1. 「取引先だけが見られるページを、作れませんか」
中小企業の経営者の方とお話していて、こんな言葉をよく聞きます。
「取引先ごとに価格表を送っているんですが、毎回メールに付けるのが手間で。サイトにパスワードを付けたページを作って、そこを見てもらえば済むと思うんです。そういうの、作れますか」
作れるか作れないかで言えば、作れます。ただ、お話を伺っていくと、作ったあとのことがまだ決まっていない場合がほとんどです。
誰にパスワードを渡すのか。その人が辞めたらどうするのか。取引が終わった会社にはどう伝えるのか。鍵を付けたページは、作った日よりも、人が入れ替わる日に手間がかかります。そこを決めずに作ると、数年後に「誰が見られるのか、もう分からない」ページが残ります。
一方で、メールや共有フォルダで十分に回っている会社もあります。鍵付きのページは、手段の1つにすぎません。この記事では、作る理由と作らずに済む方法を並べたうえで、作るなら先に決めておくことを順に書きます。
この記事で書くこと
- 鍵付きのページを作りたくなる理由
- 作らずに済む方法(メール、共有フォルダ、公開ページとの組み合わせ)
- パスワードを全員共通にすると何が起きるか
- 退職者や取引終了のときの扱い
- 管理の手間と、検索に出ない設定の誤解
2. 作りたくなる理由は、たいてい3つ
鍵付きのページを作りたいというご相談は、渡したいものを伺うと、ほぼ3つに分かれます。
取引先ごとの価格表
いちばん多いのがこれです。卸値や掛け率が取引先ごとに違う。一般の方には見せたくない。でも、取引先からは「最新の価格表をください」と何度も言われる。
価格の改定のたびに、何十社にメールを送り直す。どの会社に新しい版を送ったか、表で管理する。この手間を減らしたいというのが、たいていの出発点です。
製品の資料・取扱説明・施工の手引き
製品を買ってくれた会社や、代理店に向けた資料です。取扱説明書、施工の手順、よくある不具合の直し方。誰でも見られる場所に置いてもいいものもありますが、同業に丸ごと持っていかれたくないという理由で、閉じたい場合があります。
図面・仕様書・打ち合わせの記録
工事や製造の仕事では、図面や仕様書を取引先とやり取りします。ファイルが大きく、メールに付けられないことも多いです。版が何度も変わるので、どれが最新かを相手と揃えておきたいという理由もあります。
共通しているのは「送る手間」と「最新版のずれ」
3つとも、根っこは同じです。
- 送る手間 ― 同じ資料を、何社にも、何度も送っている
- 最新版のずれ ― 相手の手元に古い版が残り、古い数字で話が進む
- 見せる範囲 ― 一般の方や同業には、見せたくない
この3つのうち、どれがいちばん困っているかで、取るべき手段が変わります。鍵付きのページは、3つ目にはよく効きますが、1つ目と2つ目は別の方法でも解けます。
3. 作らずに済む方法から考える
鍵付きのページを作る前に、作らずに済む方法を先に確かめてください。手間も費用も、そのほうが軽いことが多いからです。
メールで送る
取引先が数社で、資料の改定が年に数回なら、メールで十分なことが多いです。送った相手と日付がメールに残るので、誰に何を渡したかが自然に記録されます。
困るのは、取引先が増えたときと、改定が多いときです。そのときは、送り先の一覧を1枚にして、改定のたびに上から送る形にすると、漏れが減ります。
共有フォルダで渡す
ファイルを置いたフォルダを、相手ごとに共有する方法です。図面のように大きなファイルや、版が何度も変わる資料に向いています。
取引先ごとにフォルダを分けておけば、見せる範囲を相手ごとに変えられます。取引が終わったら、その会社の共有だけを外せば済みます。新しく仕組みを作る必要がなく、貴社がすでに使っているサービスで始められることも多いです。
要点は公開し、詳しい資料だけ個別に渡す
価格表なら、「一般的なご注文で〇円〜」のような目安だけをページに載せ、取引先ごとの詳しい表はメールで送る。製品資料なら、概要はページで読めるようにして、施工の手引きだけを個別に渡す。
この形にすると、閉じる必要のある資料が、思っていたより少ないことに気づくことがあります。資料のどこまでを公開してよいかの考え方は 会社案内やカタログを、ホームページからダウンロードできるようにするか にまとめてあります。
たとえば取引先が数社で、価格表の改定が年に数回の会社。送った相手と日付が残ります。相手が増えると、送り直しの手間が膨らみます。
たとえば図面や仕様書を、何度も版を変えながらやり取りする会社。相手ごとに見せる範囲を分けられ、取引が終われば共有を外すだけで済みます。
たとえば代理店が多く、同じ資料を何十社にも見せたい会社。送る手間は減りますが、鍵の発行・停止・問い合わせ対応という、別の手間が生まれます。
①と②で回るなら、③を作る理由は薄くなります。③を選ぶのは、相手の数が多く、同じ資料を同じ形で見せたいときです。そのときも、鍵を誰が発行し、誰が止めるかを先に決めてから作ります。
選ぶ目安は、相手の数と、改定の回数
どれを選ぶか迷ったら、2つの数を書き出してみてください。資料を渡す相手の数と、1年に資料を改定する回数です。
- 相手が少なく、改定も少ない ― メールで足ります。新しい仕組みは要りません
- 相手は少ないが、ファイルが大きい・改定が多い ― 共有フォルダが向いています
- 相手が多く、同じ資料を同じ形で見せたい ― ここで初めて、鍵付きのページが候補に入ります
相手の数が多くても、資料ごとに見せる相手が違うなら、鍵付きのページは複雑になります。「この資料はA社とB社だけ、こちらはC社だけ」が増えるほど、共有フォルダのほうが素直です。鍵付きのページが楽になるのは、全員に同じものを見せる場合です。
4. パスワードを全員共通にする危うさ
鍵付きのページを作ると決めた場合、いちばん多いのが「パスワードを1つ決めて、取引先全員に同じものを伝える」形です。手軽ですが、ここに落とし穴があります。
1つの鍵が、どこまで広がったか分からない
共通のパスワードは、伝えた相手の社内で共有されます。担当者が同僚に教え、同僚がメモに書き、そのメモが別の部署に回る。最初に伝えた相手は数十社でも、実際に知っている人の数は誰にも分かりません。
取引をやめた会社の元担当者が、転職先でもそのパスワードを覚えている、ということも起こりえます。
変えると、全員に知らせ直すことになる
危ないと感じてパスワードを変えると、今度は全員に新しいパスワードを知らせ直す必要があります。知らせ漏れた相手からは「入れなくなった」と連絡が来ます。
この手間が大きいので、共通のパスワードは変えられないまま何年も使われることになりがちです。変えにくい鍵は、時間がたつほど危うくなります。
誰が見たのか、記録に残らない
全員が同じパスワードで入ると、誰がいつ見たのかを区別できません。資料が外に出たとしても、どこから出たのかを追えません。
| 配り方 | 止めたいとき | 誰が見たか | 向いている場面 |
|---|---|---|---|
| 全員共通のパスワード | 1社だけ止められない。変えると全員に知らせ直し | 区別できない | たとえば、知られても困らない資料を短い期間だけ見せるとき |
| 取引先ごとに1つ | 取引が終わった会社の分だけ止められる | 会社の単位までは分かる | たとえば、取引先ごとに価格表が違う卸の会社 |
| 人ごとに1つ | 辞めた人の分だけ止められる | 人の単位で分かる | たとえば、図面や未発表の製品情報を扱う会社 |
下に行くほど安全になり、そのぶん発行と停止の手間が増えます。どの配り方にするかは、資料が外に出たときに何が困るかで決めます。困ることが大きいほど、細かく分けたほうが安心です。
少なくとも、取引先ごとに分ける
おすすめは、少なくとも取引先ごとに鍵を分けることです。取引が終わった会社の分だけを止められるからです。図面や未発表の情報のように、外に出ると困るものを扱うなら、人ごとに分けることも考えてください。どこまで分けるかは、扱う資料の中身次第です。
5. 退職者や取引終了のときの扱い
鍵付きのページの手間は、作るときより、人が入れ替わるときに出てきます。ここを決めずに作ると、見せてはいけない相手が見られる状態が残ります。
取引先の担当者が替わったとき
取引先の担当者が異動や退職をしたとき、そのことは貴社には知らされないことが多いです。人ごとに鍵を出している場合、前の担当者の鍵が、そのまま残ります。
対処としては、年に1回、取引先に「今の担当の方はどなたですか」と確かめる機会を作ることです。請求書の送付先を確かめるときや、年始の挨拶のときに一緒に聞くと、手間が増えません。
取引が終わったとき
取引が終わった会社の鍵は、その日のうちに止めます。共通のパスワードの場合は止められないので、パスワードそのものを変えて、残っている取引先に知らせ直すことになります。
終わり方によっては、相手に「鍵を止めました」と伝えるかどうかも考えておく必要があります。止める手順を、取引を終えるときの社内の手順に1行入れておくと、忘れずに済みます。
貴社の社員が辞めたとき
見落とされやすいのが、貴社の側です。鍵の発行や停止をしている担当者が辞めると、誰に何を発行したのかを知っている人がいなくなります。管理画面のIDが、その人の個人のメールアドレスで登録されていることもあります。
発行した相手の一覧と、管理画面の入り方を、会社として残しておいてください。
発行と停止を、1枚の表に残す
ここまでの3つは、どれも「誰に鍵を渡しているか」が分かっていれば迷わずに済みます。発行した日、相手の会社名と担当の方、止めた日。この3つを1枚の表にしておくだけで十分です。
表があれば、年に1回の見直しも、その表を上から確かめるだけで終わります。逆に表がないと、管理画面を開いて、見覚えのない名前を1つずつ調べることになります。担当者が替わるときの引き継ぎ全般は ホームページの担当者が辞める・異動するときの引き継ぎ にまとめてあります。
6. 管理の手間を、先に数える
鍵付きのページは、作って終わりではありません。作る前に、続けて発生する手間を数えておいてください。
誰が発行し、誰が止めるか
新しい取引先が増えたら、鍵を発行します。取引が終わったら止めます。担当者が替わったら、発行し直します。この作業を社内の誰がやるのかを、先に決めてください。
決まっていないと、発行の依頼が営業担当に来て、営業担当が制作会社に連絡して、という遠回りが毎回起きます。誰が受けて、誰に頼むのかの道筋を1本にしておくと、止まりません。
「入れない」「忘れた」の問い合わせ
鍵があると、たいてい「入れません」という連絡が来ます。パスワードを忘れた、別の人のものを使っている、入力を間違えている。その連絡に、誰がどう答えるかも決めておきます。
電話でパスワードを読み上げる、メールの本文に書いて送る、といった答え方は避けたほうが安心です。どう渡し直すかは、仕組みの作り方によって変わるので、作るときに制作会社と決めておきます。
中身の差し替え
鍵の向こうの資料は、公開ページより古くなっても気づかれにくいです。社内の人が普段見ない場所だからです。価格表を改定したのに、鍵付きのページだけ前の版のまま、ということが起きます。
差し替えを誰がするか、操作が苦手な人でも回る形にしておくことが大事です。考え方は パソコンが苦手でも、ホームページの更新を止めない方法 に書きました。
相手が、本当に開いてくれるか
もう1つ、作る前に確かめておきたいことがあります。取引先が、そのページを本当に開いてくれるかです。
鍵付きのページを作ったのに、取引先から「いつものようにメールで送ってください」と言われ続ける。こういうことはよくあります。相手にとっては、パスワードを探してログインするより、届いたメールの添付を開くほうが楽だからです。
作る前に、よく資料を求めてくる取引先の何社かに「こういう形にしたら使いますか」と聞いてみてください。反応が薄ければ、無理に作らず、送り方を整えるほうが先です。
会員の約束ごと
取引先ではなく、一般の会員に向けたページを作る場合は、もう1つ手間が増えます。アカウントを人に貸さない、退会したらどうなる、といった約束ごとを書いておく必要があるからです。これについては ホームページに「利用規約」は要るのか で整理しています。中身は業種によって違うので、所管の窓口や専門家に確認してください。
7. 「検索に出ない設定」は、鍵ではない
最後に、よくある誤解を1つ。「検索に出ないようにしておけば、知っている人しか見られない」というものです。
検索に出ないことと、見られないことは別
ページには、検索エンジンに「このページは載せないでください」と伝える設定があります。これを入れると、検索結果には出にくくなります。ただし、これは載せないでほしいというお願いであって、鍵ではありません。
URLを知っている人は、誰でも開けます。検索エンジンの側も、お願いを守るかどうかは相手次第です。お願いを読まずに中身を集めて回るプログラムもあります。
URLは、思ったより広く回る
URLは、メールで転送され、社内のチャットに貼られ、ブックマークに残ります。「長くて覚えにくいURLにしておけば大丈夫」という考え方もありますが、一度送ったURLが、どこまで回ったかは分かりません。
ですから、見せる相手を限りたい資料を、検索に出ない設定だけで守るのは避けてください。逆に、知られても困らないけれど検索結果には出したくない、という程度のページなら、この設定で十分なこともあります。
安全の仕組みは、制作会社と相談して決める
鍵の仕組みには、いくつかの作り方があります。どれを選ぶかは、扱う資料の中身、相手の数、貴社のサイトの作りによって変わります。この記事では、どれがよいとは書きません。資料が外に出たときに何が困るかを伝えたうえで、制作会社と相談して決めてください。
取引先の情報や、個人の情報を扱う場合は、守るべき決まりが業種によって違います。気になる点は、所管の窓口や専門家に確認してください。
8. 雄喜晃の伴走:鍵を付ける前に、渡し方から一緒に決めます
私たち雄喜晃のホームページ制作では、「鍵付きのページを作りたい」というご相談をいただいたとき、まず、誰に・何を・いつまで見せたいのかを伺います。
私たちがやること
- 渡したい資料を一緒に仕分ける ― 公開してよいもの、要点だけ公開するもの、個別に渡すものに分けます
- 作らずに済むかを先に確かめる ― メールや共有フォルダで回るなら、そちらをおすすめします
- 作る場合は、仕組みをご相談して決める ― 資料の中身と相手の数を伺い、鍵の配り方と仕組みを一緒に決めます
- 公開ページの側を整える ― 要点や目安をページに書き、詳しい資料への案内を置きます
- 差し替えを引き受ける ― 価格表や資料が新しくなったときは、ご連絡いただければこちらで反映します
料金と条件
料金は制作費0円、月額8,800円(税別)からです。6ページ構成のプランは月額13,800円(税別)です。サーバー、独自ドメイン、SSL、保守はすべて月額に含まれます。月5回までの更新代行も同じ月額の中なので、公開ページの目安の数字を改定するときも、内容を送っていただければこちらで直します。
最低契約期間は6ヶ月です。7〜35ヶ月で解約された場合、サイトは非公開になります。36ヶ月以上ご継続いただいた場合は、サイトをお渡しします。
私たちがやらないこと
貴社や取引先のパスワードを、私たちがお預かりして管理することはしません。鍵の発行と停止は、貴社の中で決めた担当の方が持つものです。
また、取引先との契約の内容や、情報の扱いについての社内の決まりづくりはお手伝いできません。業種によって守るべき決まりが違うので、所管の窓口や専門家にご確認ください。
「取引先に資料を送る手間を減らしたいが、鍵付きのページが本当に要るのか分からない」という方は、一度ご相談ください。実際にお作りしたサイトは 制作実績、料金と条件は ホームページ制作のページ に載せてあります。神戸市北区鈴蘭台を拠点に、2025年10月から活動しています。
9. まとめ:鍵を付けるかより、誰にいつまで見せるかを先に決める
取引先専用・会員専用のページを作るかどうかを決めるために、押さえることは5つです。
- 作る理由を1つに絞る ― 送る手間か、最新版のずれか、見せる範囲か。困りごとで手段が変わる
- 作らずに済む方法を先に試す ― 相手が少なければメール、大きなファイルなら共有フォルダで足りることが多い
- 全員共通のパスワードは避ける ― 少なくとも取引先ごとに分け、止めたい相手だけ止められるようにする
- 止める手順を先に決める ― 退職、担当替え、取引終了。人が入れ替わる日に手間が集まる
- 検索に出ない設定は、鍵ではない ― URLを知っている人は開ける。安全の仕組みは制作会社と相談する
鍵付きのページは、便利な道具です。ただ、鍵を配った相手を、何年も覚えておく仕事がついてきます。その仕事を誰が持つかが決まれば、作るかどうかの答えも自然に出ます。
今日できることを1つだけ挙げます。いま取引先に送っている資料を、送り先と送る頻度と一緒に書き出してみてください。並べてみると、鍵を付けるべき資料は1つか2つに絞られることが多いです。
資料の渡し方を見直したいが、どこから手を付ければいいか分からない、という方は、一度ご相談ください。