちらでも構いません。避けたいのは、名刺では Kogyo、サイトでは Industry、請求書では Industries のように混ざっていることです。
5. 決めた英語表記を、会社概要に1行で書く
決めた英語の社名は、ホームページの会社概要に残します。
「英文社名」の行を1つ足す
会社概要の表に、「英文社名」の行を1つ足して、正式な英語表記を書きます。
英文社名:Shinei Kogyo Co., Ltd.(例は架空)
この1行があれば、取引先が正式な英語の社名を確かめに来たときも、社内の人が名刺や書類を作るときも、ここを見れば済みます。
英文社名の行は、日本語の社名のすぐ下に置くと対応が分かりやすくなります。会社概要に何を載せるかは 会社概要のページに、何を載せるか にまとめてあります。
表記ルールの紙に、英語の欄を足す
社名や住所の表記を1枚の紙にまとめている会社なら、そこに英語の欄を足します。書いておくのは、次の4つです。サイトに載せるのは正式な表記だけで十分です。
- 正式な英語表記 ― 「Shinei Kogyo Co., Ltd.」
- 略した形 ― ロゴや看板で使う形。「SHINEI」
- 大文字の使い方 ― ロゴは全部大文字、文章の中は頭だけ大文字
- 英語の住所の書き方 ― 住所も社名と同じくらい揺れるので、一緒に決めます
英語のページがある場合
英語の案内ページがある場合は、見出し、本文、問い合わせ先、ページの下の一行まで、決めた表記にそろえます。英語のページの中で表記が混ざっているのは、海外の方にいちばん目立つところです。
6. ドメイン名・メールアドレスとの関係
英語の社名とドメインは、別のものです。ただ、並んで目に入るので、ずれていると気になります。
ドメインは、英語表記の「綴りの部分」とそろえる
ドメインには、「Co., Ltd.」のような会社の種類の言葉は入りません。そろえるのは綴りの部分です。
- 英語表記が「Shinei Kogyo Co., Ltd.」なら、ドメインは「shinei-kogyo.co.jp」や「shinei.co.jp」
- 英語表記が「Shin’ei」でも、ドメインには記号が使えないので「shinei」になります
記号を除いた綴りが同じであれば、見る人は同じ会社だと分かります。
すでにドメインがあるなら、英語表記をドメインに寄せる
英語の社名をこれから決めるとき、すでにドメインを長く使っているなら、英語表記の綴りをドメインに合わせるのがいちばん手間がかかりません。
ドメインを変えると、全員のメールアドレスが変わり、直す場所がたくさん出ます。英語表記なら、会社概要の1行と、次に刷る名刺から直せば済みます。変えにくいほうに、変えやすいほうを寄せるのが、順番の考え方です。
ドメインが略称でも、困らない
「sk-kogyo.co.jp」のように、ドメインを略称にしている会社もあります。それでも困ることは少ないです。会社概要の英文社名の行の近くにURLとメールアドレスが並んでいれば、見る人が「この略称は、この会社のものだ」と結びつけられます。一致していないなら、並べて見せておくことで補えます。
メールの英語の署名を、1つ用意する
海外とメールでやり取りする会社は、決めた表記で書いた英語の署名のひな形を1つ用意して、社内で配ります。社員が自分で作ると、その人の判断で英字が選ばれるからです。ひな形を1つ配るだけで、署名のずれはほとんど止まります。
7. 請求書・海外の取引先と、そろえる順番
最後に、お金と書類が絡む場面と、直していく順番です。
請求書と振込先の名義
海外の取引先に請求書を出す場合や、海外から代金を受け取る場合は、注意が要ります。振込先の口座の英字の名義は、銀行に登録されているもので、貴社が決めた英語表記とは違うことがあります。
請求書の社名と口座の名義が違って見えると、相手の経理で確認が入ることがあります。英字の名義がどうなっているか、送金を受けるときに何を書けばよいかは、取引のある銀行に確認してください。
海外の取引先には、一度決めたら変えない
すでに海外の取引先がある会社は、相手の側に、今の英語表記で登録されています。表記をそろえるために変えるなら、変える日と、新しい表記を、一度だけはっきり伝えます。
伝えずに変えると、相手の側では別の会社として扱われることがあります。そして、変えたあとはもう変えないことです。
似た名前の会社がある場合
漢字が違っても、ローマ字にすると同じ綴りになる会社があります。業種や地域の手がかりを添えて見分けてもらう考え方は、同じ名前や似た名前の会社と、間違えられる に書きました。
そろえる順番
全部を一度に直そうとすると、ロゴの作り直しまで話が広がって止まります。直しやすいところから、順番に進めます。
名刺の裏、ロゴ、ドメイン、メールの署名、サイトの下の著作権の一行、請求書のひな形、会社案内のPDF。英字が出ている場所を並べて、実際の表記を書き写します。2章の表のような一覧になります。
綴り、会社の種類の言葉、業種の言葉、大文字の使い方を決めます。ロゴとドメインのように変えにくいものに、ほかを寄せるのが基本です。
サイトの会社概要に「英文社名」の1行を足し、社内の表記ルールの紙に英語の欄を足します。ここが、社内の正解の置き場所になります。
サイトの著作権の一行、メールの英語の署名、請求書のひな形は、すぐに直せます。名刺と封筒は、次に刷り直すときに直します。ロゴは急ぎません。
Step 1 と Step 2 は、机の上で済む作業です。時間がかかるのは Step 4 の紙のものですが、刷り直しの時期に合わせれば、余計な費用はかかりません。
8. 雄喜晃の伴走:英語の社名を、サイトの中で1つにそろえます
私たち雄喜晃のホームページ制作では、会社概要を作るときに、英語の社名をどう書くかを一緒に確かめます。決まっていない場合は、決めるための材料を並べるところからご一緒します。
私たちがやること
- 今ある英字を一緒に洗い出す ― 名刺、ロゴ、ドメイン、今のサイトを見せていただき、英字が出ている場所と表記を一覧にします
- 決めるための材料を並べる ― 綴りや会社の種類の言葉の候補を並べ、変えにくいものに寄せる案をお出しします
- 会社概要に「英文社名」の1行を入れる ― 日本語の社名のすぐ下に、決めた表記を載せます
- サイトの中の英字をそろえる ― ページの下の著作権の一行、英語の案内ページ、問い合わせ先の表記まで、決めた表記に合わせます
料金と条件
料金は制作費0円、月額8,800円(税別)からです。6ページ構成のプランは月額13,800円(税別)です。サーバー、独自ドメイン、SSL、保守はすべて月額に含まれます。月5回までの更新代行も同じ月額の中なので、あとから英語の表記を決め直したときも、ご連絡いただければこちらで反映します。
最低契約期間は6ヶ月です。7〜35ヶ月で解約された場合、サイトは非公開になります。36ヶ月以上ご継続いただいた場合は、サイトをお渡しします。
私たちがやらないこと
- 英語の社名を、こちらで勝手に決めることはしません。決めるのは経営者の方です。私たちは材料を並べるところまでです
- 登記や契約での英語表記の扱いについて、法的な判断はしません。そこは司法書士や弁護士などの専門家、所管の窓口にご確認ください
- 表記をそろえる機会に、ロゴや名刺の作り直しをお勧めすることもしません。刷り直しの時期に合わせれば足りることがほとんどだからです
実際にお作りしたサイトは 制作実績、料金と条件は ホームページ制作のページ に載せてあります。神戸市北区鈴蘭台を拠点に、2025年10月から活動しています。
「英語の社名が、名刺とメールとロゴで違っている気がする」という方は、一度ご相談ください。
9. まとめ:英語の社名は、1行で決めて、全部に使う
会社名の英語表記をそろえるために押さえることは、5つです。
- 英字が出ている場所を、まず全部集める ― 名刺、ロゴ、ドメイン、署名、サイトの下の一行、請求書
- ローマ字の綴りを1つに決める ― どれが正しいかより、1つに決まっているか
- 「株式会社」の表し方と、記号・大文字まで決める ― Co., Ltd. でも Inc. でも構わない。混ざっていないことが大事
- 会社概要に「英文社名」を1行書く ― そこが社内の正解の置き場所になる
- 変えにくいものに、変えやすいものを寄せる ― ドメインとロゴに合わせる。法的な扱いは専門家に確認する
英語の社名がばらばらなのは、誰かが間違えたからではありません。誰も決めていなかったからです。決めて、1行書いておけば、そこから先は増えなくなります。
まず、今日できること
貴社の名刺の裏と、ホームページのいちばん下の一行と、メールアドレスの @ の後ろを、並べて見てみてください。3つの英字が同じ綴りになっているかどうか。違っていたら、それが最初に決めることです。
並べてみて、どれを正式にすればいいか迷ったという方は、一度ご相談ください。