1. 「開業まで、両方は間に合わないと思うんです」

中小企業の経営者の方とお話していて、こんな言葉をよく聞きます。

「来月から新しいサービスを始めるんですが、チラシもホームページも、まだ何もできていなくて。両方やるのは時間的にもお金的にも厳しいので、どっちを先にやるべきか、それだけ教えてもらえませんか」

開業や新サービスの準備は、決めることが山ほどあります。内装、仕入れ、人の手配、届け出。その中で販促の準備は、どうしても後回しになります。そして開業日が近づいてから、チラシとホームページのどちらに手をつけるかで手が止まります。

先にお答えすると、どちらが正しいという一般的な答えはありません。お客様がどこから来るかで、順番が変わります。近所の人が歩いて来る商売と、遠くの会社が検索して比べてから頼む商売とでは、最初に届けるべき道具が違うからです。

紙とウェブにそれぞれ何を載せるかという役割分担は、会社案内・チラシとホームページの、役割分担 に書きました。この記事では、その手前の話、どちらから手をつけるかだけに絞ります。

この記事で書くこと

  • 順番の決め方 ― 商圏と客層の2つで決める
  • チラシを先にする場合 ― サイトは1ページで並走させる
  • サイトを先にする場合 ― チラシはサイトへの入口として後から刷る
  • 予算の配分 ― 限られたお金を、どこに先に使うか
  • 素材の使い回し ― 同じ写真と言葉を、両方に流す段取り

2. 順番は、商圏と客層の2つで決まる

順番を決めるときに見るものは、2つだけです。お客様がどのくらいの範囲から来るか(商圏)と、そのお客様が何を見て決めるか(客層)です。

商圏が狭いほど、紙が先に届く

歩いて来られる範囲、車で十数分の範囲がお客様のほとんどだという商売があります。店舗、飲食、教室、近所の住宅まわりの仕事などです。

この場合、お客様になる人の住所がおおよそ分かっています。分かっている範囲に、直接届けられるのが紙の強みです。ポスティングでも、店頭でも、近所のお店に置かせてもらうのでも、狙った範囲の人の手元に届きます。

一方のホームページは、探してくれた人にしか見られません。開業したばかりで、まだ名前も知られていない店を、近所の人がわざわざ検索してくれることは多くありません。商圏が狭い商売では、まず知ってもらう段階で、紙が先に働きます。

なお、地域の商売では、ホームページより先にGoogleマップの登録を整えたほうが効く場面もあります。その順番の考え方は Googleマップとホームページ、どちらを先に整えるか に書きました。

商圏が広いほど、サイトが先に要る

反対に、市外や県外からもお客様が来る、あるいは法人のお客様が担当者経由で頼んでくる商売があります。製造、専門サービス、会社向けの仕事などです。

この場合、紙を配る範囲が決められません。どこに撒けばお客様に当たるか分からないからです。お客様のほうは、必要になったときに検索して、何社かを比べてから連絡してきます。その比べる場にいないと、候補に入りません。商圏が広い商売では、探されたときに見つかる場所を先に用意するほうが、順番として素直です。

客層:お客様が、何を見て決めるか

もう1つの軸は客層です。同じ商圏でも、お客様が決めるときに見るものが違います。

  • 手元の紙で決める人 ― 郵便受けのチラシを取っておき、必要になったら電話する。地域の情報を紙で受け取っている方に多い動きです
  • スマートフォンで調べて決める人 ― チラシを見ても、その場で店名を検索して、写真や料金や営業時間を確かめてから決める
  • 人に聞いて決める人 ― 知り合いの紹介で名前を聞き、その名前で検索して、ちゃんとした会社かを確かめる

2つ目と3つ目のお客様が多いなら、チラシを先に配っても、検索した先に何も無いと、そこで止まります。紙が先でも、サイトの最低限が同時に要るということです。

表:商圏と客層で、先に作るものが変わる(業種はたとえばの目安です)
お客様の来方先に作るものもう一方の扱い
近所の人が、紙を見て来る(たとえば地域の飲食店、教室)チラシサイトは1ページで同時に公開する。店名で検索されたときの受け皿にする
近所の人が、スマートフォンで調べて来る(たとえば美容、住まいの修理)ほぼ同時。サイトの1ページを少し先にチラシのQRと店名での検索を、その1ページで受ける
広い範囲から、比べて頼まれる(たとえば製造、専門サービス)ホームページチラシは展示会や営業先で手渡す用に、あとから少部数で
紹介で来る(たとえば士業、会社向けの仕事)ホームページ紙は名刺と会社案内で足りることが多い。チラシは急がない

どの行に当てはまるかは、業種名ではなく、最初のお客様が実際にどう来そうかで決めてください。同じ業種でも、立地と客層で行が変わります。迷ったら、2行目として進めるのがいちばん損の少ない形です。

3. チラシを先にするなら、サイトは1ページで並走させる

商圏が狭く、紙で決めるお客様が多いなら、チラシから手をつけてください。ただし、サイトを後回しにして、何も無い状態にはしないことが条件です。

チラシが先でも、検索はされる

チラシを受け取った人の中には、その場で店名を検索する人がいます。家族に「ここ、どう?」と聞かれて調べる人もいます。そのとき何も出てこないと、営業しているのかどうかすら分かりません。

ここで要るのは、立派なサイトではありません。何の店か、どこにあるか、いつ開いているか、どう連絡するか。これが載った1ページがあれば、チラシを受け取った人の確認には十分に応えられます。1ページに何を入れるかは 1ページから始めて、あとから増やす進め方 にまとめてあります。

チラシ先行の段取り

順番はこうです。

  • 先にドメインとURLを決める ― チラシに刷るURLとQRの行き先は、刷ったあとでは変えられません。サイトの中身より先に、住所だけ確保します
  • チラシの原稿を作る ― 開業日、場所、何の店か、最初に来てもらうきっかけを載せます
  • 同じ原稿から1ページを作る ― チラシの内容に、営業時間・地図・連絡先・よくある質問を足して公開します
  • 刷る前に、QRを読み取って確かめる ― 飛んだ先が開くか、スマートフォンで読みやすいかを確認してから入稿します

いちばん大事なのは1つ目です。サイトの中身が空でも、URLだけは先に決めておく。ここを後回しにすると、チラシにURLを刷れないか、仮のURLを刷って後で困るかのどちらかになります。

期間限定の情報は、チラシにだけ載せる

開業記念の特典や、最初の1ヶ月だけの案内は、チラシに載せて、サイトのほうでは期間が終わったら外します。

残り続けるサイトに期間限定の情報を載せたままにすると、それを見て来たお客様と行き違いが起きます。紙は配った時点で役目を終えますが、サイトは誰かが外すまで残り続けるからです。サイトに載せるなら、終わる日も一緒に書き、その日に外す人を決めておきます。

4. サイトを先にするなら、チラシは「入口」として後から刷る

商圏が広い、あるいは調べてから頼むお客様が多いなら、ホームページを先に整えます。

サイトを先にする理由

この場合のチラシは、知らない人に配って知ってもらう道具ではありません。展示会や営業先で手渡して、あとでサイトを見てもらうための入口です。入口の先に何も無ければ、チラシは役目を果たせません。

創業期の会社にとってホームページが効くのは、紹介の受け皿、取引先や金融機関の確認、採用の3つの場面だと考えています。詳しくは 創業したての会社に、ホームページは本当に必要か に書きました。どれも、チラシより先に要る場面です。

サイト先行の段取り

  • サイトで、何をしている会社かを書き切る ― サービス、対応範囲、料金の考え方、問い合わせの方法
  • サイトの中から、チラシに載せるものを選ぶ ― 全部ではなく、手渡す相手に関係する部分だけ
  • チラシのQRは、該当するページに飛ばす ― トップではなく、手渡した内容の続きが読めるページへ
  • 少部数で刷って、使ってから増やす ― 実際に渡してみて、聞かれたことを次の版に入れる

サイトを先に作ると、チラシの原稿づくりが楽になります。サイトに書いた文章を短く削れば、チラシの原稿になるからです。削るほうが、ゼロから書くよりずっと早く進みます。QRの行き先の決め方は 名刺・チラシ・看板のQRコードは、どのページに飛ばすか にまとめてあります。

5. 両方作るなら、サイトの骨組みを先に決める

予算と時間が許して両方作るなら、サイトの骨組みを先に決めて、チラシからサイトへ飛ばす形をおすすめします。チラシを先に配る場合でも、決める作業の順番はサイトから始めます。

なぜ、骨組みが先なのか

紙は、刷ったら直せないからです。チラシに載せる電話番号、営業時間、URL、サービス名、料金。どれか1つでも後から変わると、刷った紙が使えなくなります。

サイトの骨組みを先に作ると、載せる情報を、一度ここで確定させることになります。確定した情報だけをチラシに写せば、刷り直しの危険が減ります。サイトは後から直せるので、まだ決まりきっていない情報はサイトにだけ置いておけます。

図:両方作るときの段取り(チラシを先に配る場合も、決める順番は同じです)
① 載せる情報を、1枚の表にする

社名の表記、住所、電話番号、営業時間、サービス名、料金の考え方、開業日。まだ迷っている項目には印をつけておきます。

印のついた項目は、チラシには載せない候補になる
▼
② 写真を、両方に使う前提で撮る

サイト用とチラシ用を別々に撮らず、1回の撮影で両方をまかないます。たとえば店先、作業の手元、人の顔の3種類を押さえます。

横長と縦長の両方、文字を載せる余白を残したカットも撮る
▼
③ サイトの1ページを作り、URLを決める

中身は最低限で構いません。チラシのQRがどこに飛ぶかを、ここで決めます。

チラシに刷るURLと、QRが開くページが決まる
▼
④ チラシの原稿を、サイトの文章から削って作る

表で確定した項目だけを写します。印のついた項目は「詳しくはサイトで」に回します。

ここで新しい言い回しを足すと、紙とサイトで表記がずれ始めます
▼
⑤ QRを読み取ってから、入稿する

刷る前に、スマートフォンで実際に読み取り、飛んだ先を確かめます。配り始めたら、どのチラシから来たかを数えます。

直したい箇所は、次に刷る版でまとめて直す

項目や撮るものは、たとえばの一般的な例です。③より前にチラシを入稿しないことだけ守れば、配る順番はチラシが先でも構いません。

チラシから、どこに飛ばすか

両方作るときは、チラシからサイトへ飛ばす流れを作ります。このとき、チラシに書いた内容の続きが読めるページに飛ばしてください。チラシで料金の目安を見た人には料金の詳しい条件を、開業の案内を見た人には地図と営業時間を。読み取った人が、探し直さずに済む行き先にします。

6. 予算が限られているときの配分

開業時は、お金に余裕がないことがほとんどです。チラシとサイトの両方に十分なお金をかけられないとき、どこに先に使うかの考え方を書きます。具体的な金額は、地域や部数、作り方で大きく変わるので、ここでは割合ではなく使う順番で考えます。

1番目:両方に使える素材にお金を使う

最初にお金を使うべきは、チラシでもサイトでもなく、両方に使える素材です。写真と、言葉です。

写真は、チラシにもサイトにも、そのあとの看板や名刺にも使えます。1回の撮影で撮った写真が、何年も使われます。チラシのデザインに使ったお金はそのチラシ1種類にしか残りませんが、写真に使ったお金はすべての販促物に残ります。

言葉も同じです。何の店か、誰のための店かを一文で言えるようにしておくことに時間を使うと、どの道具を作るときにも迷いません。この一文は、チラシの見出しにも、サイトの最初の画面にも、そのまま使えます。

2番目:先に作ると決めたほうに使う

素材の次は、第2章で先に作ると決めたほうです。チラシ先行ならチラシの印刷と配布、サイト先行ならサイトです。

このとき気をつけたいのは、チラシを一度に大量に刷らないことです。部数を増やすと1枚あたりは安くなりますが、内容を直したくなったときに、残った紙が使えなくなります。開業直後は、お客様から聞かれることで直したい箇所がたいてい出てきます。最初は少なめに刷って、反応を見てから増やすほうが、結果としてお金が残ります。

3番目:続けるためのお金を残しておく

忘れがちなのが、開業後に続けるためのお金です。チラシは配ったら終わりですが、効いた配り方は続けたくなります。サイトは公開したあとに、営業時間の変更や、よく聞かれる質問の追加で直し続けることになります。

開業時に全部を使い切ると、2回目のチラシが刷れない、サイトが開業日のまま止まる、ということが起きます。最初に使う額より、続けられる額のほうを先に決めておくと、配分で迷いにくくなります。

迷ったときの判断

  • どちらか一方しか作れない ― 第2章の表で、先に作るほうだけを作る。もう一方は、手持ちの素材で最低限にとどめる
  • サイトの費用が重い ― 1ページで始める。ページは、開業後に聞かれたことから増やせます
  • チラシの配布費が重い ― 配る範囲を絞る。店から近い範囲だけに配って、反応を見てから広げます

7. 同じ写真と言葉を、両方に使い回す段取り

チラシとサイトを別々の人や会社に頼むと、写真も文章も別々に用意することになりがちです。そうすると手間が2倍になるうえに、紙とサイトで書いてあることが食い違い始めます。使い回す前提で段取りを組むと、手間も食い違いも減らせます。

原稿は、1枚の表から出す

第5章の段取りで作った「載せる情報の表」を、チラシとサイトの両方の元にします。社名の書き方、電話番号、営業時間、サービス名、料金。表に無いことは、どちらにも書かないくらいの決まりにしておくと、表記がずれません。

表記の食い違いは、思った以上によく起きます。チラシでは「10時〜19時」、サイトでは「10:00〜18:30」。片方だけ直して、もう片方が古いまま残る。名刺や封筒も含めた揃え方は ホームページと名刺・封筒で、書いてあることが違う に書きました。

写真は、両方に使える撮り方をする

撮影のときに次のことを意識しておくと、1回の撮影が両方に使えます。

  • 横長と縦長の両方を撮る ― サイトの最初の画面は横長、チラシは縦長の構図が多いので、同じ場面を両方の向きで押さえます
  • 文字を載せる余白を残す ― 写真の上に見出しを置くことがあるので、ぎりぎりまで寄らないカットも撮ります
  • できるだけ細かい画質で残す ― 印刷には、画面で見るよりずっと細かい画像が要ります。ウェブ用に小さくした画像からは、きれいなチラシは作れません
  • 元のデータを1か所に置く ― チラシを作る人とサイトを作る人が、同じ元データを使えるようにしておきます

言葉は、長い版と短い版を作る

言葉は、長い版を先に作り、そこから短い版を削り出します。サイトでは長い版を、チラシでは短い版を使います。短い版は長い版を削って作り、新しい言葉を足さないのがコツです。足し始めると、紙とサイトで言っていることが少しずつずれていきます。

開業後に直すときも、表から直す

営業時間が変わった、料金を見直した、というときは、まず表を直し、そこからサイトを直し、次に刷るチラシに反映します。サイトはその日のうちに直し、紙は次の版で直す。この順番を決めておけば、どれが新しい情報かで迷いません。

8. 雄喜晃の伴走:順番を決めるところから、ご一緒します

私たちがやること

私たち雄喜晃のホームページ制作では、最初のお打ち合わせで、お客様がどこから、何を見て来そうかを伺うところから始めます。そのうえで、チラシとサイトのどちらを先にするかを一緒に整理します。

サイト側では、チラシのQRの行き先になるページを用意し、チラシと同じ表記になるように原稿をまとめます。開業日に間に合わせる必要があれば、まず1ページで公開して、開業後に聞かれたことからページを増やしていく進め方もご提案します。開業後の営業時間の変更や、よくある質問の追加は、月5回までの更新代行の中で反映します。

料金と条件

料金は制作費0円、月額8,800円(税別)からです。6ページ構成のプランは月額13,800円(税別)です。サーバー、独自ドメイン、SSL、保守はすべて月額に含まれます。

最低契約期間は6ヶ月です。7〜35ヶ月で解約された場合、サイトは非公開になります。36ヶ月以上ご継続いただいた場合は、サイトをお渡しします。開業時にまとまった制作費を用意しなくてよい形なので、第6章で書いた「続けるためのお金を残す」配分とは考え方が近いと思います。

私たちがやらないこと

チラシの部数や配る範囲を、こちらで決めることはしません。どこにどれだけ配るかは、商圏をいちばんよく知っている経営者の方の判断だからです。また、まだ決まっていない営業時間や料金を、仮の数字で埋めて公開することもしません。決まっていない項目は、決まるまでサイトにも載せない形で進めます。チラシの反響や、検索の順位をお約束することもいたしません。

実際にお作りしたサイトは 制作実績、料金と条件は ホームページ制作のページ に載せてあります。神戸市北区鈴蘭台を拠点に、2025年10月から活動しています。「開業が近いのに、チラシもサイトも手がついていない」という方は、一度ご相談ください。

9. まとめ:お客様が通る道から、順番を決める

チラシとホームページのどちらを先に作るかを決めるときに押さえることは、5つです。

  • 順番は、商圏と客層で決める ― 近所の人が紙で決めるならチラシ、広い範囲から比べて頼まれるならサイト
  • チラシが先でも、URLと1ページは先に用意する ― チラシを見た人は検索します。受け皿が無いと、そこで止まります
  • 両方作るなら、決める順番はサイトから ― 情報を確定させてから、紙に写す
  • 予算は、素材、先に作るほう、続けるお金の順で ― 写真と言葉は、すべての販促物に残ります
  • 写真と言葉は、1枚の表と1回の撮影から ― 使い回す前提で用意すると、手間も食い違いも減ります

チラシとホームページは、どちらが上という話ではありません。お客様が最初に通る道に、先に置くものを決めるだけです。

今日できることを1つ挙げます。開業後の最初のお客様が、どうやって貴社を知り、何を見て連絡してくるかを、一文で書いてみてください。その一文で、第2章の表のどの行に当たるかが決まります。

順番が決まらないまま開業日が近づいている、という方は、一度ご相談ください。