1. 「フォームから来るのは、ほとんど営業なんです」

「ホームページのフォームから来るのは、ほとんどが営業のメールなんです。広告の提案とか、人材の紹介とか。毎日のように来るので、正直もう通知を開かなくなってしまって。先月、その中にお客様からの見積もり依頼が混ざっていたのに、1週間気づかなかったんです」

中小企業の経営者の方から、こうしたお話をよく伺います。フォームを置いて、最初の数ヶ月は届くたびに開いていた。それが、だんだん売り込みばかりになり、開くのが億劫になる。そして、いちばん大事な1通を見落とす。

営業メールそのものは、フォームを公開している以上、ある程度は避けられません。問題は数ではなく、本当のお客様の問い合わせと同じ場所に、同じ見た目で届いていることです。ここを分ければ、営業メールが来ても、大事な1通は埋もれにくくなります。

この記事で書くこと

  • 何が困るのか ― 営業メールが増えると、社内で何が起きるか
  • 断り書き ― 「営業のご連絡はお断り」と書くかどうか、書くならどう書くか
  • 窓口 ― 営業用の入口を、お客様の入口と分ける方法
  • 仕分け ― 受け取ったあとの決まりと、返信しなくてよいもの
  • 怪しいメールとスパム対策 ― リンクや添付への注意と、仕組みの選び方

2. 営業メールが増えると、本当の問い合わせが埋もれる

先に、何が困るのかをはっきりさせておきます。営業メールが来ること自体より、それによって起きることのほうが損が大きいからです。

通知を開かなくなる

フォームの通知は、たいてい同じ件名で届きます。「ホームページからお問い合わせがありました」。中身が営業でもお客様でも、件名は同じです。

届くもののほとんどが営業だと、人は通知そのものを開かなくなります。通知を見ないことが習慣になると、お客様の1通も一緒に見なくなります。これが、冒頭の「1週間気づかなかった」の正体です。

返信が遅れ、先に他社が返す

お客様は、何社かに同時に問い合わせていることがあります。3日後に返信しても、その頃には他社と話が進んでいることがあります。

返信の速さの決め方は 問い合わせが増えたあと、社内で何を決めておくか に書きました。そこで決めた時間も、届いた1通に気づけていなければ意味がありません。

届いているものは、3種類に分けられる

フォームに届く「お客様以外」のものは、大きく3つに分かれます。それぞれ効く対策が違うので、ここで分けておきます。

  • 人が手で送る売り込み ― 広告、集客、人材、システムなどの提案。文面は丁寧で、人が実際に入力しています
  • 自動で大量に送られてくるもの ― 意味の通らない文章や、外国語の宣伝、同じ文面の繰り返し
  • だまそうとする怪しいもの ― リンクを踏ませる、添付を開かせる、ログインさせることが目的のもの

2つ目はフォームの側の仕組みで減らせますが、1つ目は人が送っているので止まりません。3つ目は、止めるより開かないことが大事です。1つの対策で全部を片づけようとしないことが、この記事の前提です。

3. 「営業のご連絡はお断り」と書くかどうか

まず思いつくのが、フォームの上に「営業目的のご連絡はご遠慮ください」と書くことです。

書いて減る相手と、減らない相手

書くと、フォームを読んでから送る人には効きます。丁寧に営業をしている会社ほど、断り書きを見て送るのをやめます。

一方で、決まった文面を多くの会社に送っている相手や、自動で送られてくるものには効きません。書いても、ゼロにはならない。ここは最初に割り切っておいてください。

書くことで、お客様が迷うことがある

強い言葉で「営業はお断り」と書くと、本当のお客様が「これは自分のことだろうか」と迷うことがあります。

たとえば、取引先として商品を卸したいという会社。協力会社として一緒に仕事をしたいという職人さん。こうした相手は、貴社にとっては来てほしい相手かもしれません。それでも、自分の連絡が「営業」に当たるのではないかと考えて、送るのをやめてしまいます。

書くなら、短く、行き先を示す

書くなら、拒む言葉より、行き先を示す言葉にしてください。

「サービスや商品のご提案は、こちらの窓口からお送りください。内容を拝見し、ご縁がある場合のみご連絡いたします」

このくらいの温度が収まります。断るのではなく、置き場所を分けて、返信の約束をしない。そうすると、提案をしたい相手は正直にそちらへ送り、お客様は迷わずにフォームを使えます。

強すぎる言葉は使わない

ときどき、「営業メールを送った場合は対応費を請求します」のような断り書きを見かけます。気持ちは分かりますが、読むお客様の印象を悪くするほうが先に立ちます。

こうした一文にどこまでの意味があるかは、一般論では言えません。業種や状況によって違うので、気になる場合は所管の窓口や専門家に確認してください。多くの場合、そこまで書かなくても、次の章の「窓口を分ける」で困りごとはかなり小さくなります。

4. 営業用の窓口を、別に作る

断り書きより効くのが、営業の連絡が入る場所を、お客様の入口と分けることです。分け方は、手間の少ない順に3つあります。

① フォームに「ご用件」を1つ足す

いちばん手軽なのは、フォームの先頭に選択肢を1つ置くことです。

  • お仕事のご依頼・ご相談 ― お客様の入口
  • 採用について ― 応募や見学の問い合わせ
  • 取引・サービスのご提案 ― 営業や売り込みの置き場所

選ばれた内容で、通知の件名を変えます。「【ご依頼】」「【採用】」「【ご提案】」のように頭に付けるだけで、受信箱の中で見分けがつきます。開く前に分かるのが大事な点です。

ただし、項目を足すと、送る手前で手が止まる人も出ます。足すのは1つだけにして、選択肢は3つ程度に抑えてください。項目を増やすときの考え方は 問い合わせフォームの項目は、いくつまで減らせるか に書きました。

② 提案用のページを、別に作る

もう一歩進めるなら、提案や営業のための入口を、別のページとして作ります。フォームのページには一行だけ「サービスのご提案はこちら」と書き、そのページへ送ります。

こうすると、お客様の入口からは提案の選択肢そのものが消え、お客様が見る画面はお客様のためだけのものになります。

③ 届く先のアドレスを分ける

分けた連絡を、届く先のアドレスごと分けます。お客様の問い合わせは全員が見る共有のアドレスへ、提案は週に1回見るアドレスへ、という形です。

ここまで分けると、お客様の通知だけが鳴る状態になります。通知を開かなくなる問題は、ほぼここで解けます。

分けても、偽って送ってくる人はいる

1つだけ注意があります。窓口を分けても、「お仕事のご依頼」を選んで売り込みを送ってくる人はいます。そのほうが読まれると考えるからです。

ですから、窓口を分けたら終わりではありません。お客様の入口に紛れた営業を、どう扱うかの決まりが要ります。次の章で書きます。

5. 仕分けの決まりを、1枚にする

届いたものを、誰が、いつ、どの箱に入れるか。これを決めておくと、迷う時間がなくなります。

箱は3つ

仕分けの箱は、3つで足ります。

  • お客様 ― 貴社の商品やサービスを買いたい、頼みたい、相談したい人。決めた時間内に返す
  • 営業・提案 ― 貴社に何かを売りたい、紹介したい人。返さず、まとめて保管する
  • 判断がつかないもの ― どちらとも取れるもの。その日のうちに責任者へ回す

見分ける手がかりは、相手が「買いたい」のか「売りたい」のかです。文面の丁寧さや、宛名の書き方ではありません。

図:フォームに届いた1通を、開いてから仕分けるまで(例は架空)
① 件名で、入口を見る

「【ご依頼】」「【ご提案】」など、どの窓口から来たかを件名で確かめます。窓口を分けていれば、ここで大半が分かれます。

たとえば「【ご提案】」なら、開かずに提案用のフォルダへ移すだけで済みます
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② 本文の最初の数行で、「買いたい」か「売りたい」かを見る

貴社の商品名や場所、時期が出てくればお客様、相手の会社の紹介から始まっていれば提案の可能性が高い、と読みます。

たとえば「〇〇の修理をお願いしたい」はお客様、「弊社は〇〇を提供しており」は提案
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③ リンクと添付を見る

知らない相手からのリンクや添付ファイルがあれば、開く前に手を止めます。お客様の箱に入れる場合も、添付は確かめてから開きます。

ここで迷ったら、開かずに責任者へ回します
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④ 3つの箱に入れる

お客様は決めた時間内に返信。提案は保管。判断がつかないものは、その日のうちに責任者へ。どれにも入れずに置いておく、という扱いは作りません。

迷ったら、お客様の箱に入れて返信する側に倒します

全部の手順を毎回やる必要はありません。窓口を分けていれば、①でほとんどが片づきます。②以降は、お客様の入口に紛れてきたものだけに使います。

迷ったら、お客様の側に倒す

仕分けでいちばん大事な決まりは、これです。どちらか迷ったら、お客様として扱う。

営業に丁寧に返信してしまう損は、数分の手間です。お客様を営業だと思って放っておく損は、1件の仕事です。損の大きさが違うので、迷ったときの倒し方を先に決めておきます。

法人のお客様の中には、「ご担当者様」で始まり、自社の紹介が数行あって、最後に本題が来る書式で送ってくる会社もあります。営業メールとよく似ていますが、最後まで読むと見積もりの依頼だった、ということがあります。最初の数行だけで決めないでください。

誰が、いつ見るか

仕分けをする人を1人と、休みの日の代わりの人を決めます。見る時間も、朝と昼過ぎの2回のように決めておきます。

決まりは、紙1枚に書く

ここまでの決まりを紙1枚に書き、仕分けをする人の手元に置いてください。3つの箱、見分ける手がかり、迷ったときの倒し方、見る時間、回す先の責任者。書いてあれば、担当が変わっても同じ判断ができます。

6. 返信しなくてよいもの、返したほうがいいもの

営業や提案の箱に入れたものに、返信は要るのか。これも先に決めておきます。

表:届いた連絡の種類と、返信するかどうかの目安(例は架空)
届いた連絡返信扱い
多くの会社に送っているような売り込みしなくてよい提案の箱に保管。たとえば広告や集客、人材紹介の一斉の案内
何度も同じ相手から届く売り込みしなくてよい受信の設定で、その送り主を別のフォルダへ自動で振り分ける
取引先や既存のお客様からの提案短く返す関係が続く相手なので、検討しない場合も一言お礼を返す
本当に検討したい提案返す担当者を決めて返信。お客様の対応より後の順番でよい
地域の団体や学校、取材の依頼返す営業ではないので、判断がつかない箱から責任者へ回す
リンクや添付で何かをさせようとするものしない開かずに責任者へ。社内で共有して、同じものを誰も開かないようにする

返信しないと決めたものに、罪悪感を持つ必要はありません。返信の時間は、お客様のために取っておくものです。

返信しないと決めてよい理由

一斉に送られている売り込みに、送り主は個別の返信を前提にしていません。返信がないことは、相手にとっても想定のうちです。返さないことは失礼ではありません。

むしろ断りの返信をきっかけに、電話や追いかけのメールが来ることがあります。やり取りの入口を、こちらから開くことになります。

返すなら、短い定型文を1つ用意する

返したほうがいい相手に送る文面は、1つ用意しておくと楽です。

「ご提案いただきありがとうございます。社内で拝見しましたが、現時点では検討の予定がございません。必要が出てきた際には、こちらからご連絡いたします」

理由を細かく書く必要はありません。次の連絡の主導権を、こちらに置く書き方にしておくと、追いかけの連絡が来にくくなります。

「配信停止はこちら」は押さない

心当たりのない相手からの「今後のご案内が不要な方はこちら」というリンクも、押さないほうが無難です。届くアドレスだと相手に伝わる場合があります。受信の設定で振り分けるほうが、こちらだけで完結します。

7. 怪しいメールと、スパム対策の選び方

営業メールの中には、売り込みではなく、だますことが目的のものが混ざります。ここは、仕分けより先に開かないことが大事です。

開く前に手を止める、5つの形

次のような連絡は、フォームから来たものでも、開く前に手を止めてください。

  • サイトの不具合や危険を知らせる ― 「貴社のサイトに問題が見つかりました。詳細はこちら」
  • 権利の侵害を指摘する ― 「貴社のサイトの画像が、私の作品を無断で使っています。証拠はこちら」
  • 請求書や見積書を装う ― 頼んだ覚えのない請求や、見積もりの添付
  • ログインを求める ― 「アカウントの確認が必要です」と、ログインの画面へ誘う
  • 開くことを急がせる ― 「本日中に」「至急」と、考える時間を与えない

どれも、不安にさせて、リンクや添付を開かせるのが狙いです。フォームから届いたというだけで、相手が確かな人だとは限りません。フォームは、誰でも何でも送れる入口だからです。

確かめるなら、別の手段で

気になったときは、届いたメールの中のリンクや連絡先を使わずに確かめてください。サイトの不具合なら制作会社や保守の担当に、普段の連絡先から聞きます。取引先を名乗る連絡なら、名刺や過去の請求書にある電話番号にかけます。

サイトが本当に書き換えられているかもしれない、という場合の手順は ホームページが改ざんされたかもしれないときに、まずやること にまとめました。そこでも書いていますが、不審な連絡に、慌ててすぐ応じないことが最初の一歩です。

開いてしまったら

もし開いてしまったら、1人で抱えずに責任者へ伝え、社内でパソコンを見ている担当や、普段相談している専門の窓口に相談します。黙っているのがいちばん良くありません。早く伝われば、ほかの人が同じものを開くのを止められます。

自動で来るものは、フォームの側で減らす

ここで、2章の分類の2つ目、自動で大量に送られてくるものに戻ります。これは仕分けで頑張るより、フォームの側の仕組みで減らすほうが効きます。

使うのは、Turnstile や reCAPTCHA のような、送っているのが人かどうかを判定する仕組みです。判定に失敗したときに、送った人の画面にそう表示されるので、正しい問い合わせが黙って消えることがありません。ただし、これで減るのは自動のものだけです。人が手で送る売り込みは、仕組みでは止まりません。だから窓口と仕分けの決まりが要ります。

見えない入力欄で判定する方法は、使わない

自動送信の対策として、人には見えない入力欄を置き、そこに何か入っていたら捨てるという方法が紹介されていることがあります。これは勧めません。

ブラウザの自動入力が、その見えない欄に値を入れてしまうことがあるからです。そうなると、お客様の画面には「送信しました」と出るのに、問い合わせは届かず、誰も気づけません。営業メールを減らすつもりで、いちばん大事な1通を自分で捨てることになります。詳しくは 問い合わせフォームで、人はどこで手を止めるのか に書きました。

自動の返信メールに、本文を載せない

送った人に「受け付けました」と自動で返信が届く設定なら、その返信に、入力された本文をそのまま載せないでください。他人のメールアドレスを入れて送られると、貴社の名前で、知らない第三者に文面が届いてしまいます。自動の返信は、「受け付けました。〇営業日以内にご連絡します」という決まった文面だけにしておくのが安全です。

8. 雄喜晃の伴走:受け口を分け、届くところまで確かめます

私たち雄喜晃は、ホームページを作るときに、問い合わせフォームを「置いて終わり」にしません。誰の連絡が、どこに、どんな件名で届くかまでを、最初のお打ち合わせで一緒に決めます。

私たちがやること

  • 窓口の設計 ― ご用件の選択肢を1つ足すか、提案用のページを分けるかを、今届いている連絡の中身を伺って決めます
  • 通知の件名分け ― 選ばれたご用件ごとに、件名の頭に印を付けて届くようにします
  • スパム対策の設置 ― Turnstile や reCAPTCHA のように、判定の結果が送った人に見える仕組みを入れます。見えない入力欄で捨てる方法は使いません
  • 自動の返信の文面 ― 入力された本文を載せない、決まった文面にします
  • 届くかどうかの確認 ― 公開前に、窓口ごとに実際に送って、届く先と件名を確かめます

料金と条件

料金は制作費0円、月額8,800円(税別)からです。6ページ構成のプランは月額13,800円(税別)です。サーバー、独自ドメイン、SSL、保守はすべて月額に含まれます。月5回までの更新代行も同じ月額の中なので、窓口の選択肢を変えたい、断り書きを直したい、というときもご連絡いただければ反映します。

最低契約期間は6ヶ月です。7〜35ヶ月で解約された場合、サイトは非公開になります。36ヶ月以上ご継続いただいた場合は、サイトをお渡しします。

私たちがやらないこと

届いたメールの仕分けや返信そのものは、お引き受けしていません。お客様への返信は、貴社の言葉で、貴社の時間で返すものだからです。私たちがやるのは、仕分けやすい形で届くようにするところまでです。

営業の送り主への抗議や、怪しいメールを開いたあとのパソコンの調査もお受けしていません。専門の窓口にご相談ください。問い合わせの件数をお約束することもしません。

「フォームの通知を開かなくなってしまった」という方は、一度ご相談ください。実際にお作りしたサイトは 制作実績、料金と条件は ホームページ制作のページ に載せてあります。神戸市北区鈴蘭台を拠点にしています。

9. まとめ:止めるより、分けて埋もれさせない

フォームに届く営業メールに困ったときに押さえることは、5つです。

  • 3種類に分けて考える ― 人が送る売り込み、自動で来るもの、だまそうとするもの。効く対策がそれぞれ違う
  • 断り書きは、行き先を示す ― 拒む言葉はお客様を迷わせる。提案の置き場所を示す一行にする
  • 窓口を分けて、件名で見分ける ― 開く前に、お客様の1通だと分かる状態にする
  • 迷ったら、お客様の側に倒す ― 仕分けの決まりを紙1枚にし、見る人と時間を決める
  • リンクと添付は、別の手段で確かめる ― スパム対策は Turnstile や reCAPTCHA で。見えない入力欄は使わない

営業メールをゼロにすることは、フォームを公開している限りできません。ただ、お客様の1通が埋もれない状態は作れます。止めることより、分けることに力を使ってください。

今日できることを1つだけ挙げます。この1ヶ月にフォームから届いたものを、3つの箱に分けて数えてみてください。どの箱がいちばん多いかで、先に手を付けるところが決まります。

ぜひ一度、お話を聞かせてください。貴社の受け口を、どこで分けるかを決めるところからご一緒します。