1. 「このお店、本物ですか」と聞かれた
中小企業の経営者の方とお話していて、こんな言葉を伺うことがあります。
「お客様から電話があって、SNSで見た通販のページで半額セールをしているけれど、そちらのお店ですか、と聞かれたんです。うちは通販なんてやっていないんですよ。見てみたら、うちのロゴと写真がそのまま使われていて」
社名やロゴ、写真を使って、貴社のふりをするサイトやアカウントがあります。貴社が知らないところで作られ、貴社の名前で、貴社のお客様に声をかけています。
気づいたときは、腹が立つと思います。相手に文句を言いたくなるのも当然です。ただ、この記事でお伝えしたい順番は、そこではありません。まず記録を残し、次にお客様に「本物はここです」と知らせる。相手と直接やり取りすることは、最後まで選びません。
この記事の役割
近い話を書いた記事があるので、役割を分けておきます。
- 文章や写真を真似された ― 他社が、貴社の文章や写真を自分の会社のものとして使っている話です。ホームページの文章や写真を、他社に真似されたときにまずやること に書きました
- 自社のサイトが書き換えられた ― 貴社のサイトそのものが、外から改ざんされた話です。ホームページが改ざんされたかもしれないときに、まずやること に書きました
- この記事 ― 誰かが貴社そのもののふりをしている話です。狙われているのは、貴社の文章ではなく、貴社のお客様です
この記事で書くこと
- 偽物が、どんな形で出てくるか
- 見つけた日に、やらないこと
- 記録の残し方
- 自社サイトで、公式の連絡先を知らせる方法
- 公式アカウントの一覧を載せておくこと
- 運営への報告と、相談先
2. 偽物は、どんな形で出てくるか
よく伺うのは、次の3つの形です。
偽の通販サイト
貴社の社名、ロゴ、商品の写真を使って、通販のページが作られます。値段が大きく下げてあったり、「閉店セール」のような言葉が添えてあったりします。代金を払っても、品物が届かないことがあります。
貴社が通販をしていなくても作られます。むしろ、通販をしていない会社のほうが、お客様が本物の通販ページを知らないので、見分けがつきにくくなります。
偽のSNSアカウント
貴社の公式アカウントとそっくりの名前と写真で、別のアカウントが作られます。フォローしている人に、メッセージで「当選しました」「こちらから手続きを」と連絡してくることがあります。
公式アカウントを持っていない会社でも、作られることがあります。その場合、偽物のほうが「公式」だと思われてしまいます。
偽の求人
貴社の名前で、求人が出されることがあります。応募した人に、面接の前に個人情報を詳しく書かせたり、登録料や研修費を求めたりします。応募した人は、貴社に応募したつもりでいます。
通販をしていない会社の名前でも作られます。お客様は、貴社が通販を始めたと思って注文してしまいます。
名前と写真が同じなので、メッセージを受け取った人は公式からの連絡だと思います。手続きの名目で、個人情報や支払いを求められます。
応募した人は、貴社に応募したつもりでいます。面接の前に、身分証の写しや登録料を求められることがあります。
3つとも、損をするのは貴社のお客様や応募した人です。そして、その人たちの「あの会社にだまされた」という記憶は、貴社の名前で残ります。だから、貴社の側から「本物はここです」と知らせることが要ります。
気づくのは、たいてい問い合わせから
なりすましは、会社が自分で見つけるより先に、お客様からの問い合わせで分かることがよくあります。「このお店は本物ですか」「注文したのに届きません」「面接の連絡が来たのですが」。
ですから、電話やメールを受ける人が、こうした問い合わせをただの勘違いとして流さないことが、最初の一歩になります。
3. 見つけた日に、やらないこと
先に、やらないほうがいいことを書きます。慌てているときほど、ここで手を出してしまいます。
相手に、直接連絡しない
偽のサイトの問い合わせ欄や、偽のアカウントのメッセージに、「やめてください」と送りたくなると思います。送らないでください。
- 相手が誰かは分からない ― 名前も住所も、本物とは限りません
- こちらの連絡先が、相手に渡る ― 送ったメールアドレスや電話番号が、別の形で使われることがあります
- 相手に、気づかれたことが伝わる ― 記録を残す前に、ページを消されたり、別の名前で作り直されたりします
やり取りは、SNSや掲載先の運営、警察や専門家といった、間に立つところを通して進めます。
偽物で、買い物や応募をして確かめない
本当に偽物かを確かめようとして、注文したり、フォームに入力したりしないでください。貴社の情報が、相手の手に渡るだけです。確かめるのは、画面に見えている範囲で十分です。
偽物のURLやアカウント名を、そのまま広めない
自社のSNSで「この偽物に気をつけて」と、相手のURLやアカウント名を貼りたくなることもあると思います。これも避けます。貼ったリンクから、偽物を見に行く人が出てしまうからです。知らせるのは、偽物の場所ではなく、本物の場所です。これは5章で書きます。
4. まず、記録を残す
見つけた日のうちに、記録を残します。運営に報告するときも、警察や専門家に相談するときも、最初に求められるのはこの記録です。
残すもの
- URL ― 偽のサイトなら「https://」から始まる住所を、そのまま書き写します
- アカウントの名前とID ― SNSなら、表示されている名前と、@から始まるIDの両方を控えます。名前はいつでも変えられるので、IDのほうが手がかりになります
- 画面 ― ページやプロフィールの画面を、上から下まで保存します。社名やロゴが使われている部分、値段や連絡先が書かれている部分も入れます
- 日時 ― いつ、誰が、どの端末で見たか。画面の保存は、日付と時刻が一緒に残る形にします
画面の保存の仕方や、時系列のメモの作り方は、ホームページの文章や写真を、他社に真似されたときにまずやること に詳しく書きました。場面は違っても、残し方は同じです。
お客様から聞いたことも、残す
なりすましの場合は、もう1つ残すものがあります。問い合わせてきたお客様から聞いたことです。
- いつ、どこで偽物を見たか ― SNSの広告か、検索か、メッセージか
- 何を求められたか ― 代金、個人情報、登録料
- 実際に払ったり、送ったりしたか ― 被害が出ているかどうか
お客様のお名前や連絡先は、必要な範囲だけを控えます。被害が出ていそうな場合は、そのお客様ご自身にも、記録を残しておいていただくようお伝えします。
5. 自社サイトで「公式の連絡先はこれだけ」と知らせる
記録が残せたら、次はお客様に知らせます。ここが、貴社の側でいちばん効く手です。偽物を消すのは運営の仕事ですが、本物を示すのは貴社にしかできません。
トップページとお知らせに、告知を出す
自社のホームページのトップページの目立つところと、お知らせの欄に、告知を出します。お知らせ欄の使い方は 「お知らせ」の欄に、何を書けばいいか に書きましたが、この告知はふだんのお知らせより上に置きます。
| 書くこと | 文面の例 | なぜ要るか |
|---|---|---|
| 何が起きているか | たとえば「当社の名前やロゴを使った通販サイトが確認されています」 | 見た人が、自分が見たものと結びつけられる |
| 当社とは関係がないこと | たとえば「当社とは一切関係がありません」 | いちばん知りたい答えを、先に書く |
| 公式のものはどれか | たとえば「当社の公式サイトはこのサイトだけです。公式のSNSは、ページ下の一覧のとおりです」 | 偽物の場所ではなく、本物の場所を示す |
| 当社がしていないこと | たとえば「当社は通販を行っていません」「SNSのメッセージでお支払いをお願いすることはありません」 | 次に別の形で来ても、お客様が自分で見分けられる |
| 不審なときの連絡先 | たとえば「お心当たりのある方は、当社の代表電話までご連絡ください」 | 問い合わせの窓口を、本物の連絡先に集める |
| 偽物のURLやアカウント名 | 書かない | 貼ると、そこを見に行く人が出る |
告知は、本物を示す文章として書きます。強い言葉で相手を責める必要はありません。読むのは、不安になっているお客様です。被害に遭った方に向けて、警察などの相談先を添えておくのもよい方法です。
いちばん効くのは「当社がしていないこと」
表の中で、いちばん効くのは4行目です。「当社は通販をしていません」「メッセージで支払いを求めません」「求人で登録料をいただくことはありません」。
偽物は、一つ消えても、別の名前や別の形で出てくることがあります。「この偽物に気をつけて」と書くだけだと、次の偽物には効きません。貴社がしていないことを書いておけば、お客様が次の偽物も自分で見分けられます。
告知を下げる時期
告知は、偽物が見つからなくなってからも、しばらく残しておきます。偽物が消えたあとに、前に見た人から問い合わせが来ることがあるからです。下げるときも、「当社がしていないこと」は、よくある質問や会社概要に残しておくと安心です。
電話を受ける人に、答え方を伝えておく
告知を出したら、電話やメールを受ける人にも、答え方を伝えておきます。
「お問い合わせありがとうございます。そちらは当社とは関係のないサイトです。当社は通販を行っておりません。お支払いをされた場合は、お近くの警察の相談窓口にご相談ください」(例は架空)
問い合わせてきた方を、責める言い方はしないでください。その方は、貴社の名前を信じて連絡をくださった方です。
6. 公式アカウントの一覧を載せておく
告知は、起きてから出すものです。もう1つ、起きる前から置いておけるものがあります。公式アカウントの一覧です。
サイトのどこに置くか
- ページのいちばん下 ― どのページにも出る場所に、公式のSNSへのリンクを並べます
- 会社概要 ― 公式サイトのURL、代表電話、メールアドレスの @ の後ろ、公式のSNSを、一覧で載せます
- よくある質問 ― 「当社の公式アカウントはどれですか」という問いに、一覧で答えます
一覧に載っていないものは公式ではない、と分かる形にしておくと、偽物が出たときに、お客様が自分で見分けられます。
サイトとSNSを、両方向でつなぐ
一覧を載せるだけでなく、各SNSのプロフィールから、自社サイトにリンクを張っておきます。サイトからSNSへ、SNSからサイトへ、両方向でつながっていると、どちらが本物かを確かめられます。偽物のアカウントは、本物のサイトからはつながっていません。
SNSのプロフィールのリンクをサイトのどこに飛ばすかは、SNSのプロフィールのリンクは、ホームページのどこに飛ばすか にまとめました。
使っていないアカウントも、確かめておく
昔作って使わなくなったアカウントが、そのまま残っていることがあります。誰が管理しているか分からないアカウントは、偽物と見分けがつきません。使うなら一覧に載せ、使わないなら、使っていないことを示しておきます。
公式アカウントを誰の名義で持っているかも、この機会に確かめてください。担当者個人のアカウントで登録されていると、運営に報告するときに「公式」だと示しにくくなります。名義の確かめ方は ホームページのドメインやアカウントは、誰の名義になっているか に書きました。
7. 運営への報告と、相談先
記録を残し、お客様に知らせたら、偽物を消してもらうための報告に移ります。
SNSや掲載先の運営に報告する
多くのSNSには、なりすましを報告する窓口があります。偽の求人なら、掲載している求人の媒体に、偽の通販サイトなら、検索エンジンなど、偽物が表示されている場所の運営に、報告の窓口がある場合があります。
- 本人であることを示す ― 報告のときに、貴社が本物であることの確認を求められることがあります。公式サイトや公式アカウントが整っていると、示しやすくなります
- 記録を添える ― 4章で残したURL、画面、日時を使います
- 報告したことも記録する ― いつ、どこに、何を報告したか。受付の番号などがあれば控えます
消すかどうかを決めるのは、運営の側です。報告したからといって、すぐに消えるとは限りません。消えるまでのあいだは、5章の告知がお客様を守ります。
被害が出ていそうなら、警察や専門家に相談する
お客様が代金を払ってしまった、個人情報を送ってしまった、という話が出てきたら、貴社だけで抱えないでください。
- 警察の相談窓口 ― 各都道府県の警察に、詐欺やネット上の被害を相談する窓口があります。被害に遭ったお客様ご自身にも、相談先としてご案内できます
- 弁護士などの専門家 ― 相手への請求や、貴社の名前を守るための手続きを考えるときの相談先です
どんな手続きが取れるか、何が必要かは、状況や業種によって違います。この記事では手続きの中身には踏み込みません。所管の窓口や専門家に確認してください。
取引先や、お客様に個別に知らせるか
偽物が、貴社のお客様に直接メッセージを送っているようなら、メールなどで、お客様に個別に知らせることも考えます。そのときも、伝えるのは5章と同じ、本物の連絡先と、貴社がしていないことです。
ときどき、自社の名前で検索してみる
最後に、日頃の備えを1つ。月に一度くらい、自社の名前で検索してみてください。社名だけ、社名と「通販」、社名と「求人」。SNSの中でも、社名で探してみます。見覚えのないものが出てきたら、この記事の順番で進めます。
8. 雄喜晃の伴走:「本物はここです」を、サイトの中に用意します
私たち雄喜晃のホームページ制作では、偽物が出る前から、本物を示す場所をサイトの中に用意しておくことを大事にしています。
私たちがやること
- 公式の連絡先と公式アカウントの一覧を作る ― 会社概要やページの下に、公式サイト、代表電話、メールの @ の後ろ、公式のSNSをまとめて載せます
- 「当社がしていないこと」を一緒に書き出す ― 通販の有無、支払いのお願いの仕方、求人での費用の有無などを伺い、よくある質問などに載せます
- 告知の文を整えて載せる ― なりすましが見つかったとご連絡をいただいたら、告知の文面を一緒に整え、トップページとお知らせ欄に掲載します
- サイトとSNSのつながりを確かめる ― サイトから各SNSへ、各SNSからサイトへのリンクが、両方向でつながっているかを見ます
料金と条件
料金は制作費0円、月額8,800円(税別)からです。6ページ構成のプランは月額13,800円(税別)です。サーバー、独自ドメイン、SSL、保守はすべて月額に含まれます。月5回までの更新代行も同じ月額の中なので、告知を出すとき、下げるとき、一覧を直すときも、ご連絡いただければこちらで反映します。
最低契約期間は6ヶ月です。7〜35ヶ月で解約された場合、サイトは非公開になります。36ヶ月以上ご継続いただいた場合は、サイトをお渡しします。
私たちがやらないこと
- 偽物を作った相手に、連絡や削除の交渉をすることはしません。やり取りは、運営や警察、専門家を通していただくものだと考えています
- 相手が誰かを調べたり、特定したりすることもしません
- 被害についての法的な判断や、補償の判断もしません。そこは警察の相談窓口や弁護士などの専門家にご相談ください
- 不安な状況を材料に、契約を急がせることもしません
実際にお作りしたサイトは 制作実績、料金と条件は ホームページ制作のページ に載せてあります。神戸市北区鈴蘭台を拠点に、2025年10月から活動しています。
「自社の公式の連絡先がどれか、お客様にきちんと示せているか分からない」という方は、一度ご相談ください。
9. まとめ:偽物を追うより、本物を示す
自社の名前をかたる偽のサイトやアカウントを見つけたときに、やることは5つです。
- 相手に直接連絡しない ― 買い物や応募で確かめることもしない。偽物のURLを広めない
- まず記録を残す ― URL、アカウントのID、画面、日時。お客様から聞いたことも
- 自社サイトで、本物を示す ― 公式はこれだけ、当社はこういうことをしていない、と書く
- 公式アカウントの一覧を、ふだんから載せておく ― サイトとSNSを、両方向でつなぐ
- 運営に報告し、被害があれば警察や専門家へ ― 手続きの中身は、所管の窓口や専門家に確認する
偽物を消すのは、貴社だけではできません。でも、本物がどこにあるかを示すことは、貴社にしかできません。
まず、今日できること
貴社のホームページを開いて、公式のSNSや連絡先が一覧で載っているかを見てみてください。載っていなければ、そこが最初に足すところです。あわせて、社名で一度検索してみると、今の様子が分かります。
一覧をどこにどう載せればいいか迷ったという方は、一度ご相談ください。