1. 「着手金を先に、と言われたんですが、普通なんでしょうか」

中小企業の経営者の方とお話していて、こんな言葉を聞くことがあります。

「見積もりの金額には納得したんです。ただ、契約のときに一部、公開のときに残り、と言われて。別の会社は公開してから一括でいいと言うし、月額でという会社もある。どれが普通なのか分からなくて」

先にお答えすると、どれが普通、という答えはありません。制作会社によって、払い方はかなり違います。契約のときに一部を払う会社もあれば、公開してから一括の会社もあり、分割や月額で受ける会社もあります。どの形にも、それぞれの理由があります。

ですから、確かめるのは「一般的かどうか」ではありません。払う時期と、そのとき何ができているかが結びついているか。そして、途中でやめることになったら、払った分がどうなるかです。この2つが分かっていれば、どの払い方でも判断ができます。

この記事の役割

近いテーマの記事がいくつかあります。契約書の全体で読むところは ホームページ制作の契約書で、サインする前に読むところ に、制作費0円の会社がどこで回収しているかは 「制作費0円」のホームページは、どこで回収されているのか に、一括と月額を総額で比べる方法は ホームページの費用は、3年で並べないと判断できない にまとめました。

この記事で扱うのは、その間にある話です。金額が決まったあと、それを「いつ」「何と引き換えに」払うのか。お金の流れと、作業の進み方を合わせて見る話です。

2. 払い方は、大きく分けて5つある

まず、よく見る払い方を並べます。名前は会社によって違いますが、中身はおおむね次の5つのどれかです。

一括で払う

制作費の全額を、1回で払う形です。払う時期で、さらに2つに分かれます。

  • 契約のときに一括 ― 先に全額を払ってから、作業が始まる
  • 公開のときに一括 ― できあがったものを見てから、全額を払う

払う側から見ると、公開のときに一括のほうが安心に見えます。ただ、制作会社の側は、作業の費用を立て替えて待つことになります。小さな案件や、付き合いの長い相手だと、この形で受ける会社もあります。

契約のときに一部、公開のときに残り

よく見かける形です。契約のときに着手金として一部を払い、公開したときに残りを払う。制作会社は作業の費用の一部を先に受け取り、払う側は残りを、できあがりを確かめてから払えます。

どれだけを先に払うかは、会社によって違います。ここで大事なのは割合そのものより、着手金が「何のためのお金」として書かれているかです。この話は第4章で書きます。

段階払い

作業の節目ごとに、何回かに分けて払う形です。たとえば、契約のとき、デザインが決まったとき、公開したとき、のように。ページ数が多い案件や、期間が長い案件で使われます。

段階払いは、節目の決め方がはっきりしていれば、払う側にも分かりやすい形です。逆に、節目が「作業の半分が終わったとき」のようにあいまいだと、いつ請求されるのかが読めません。

分割

制作費の総額を、何回かに分けて毎月払う形です。たとえば、総額を12回や24回に分けて払う、のように。一度に大きな額が出ていかないのが利点です。

気をつけたいのは、分割の相手が制作会社ではなく、別の会社との契約になっている場合があることです。これは第6章で書きます。

月額

制作費をまとめて払わず、サーバーや保守と一緒に、毎月決まった額を払う形です。制作費を0円としている会社は、この形をとっていることがよくあります。

月額は、分割と似て見えますが、違いがあります。分割は「決まった総額を何回かで払い終える」形で、月額は「使っている間、払い続ける」形です。払い終わりがあるかどうかが、2つを分けるところです。

表:払い方ごとに、払う側が確かめること(あくまで一例です)
払い方いつ払うか払う側の安心確かめること
契約時に一括作業が始まる前に全額払ったあとはできあがりを見るまで分からない途中でやめたとき、払った分がどう扱われるか
公開時に一括できあがりを確かめてから全額見てから払えるので安心しやすい「公開」と「確認が終わった」の、どちらで請求が来るか
一部と残り契約時に一部、公開時に残り残りは、できあがりを見てから払える着手金が何のためのお金か、やめたときに戻るか
段階払いたとえば契約・デザイン確定・公開の3回節目がはっきりしていれば進み具合と合う各節目で、何ができていれば払うのか
分割総額を決まった回数で毎月一度に大きく出ていかない総額、回数、別の会社との契約になっていないか
月額使っている間、毎月始めるときの負担が小さい最低期間、やめたときのサイトの扱い、月額に含まれるもの

どの払い方にも、向いている場面があります。払い方の名前ではなく、右の列を確かめられるかどうかで判断してください。答えが返ってこない項目があれば、そこがいちばん聞いておくべきところです。

3. 払う時期と「何ができたら払うか」を結びつける

払い方の型が分かったら、次は中身です。いちばん大事なのは、払う時期と、そのときにできているものを結びつけておくことです。

「公開したら残金」の、公開とは何か

「公開のときに残りを払う」と書いてあっても、公開がどの状態を指すのかは、意外とはっきりしていません。

  • 制作会社の確認用の場所で、サイトが見られるようになったとき
  • 貴社のドメインで、誰でも見られるようになったとき
  • 貴社が中身を確かめて、直しが終わったとき

この3つは、日付が何週間もずれることがあります。請求が来るのがどの時点なのかを、言葉で決めておいてください。

確かめる期間と、直しの回数

できあがったものを見て、払う前に確かめる期間があるかどうかも大事です。公開した翌日に請求書が届き、その後で問い合わせフォームが動かないと分かった、ということも起こり得ます。

確かめておくのは3つです。

  • 確かめる期間 ― 公開してから何日の間に、直してほしいところを伝えればよいか
  • 直しの回数 ― その期間の中で、何回まで直してもらえるか
  • 確かめる中身 ― 文章、写真、スマートフォンでの見え方、フォームが届くかどうか

確かめる中身は、払う側が先に決めておくと楽になります。とくに、フォームから送って、貴社にメールが届くかどうかは、払う前に一度確かめてください。

節目ごとに、できているものを1行で書く

段階払いでも、一部と残りの形でも、やり方は同じです。払う節目ごとに、そのときできているものを1行で書いておきます。

図:払う節目と、そのときできているものを結びつける(例は架空)
① 契約のとき

たとえば、ページの数と構成、公開の目安の日、原稿と写真を誰が用意するかが、紙に書かれている状態。

ここで払うのが着手金。何のためのお金かを書いておく
▼
② デザインが決まったとき

たとえば、トップページと下のページ1つ分のデザインを見て、貴社が「これで進めてください」と伝えた状態。

段階払いなら、ここで2回目。決めたことはメールで残す
▼
③ 公開して、確かめ終わったとき

たとえば、貴社のドメインで全ページが見られ、フォームからの送信が届き、直しが終わった状態。

残りを払う。請求の日は「確かめ終わった日」と決めておく

節目の数や中身は、案件によって違います。大事なのは、どの節目にも「何ができていれば払うか」が1行で書かれていることです。この1行があれば、払う側も受け取る側も、請求の日で揉めることが減ります。

4. 途中でやめることになったら、払った分はどうなるか

払い方を選ぶとき、多くの方は最後までうまくいく前提で考えます。ただ、途中でやめることは起こります。そのときに払った分がどう扱われるかは、始める前にしか確かめられません。

やめる理由は、2つの側にある

途中でやめる理由は、大きく2つに分かれます。

  • 貴社の側の事情 ― 事業の方針が変わった、担当者が辞めた、予算が付かなくなった
  • 制作会社の側の事情 ― 約束の日を大きく過ぎても進まない、連絡が取れなくなった

どちらの理由かで、払った分の扱いが変わることがあります。契約書や申込書に、それぞれの場合が書かれているかを見てください。片方しか書かれていないこともあります。

着手金は、何のためのお金か

着手金の扱いは、書き方によって分かれます。

  • 作業を始めるために押さえる費用で、やめても戻らないと書かれている
  • 制作費の前払いで、やめたときは作業した分を差し引いて精算すると書かれている
  • 何も書かれていない

3つ目がいちばん困ります。やめるときになって、戻る・戻らないで話がこじれます。何も書かれていなければ、契約の前に聞いて、答えを文字で残してください。

途中までの作業は、受け取れるか

払った分が戻らない場合でも、途中までの作業を受け取れるかどうかで、損の大きさが変わります。決まったデザイン、書き上がった原稿、整えた写真。これを受け取れれば、別の会社で続きを作るときの材料になります。

受け取れるものは何か、どんな形で受け取れるか(画像なのか、原稿の文書なのか)も、一緒に聞いておくとよいと思います。

契約の読み方は、一般論にとどめます

ここまで書いたことは、どれも一般的な見方です。契約書の一文がどういう意味を持つか、払った分を取り戻せるかどうかは、契約の書き方や、取引の形、業種によって違います。判断が難しいときは、所管の窓口や弁護士などの専門家に確認してください。

5. 追加の費用が出る条件を、先に聞く

見積もりの金額で払い終わるつもりでいたら、あとから追加の請求が来た。これも、よく伺う話です。追加の費用は、たいてい見積もりに入っていなかった作業から生まれます。

追加になりやすい作業

よくあるのは、次のような作業です。

  • ページを増やす ― 作っている途中で、載せたいことが増えた
  • 原稿を書いてもらう ― 貴社で用意する予定だった文章を、制作会社に頼むことになった
  • 写真を用意してもらう ― 手元の写真が足りず、素材の写真を買うことになった
  • 直しの回数を超える ― 決めた回数より多く、デザインや文章を直した
  • 決めたことを変える ― デザインが決まったあとで、色や構成を変えたくなった
  • 機能を足す ― 予約の受付や、お知らせを自分で書ける仕組みを、あとから付けたくなった

どれも、悪いことではありません。作りながら考えが変わるのは自然なことです。問題は、どこからが追加になるのかを知らないまま進むことです。

単価と、先に見積もりを出す約束

追加の費用について、契約の前に確かめておくのは2つです。

  • 単価が決まっているか ― 「1ページ追加でいくら」「直し1回でいくら」のように、決まった額があるか
  • 作業の前に見積もりが出るか ― 追加になる作業を始める前に、金額を知らせてもらえるか

2つ目がとくに大事です。「やってから請求」ではなく「金額を聞いてから頼む」の順番になっていれば、追加の費用は貴社が選んで払うものになります。見積書の「一式」の中に何が入っているかの確かめ方は ホームページの相見積もりを、公平に比べる方法 に書きました。

公開したあとに、毎月・毎年かかるもの

制作費を払い終わっても、払うものは残ります。サーバー、ドメイン、SSL、保守。これらが制作費に入っているのか、別に払うのか、別なら誰にいくら払うのかを確かめてください。

公開したあとの費用は、見積書の外に置かれていることがよくあります。制作費だけを比べて決めると、あとで総額が逆転することもあります。総額での並べ方は、冒頭で挙げた3年で比べる記事のほうにまとめてあります。

6. 分割と月額で、確かめること

一度に大きな額を払わずに済む分割と月額は、始めやすい払い方です。そのぶん、いつまで払うのか、やめたらどうなるのかが見えにくくなります。

分割なら、総額と回数と相手

分割で払うときは、次の3つを確かめます。

  • 総額 ― 毎月の額に回数をかけた額が、一括で払う場合と同じか
  • 回数と、払い終わる月 ― 何回で、いつ払い終わるのか
  • 払う相手 ― 制作会社に払うのか、別の会社に払うのか

3つ目は見落とされがちです。申込書の中に、制作会社以外の会社名が書かれていたら、その会社とどういう契約になるのかを確かめてください。契約の形によっては、制作会社との話がこじれても、別の会社への支払いは続く、という扱いになることがあります。ここも扱いは契約によって違うので、判断が難しいときは専門家に確認してください。

月額なら、最低期間と数え始め

月額で払う場合、まず確かめるのは最低契約期間です。何ヶ月は払い続ける約束なのか。そして、その期間をいつから数えるのか。申し込んだ月からか、公開した月からかで、やめられる日が変わります。

もう1つ、月額に何が含まれるかも見てください。サーバーや保守が含まれるのか、更新を頼むと別にかかるのか。月額の安さより、月額の中身で比べるほうが、あとで困りません。

やめたとき、サイトはどうなるか

月額でいちばん大事なのは、やめたときの扱いです。よくある形は、次のどれかです。

  • サイトが見られなくなる(非公開になる)
  • サイトのデータを渡してもらえる
  • 一定の期間を超えて続けると、サイトを譲り受けられる

どれになるかで、月額の意味が変わります。払っているのは「使う代金」なのか、「少しずつ買っている代金」なのか。解約したときに起きることの全体は 月額制のホームページを解約したら、サイトはどうなるのか に書きました。途中で月額が上がると知らされた場合の考え方は 制作会社から、月額や保守費の値上げを知らされたら にあります。

7. 口約束にしない

ここまでの話は、どれも文字で残っていなければ、あとで役に立ちません。打ち合わせで「途中でやめても、作業した分だけでいいですよ」と言われても、担当者が変われば通らないことがあります。

支払いの条件を、1枚にまとめてもらう

契約の前に、支払いの条件を1枚にまとめてもらってください。見積書の下でも、メールの本文でも構いません。書いてほしいのは次のことです。

  • 総額と、払い方 ― 一括か、一部と残りか、段階か、分割か、月額か
  • 払う時期と、そのときできているもの ― 節目ごとに1行
  • 確かめる期間と、直しの回数
  • 途中でやめたときの扱い ― 貴社の事情の場合と、制作会社の事情の場合
  • 追加の費用が出る条件と、単価
  • 公開したあとにかかるもの ― 何に、いくら、誰に払うか
  • 月額なら、最低期間と、やめたときのサイトの扱い

全部が書けないと言われたら、書けない項目がどれかを聞きます。書けない理由を聞くことも、判断の材料になります。

社内の都合も、先に伝える

払う側の都合も、先に伝えておくと話が早くなります。たとえば、月末締めの翌月末払いにしか対応できない、請求書は紙で必要、前払いは社内の決まりで難しい、など。あとから「その払い方はできません」と言うより、最初に言うほうが、相手も条件を組み直しやすいからです。

請求書が来たら、1枚と見比べる

請求書が届いたら、まとめてもらった1枚と見比べます。金額、時期、そのときできているはずのもの。合っていなければ、払う前に聞いてください。

払ったあとに聞くより、払う前に聞くほうが、話はずっと簡単です。

8. 雄喜晃の伴走:払い方の条件は、契約の前にすべてお見せします

私たち雄喜晃は、ホームページを月額で作っています。払い方の条件は、サイトにもそのまま載せています。

私たちがやること

契約の前に、料金と条件を1つずつご説明します。いつから払うのか、何が月額に含まれるのか、やめたときにサイトがどうなるのか。分からないところがあれば、その場で、または文字でお答えします。持ち帰って社内で読んでいただく時間も、もちろん取っていただいて構いません。

ほかの会社の見積もりと並べて考えたいという方には、払い方の違いを表にして、総額と期間で見比べるところまでご一緒します。

料金と条件

料金は制作費0円、月額8,800円(税別)からです。6ページ構成のプランは月額13,800円(税別)です。制作費が0円なので、契約のときや公開のときに、まとまった制作費をお支払いいただく形ではありません。サーバー、独自ドメイン、SSL、保守は月額に含まれます。月5回までの更新代行も、同じ月額の中に入っています。

やめるときの条件も、先に書きます。最低契約期間は6ヶ月です。7〜35ヶ月で解約された場合、サイトは非公開になります。36ヶ月以上ご継続いただいた場合は、サイトをお渡しします。

2つ目は、貴社にとって不利に見える条件です。それでも、契約のあとで知る条件ほど困るものはないので、最初にお伝えしています。

私たちがやらないこと

ほかの会社の契約書について、法的な良し悪しを判断することはしません。それは弁護士などの専門家の仕事です。私たちにできるのは、ホームページの作り方として、その一文がどういう場面に関わるかをご説明するところまでです。

また、ほかの会社との支払いの交渉を、貴社に代わって行うこともしません。署名を急かすこともいたしません。

実際にお作りしたサイトは 制作実績、料金と条件は ホームページ制作のページ に載せてあります。神戸市北区鈴蘭台を拠点に、2025年10月6日に設立した会社です。

「見積もりの金額は分かったけれど、払い方の条件がよく分からない」という方は、一度ご相談ください。

9. まとめ:払い方の名前より、払う時期の中身を見る

ホームページの制作費を、いつ・どう払うかを決めるときに押さえることは、5つです。

  • 払い方に、決まった正解はない ― 一括、一部と残り、段階、分割、月額。どれにも向いている場面がある
  • 払う時期と、できているものを結びつける ― 節目ごとに「何ができていれば払うか」を1行で書く
  • 途中でやめたときの扱いを、始める前に聞く ― 着手金が何のためのお金か、途中までの作業を受け取れるか
  • 追加の費用は、金額を聞いてから頼む ― どこからが追加か、単価はいくらか、作業の前に見積もりが出るか
  • 分割と月額は、払い終わりとやめたときを見る ― 総額と回数と相手、最低期間と数え始め、やめたときのサイトの扱い

そして、聞いた答えは文字で残してください。打ち合わせでの約束は、担当者が変わると通らないことがあります。

まず、今日できること

いま手元に見積書があれば、その余白に1行だけ書き足してみてください。「この金額を、いつ、何ができたときに払うのか」。書けなければ、そこが制作会社に聞くことです。書ければ、その1行が、あとで請求書と見比べる物差しになります。

ぜひ一度、お話を聞かせてください。払い方の条件を並べて見比べるところから、ご一緒します。