1. 「来月から保守費を上げます、とメールが一通来まして」
中小企業の経営者の方とお話していて、こんな言葉を聞くことがあります。
「制作会社から、来月から月々の保守費を上げますという連絡が来たんです。理由もよく分からないし、正直ちょっと腹が立って。この機会に、別のところに乗り換えたほうがいいんでしょうか」
値上げの連絡を受けると、まず気持ちが先に動きます。急に言われた、相談もなかった、ほかにもっと安いところがあるのでは。そう感じるのは自然なことです。
ただ、その場の勢いで乗り換えを決めると、値上げの差額より大きな費用と手間がかかることがあります。ドメインの名義、サイトのデータ、メール。乗り換えには、見えにくい作業がいくつも付いてきます。
一方で、値上げをそのまま受け入れるのが正しいとも限りません。中身が変わらないまま金額だけ上がるのか、内容が増えるのか。それを確かめないまま払い続けるのも、もったいない話です。
この記事で書くこと
- 値上げの連絡で、最初に確かめる4つのこと
- 含まれる内容が変わるかどうかの見分け方
- 契約書で読む、解約の条件と期間
- 乗り換える場合にかかる手間と費用
- 3年で比べる方法と、話し合う余地
保守費の中身そのものの見方は ホームページの「保守費」で、何をしてもらえるのか に、実際に別の会社へ移るときの段取りは ホームページを、別の会社に引き継いでもらう に書きました。この記事は、その手前の「値上げを知らされてから、残るか移るかを決めるまで」に絞ります。
2. 値上げにも、事情がある
最初にお伝えしておきたいことがあります。値上げをしてくる制作会社が、悪い会社だとは限りません。
制作会社の側で、費用が動いている
ホームページを動かし続けるには、制作会社の側にも費用がかかっています。サーバーの利用料、ドメインやSSLの更新、サイトを動かしている仕組みの更新、それを担う人の手間。これらの費用は、制作会社が決められるものばかりではありません。
作った当時の金額で何年も据え置いてきた会社ほど、どこかで見直しが必要になります。値上げの連絡は、そのまま無理を続けて対応が雑になるより、正直なやり方だと言えることもあります。
腹が立ったまま決めない
もちろん、急な連絡や、理由の書かれていない通知に不満を感じるのは当然です。ただ、気持ちと判断を分けておくほうが、結果的に貴社の損が少なくなります。
これから書く順番で確かめていけば、残るか移るかは、数字と条件で決められます。腹が立った勢いで解約を伝えてしまうと、確かめる前に選べる道が減ります。まずは、通知を読み直すところから始めてください。
3. 最初に確かめる4つ:何が・いつから・いくら・なぜ
値上げの通知を読み直して、次の4つが書いてあるかを見ます。書いていないものがあれば、聞いてください。
何が上がるのか
月額の全体が上がるのか、その中の保守の部分だけが上がるのか。サーバーやドメインの実費が上がるのか、作業の料金が上がるのか。「何が」が分かると、ほかの会社と比べるときの土台になります。
請求書の内訳が「保守費 一式」のようにまとまっている場合は、何と何が入っているかも、あわせて聞いておきます。
いつから上がるのか
来月からなのか、次の契約の更新月からなのか。契約期間の途中でも上がるのかは、特に確かめておきたいところです。
開始の時期によって、考える時間がどれだけあるかが変わります。更新月まで間があるなら、急いで決める必要はありません。
いくら上がるのか
月額でいくら上がるのかに加えて、1年でいくら、3年でいくらになるかを自分で計算しておきます。月の差額は小さく見えても、年で見ると印象が変わります。逆に、大きく見えた差額が、乗り換えの費用と比べると小さいこともあります。
税込か税別かも、通知の書き方を確かめてください。
なぜ上がるのか
理由を聞くのは、責めるためではありません。理由によって、話し合える余地が変わるからです。
サーバーの費用が上がったのなら、貴社には動かしようがありません。作業の手間が増えたのなら、頼む作業を減らすことで金額を抑えられるかもしれません。理由が分かれば、次の話ができます。
| 確かめること | 聞き方の例 | 分かると何が決まるか |
|---|---|---|
| 何が上がるのか | たとえば「上がるのは月額の全体でしょうか。保守の部分だけでしょうか」 | ほかの会社と同じ土台で比べられる |
| いつから上がるのか | たとえば「契約期間の途中からでしょうか。次の更新月からでしょうか」 | 考える時間がどれだけあるかが分かる |
| いくら上がるのか | たとえば「新しい月額は税別でいくらになりますか」 | 1年分・3年分の差額を自分で計算できる |
| なぜ上がるのか | たとえば「差し支えなければ、見直しの理由を教えてください」 | 話し合える余地があるかが見える |
| 内容は変わるのか | たとえば「更新の回数や、対応までの日数は、これまでと同じでしょうか」 | 実際に上がった幅が見かけと違うことに気づける |
| 受け入れなかったら | たとえば「新しい料金に同意しない場合、契約はどうなりますか」 | 残る・移る以外の道があるかが分かる |
上の4行が、通知に書かれているべきことです。下の2行は、通知に書かれていないことが多いので、こちらから聞きます。答えはメールなど、文字で残る形でもらっておいてください。あとで比べるときの材料になります。
4. 含まれる内容が、変わるかどうか
金額と同じくらい大事なのが、月額に含まれる内容が変わるかどうかです。値上げには、大きく分けて3つの形があります。
内容はそのままで、金額だけ上がる
いちばん分かりやすい形です。この場合は、上がった金額だけを見て判断できます。
内容が増えて、金額も上がる
バックアップの頻度が増える、対応できる作業が広がる、といった形です。増えた内容が、貴社にとって要るものかどうかを確かめます。要らないものが増えて金額が上がったのなら、増やさない選択ができないかを聞いてみる価値があります。
金額は同じでも、内容が減る
見落としやすいのが、この形です。月額は据え置きでも、更新を頼める回数が減る、対応までの日数が長くなる、といった変化です。金額が変わっていないので、値上げの連絡として届かないこともあります。
契約の更新のたびに、含まれる内容を書いた紙やページを見比べておくと、気づけます。今回の連絡を機に、いま含まれているものを1枚に書き出しておくと、次に何か変わったときにもすぐ比べられます。何が含まれているかを箱に分けて見る方法は、保守費の記事で詳しく書きました。
5. 契約書で、解約の条件と期間を確かめる
残るか移るかを考える前に、契約書を出してきてください。どの道を選べるかは、契約の条件で決まっていることが多いからです。
契約期間と、自動更新
いまの契約がいつまでか、自動で更新されるのか。更新されるなら、やめる場合は何日前までに申し出る必要があるかを確かめます。この申し出の期限を過ぎると、もう1期分の契約が続くことがあります。
途中でやめたときに、払うもの
契約期間の途中で解約した場合に、残りの期間の料金を払う決まりがあるか。解約の手数料があるか。ここは金額に直して書き出しておきます。あとで乗り換えの費用を計算するときに、そのまま使います。
料金を変えるときの決まり
契約書に、料金の改定について書かれていることがあります。どれくらい前に知らせるか、改定に同意しない場合はどうなるか、といった内容です。書かれていれば、その決まりに沿って話を進めることになります。
契約の読み方は、一般論にとどめる
契約書の言葉は、読み方が分かれることがあります。ここに書いたのは、確かめる場所の一般的な話です。実際にどう読むかは、契約の内容や業種によって違うので、専門家に確認してください。読む場所をもう少し広く知りたい場合は ホームページ制作の契約書で、サインする前に読むところ にまとめてあります。
6. 乗り換える場合に、かかる手間と費用
値上げの差額と比べるべきなのが、乗り換えにかかる手間と費用です。ここを見積もらないまま乗り換えを決めると、あとで思わぬ出費に気づくことになります。
ドメインの名義
いちばん大事なのが、ドメインです。会社のホームページの住所であり、メールアドレスの住所でもあります。名義が貴社か、制作会社かによって、移す手間が大きく変わります。
制作会社の名義になっている場合は、貴社の名義に移す手続きが要ります。手数料や、手続きにかかる日数も確かめておきます。名義の確かめ方は ホームページのドメインやアカウントは、誰の名義になっているか で書きました。
サイトのデータ
いまのサイトのデータを受け取れるか。受け取れるとして、新しい会社でそのまま使える形か。受け取れない、または使えない場合は、作り直しになります。作り直すなら、その費用と期間が乗り換えの費用に加わります。
月額制のサイトでは、解約するとサイトが非公開になる契約もあります。その場合の扱いは 月額制のホームページを解約したら、サイトはどうなるのか に整理しました。
サイトにつながっている、ほかの名義
ドメインのほかにも、サイトにつながっているものがあります。サーバー、メール、Googleビジネスプロフィール、サーチコンソール、GA4。それぞれ誰の名義で、誰が管理者になっているかを一覧にしておきます。制作会社の名義のままだと、移ったあとに触れなくなることがあります。
メールが止まる心配
乗り換えでいちばん困るのが、切り替えの途中でメールが届かなくなることです。会社のメールが独自ドメインで動いているなら、切り替えの手順と日取りを、新旧の会社と先に決めておく必要があります。
社内の時間
見落としやすいのが、社内でかかる時間です。新しい会社との打ち合わせ、原稿や写真の確認、名刺やチラシのURLの見直し。この時間も費用の一部として数えてください。経営者ご自身が対応するなら、なおさらです。
移る先の条件も、同じように確かめる
乗り換えを考えるなら、移る先の会社にも、この記事と同じことを聞いてください。月額に何が含まれるか、契約期間と解約の条件、ドメインの名義、料金を見直すことがあるか、そのときどう知らせるか。
今回の値上げで困ったことは、移った先でも起こりえます。いまの会社で分からなかったことを、移る前に文字で確かめておけば、同じ迷い方を繰り返さずにすみます。安く見える月額だけで移り、数年後にまた同じ連絡を受けるのは、いちばん避けたい形です。
7. 比べるなら3年で、そして話し合う余地を探す
確かめた数字を並べて、残るか移るかを比べます。比べる期間は、3年をおすすめします。
月の差額ではなく、3年分の総額で
月の差額だけを見ると、乗り換えの費用が見えません。逆に、乗り換えの初期費用だけを見ると、毎月の差が見えません。3年分の総額にすると、両方が同じ土俵に乗ります。
いちばん手間がかかりません。サイトもメールもそのまま動きます。値上げの理由と内容に納得できるなら、これがいちばん損の少ない道になることもあります。
使っていない作業を外す、開始を更新月まで待ってもらう、といった形で金額や時期を調整します。話し合いに時間はかかりますが、乗り換えの手間はかかりません。
途中解約の支払い、ドメインの移管、作り直しの費用が加わります。月額が下がっても、これらを足すと①や②より高くなることがあります。
数字は、貴社の契約と見積もりで入れてください。③が安くなるなら、乗り換えは合理的な選択です。大事なのは、③の「移るための費用と社内の時間」を空欄のままにしないことです。
3年で比べる考え方そのものは ホームページの費用は、3年で並べないと判断できない に詳しく書いてあります。
金額だけで決めない
3年の総額が近いなら、金額以外のことで決めて構いません。いまの会社の対応に満足しているか、連絡したときの返事の早さ、直してほしいところを伝えたときの直り方。長く付き合ってきた会社なら、貴社の事情を分かっていること自体が値打ちになります。
話し合える余地は、意外とある
値上げの通知は、交渉の余地のない決定事項に見えるかもしれません。ただ、聞いてみると調整できることがあります。
- 開始の時期 ― 契約期間の途中からではなく、次の更新月からにしてもらえないか
- 内容の調整 ― 使っていない作業を外して、金額を据え置きにできないか
- 払い方 ― 年払いにまとめると、条件が変わるか
どれも、相手が応じる義務のある話ではありません。お願いとして、質問の形で聞くのが基本です。
伝え方は、責めずに質問で
伝えるときは、責める言い方を避けてください。たとえば、こんな形です。
「料金見直しのご連絡、ありがとうございます。社内で検討するにあたり、いくつか教えてください。上がるのは月額のどの部分でしょうか。また、内容はこれまでと同じでしょうか。開始の時期について、ご相談の余地があればお聞かせください」
この書き方なら、相手も事情を説明しやすくなります。答えが返ってきてから、残るか移るかを決めれば十分です。決める期限だけは、貴社のほうで先に決めておいてください。更新月の申し出の期限より前に、余裕をもって置きます。
8. 雄喜晃の伴走:残るか移るかを、数字で並べるところからご一緒します
私たち雄喜晃は、ホームページ制作を月額でお受けしている会社です。値上げの連絡を受けて迷っている方には、乗り換えを勧めるところからではなく、いまの契約の中身を並べるところからお話を伺います。
私たちがやること
- いまの契約の中身を、一緒に書き出す ― 月額に何が含まれているか、契約期間と解約の条件はどうなっているか。お手元の契約書と通知を拝見しながら整理します
- 3年分の総額を並べる ― 残る場合と、私たちに移る場合の両方を、同じ形で並べます。移るための費用や手間も、分かる範囲で書き出します
- 移る場合は、段取りから考える ― ドメインの名義、サイトのデータ、メールの切り替えの順番を、いまの会社への連絡の前に一緒に確かめます
- 残るほうがいいと思えば、そうお伝えする ― 並べた結果、いまの会社に残るほうが合っていると思えば、そう申し上げます
料金と条件
私たちの料金は制作費0円、月額8,800円(税別)からです。6ページ構成のプランは月額13,800円(税別)です。サーバー、独自ドメイン、SSL、保守は月額に含まれます。月5回までの更新代行も同じ月額の中です。
条件も書いておきます。最低契約期間は6ヶ月です。7〜35ヶ月で解約された場合、サイトは非公開になります。36ヶ月以上ご継続いただいた場合は、サイトをお渡しします。比べるときは、私たちのこの条件も同じ表に入れてください。
私たちがやらないこと
いまの制作会社を悪く言うことはしません。値上げにはそれぞれの事情があり、外から良し悪しを決められる話ではないからです。
また、貴社に代わって値下げの交渉をすること、解約の手続きを代わりに行うこともしません。契約書の解釈について判断が要る場合は、専門家にご相談ください。検索の順位や、問い合わせの件数をお約束することもいたしません。
実際にお作りしたサイトは 制作実績、料金と条件は ホームページ制作のページ に載せてあります。神戸市北区鈴蘭台を拠点に、2025年10月6日に設立した会社です。「値上げの連絡が来たけれど、比べ方が分からない」という方は、一度ご相談ください。
9. まとめ:慌てて移らず、確かめてから並べる
制作会社から値上げを知らされたときに押さえることは、5つです。
- 気持ちと判断を分ける ― 値上げにも事情がある。腹が立った勢いで解約を伝えない
- 4つを確かめる ― 何が、いつから、いくら、なぜ。答えは文字で残してもらう
- 内容が変わるかを見る ― 金額だけ上がるのか、内容が増えるのか、減るのか
- 契約と乗り換えの費用を書き出す ― 解約の期限と支払い、ドメインの名義、データ、メール、社内の時間
- 3年分の総額で比べる ― 残る、話し合って残る、移る。3つの道を同じ形で並べる
値上げの連絡は、困った知らせに見えます。ただ、いまの契約の中身を見直すきっかけだと考えると、受け取り方が変わります。何年も同じ内容で払い続けてきた契約を、一度きちんと並べてみる機会です。
今日できることを1つだけ挙げます。契約書を出してきて、いまの契約がいつ更新されるか、やめるなら何日前までに申し出るかを確かめてください。その日付が分かるだけで、考えられる時間が見えてきます。
ぜひ一度、お話を聞かせてください。残るか移るかを決める材料を、並べるところからご一緒します。