1. 「情報の管理はどうされていますか、と聞かれまして」
中小企業の経営者の方とお話していて、こんな言葉を聞くことがあります。
「新しい取引先から、図面の扱いについて書いたものはありますかと聞かれたんです。うちは昔から鍵のかかる棚にしまって、終わったらお返ししている。ちゃんとやってはいるんですが、書いたものと言われると何も無くて」
図面、顧客の名簿、お客様個人の書類。こうしたものを預かって進める仕事は、たくさんあります。製造や設計の会社は図面を、印刷や発送を請け負う会社は名簿を、士業や不動産、介護の事業所は個人の書類を預かります。
預ける側は、仕事の腕と同じくらい、預けたものがどう扱われるかを気にしています。とくに初めて取引する相手については、確かめる手段がほとんどありません。そこで見に行くのが、ホームページです。
ところが、多くの会社のサイトには、この話がどこにも書かれていません。書いてあっても、プライバシーポリシーの長い文章の中に埋もれています。やっているのに、書いていないので、やっていないのと同じに見えてしまう。もったいない状態です。
この記事の役割
近い話は、ほかの記事でも書いています。サイトの問い合わせフォームなどで受け取る個人の情報の約束は ホームページのプライバシーポリシーに、何を書くか に、資格や認証の名前の載せ方は 資格・許認可・受賞歴を、ホームページにどう載せるか にまとめました。
この記事で扱うのは、その間にある話です。仕事の中で預かったものを、実際にどう扱っているかを、ホームページに短く書くかどうか。書くなら何を、どの程度まで書くか。法律や認証の基準については一般論にとどめます。業種や扱う情報によって求められることが違うので、細かいところは所管の窓口や専門家に確認してください。
この記事で書くこと
- 取引先が、情報の扱いについて確かめたいこと
- プライバシーポリシーと、何が違うのか
- 書く中身は4つ ― 保管と返却・廃棄、見られる人、パソコンとメール、外部に頼む場合
- 書き方の型と、できていないことを書かない理由
- 認証がある場合の書き方と、変わったときの直し方
2. 取引先が確かめたいのは、預けたあとのこと
先に、読む人のことを考えます。この説明を読むのは誰で、何を知りたいのか。
読むのは、発注を決める前の担当者
いちばん多いのは、取引を始めるかどうかを社内で決める前の担当者です。発注の担当者や、購買・調達の担当者が、候補の会社を一社ずつ確かめます。上司や社内の決まりに沿って、「この会社に預けて大丈夫か」を説明できる材料を探しています。
取引先の担当者がサイトのどこを見ているかは、はじめて取引する会社の担当者が、ホームページで確かめたいこと に詳しく書きました。情報の扱いは、その中でも聞かれやすい項目の一つです。
個人のお客様も読みます。相続の書類を預ける、家の図面を預ける、家族の介護の記録を任せる。大事なものを預ける前に、どこにしまわれるのかを知りたいという気持ちは、法人の担当者と変わりません。
知りたいのは、方針ではなく流れ
読む人が知りたいのは、立派な方針ではありません。預けたものが、どこに置かれて、誰が見て、終わったらどうなるかという流れです。
「当社は情報の保護を重要な責務と考え」と書かれていても、読む人は自分の図面がどうなるのかを想像できません。「お預かりした図面は、仕事が終わったらお返しします。写しは残しません」と書かれていれば、すぐに分かります。
聞かれてから用意すると、間に合わないことがある
取引先から書面で聞かれることもあります。そのときに一から考えると、社内で確かめるのに時間がかかります。サイトに短く書いてあれば、それが答えの下書きになります。聞かれる前に読んでもらえれば、確認の手間そのものが一つ減ります。
3. プライバシーポリシーとは、役割が違う
ここでよく出る疑問があります。「プライバシーポリシーがあるから、それで足りているのでは」というものです。
ポリシーは、個人の情報の約束
プライバシーポリシーは、主に個人の情報を、何のために使い、誰に渡すかを約束する文章です。問い合わせフォームの名前やメールアドレス、アクセス解析で集まる情報などが中心になります。法律に沿って書く欄が多く、どうしても文章が長く硬くなります。
こちらは、仕事で預かるもの全体の扱い
この記事で扱うのは、仕事の中で預かるもの全体の扱いです。個人の情報だけではありません。取引先の図面や仕様書、価格の資料のように、個人の情報ではないけれど外に出ては困るものも入ります。
紙の書類もあれば、データもあります。受け取り方も、手渡し、郵送、メールの添付とさまざまです。ポリシーの文章の中に、これを全部書き込むのは向いていません。
| 書く場所 | 何について書くか | 主に読む人 | 書き方 |
|---|---|---|---|
| プライバシーポリシー | サイトや業務で受け取る個人の情報の、使い道と渡す先 | フォームを送る直前の人 | 決まった欄に沿って、正確に。長くなってもよい |
| 情報の取り扱いについて | 仕事で預かる書類やデータ全体の、保管・見る人・返却と廃棄 | 発注を決める前の担当者、大事な書類を預ける個人のお客様 | 実際にやっていることを、短く事実で |
| 資格・認証の欄 | 第三者に認められた資格や認証の、名前と範囲 | 名前で確かめたい担当者 | 正式名称・範囲・期限を、取得している分だけ |
3つは重なる部分がありますが、1つの文章で兼ねようとすると、どれも読みにくくなります。真ん中の欄は、ほかの2つへリンクでつなぎ、中身は短く保つのがおすすめです。
ページを分けるか、会社概要の近くに置くか
書く量は多くありません。独立したページにしてもよいですし、会社概要のページの下に一つの欄として置いても構いません。大事なのは、探している人が見つけられることです。会社概要は取引前の担当者がよく開くページなので、近くに置くと目に入りやすくなります。会社概要の組み立ては 会社概要のページに、何を載せるか にまとめてあります。
置いたら、プライバシーポリシーからもリンクをつないでおきます。こちらの欄からも、ポリシーへつなぎます。読む人が「個人の情報の話はあちら、預けた書類の話はこちら」と行き来できるようにするためです。
4. 書く中身は、4つで足りる
何を書くか。多くの場合、次の4つで足ります。どれも、今やっていることを言葉にするだけです。新しい決まりを作る話ではありません。
① 預かったものの保管と、返却・廃棄
いちばん聞かれるのがここです。預かってから返すまでの流れを書きます。
- 保管の場所 ― たとえば「紙の書類は、鍵のかかる保管庫にしまっています」
- 預かる期間 ― たとえば「お仕事が終わるまでお預かりし、終わったら原本をお返しします」
- 終わったあとの扱い ― たとえば「写しは、お引き渡しから〇ヶ月で処分します。処分の方法は、ご希望に合わせます」
〇の部分は、貴社が実際に決めている期間を入れてください。決めていない場合は、書く前に社内で決めるところからです。決めていないことは書かない。これは第6章で詳しく書きます。
② 社内で見られる人の範囲
次に、預かったものを社内の誰が見るのかです。人数を書く必要はありません。役割で書きます。
- 担当で区切る書き方 ― たとえば「お預かりした図面は、担当する設計者と、その仕事の責任者だけが扱います」
- 共有の範囲で区切る書き方 ― たとえば「ご相談の内容は、担当者と代表のほかには共有しません」
小さな会社では、全員が目にする状態になっていることもあるでしょう。それならそのまま、「少人数の会社なので、社員が業務の中で目にすることがあります。社外には出しません」と書くほうが正直です。範囲を狭く見せるより、実際の範囲を書くほうが信用されます。
③ パソコンやメールでの扱い
データで預かるものは、パソコンやメールでどう扱うかを書きます。ここは書き方に気をつけるところです。使っている製品の名前や、設定の細かい中身は書きません。
書くのは、読む人に関係のある約束だけです。
- 扱う端末 ― たとえば「お預かりしたデータは、会社が管理するパソコンでだけ扱います。私物の端末には保存しません」
- 受け渡しの方法 ― たとえば「大きなファイルのやりとりは、ご希望の方法に合わせます。メールでの添付が難しい場合はご相談ください」
- 終わったあと ― たとえば「お仕事が終わったデータは、返却か削除か、ご希望を伺って決めます」
④ 外部に頼む場合
最後に、仕事の一部を外の会社や人に頼むことがあるかです。印刷を外に出す、配送を頼む、加工の一部を協力会社に任せる。こうしたことがあるなら、それも書いておきます。
- 渡すものの範囲 ― たとえば「加工の一部を協力会社にお願いすることがあります。その場合は、必要な図面だけをお渡しし、仕事が終わったら回収します」
- 知らせ方 ― たとえば「外部に頼む場合は、事前にお知らせします」
頼む先の会社名まで書く必要はありません。ただ、頼むことがあるのに書いていないと、あとで分かったときに「聞いていない」となります。取引先の決まりで、事前の承諾が要る場合もあります。
技術的な対策の詳しい中身は、書かない
ここで1つ、書かないほうがいいものを挙げておきます。パソコンやネットワークの守り方の細かい中身です。
理由は3つあります。1つ目は、読む人の多くにとって、細かい中身は判断の材料にならないこと。2つ目は、守り方を詳しく書くと、かえって外から狙う手がかりを渡してしまうおそれがあること。3つ目は、設定は変わるので、書いた内容がすぐ古くなることです。
取引先から詳しく聞かれたときは、サイトではなく、個別にお答えする形にします。「詳しい内容は、お取引の際に書面でお答えします」と一文添えておけば十分です。
5. 書き方の型 ― 短く、事実で
中身が決まったら、書き方です。いくつか型を決めておくと、書きやすくなります。
1項目、1〜2文
1つの項目は、1〜2文で終えます。説明を足したくなっても、読む人が確かめたいのは「何をしているか」だけです。理由や思いは、書くとしても最後に一言で足ります。
「努めます」ではなく、「しています」
方針の文章でよく見る「〜に努めます」「〜を徹底します」は、使わないほうが伝わります。努めているかどうかは、読む人には確かめられません。「鍵のかかる保管庫にしまっています」のように、していることを書きます。
どこに置いて、誰が見て、終わったらどうなるかが分かりません。どの会社でも書ける言葉なので、比べる材料にもなりません。
見る人と、終わったあとの扱いが一文で分かります。取引先の担当者は、この文をそのまま社内の説明に使えます。
右の形は、言葉を飾ったのではなく、していることを具体的に書いただけです。中身は、貴社が実際にやっていることで書いてください。
「当社では」と主語を置き、時点を添える
主語は「当社では」と、会社にします。担当者個人の心がけではなく、会社としてやっていることだと伝わるからです。
最後に「〇年〇月時点の内容です」と、時点を書いておきます。読む人は、その内容がいつのものかを知ることができます。書いた側にとっても、見直しの目安になります。
お客様が選べることは、選べると書く
返却か処分か、データの受け渡しの方法、外部に頼んでよいか。お客様の希望で変えられることは、変えられると書きます。決まりを押し付けるより、相談に乗る会社だと伝わります。取引先の側に決まりがある場合も、合わせやすくなります。
6. できていないことは、書かない
ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。できていないことは、書かないでください。
理想を書くと、守れなかったときに困る
書き始めると、ついこうありたいことを書きたくなります。「すべての書類を電子化し」「全社員に研修を行い」。実際にはまだできていないことを書くと、取引の中でそれが分かったとき、書いてあった分だけ信用を失います。
それだけでは済まない場合もあります。取引先がサイトの説明を前提に発注を決めていたなら、話が違うということになります。事実と違う説明は、信用の問題だけでは済まないことがあると考えておいてください。
書かないことと、隠すことは違う
できていないことを書かないのは、隠すこととは違います。聞かれたら、正直に答えればいいのです。「データの受け渡しの決まりは、まだ社内で作っているところです。今はこうしています」と答えるほうが、書いてあるのにできていないより、ずっと信用されます。
書く前に、現場の人に聞く
書く内容は、経営者の方の頭の中だけで決めないでください。実際に書類やデータを扱っている人に、どうしているかを聞いてから書きます。
社長は「終わったら返している」と思っていても、現場では写しを机の引き出しに残していた、ということは起こりえます。聞いてみてずれがあれば、書く前に揃えます。揃えられないなら、揃えられる範囲だけを書きます。
まだ決めていない会社は、ここから始めてもいい
もし、預かったものの扱いを社内で決めていなかったとしても大丈夫です。第4章の4つの項目は、そのまま社内で決めることの一覧になります。サイトに書くために決める、という順番でも構いません。決まった分から書いていけば足ります。
7. 認証がある場合と、変わったときの直し方
認証や資格があるなら、範囲と期限まで
情報の管理について、第三者の認証や認定を受けている会社もあるでしょう。その場合は、この欄に名前を書き、資格・認証の欄へつなぎます。書くときに気をつけることは3つです。
- 正式な名称で書く ― 略称や通称だけでは、読む人が確かめられません
- 対象の範囲を書く ― 会社全体か、一部の事業所や部署だけか。一部だけなのに会社全体のように書くと、事実と違う表示になります
- 期限や更新を書く ― 更新が要るものは、切れたまま残さないようにします
マークを使う場合は、使い方の決まりがあることが多いので、認証を出している機関の案内を確かめてください。資格や認証の載せ方全般は、先に挙げた資格・認証の記事にまとめてあります。
認証がなくても、書けることは同じ
認証を受けていない会社のほうが多いと思います。それでも、第4章の4つの項目は、認証がなくても書けます。認証は、決めた手順を外の人に確かめてもらう仕組みです。手順そのものは、認証がなくても持てます。
ただし、認証を受けていないのに、受けているかのような書き方はしないでください。「〇〇の基準に準拠」のような言い方も、根拠がなければ避けます。どの言い方なら問題ないかは業種や基準によって違うので、気になるときは専門家や所管の窓口に確認してください。
変わったら、その月のうちに直す
書いた内容は、会社の中の変化で古くなります。直すきっかけになるのは、たとえば次のようなときです。
- 人が変わったとき ― 担当者や責任者が交代した、見られる人の範囲が変わった
- 頼む先が変わったとき ― 外部に頼む先を変えた、新しく頼むようになった
- 場所が変わったとき ― 事務所を移った、保管の場所を変えた
- 方法が変わったとき ― データの受け渡しの方法を変えた
- 認証が変わったとき ― 範囲が変わった、更新しなかった
変わったことに気づいたら、時点の日付と一緒に直します。気づかないまま古くなるのを防ぐには、年に1回、決まった月に読み直すと決めておくのが楽です。決算の月や、取引先からの確認が多い時期に合わせると忘れにくくなります。
サイトそのものの状態も、あわせて見る
もう一つ、情報の扱いを書いたページを開いたときに、ブラウザに「保護されていない通信」と出ていたら、読む前に不安を与えてしまいます。原因と直し方は 自社のサイトに「保護されていない通信」と出たとき にまとめました。書いてある内容と、サイトの状態が食い違わないようにしておきます。
8. 雄喜晃の伴走:やっていることを伺って、短い文章に直します
私たち雄喜晃のホームページ制作では、情報の取り扱いの欄を、ひな形の文章で埋めることはしません。貴社で実際にどうしているかを伺い、読む人に伝わる短い文章に直します。
私たちがやること
- やっていることを伺う ― 保管と返却・廃棄、見る人、パソコンとメール、外部に頼む場合の4つについて、経営者の方や現場の方にお話を伺います
- 短い文章に直す ― 伺った事実を、1項目1〜2文の形にまとめます。決まっていない項目は、書かずにおきます
- 置き場所を決めて、つなぐ ― 会社概要の近くに置き、プライバシーポリシーや資格・認証の欄とリンクでつなぎます
- 変わったら直す ― 担当者や頼む先が変わったときは、月5回までの更新代行の中で書き換えます。時点の日付もあわせて直します
料金と条件
料金は制作費0円、月額8,800円(税別)です。6ページ構成のプランは月額13,800円(税別)です。サーバー、独自ドメイン、SSL、保守は月額に含まれ、月5回までの更新代行も同じ月額の中です。
最低契約期間は6ヶ月です。7〜35ヶ月で解約された場合、サイトは非公開になります。36ヶ月以上ご継続いただいた場合は、サイトをお渡しします。
私たちがやらないこと
- やっていないことを、文章で整えて書くことはしません。決まっていないことは、決まってから書きます
- 文面が法律や取引先の決まりに合っているかの判断は、お引き受けしません。必要なときは、専門家や所管の窓口にご確認ください
- 認証の取得のお手伝いや、社内の情報管理の仕組みづくりはしません
- 社内のパソコンやネットワークの設定はしません。社内の機器を見ている業者さんにご相談ください
実際にお作りしたサイトは 制作実績、料金と条件は ホームページ制作のページ に載せてあります。神戸市北区鈴蘭台を拠点に、2025年10月6日に設立した会社です。
「ちゃんとやっているのに、取引先に見せられる書いたものが無い」という方は、一度ご相談ください。
9. まとめ:宣言より、やっていることを短く書く
お客様の情報をどう扱っているかをホームページに書くときに、押さえることは5つです。
- 読む人が知りたいのは流れ ― 預けたものが、どこに置かれ、誰が見て、終わったらどうなるか
- プライバシーポリシーとは分ける ― ポリシーは個人の情報の約束。こちらは仕事で預かるもの全体の扱い。互いにリンクでつなぐ
- 4つを、短く事実で書く ― 保管と返却・廃棄、見られる人、パソコンとメール、外部に頼む場合。技術の細かい中身は書かない
- できていないことは書かない ― 聞かれたら正直に答える。決まっていなければ、決めるところから
- 認証は範囲と期限まで、変わったら直す ― 時点を書き、年に1回読み直す
取引先が安心するのは、立派な言葉が並んでいるからではありません。預けたあとのことが、読んで想像できるからです。それは、貴社がすでにやっていることを書くだけで作れます。
まず、今日できること
今日のうちに、1つだけやってみてください。最近預かった書類かデータを1つ思い浮かべ、それが今どこにあって、誰が見られて、仕事が終わったらどうなるかを、紙に3行で書く。書けなかった行が、社内で確かめることです。書けた3行は、そのままサイトの文章の下書きになります。
ぜひ一度、お話を聞かせてください。貴社がしていることを、伝わる言葉にするところからご一緒します。