1. 「サイトのことは、全部あの人に任せていたので」
中小企業の経営者の方とお話していて、こんな言葉をよく聞きます。
「ホームページのことは、ずっと総務の担当者に任せていたんです。その人が来月で辞めることになって。引き継ぎをしてもらおうと思ったんですが、何を引き継げばいいのか、こちらも分かっていなくて」
ホームページの担当者は、多くの会社で1人です。しかも、その人が本業のかたわらで見ていることがほとんどです。制作会社とのやりとり、お知らせの更新、問い合わせメールの確認。長く続けているうちに、どこに何があるかを知っているのが、その人だけになっていきます。
そして、辞める・異動するとなって初めて、会社としては何も把握していなかったことに気づきます。
この記事で書くこと
- 引き継ぎで本当に困るのは、どこなのか
- 引き継ぐものの一覧(7つ)
- 個人のメールアドレスで登録されているものを、会社のものに移す手順
- パスワードを、安全に引き継ぐ方法
- 引き継ぎ表の作り方と、辞めたあとに困る典型
2. 困るのは、操作ではなく「名義」と「届き先」
先に、引き継ぎで何が問題になるのかを整理しておきます。ここを取り違えると、時間を掛けたのに肝心なところが抜けます。
操作は、あとから覚え直せる
引き継ぎというと、お知らせの書き方や、写真の差し替え方を教えてもらうことを思い浮かべる方が多いです。もちろん大事ですが、操作は、後任があとからでも覚え直せます。制作会社に聞くこともできますし、更新そのものを頼んでしまうこともできます。
名義と届き先は、本人にしか変えられない
困るのは別のところです。
- ドメインやサーバーの契約が、誰の名前と、どのメールアドレスで登録されているか
- 管理画面やSNSに、誰のアカウントで入っているか
- 問い合わせのメールや、更新のお知らせが、誰のところに届いているか
こうした名義と届き先は、多くの場合、登録している本人でないと変えられません。本人確認のメールが本人の受信箱に届き、確認の番号が本人のスマートフォンに届くからです。
辞めたあとでは、頼みにくくなる
在職中なら、隣の席で「ちょっと変えておいて」と頼めます。辞めたあとは、そうはいきません。連絡はつくかもしれませんが、何度も頼むのは気が引けます。異動の場合も、新しい部署で忙しくなると後回しになります。
だから、引き継ぎは辞めると決まった日から、最終日までのあいだに終わらせることが大事です。辞めたあとに慌てるのは、たいていこの段取りが抜けた場合です。
3. 引き継ぐものは、7つある
ホームページまわりで引き継ぐものを、7つに分けて書きます。担当者と一緒に、1つずつ確かめてください。
① 制作会社の連絡先と、契約の中身
制作会社の担当者の名前、連絡先、連絡の手段。それから、契約の期間・解約の予告期間・月額や年額の金額。契約書があるなら、どこに保管しているか。
制作会社の側が、辞める担当者の名前しか知らないこともよくあります。後任の名前を、こちらから伝えておきます。
② ドメインとサーバーの名義
独自ドメインとサーバーを、どこで、誰の名義で契約しているか。登録しているメールアドレスは何か。更新はいつで、支払いは何でしているか。ドメインとサーバーとメールが、それぞれ別の契約であることも含めて、仕組みは 独自ドメインとメールアドレスは、どこで何を契約すればいいか に書きました。
③ 管理画面のID
お知らせを書くための管理画面に、誰のIDで入っているか。いちばん上の管理者は誰か。
④ 問い合わせメールの届き先
サイトの問い合わせフォームから送られたメールが、どのアドレスに届いているか。担当者の個人のアドレスに転送されていることもあります。
⑤ GA4とサーチコンソールの権限
アクセスや検索の数字を見るための、GA4とサーチコンソール。誰のアカウントに、どの権限があるか。何を見ていたかは ホームページを作ったあと、何を測ればいいか にまとめてあります。
⑥ SNSとGoogleビジネスプロフィール
会社のSNSのアカウントと、Googleマップに出る会社の情報(Googleビジネスプロフィール)。誰が管理者で、どのメールアドレスで登録しているか。
⑦ 支払いの方法
ドメインやサーバー、有料の機能の支払いが、担当者の個人のクレジットカードで立て替えられていることがあります。辞めたあとにカードを解約されると、更新が止まります。
4. 個人のメールアドレスで登録されたものを、会社のものに移す
7つを確かめると、たいてい見つかるのがこれです。担当者の個人のメールアドレスや、個人のアカウントで登録されているものです。
なぜ、個人のアドレスで登録されるのか
悪気があるわけではありません。急いで登録しなければならなかったとき、手元にあったのが自分のアドレスだった。会社のアドレスでは受信の確認が面倒だった。理由はさまざまですが、結果として、会社のサイトの大事な部分が、個人のものにぶら下がっています。
探し方
本人に「登録に使ったアドレス」を思い出してもらうのが早いですが、忘れていることもあります。その場合は、本人の受信箱で、ドメインやサーバーの会社、SNSからのお知らせのメールを検索してもらってください。お知らせが届いているアドレスが、登録に使われているアドレスです。
移す先は、後任の個人アドレスではない
ここが大事なところです。移す先を、後任の担当者の個人アドレスにしないでください。後任もいつか辞めるからです。同じことが、何年か後にもう一度起きます。
移す先は、人ではなく役割に付いたアドレスにします。たとえば「web@」や「info@」のように、会社のドメインで作った共有のアドレスです。届いたメールを誰が見るかは、社内で決めれば済みます。
移す順番
- まず、会社のアドレスを追加する ― 管理者やログイン用のアドレスとして、会社のものを加える
- 届くことを確かめる ― 確認のメールが、会社のアドレスに届くか試す
- それから、個人のものを外す ― 外すのは最後。順番を逆にすると、誰も入れなくなります
ログインのときにスマートフォンで確かめる設定(2段階の確認)を使っている場合は、その電話番号や端末も、会社のものに変えてください。個人のスマートフォンに確認が届く状態のままだと、IDとパスワードが分かっていても入れません。
会社のアドレスでも、本人の名前のものは同じ
もう1つ、見落とされやすいところがあります。会社のドメインのアドレスでも、たとえば「yamada@」のように本人の名前が付いたものは、個人のアドレスと同じ扱いだということです。
退職すると、そのアドレスは会社の側で止めたり消したりします。そのアドレスで登録していたものは、お知らせが届かなくなり、パスワードを忘れたときの再設定もできなくなります。本人の名前のアドレスを止めるのは、そこにぶら下がっている登録を全部移してからにしてください。社内でメールの管理をしている人にも、この順番を伝えておくと安心です。
5. パスワードを、安全に引き継ぐ
次に、パスワードの渡し方です。ここは、急いでいるときほど危ない形になりがちです。
勧めない渡し方
- 紙に書いて手渡す ― 紙は机の上や引き出しに残り、見た人なら誰でも入れる状態になります
- メールの本文やチャットに書いて送る ― 送った履歴に、ずっと残ります。誤送信や転送で、思わぬ相手に届くこともあります
- 口頭で伝えて、後任がメモする ― 結局、どこかに書き留められます
- 前任と同じIDを、そのまま使い続ける ― 辞めた人も、パスワードを知ったまま入れる状態が続きます
基本は、後任に自分のIDを作ること
いちばん安全なのは、パスワードを渡さないことです。管理画面やGA4、サーチコンソール、SNSの多くは、人ごとにIDを作って権限を付けられます。
後任に自分のIDを作り、必要な権限を付け、最後に前任のIDを止める。これなら、パスワードを人から人へ渡す場面がそもそもありません。誰が何をしたかも、あとから分かります。
共有のIDしかないものは
人ごとにIDを作れないものもあります。その場合は、次の形にしてください。
- 会社で使うパスワードの管理の仕組みに入れて、そこで共有する ― 紙やメールを経由させない
- 引き継いだら、すぐにパスワードを変える ― 前任が知っているパスワードを残さない
- 変えたあと、前任が入れないことを確かめる ― 最終日より前に、一度試しておく
触る人ごとに権限を絞る考え方や、パスワードを会社として持つ形は パソコンが苦手でも、ホームページの更新を止めない方法 にも書きました。
6. 引き継ぎ表を、1枚つくる
7つを確かめ、名義を移し、パスワードの扱いを決めたら、それを1枚の表に残します。次の引き継ぎのとき、これがあれば同じ苦労をせずに済みます。
| 項目 | 契約先・名義 | ログインと登録先 | 更新・支払い |
|---|---|---|---|
| ドメイン | たとえば「〇〇社で契約、名義は会社」 | ID:web@の共有アドレス。2段階の確認は会社のスマートフォン | 毎年〇月更新、自動更新はオン、会社のカード |
| サーバー | たとえば「制作会社の月額に含む」 | 制作会社が管理。こちらは契約内容の写しを保管 | 月額に含む。解約の予告期間を書いておく |
| 管理画面 | 制作会社が設置 | 担当者ごとにID。いちばん上の管理者は経営者 | なし |
| 問い合わせメール | 会社のドメインのメール | info@に届く。個人のアドレスへの転送はなし | メールの契約に含む |
| GA4・サーチコンソール | 無料 | いちばん強い権限は会社のアカウント。担当者には閲覧や編集の権限 | なし |
| SNS・ビジネスプロフィール | 会社のアカウント | 登録はweb@。管理者は2人以上 | 広告を出すなら支払い方法も書く |
| 制作会社 | たとえば「〇〇社、担当は△△さん」 | 連絡はメールと電話。こちらの窓口は後任の名前に更新 | 契約期間・月額・予告期間 |
表にパスワードは書きません。書くのは「何が、誰の名義で、どこに登録されていて、誰が入れるか」までです。パスワードは、会社で決めた管理の仕組みの中だけに置いてください。
表に書くこと、書かないこと
表に書くのは、上のような項目です。契約先、名義、ログインに使うIDと登録しているアドレス、2段階の確認をどの端末で受けているか、更新の時期と支払いの方法、誰が入れるか。最後に、いつ確かめたかの日付を1列足しておくと、古くなっているかどうかが分かります。
書かないのは、パスワードそのものです。表は人に見せたり、印刷したりするものなので、そこにパスワードがあると、紙に書いて渡すのと同じことになります。
誰が持つか
表は、担当者ではなく経営者が持っておいてください。操作ができなくても構いません。何が誰の名義でどこにあるかを、会社の代表として把握しておくことが目的です。担当者が変わっても、表は会社に残ります。
いつ見直すか
人が入れ替わったとき、制作会社を変えたとき、契約を足したとき。それに加えて、年に一度、ドメインの更新の時期に合わせて見直すと忘れません。制作会社そのものを変えるときに引き継ぐものは ホームページを、別の会社に引き継いでもらう にまとめてあります。
7. 辞めたあとに困る典型と、最終日までの段取り
最後に、引き継ぎが抜けたまま辞めてしまったとき、何が起きるかを並べます。どれも、在職中なら数分で済んだことです。
辞めたあとに困る典型
- ドメインの更新のお知らせが届かず、サイトとメールが止まる ― お知らせが辞めた人のアドレスに届いていて、誰も気づかない
- 問い合わせが、辞めた人の個人アドレスにだけ届き続ける ― 会社の誰も読んでいないまま、お客様は返事を待っている
- GA4やサーチコンソールに、会社の誰も入れない ― いちばん強い権限が、辞めた人の個人アカウントにしかない
- SNSに入れず、古い投稿を消すことも直すこともできない ― 逆に、辞めた人がまだ投稿できる状態が残っていることもある
- 制作会社が、後任を本人と確かめられない ― 先方が知っている名前が前任だけで、話が先に進まない
- 個人のカードが解約され、更新の支払いが通らない ― 止まってから初めて、立て替えだったと分かる
制作会社と連絡がつかなくなった場合も含めて、取り戻す手順は 制作会社と連絡が取れなくなったときに、まずやること に書きました。ドメインの更新が切れて止まってしまったときは ドメインやサーバーの更新を忘れて、サイトが止まったとき を見てください。
最終日までの段取り
辞めると決まったら、次の順で進めます。時期は目安なので、残りの日数に合わせて詰めてください。
7つの項目を、本人と一緒に書き出します。個人のアドレス、個人のスマートフォン、個人のカードに紐づいているものに印を付けます。
会社のアドレスを登録先に追加し、後任のIDを作って権限を付けます。2段階の確認を受ける端末も、会社のものに変えます。
後任が、自分のIDで全部に入れることを確かめます。制作会社や契約先には、窓口が後任に変わることを伝えます。
前任のIDを止め、個人のアドレスを登録先から外し、共有のパスワードを変えます。前任が入れないことを確かめ、引き継ぎ表に日付を入れます。
いちばん大事なのは順番です。前任のものを外すのは、後任が入れると確かめてから。順番が逆になると、会社の誰も入れない日ができます。
異動の場合も、同じ順で進めてください。社内にいるからといって後回しにすると、半年後には本人も覚えていません。
8. 雄喜晃の伴走:名義と届き先を、最初から会社に置きます
私たち雄喜晃のホームページ制作では、担当者が変わってもサイトが止まらない形を、作る段階から組み込みます。
私たちがやること
- 名義と登録先を最初に確かめる ― ドメインやサイトの登録が、誰の名前とどのアドレスになっているかを最初にご説明し、連絡先は人ではなく会社のアドレスにします
- 届き先を決める ― 問い合わせのメールが、会社のアドレスに届く形にします。個人のアドレスへの転送はおすすめしません
- 権限を分ける ― GA4やサーチコンソールの、いちばん強い権限が貴社に残るように設定します
- 引き継ぎ表の項目を一緒に埋める ― 私たちが把握している契約や設定の情報をお渡しし、表を作るお手伝いをします
- 窓口の変更を受ける ― 担当者が変わったときは、ご連絡いただければ、こちらの窓口を後任の方に切り替えます
料金と条件
料金は制作費0円、月額8,800円(税別)からです。6ページ構成のプランは月額13,800円(税別)です。サーバー、独自ドメイン、SSL、保守はすべて月額に含まれます。月5回までの更新代行も同じ月額の中なので、担当者が変わって操作を覚え直す時間が取れないときも、内容を送っていただければこちらで反映します。
最低契約期間は6ヶ月です。7〜35ヶ月で解約された場合、サイトは非公開になります。36ヶ月以上ご継続いただいた場合は、サイトをお渡しします。
私たちがやらないこと
貴社のパスワードを、私たちがお預かりして管理することはしません。パスワードは、貴社の中で決めた仕組みで持っていただくものです。メールの本文でパスワードを送っていただくことも、お願いしていません。
また、貴社の社員の方の退職の手続きや、社内の規程づくりはお手伝いできません。退職時の貸与品の扱いや情報の持ち出しの決まりなどは、業種によっても違うので、所管の窓口や専門家にご確認ください。
「サイトのことを知っているのが、社内で1人だけ」という方は、一度ご相談ください。実際にお作りしたサイトは 制作実績、料金と条件は ホームページ制作のページ に載せてあります。神戸市北区鈴蘭台を拠点に、2025年10月から活動しています。
9. まとめ:人が変わっても、名義と届き先は会社に残す
ホームページの担当者が辞める・異動するときに押さえることは、5つです。
- 引き継ぐのは、操作より名義と届き先 ― 操作は覚え直せるが、名義は本人にしか変えられない
- 7つを、本人と一緒に確かめる ― 制作会社、ドメインとサーバー、管理画面、問い合わせメール、GA4とサーチコンソール、SNS、支払い
- 個人のものは、役割のアドレスへ移す ― 後任の個人アドレスではなく、web@のような会社の共有アドレスへ。追加してから外す
- パスワードは渡さず、IDを作る ― 紙やメールで渡さない。共有しかないものは仕組みに入れ、引き継いだら変える
- 引き継ぎ表を、経営者が持つ ― パスワードは書かず、何が誰の名義で誰が入れるかを1枚に
引き継ぎで困る会社は、担当者がいい加減だったわけではありません。1人に任せたまま、会社として把握する場所が無かっただけです。表が1枚あれば、次に人が変わるときは、その表を渡すだけで済みます。
今日できることを1つだけ挙げます。担当者に「ドメインの更新のお知らせは、どのアドレスに届いていますか」と一度聞いてみてください。答えが個人のアドレスなら、そこから始めます。
担当者が辞めると聞いて、何から手を付ければいいか分からない、という方は、一度ご相談ください。