1. 「甥っ子が作ってくれたので、今さら言いにくくて」

中小企業の経営者の方とお話していて、こんな言葉を聞くことがあります。

「うちのホームページは、甥っ子が学生のときに作ってくれたんです。ほとんどタダで。ありがたかったんですけど、もう社会人で忙しそうで。電話番号が1つ変わったのを直してほしいんですが、なかなか言い出せなくて」

甥っ子さん、娘さん、昔からの友人、取引先の息子さん、社員のご家族。作ってくれた相手はさまざまですが、話の形はよく似ています。作ってもらえたこと自体は、本当に助かった。ただ、何年か経つと、直したいところが出てきても頼みにくくなる。中身がどうなっているのかも、誰もよく分からない。

この記事は、そういう状態のサイトを相手との関係を壊さずに見直すための段取りを書きます。

この記事の役割

ホームページまわりの引き継ぎについては、ほかの記事でも書いています。制作会社を変えるときの手順は ホームページを、別の会社に引き継いでもらう に、相手と連絡が取れなくなったときの対処は 制作会社と連絡が取れなくなったときに、まずやること に、名義の確かめ方そのものは ホームページのドメインやアカウントは、誰の名義になっているか にまとめました。

この記事で扱うのは、その手前です。相手が会社ではなく知り合いや家族だからこそ起きることと、聞き方・お礼・伝え方といった、人との間の段取りが中心になります。

2. 知り合いに作ってもらったことは、悪い判断ではない

先にお伝えしておきたいことがあります。知り合いや家族に作ってもらったこと自体は、悪い判断ではありません。

安く、早く、事情を分かってくれた

作ってもらった当時を思い出してみてください。開業したばかりで、制作会社に頼む予算がなかった。急いでサイトが要った。会社の事情を一から説明しなくても、相手はもう知っていた。その時点でいちばん頼みやすい相手に頼んだのは、自然なことです。

サイトがあったおかげで、名前で検索した人が会社を確かめられた。問い合わせが来た。作ってくれた人がいなければ、今もサイトが無かったかもしれません。

困るのは、そのあとの段取りが決まっていないこと

困りごとの元は、作ってもらったことではありません。作ったあと、誰が・どこまで・いつまで見るのかを、どちらも決めていなかったことです。

会社に頼めば、契約書や見積書でそこが決まります。知り合い同士だと、「何かあったら言って」のひと言で始まることが多いです。その言葉は善意ですが、何年も続く約束としては曖昧です。ですから、見直すときも相手を責める話ではなく、決めていなかったことを、今から一緒に決める話として進めます。

3. 時間が経つと起きる、4つのこと

知り合いや家族に作ってもらったサイトで、数年経つと起きやすいことは4つです。

① 直してほしいと言いにくい

お金をほとんど払っていない、あるいは払っていないので、小さな直しを頼むたびに借りが増える気がする。これがいちばん多い声です。

結果として、電話番号や営業時間が変わっても、古いまま残ります。言いにくさが、そのままサイトの古さになっていきます。

② その人が忙しくなる、連絡が取りにくくなる

作ってくれた人にも暮らしがあります。学生だった人は就職し、転勤し、家庭を持ちます。友人は本業が忙しくなります。連絡はつくけれど、返事が1週間後、という状態がよく起きます。

完全に音信不通になるのは、むしろ少ないです。多いのは、関係は良いまま、少しずつ頼める時間が減っていく形です。

③ ドメインやサーバーが、その人の名義になっている

作るときに、その人が自分のアカウントでドメインを取り、自分のカードで払ってくれていることがあります。好意で立て替えてくれた結果、住所がその人の名前で登録されている状態です。

普段は困りません。ただ、その人のカードの期限が切れたり、その人が契約を整理したりすると、サイトとメールが止まることがあります。止まったあとの対処は ドメインやサーバーの更新を忘れて、サイトが止まったとき に書きました。

④ 誰も中身を分かっていない

作った本人も、何年も前のことは覚えていません。どこにログインすれば直せるのか、写真の元データはどこにあるのか。社内にも、作った本人にも、全体を知っている人がいない状態になっていることがあります。

4つのうち、急ぐのは③と④です。①と②は不便ですが、③と④はある日いきなり止まる種類の問題だからです。

4. 関係を壊さずに確かめる ― 名義・ログイン・データの置き場所

まず確かめるのは、3つです。名義、ログイン、データの置き場所。ここが分かれば、このあと何を選んでも進められます。

聞く理由は、会社の側に置く

いちばん気をつけたいのは、聞き方です。「どうなってるの」「なんで会社の名前になってないの」と聞くと、相手は責められたと感じます。好意でやってくれたことなので、なおさらです。

聞く理由は、相手の不備ではなく、会社の側の事情として伝えます。

「会社として、契約の控えを一か所にまとめることにしたんだ。あのときやってもらったサイトの分も、分かる範囲で教えてもらえると助かる。急がないから」

「会社として」「急がないから」の2つが入るだけで、相手は身構えずに済みます。確かめた結果、何かを移すことになっても、それは会社の整理の一部です。

一度に全部ではなく、一覧を渡して埋めてもらう

電話で一つずつ聞くと、相手はその場で思い出せません。聞きたいことを一覧にして渡し、分かるところだけ埋めてもらうほうが、相手の負担が軽くなります。

表:作ってくれた人に確かめる3つのこと(聞き方はすべて一例)
確かめること聞き方の例分からなかったとき
名義たとえば「ドメインとサーバーは、誰の名前で、どの会社と契約してる?支払いはどうなってる?」届いている更新のメールや、カードの明細に手がかりが残っていることがある
ログインたとえば「サイトを直すときは、どこから入ってる?そこに会社の人も入れるようにできる?」パスワードを口頭で聞き出すより、会社用の入口を作ってもらうほうが安全
データの置き場所たとえば「サイトのデータと、写真の元のファイルは、どこに置いてある?」本人のパソコンにしか無いことも多い。買い替えで消える前に、控えをもらう

3つとも、相手を問い詰めるためではなく、会社として控えを持つために聞きます。全部がすぐ分からなくても構いません。分からなかった欄が、次に一緒に確かめることの一覧になります。

パスワードは、聞き出さない

ログインについて、1つだけ注意があります。相手のパスワードを聞き出して、会社で使う形にはしないでください。相手が自分のほかの契約と同じパスワードを使っていることもあり、お互いにとって危ういからです。

できれば、会社のメールアドレスで新しいIDを作ってもらい、そのIDに権限を付けてもらいます。共有のIDしかない仕組みの場合は、作ってくれた人と一緒に、パスワードを新しいものに変えてから受け取ります。

5. 立て替えの精算と、お礼の仕方

確かめていくと、お金の話が出てきます。ここを曖昧にしたまま名義を移すと、あとでしこりが残ります。

立て替えてくれていた費用を、はっきりさせる

ドメインやサーバーの費用を、その人が毎年払い続けてくれていることがあります。本人は言い出しにくく、会社の側は気づいていない、という形がよくあります。

一覧で名義を確かめるときに、支払いがどうなっているかも一緒に聞いてください。立て替えてくれていた分があれば、名義を移すときに精算します。金額が小さくても、ここを済ませると話がすっきりします。

お礼は、引き継ぎの手間に対してもする

作ってくれたときのお礼は、当時しているかもしれません。ただ、名義を移す、データを渡す、会社用のIDを作る、というのは、相手にとって新しい手間です。

お礼の形は、相手との関係で決めてください。食事にお誘いする、品物をお渡しする、作業の時間に見合う謝礼をお支払いする。どれが正しいということはありません。大事なのは、頼みごとをする前に、作ってくれたことへのお礼を言葉で伝えることです。

「あのときサイトを作ってもらえて、本当に助かった。おかげで問い合わせも来るようになって。それで、ちょっとお願いがあるんだけど」

順番が逆になると、同じ頼みごとでも受け取られ方が変わります。

謝礼を払うなら、何に払ったかを残す

謝礼として金額をお支払いする場合は、何の作業に対してかを短く書き残しておくと、あとで双方が困りません。会社の経費としての扱いは、払い方や相手によって変わることがあるので、顧問の税理士さんなど専門家に確認してください。

6. 作ってくれた人を、悪く言わない

見直しを進めると、作ってくれた人の作り方を、ほかの人が評価する場面が出てきます。ここで気をつけたいことがあります。

新しく頼む相手が前のサイトを評価しても、乗らない

別の制作会社に相談すると、「この作りは古いですね」「これは直しにくい作りです」と言われることがあります。技術の話としては、そのとおりのこともあります。

ただ、その場で「身内が作ったもので、素人なので」と一緒に下げる必要はありません。当時の予算と時間で、その人にできる形で作ってくれたものです。作りの古さは事実として受け止め、作った人の評価とは分けて話してください。

社内で話すときも、同じ

社員の家族が作ったサイトの場合は、特に気をつけてください。「あのサイトは使いにくい」という話が社内で回ると、作った人の家族である社員の方の耳に入ります。見直しの理由は、いつも会社の側の事情として話します。事業が変わった、ページを増やしたい、更新を社内でもできるようにしたい。どれも本当のことのはずです。

サイトの上でも、前のサイトに触れない

作り直したときに、「サイトをリニューアルしました。以前のサイトでは見づらくご不便を…」と書くことがあります。前のサイトを下げる書き方は、作ってくれた人が読むかもしれません。知らせるなら、新しくなったことだけを書けば足ります。

7. これからどうするか ― そのまま頼む・一部だけ任せる・別に頼む

名義・ログイン・データの置き場所が分かったら、これからの形を決めます。選び方は、大きく3つです。

図:知り合いに作ってもらったサイトの、これからの3つの形(例は架空)
① そのまま頼む
作ってくれた人に、今後も見てもらう

本人に時間があり、返事も早く、続けたいと言ってくれている場合です。たとえば「直しは月に1回まとめて送る」「費用はこれだけ払う」と、頼み方と費用を言葉にして決め直します。

決め直せば、いちばん話が早い
② 一部だけ任せる
名義は会社に移し、作業だけ頼む

ドメインやサーバーは会社の名義にして、会社が払います。たとえば文字の差し替えは社内で、デザインの変更だけ本人に頼む、のように持ち場を分けます。本人の負担が減り、止まる心配も減ります。

関係を保ったまま、止まる危うさを減らす
③ 別に頼む
制作会社や別の人に、引き継いでもらう

本人が忙しく、更新の頻度も増えそうな場合です。名義とデータを受け取ってから、新しい相手に渡します。作ってくれた人には、お礼とともに先に伝えます。

伝える順番を間違えると、関係がこじれる

どれを選んでも、名義を会社の側に置くことは共通です。①を選ぶ場合でも、住所の契約が個人の名前のままだと、その人に何かあったときに止まります。

選ぶときの目安は4つ

  • 本人の時間 ― 頼んでから直るまで、どれくらいかかっているか。1週間以上かかるのが続いているなら、①は続きにくいです
  • 本人の気持ち ― 続けたいのか、正直に言えば手を離したいのか。「もう任せてもらわなくて大丈夫」と言えずにいることもあります
  • 直す回数 ― 年に数回の直しなら①や②で回ります。毎月お知らせや実績を足したいなら、③を考えます
  • 作りの状態 ― スマートフォンで見にくい、自分たちでは1文字も直せない、という状態なら、作り直しも選択肢です。判断の基準は リニューアルすべきか、直すだけで足りるか にまとめました

別に頼むなら、伝える順番を守る

③を選ぶときは、順番がいちばん大事です。新しい相手に頼んだあとで、作ってくれた人に知らせると、相手は「自分は外された」と受け取ります。

順番は、まずお礼と相談、次に名義とデータの受け取り、最後に新しい相手への引き継ぎです。

「仕事が増えてきて、お知らせを毎月出したいんだけど、毎回頼むのは悪いなと思って。会社で頼めるところを探そうと思ってる。今まで本当にありがとう。引き継ぎのときだけ、少し手伝ってもらえると助かる」

作り直す場合は、今のサイトを止める前に、文章や写真を控えておいてください。控えるものの一覧は ホームページを作り直す前に、今のサイトを控えておく にあります。作った人のパソコンにしか写真の元データが無いことも多いので、伝えるときに一緒にお願いしておくと手間が一度で済みます。

決めたことは、文字で残す

どの形を選んでも、決めたことは短く文字で残します。誰が、何を、いくらで、いつまで見るのか。知り合い同士だからこそ、口約束のままにしないほうが、お互いに気楽です。数年後にまた同じ「言いにくい」が起きないようにするためです。

8. 雄喜晃の伴走:作ってくれた方との関係を大事にしながら、引き継ぎます

私たち雄喜晃には、知り合いやご家族に作ってもらったサイトについてのご相談もいただきます。そのときは、作ってくれた方との関係を壊さない順番を一緒に考えるところから始めます。

私たちがやること

  • 確かめる一覧を一緒に作る ― 名義・ログイン・データの置き場所について、作ってくれた方にお渡しする一覧を、貴社の言葉で作ります
  • 受け取ったものから、今の状態を読み解く ― どこまでがそのまま使えて、どこからを作り直すかを、分かったことと分かっていないことを分けてお伝えします
  • 新しいサイトに移す ― ③を選ばれた場合は、今の文章と写真を控えたうえで、新しいサイトに載せ替えます
  • 公開後の更新を代わりに行う ― 電話番号や営業時間の変更も、月5回までの更新代行の中で反映します。「言いにくいから古いまま」という状態をなくすためです

料金と条件

料金は制作費0円、月額8,800円(税別)です。6ページ構成のプランは月額13,800円(税別)です。サーバー、独自ドメイン、SSL、保守は月額に含まれ、月5回までの更新代行も同じ月額の中です。

最低契約期間は6ヶ月です。7〜35ヶ月で解約された場合、サイトは非公開になります。36ヶ月以上ご継続いただいた場合は、サイトをお渡しします。

私たちがやらないこと

  • 作ってくれた方に、貴社の代わりに連絡することはしません。最初のお礼と相談は、貴社から伝えていただくのがいちばん角が立たないからです。そのあとの技術的なやりとりは、ご了承をいただいたうえでお手伝いします
  • 個人の名義になっている契約を、代わりに手続きすることはしません。多くの場合、名義を持つご本人の操作が要るからです
  • 前のサイトの作りを、悪く言うことはしません。古いところは事実としてお伝えしますが、作った方の評価とは分けてお話しします
  • 謝礼の金額や、税の扱いを決めることはしません。貴社とお相手の関係、顧問の専門家のご判断にお任せします

実際にお作りしたサイトは 制作実績、料金と条件は ホームページ制作のページ に載せてあります。神戸市北区鈴蘭台を拠点に、2025年10月6日に設立した会社です。

「身内に作ってもらったサイトを直したいけれど、どう切り出せばいいか分からない」という方は、一度ご相談ください。

9. まとめ:お礼を伝えてから、決めていなかったことを決める

知り合いや家族に作ってもらったサイトを見直すときに、押さえることは5つです。

  • 作ってもらったことは、悪い判断ではない ― 困りごとの元は、そのあとの段取りを決めていなかったこと
  • 名義・ログイン・データの置き場所を確かめる ― 理由は会社の側に置き、一覧を渡して分かるところだけ埋めてもらう
  • 立て替えを精算し、お礼を先に伝える ― 頼みごとは、お礼のあとに
  • 作ってくれた人を悪く言わない ― 作りの古さと、作った人の評価は分けて話す
  • これからの形を3つから選ぶ ― そのまま頼む・一部だけ任せる・別に頼む。どれでも名義は会社の側に置く

知り合いに作ってもらったサイトが困った状態になるのは、誰かが悪かったからではありません。善意で始まったことを、続け方まで決めないまま何年も経ったからです。今から決めれば、関係を保ったまま整えられます。

まず、今日できること

今日のうちに、1つだけやってみてください。作ってくれた方の名前と、サイトについて自分が知っていることを、紙に書き出す。ドメインの名前、更新の時期、直すときにどこへ連絡しているか。分からないところは空欄で構いません。その空欄が、お礼のあとに相談することの一覧です。

ぜひ一度、お話を聞かせてください。作ってくれた方とのこれからの形を決めるところから、ご一緒します。