1. 「何を聞けば、インタビューになるんでしょうか」
中小企業の経営者の方とお話していて、こんな言葉をよく聞きます。
「採用ページに社員のインタビューを載せたいと思っているんです。ただ、何を聞けばいいのか分からなくて。『やりがいは何ですか』と聞いても、たぶん無難な答えしか返ってこないですよね」
おっしゃるとおりです。「やりがいは」「職場の雰囲気は」と聞けば、どの会社でも同じような答えが返ってきます。答える社員が悪いのではありません。質問の形が、無難な答えしか出てこない形になっているのです。
社員インタビューは、文章の上手さで決まるものではありません。何を聞いたかと、聞いた言葉をどう残したかで、ほぼ決まります。この記事は、聞き方と段取りの記事です。
この記事で書くこと
- 応募を迷う人が知りたいこと ― 1日の流れ、入社前と後の違い、大変なこと、誰に教わったか
- 作文しない理由 ― それらしい原稿を作って載せると、何が起きるか
- 質問の作り方と、話の聞き方 ― 具体的な場面が出てくる聞き方
- 原稿にする手順と、本人の確認 ― 話した言葉を、どこまで残すか
- 掲載の同意、退職したとき、写真 ― 後から困らないための決めごと
そもそも社員紹介が要るかどうかで迷っている場合は、先に 社員紹介ページは、本当に要るのか を読んでください。採用ページ全体に何を載せるかは 採用のためのホームページ ― 求人媒体との役割分担 にまとめてあります。この記事は、載せると決めたあとの作り方に絞ります。
2. 応募を迷う人が知りたい、4つのこと
インタビューを読む人は、応募しようか迷っている人です。求人票で給与や休日はもう見ています。そのうえで、求人票には書いていないことを確かめに来ています。
確かめたいことは、だいたい次の4つに集まります。
① 1日の流れ
朝何時に来て、最初に何をして、昼はどう取って、何時ごろ帰るのか。読む人は、自分の生活に置き換えられるかどうかを見ています。
「9時から18時」という勤務時間は求人票に書いてあります。知りたいのはその中身です。午前中は外に出ているのか、事務所にいるのか。1人で動くのか、2人で動くのか。忙しい日と、そうでない日で何が違うのか。
② 入社前と後の違い
入社する前に思っていたことと、実際に働いてみて違ったこと。ここは、応募する人がいちばん怖がっているところに答える部分です。
「思っていたより体を使う仕事だった」「想像していたより、お客様と話す時間が長かった」。良い方向の違いも、そうでない違いも、両方あってかまいません。違いを正直に書いてある会社は、入ったあとに「聞いていた話と違う」と言われにくくなります。
③ 大変なこと
仕事で大変なことを、1つは書いてください。大変なことが1つも書かれていないインタビューは、かえって信じてもらえません。
大事なのは、大変なことの書き方です。大変さだけで終わらせず、そのとき実際にどうしているかまで聞きます。「夏場の現場はきついです。なので、昼の休憩を長めに取る決まりになっています」。こう書いてあれば、読む人は大変さと、会社の向き合い方を同時に受け取れます。
④ 誰に教わったか
未経験で応募しようとしている人ほど、ここを見ています。入ったあと、誰が、どうやって教えてくれるのか。
「教育制度が充実」と書くより、「最初の2週間は、先輩の〇〇さんの車に一緒に乗って回りました」のほうが伝わります。教わった人の名前(了承を得たうえで)、教わった期間、最初に1人で任されたときの話。どれも、求人票にはまず書かれていない情報です。
4つとも、1人に全部聞かなくていい
1人のインタビューに4つ全部をきれいに入れる必要はありません。2人に聞いて、1人は1日の流れが詳しく、もう1人は入社前と後の違いが詳しい。ページ全体で4つがそろっていれば足ります。
3. 作文したインタビューは、書かない・載せない
作り方の前に、1つだけ決めておいてください。本人が話していないことを、インタビューとして載せないということです。
それらしい原稿は、すぐに書けてしまう
社員に時間を取ってもらうのは大変です。だから、「だいたいこんな感じだろう」と原稿を先に作って、本人に名前を貸してもらう。あるいは文章を作るツールに書かせて、写真だけ本人のものを使う。こうした作り方は、手間がかからないぶん、選ばれやすいのが実情です。
ただ、作文したインタビューには共通の特徴があります。全員が同じ口調で話している。大変なことが出てこない。「この会社に入って本当に良かったです」で終わる。読む人は、これを何社分も見てきています。
載せたあとに起きること
もっと困るのは、載せたあとです。
- 面接で話がずれる ― 応募者が「インタビューにあった〇〇の話を聞きたい」と言い、本人が答えられない
- 本人が気まずくなる ― 自分が言っていない言葉が、自分の名前で公開されている
- 入社後に信用を失う ― 入った人が「書いてあったことと違う」と気づく
作文した1本より、短くても本人の言葉の1本のほうが、採用ページの役目を果たします。
「複数の社員の話を混ぜた架空の人物」も同じ
「社員Aさん(30代)」のように、何人かの話を混ぜて1人の人物として書く方法もありますが、これも作文と同じ扱いにしてください。読む人は、実在する1人の話として読みます。
話してくれる社員がいないなら、無理にインタビューの形にしないという判断もあります。代表が1日の流れを説明する、仕事の写真に短い説明をつける。それで十分に伝わる会社も多いです。
4. 誰に聞くか、誰が聞くか
聞く相手は、来てほしい人に近い人
インタビューの相手は、これから来てほしい人に、経歴や立場が近い人を選んでください。
未経験の人に来てほしいなら、未経験で入った人。子育て中の人に来てほしいなら、同じような事情で働いている人。いちばん仕事ができる人や、いちばん長くいる人が、適任とは限りません。読む人は、自分と似た人を探しているからです。
人数は、まずは1〜2人で始めて構いません。少ない人数でも、中身が具体的なほうが伝わります。
断ってもいい、と先に伝える
声をかけるときは、断っても構わないことを最初に伝えてください。社長や上司から頼まれると、社員は断りにくいものです。嫌々出たインタビューは、言葉がかたくなります。
「載せてもいいと思える人だけでいい」「顔を出すかどうか、名前をどう出すかは、あとで選べる」。こう伝えておくと、引き受ける側の気持ちが軽くなります。
聞き手は、直属の上司ではない人に
聞き手は、できればその社員の直属の上司ではない人にしてください。上司の前で「大変なこと」や「入社前と違ったこと」を正直に話すのは、誰にとっても難しいからです。
社内の別の部署の人、総務の担当の方、あるいは社外の人。社長が聞く場合は、「どんな答えでも評価には関係ない」と最初に言葉にしておくと、話しやすくなります。
5. 質問の作り方 ― 気持ちではなく、場面を聞く
ここがこの記事でいちばん大事なところです。
「どう思いますか」より「何がありましたか」
無難な答えが返ってくる質問には、共通点があります。気持ちや評価を聞いていることです。「やりがいは」「雰囲気は」「この会社の良いところは」。こう聞かれると、人はまとめた言葉で答えます。
具体的な話が出てくる質問は、場面を聞いています。「いつ」「誰が」「何をして」「そのとき何と言ったか」。場面を聞かれると、人は思い出しながら話すので、その人にしか言えない言葉が出てきます。
| よくある質問 | 場面が出てくる質問 | 出てきやすい答え |
|---|---|---|
| 仕事のやりがいは何ですか | 最近の仕事で、終わったあとに「よかった」と思ったのはどの仕事でしたか | たとえば「先月の〇〇の現場で、お客様に名前で呼ばれたとき」のような具体的な1件 |
| 職場の雰囲気はどうですか | 入社した最初の週、お昼ごはんはどうしていましたか | 誰と食べたか、どこで食べたか。「アットホーム」より様子が伝わる |
| 1日の仕事を教えてください | 昨日は、朝何時に来て、最初に何をしましたか | 「昨日」と区切ると、理想の1日ではなく実際の1日が出る |
| 入社して成長できましたか | 初めて1人で任された仕事は何でしたか。それは入社して何ヶ月目でしたか | 時期と仕事の名前が出る。「成長」という言葉は比べられない |
| 大変なことはありますか | この仕事で、入る前に知っておきたかったことは何ですか | 大変さが、これから入る人への助言の形で出てくる |
左の質問が悪いわけではありませんが、答える人はまとめた言葉で返すしかありません。真ん中のように、時期・相手・出来事を指定して聞くと、その人にしか話せない場面が出てきます。
質問は8つ前後、先に渡しておく
質問の数は8つ前後で足ります。多すぎると1つずつが浅くなります。そして、質問は前もって本人に渡しておいてください。
当日いきなり聞かれると、人は思い出す時間がないので、無難な答えに逃げます。数日前に質問を渡しておくと、「そういえば、あのとき」という話を持ってきてくれます。答えを書いてきてもらう必要はありません。読んでおいてもらうだけで十分です。
聞かないほうがいいこと
逆に、インタビューで聞かないほうがいいこともあります。
- 家庭や健康のこと ― 本人から話が出ても、載せるかどうかは慎重に。載せる場合も本人に選んでもらう
- 前の勤め先の悪口になる話 ― 転職の理由は「何を求めて移ったか」の形で聞く
- 給与の具体的な金額 ― 条件は求人票や募集要項で正確に書き、個人の話にしない
6. 話を聞いて、原稿にする手順
段取りを順番に書きます。原稿を社員に書いてもらう方法もありますが、インタビューは聞いて、こちらで文字にするほうが進みます。社員に原稿を頼むときの進め方は ホームページの原稿を、社員に書いてもらう に、話すだけで原稿にする考え方は ホームページの原稿を、経営者が書かずに済ませる方法 に書きました。
何に使うか、どこに載るか、断ってもいいことを伝えます。名前や顔の出し方は、この時点では決めなくて構いません。
8つ前後の質問を紙かメールで渡します。答えを書いてくる必要はないことも添えます。
録音する場合は、始める前に本人の了承を取ります。録音は原稿を作るためだけに使い、終わったら消すことも伝えます。
話した順ではなく、読む人が知りたい順に並べ替えます。言い回しは、できるだけ本人のまま残します。
要約ではなく、載せる文章そのものと、使う写真を見てもらいます。直したいところは本人の判断で直してもらいます。
どこに、どんな名前の出し方で、いつまで載せるかを確かめ、メールなどで記録を残してから公開します。
順番は会社のやり方に合わせて変えて構いません。省かないでほしいのは、②の事前に質問を渡すことと、⑤の全文の確認の2つです。
話を聞くときのコツ
当日は、質問表を順番に読み上げるより、出てきた話を掘り下げるほうを大事にしてください。「それは何月ごろですか」「そのとき、先輩は何と言っていましたか」。1つの場面を詳しく聞くほうが、質問を全部こなすより良い原稿になります。
聞き手は話しすぎず、相手が考えている間は黙って待ちます。少し間が空いたあとの言葉が、いちばん本人らしいことが多いです。
原稿にするときは、言い回しを残す
書き起こした言葉を原稿にするとき、きれいな文章に直しすぎないでください。
「正直、最初の1ヶ月は道を覚えるので精一杯でした」。この「正直」や「精一杯」が、本人の言葉です。これを「入社当初は業務の習得に注力しました」に直すと、誰が言っても同じ文になります。言い間違いや繰り返しは整えて構いませんが、口ぐせや言い回しは残すくらいがちょうどいいです。
形は、問いと答えを並べる形でも、本人の語りとして流す形でも構いません。迷ったら問いと答えの形にしておくと、読む人が知りたいところを拾い読みできます。
足さない、盛らない
原稿にするときに、話していないことを足さないでください。「つまり、こういうことですよね」とこちらでまとめた言葉を、本人の言葉として入れるのも避けます。まとめが必要なら、地の文としてこちらの言葉で書くと区別できます。
7. 掲載の同意、退職したとき、写真
本人の確認は、全文で
原稿ができたら、載せる文章の全文を本人に読んでもらいます。要約や抜粋ではなく、全文です。話した内容と、文字になった文章は、印象がかなり違うからです。
確認のときに、上司や経営者が「ここはもっと前向きに書いてほしい」と直したくなることがあります。本人が言っていない方向に書き換えるのは、作文と同じです。会社として載せられない内容(取引先の名前、社内の数字など)を外すのは構いませんが、言葉の向きは変えないでください。
同意は、何に同意したのかまで残す
掲載の同意を取るときは、次のことを伝えたうえで了承をもらいます。
- 載る場所 ― 自社のホームページのどのページか。求人媒体や会社案内、SNSにも使うなら、それも
- 名前の出し方 ― フルネーム、名字だけ、イニシャルのどれにするか。本人に選んでもらう
- 写真 ― 実際に使う写真を見てもらう。顔を出すかどうかも本人が選ぶ
- 載せる期間と、消し方 ― 退職したらどうするか。本人の申し出で消せること
口約束ではなく、メールなど後から確かめられる形で残してください。社員の名前や写真を載せるときの扱いは、会社の規程や業種によって考え方が違うこともあります。気になる点は、所管の窓口や専門家に確認してください。
退職したときは、先に決めた手順で
社員が退職したときの扱いは、載せる前に決めておくのがいちばん楽です。基本の考え方は 社員紹介ページは、本当に要るのか に書いたので、ここではインタビューならではの点を足します。
- 消す範囲を決めておく ― ページ本文だけでなく、トップに載せた抜粋、求人媒体に転載した文、会社案内のPDFにも残っていないか
- 消す前に、本人に聞く ― 「そのまま残してほしい」と言う人もいます。その場合も、在籍していないことが分かる形にするか、本人と決めます
- 空いた場所を、急いで埋めない ― 次の人のインタビューは、同じ手順で作れるまで待って構いません
退職した人のインタビューが残り続けると、読む人は「この会社、今もこの人はいるのかな」と思います。載せた日付を、ページに書いておくと、読む人も時期を判断できます。「2026年〇月取材」の1行で足ります。
写真は、仕事をしている場面を
インタビューの写真は、正面を向いた顔写真より、仕事をしている場面のほうが、読む人の役に立ちます。応募を迷っている人は、働く様子を見たいからです。
- 作業中の手元や後ろ姿 ― 顔を出したくない人でも載せられる
- 使っている道具や車、事務所の机 ― 1日の流れの話と組み合わせると伝わる
- 教わった先輩と一緒の写真 ― 「誰に教わったか」の話に添えると効く。先輩の了承も取る
社内のスマートフォンで撮る場合のコツは ホームページの写真を、社内のスマートフォンで撮る にまとめました。写真の中にお客様や取引先の人、他社の名前が写り込んでいないかは、載せる前に確かめてください。
8. 雄喜晃の伴走:聞くところから、一緒に作ります
私たち雄喜晃のホームページ制作では、社員インタビューを「原稿をご用意ください」とお願いすることはしません。
私たちがやること
まず、どんな人に応募してほしいかを伺い、誰に話を聞くかを一緒に決めます。質問表はこちらで用意し、事前にお渡しする形に整えます。ご希望があれば、話を聞く役を私たちが務めます。社外の人間が聞くほうが、社員の方も上司の目を気にせず話せることがあるからです。
聞いた内容はこちらで原稿にし、本人の方に全文を確認していただいてから載せます。写真の選び方、名前の出し方、取材日の書き方まで、ページの形に落とし込むところまで担当します。
料金と条件
料金は制作費0円、月額8,800円(税別)からです。6ページ構成のプランは月額13,800円(税別)です。サーバー、独自ドメイン、SSL、保守は月額に含まれます。月5回までの更新代行も同じ月額の中なので、社員の方が退職されたときの削除や、新しいインタビューの追加も、ご連絡いただければこちらで反映します。
最低契約期間は6ヶ月です。7〜35ヶ月で解約された場合、サイトは非公開になります。36ヶ月以上ご継続いただいた場合は、サイトを譲渡します。
私たちがやらないこと
本人が話していないインタビューを、作文して載せることはしません。何人かの話を混ぜた架空の社員を作ることも、本人の確認を取らないまま公開することもいたしません。また、インタビューを載せれば応募が増える、というお約束もしません。応募は、条件や時期、地域によっても動くからです。
「社員の話を載せたいが、何から手をつければいいか分からない」という方は、一度ご相談ください。実際にお作りしたサイトは 制作実績、料金と条件は ホームページ制作のページ に載せてあります。私たちは神戸市北区鈴蘭台を拠点に、2025年10月6日に設立した会社です。
9. まとめ:上手な文章より、本人の言葉
採用ページの社員インタビューを作るときに押さえることは、5つです。
- 応募を迷う人が知りたい4つに答える ― 1日の流れ、入社前と後の違い、大変なこと、誰に教わったか
- 作文しない ― 本人が話していないことは載せない。混ぜた架空の人物も作らない
- 気持ちではなく、場面を聞く ― 時期・相手・出来事を指定し、質問は前もって渡しておく
- 言い回しを残して原稿にし、全文を本人に確認してもらう ― 言葉の向きは変えない
- 同意の範囲と、退職したときの手順を先に決める ― 載せる場所、名前の出し方、消す範囲まで
社員インタビューで差がつくのは、文章の上手さではありません。本人が実際に言った言葉が、どれだけ残っているかです。短くても、本人の言葉で書かれた1本は、応募を迷っている人の判断材料になります。
今日できることを1つだけ挙げます。話を聞かせてくれそうな社員の方を1人思い浮かべて、「昨日は朝何時に来て、最初に何をしましたか」と聞いてみてください。その答えが、インタビューの最初の1行になります。