1. 「自動で答えてくれる窓、うちにも要りますか」

中小企業の経営者の方とお話していて、こんな言葉を聞くことがあります。

「よそのサイトを見ると、右下に『ご質問はこちら』って小さな窓が出てくるでしょう。あれがあれば、夜中の問い合わせも自動で答えてくれるのかなと。うちも付けたほうがいいんでしょうか」

気になるのは自然なことです。電話に出られない時間がある。同じ質問に何度も答えている。その手間を、自動で引き受けてくれるならと考えるのは、ごく当たり前の発想です。

ただ、チャットボットは置けば働いてくれるものではありません。何に答えて、何に答えないか。答えられないときに、誰につなぐか。間違ったときに、誰が気づくか。ここが決まっていないチャットボットは、問い合わせを減らすどころか、行き違いを増やします。

問い合わせの入口全体については 問い合わせを「メールだけ」にしている会社が、取りこぼしているもの で、「小さな会社では、たいてい要りません」と書きました。この記事では、その「たいてい」の外側、つまり向く場面があるのかどうかを、もう少し細かく見ていきます。

この記事で書くこと

  • チャットボットが、実際にしていること
  • 向く場面と、向かない場面
  • 間違った答えを出すリスクと、その減らし方
  • 答えられないときに、人へつなぐ道
  • よくある質問のページを先に整えるほうが早い理由と、入れるなら決める答えの範囲

2. チャットボットが、実際にしていること

先に、チャットボットが何をしているのかを整理しておきます。ここが曖昧なまま話を進めると、期待と実際がずれます。

大きく分けて2つの形がある

ひとつは、あらかじめ決めた質問と答えの中から選んでもらう形です。「営業時間を知りたい」「料金を知りたい」のようなボタンが並び、押すと決まった答えが出てきます。答えは貴社が用意したものだけなので、想定外のことは言いません。その代わり、想定外の質問には答えられません。

もうひとつは、入力された文章を読み取って、答えの文章を自動で作る形です。自由に質問でき、それらしい文章で返ってきます。話しているような手触りがある反面、用意していない内容まで答えてしまうことがあります。この点は5節で詳しく書きます。

読む人から見ると、もう1つの入口

どちらの形でも、読む人から見ればチャットボットは問い合わせの入口がもう1つ増えたものです。電話、フォーム、メール、LINE。そこに「自動で答える窓」が加わります。

入口が増えると、受ける側の決めごとも増えます。窓に書き込まれた内容を誰が見るのか。答えきれなかった質問を、どこで拾うのか。窓の向こうに人がいないと、窓は閉じた扉と同じです。チャットボットの判断は、技術の話より先に、社内の受け方の話になります。

3. 向く場面は、2つに絞られる

では、どんなときに向くのか。お話を伺っていると、向く場面はおおむね2つに絞られます。

同じ質問が、何度も来ている

1つ目は、答えが毎回同じ質問が、何度も来ている場面です。営業時間、駐車場の有無、支払い方法、予約の取り方、対応している地域。答えが人によって変わらず、聞かれる回数が多いものです。

この種類の質問は、人が答えても、自動で答えても、中身は変わりません。電話を受けた人が手を止めて同じ説明を繰り返すより、自動で返したほうが、お互いに早く済みます。

営業時間外の問い合わせが多い

2つ目は、営業時間外に来る問い合わせが多い場面です。夜や休日に調べる人が多い業種では、翌朝まで何の反応もないことが、そのまま離脱につながることがあります。

このとき、チャットボットにできるのは、答えることより受け止めることです。「営業時間外のため、明日の〇時以降に担当者からご連絡します」と返し、必要なことを聞いておく。これだけでも、放っておかれたとは感じにくくなります。

判断の前に、1ヶ月数えてみる

自社がどちらに当てはまるかは、感覚ではなく数で確かめるのが確実です。1ヶ月の間、問い合わせを受けるたびに「内容」と「受けた時刻」を書き留めてください。

同じ質問に何本も線が引かれているか。夜や休日に来たものが、全体のどれくらいを占めているか。紙1枚で十分です。数えてみると、思っていたより同じ質問は少なかった、ということもあります。その場合は、チャットボットの話はそこで終わりにして構いません。

表:チャットボットが向く場面、向かない場面(例はすべて架空)
場面向くかどうか理由
たとえば「駐車場はありますか」が毎週何度も来る向く答えが誰に対しても同じで、変わることも少ない
たとえば夜や休日に予約の問い合わせが集中する向く(受け止め役として)答えるより、受け付けたことと返事の時刻を伝える役目が大きい
たとえば「うちの場合はいくらですか」が中心向かない条件を聞かないと答えられず、結局は人が対応する
たとえば問い合わせが月に数件向かない人が直接返したほうが早く、正確で、用意する手間も要らない
たとえば体調やお金、契約の相談が多い慎重に答えを誤ったときの影響が大きく、人が受けたほうが安全

上の2行に当てはまっても、すぐに入れる理由にはなりません。まず、よくある質問のページで同じことができないかを確かめてください。考え方は7節に書いています。

4. 向かない場面

逆に、向かない場面もはっきりしています。当てはまるものが多いなら、入れないほうが楽です。

問い合わせの件数が少ない

月に数件から十数件の問い合わせなら、人が直接返したほうが、早くて正確です。チャットボットは、答えを用意して、置いて、見直して、はじめて動きます。その手間は、件数が少ないほど割に合いません。

質問が個別すぎる

「うちの家の場合はいくらですか」「この部品は直せますか」。こうした質問には、決まった答えがありません。条件を聞き、場合によっては現物を見て、ようやく答えられます。自動で答えられるのは、答えが決まっている質問だけです。個別の質問が中心の会社では、結局ほとんどが人へ回ります。

答えを直し続ける人がいない

料金が変わる。定休日が変わる。対応できる地域が広がる。そのたびに、チャットボットの答えも直す必要があります。直し忘れたチャットボットは、古い情報を、自信を持って案内し続けます。サイトの本文は直したのに、窓の中だけ古いまま、ということが起きます。担当者を決められないなら、入れないほうが安全です。

人が答えることを、期待されている

小さな会社に問い合わせる人の多くは、人に話を聞いてほしいと思っています。決まり文句のやり取りが続くと、かえって距離を感じさせることがあります。年配のお客様が多い会社や、相談ごとが中心の会社では、とくにこの点を考えてください。

5. 間違った答えを出すリスク

チャットボットでいちばん気をつけたいのが、間違った答えです。ここは、入れる前に必ず考えておいてください。

読む人は、会社の言葉として受け取る

チャットボットが出した答えは、読む人にとっては貴社が言ったことです。自動で出た答えだから、という言い訳は通りにくいと考えてください。

たとえば、定休日を間違えて案内した。対応していない地域を「対応しています」と答えた。割引の条件を、実際より広く答えた。どれも、読んだ人は信じて動きます。来店して閉まっていた、依頼したら断られた、となれば、失うのはその1件だけではありません。

文章を自動で作る形は、もっともらしく間違える

2節で書いた、文章を自動で作る形は、とくに注意が要ります。用意していない質問にも、それらしい答えを返してしまうことがあるからです。しかも文章は自然なので、読む人には誤りだと分かりません。

料金、納期、保証、対応範囲。数字や約束が絡む質問に、自動で作った答えを返すのは避けたほうが安全です。表示や契約に関わる決まりは業種によって違うので、気になる場合は所管の窓口や専門家に確認してください。

減らし方は、答えない範囲を決めること

間違いを完全になくすことはできません。減らす方法は、答えない範囲を先に決めることです。

  • 金額は答えない ― 「料金の目安はこちらのページに載せています」と、ページへの案内にとどめる
  • 約束に聞こえることは答えない ― 「〇日までにできますか」には、「担当者から確認してお返事します」
  • 答えの最後に一行添える ― 「正式なご案内は、担当者からのご連絡をもってお伝えします」

間違いに、誰が気づくか

もう1つ決めておきたいのが、間違った答えを出したときに、社内の誰が気づくのかです。電話なら、話した本人が覚えています。チャットボットの答えは、窓に書き込まれた記録を誰かが読まない限り、誰にも気づかれません。

気づくのが、来店して閉まっていたお客様からの苦情だった、という順番は避けたいところです。7節で書く「月に1回、窓の中を読む」は、このためでもあります。

それから、窓に名前や電話番号を書いてもらう場合は、その情報をどう扱うかも決めておきます。プライバシーポリシーとの整合は ホームページのプライバシーポリシーに、何を書くか を参考にしてください。

6. 答えられないときに、人へつなぐ道

チャットボットを入れるなら、いちばん大事なのはここです。答えられなかったとき、読む人がどこへ行けばいいかを、必ず用意しておきます。

行き止まりを作らない

よくあるのが、「申し訳ありません。よく分かりませんでした」が何度も返ってくる状態です。読む人は、言い方を変えて何度か試し、あきらめて窓を閉じます。その人は、チャットボットではなく、貴社に断られたと感じます。

答えられないときは、2回目を待たずに人への道を出してください。電話番号、フォーム、LINE。営業時間内か外かで、案内する先を変えます。

図:答えられなかった質問を、人へつなぐ流れ(例は架空)
① 質問を受ける

たとえば「明日の午後に見積もりに来てもらえますか」と書き込まれる。日程の約束にあたるので、答えない範囲に入ります。

自動で答えず、「担当者から確認してお返事します」と返す
▼
② 人へつなぐ先を出す

営業時間内なら、電話番号と「今すぐお話しできます」を。時間外なら、フォームかLINEと、返事をする時刻を出します。

たとえば「明日の午前10時までに、お電話かメールでご連絡します」
▼
③ 書き込まれた内容を引き継ぐ

窓に書いた内容が、担当者に届くようにしておきます。同じことを電話でもう一度説明させない、ということです。

ここが抜けると、読む人は同じ話を2回することになります
▼
④ 人が返す

伝えた時刻までに、担当者が返事をします。チャットボットが約束した時刻を守るのは、人の仕事です。

返す人と、返す時刻の目安を社内で決めておく

チャットボットの役目は、①と②で終わります。③と④が決まっていないなら、まだ入れる段階ではありません。

返事をする時刻を、守れる形で書く

②で「明日の午前中にご連絡します」と書いたなら、その時刻までに返す必要があります。自動の窓が約束したことを、守るのは人です。返信の目安の考え方は 問い合わせが来たあと、何時間以内に返すべきか にまとめました。

LINEで受ける形をすでに取っている場合は、チャットボットを足すより、LINEの自動の返事と人の対応を整えるほうが早いこともあります。LINEの入口の作り方は LINEで問い合わせを受けるとき、ホームページとどうつなぐか に書きました。

7. 先に、よくある質問のページを整える

ここまで読んで、「それなら、まず何をすればいいのか」と思われたかもしれません。答えはシンプルで、よくある質問のページを先に整えることです。

よくある質問のほうが早い理由

チャットボットに答えさせたい内容は、ほとんどがよくある質問のページに書ける内容です。そして、ページのほうがいくつかの点で有利です。

  • 誰でも読める ― 窓を開かなくても、ページを下へ読めば答えが見つかります
  • 直す場所が1か所 ― 料金や定休日が変わったとき、ページを直せば済みます
  • 正しいかを確かめやすい ― 書いた答えがそのまま表示されるので、意図しない答えが出ません
  • 検索エンジンにも読まれる ― ページの文章は、検索から来る人の入口にもなります

作り方は 「よくある質問」を作ると、電話の本数が変わる に書きました。電話の横に紙を1枚置いて、1ヶ月メモを取る。3回以上聞かれた質問から書く。それだけで、チャットボットに答えさせたかったことの多くが片付きます。

それでも入れるなら、答えの範囲を決める

よくある質問を整えても、まだ同じ質問が多い。夜の問い合わせを受け止めきれない。そうなってから、チャットボットを考えれば十分です。そのときは、答えの範囲を、3つに分けて表にしておきます。

  • 答えること ― 営業時間、場所、駐車場、支払い方法など、答えが変わらないもの
  • ページへ案内すること ― 料金の目安、対応地域、サービスの説明など、ページに詳しく書いてあるもの
  • 人へつなぐこと ― 金額、日程、個別の可否、苦情、体調やお金に関わる相談

この表が、チャットボットの答えの元になります。表に無い質問は、すべて「人へつなぐ」に入れると決めておくと、5節の間違いはかなり減ります。

スマートフォンの画面で、邪魔にならないか確かめる

置く場所も確かめてください。チャットボットの窓は、たいてい画面の右下に出ます。スマートフォンでは、そこに電話をかけるボタンや、本文の文字が重なることがあります。ページを開いた瞬間に窓が大きく開いて、読みたい本文が隠れてしまう形もよく見かけます。

自分のスマートフォンで、いちばん見られているページを開いてみてください。電話のボタンが押せるか。窓を閉じるボタンがすぐ分かるか。窓が勝手に開かず、押した人にだけ開く形にしておくと、読みたい人の邪魔をしません。

月に1回、窓の中を読む

入れたあとは、月に1回、窓に書き込まれた質問を読んでください。答えられなかった質問は、よくある質問のページに足す候補です。逆に、誰も押していない答えは、消しても構いません。チャットボットは、置いた日から古くなり始めます。見直す日を、先に決めておきます。

8. 雄喜晃の伴走:入れる前に、答えの元を整えます

私たち雄喜晃がホームページをお作りするとき、チャットボットを最初からお勧めすることはしていません。先に、よくある質問のページと、問い合わせの入口を整えるところから始めます。

私たちがやること

最初のお打ち合わせで、電話やメールでよく聞かれる質問を伺い、よくある質問のページに組み立てます。電話・フォーム・LINEのどこで受けるか、営業時間外はどう案内するかを決めて、サイトの文言に落とし込みます。それでもチャットボットを検討する段階になったら、答えること・ページへ案内すること・人へつなぐことの3つに分けた表を一緒に作ります。

料金と条件

料金は制作費0円、月額8,800円(税別)からです。6ページ構成のプランは月額13,800円(税別)です。サーバー、独自ドメイン、SSL、保守はすべて月額に含まれます。月5回までの更新代行も同じ月額の中なので、新しく聞かれるようになった質問を足すときも、ご連絡いただければこちらで反映します。

最低契約期間は6ヶ月です。7〜35ヶ月で解約された場合、サイトは非公開になります。36ヶ月以上ご継続いただいた場合は、サイトをお渡しします。

私たちがやらないこと

答えの範囲を決めないまま、チャットボットを置くことはしません。金額や日程の約束を自動で答えさせる設計も、お勧めしません。電話やチャットの一次対応を代わりに受けることもしていません。どの質問が多いかは、受けている方にしか分からないからです。問い合わせの件数や検索の順位をお約束するような話もしません。

実際にお作りしたサイトは 制作実績、料金と条件は ホームページ制作のページ に載せてあります。神戸市北区鈴蘭台を拠点に、2025年10月から一社ずつお手伝いしています。

「同じ質問への対応に追われていて、自動で答える窓が気になっている」という方は、一度ご相談ください。

9. まとめ:窓を置く前に、答えを決める

ホームページにチャットボットを付けるかどうかを決めるときに押さえることは、5つです。

  • 向く場面は2つ ― 答えが同じ質問が何度も来る、営業時間外の問い合わせが多い
  • 向かない場面のほうが多い ― 件数が少ない、質問が個別、直す人がいない、人が答えることを期待されている
  • 間違った答えは、会社の言葉になる ― 金額や約束は答えず、ページか人へつなぐ
  • 行き止まりを作らない ― 答えられないときの電話・フォーム・LINEと、返事の時刻を用意する
  • 先に、よくある質問のページ ― それでも足りないときに、答えの範囲を3つに分けて入れる

チャットボットは、人の代わりではありません。人が答えるまでの間をつなぐ役目です。つなぐ先の人と、答えの元になるページが整っていれば、窓は役に立ちます。整っていなければ、窓は増えた入口の1つとして、取りこぼしを増やします。

今日できることを1つだけ挙げます。この1週間に電話やメールで聞かれた質問を、紙に書き出してみてください。答えが毎回同じものに印をつけると、それがよくある質問のページの1ページ目になり、もし入れるならチャットボットの答えの元にもなります。

ぜひ一度、お話を聞かせてください。同じ質問に使っている時間を、どこで受け止めるかを決めるところから、ご一緒します。