1. 「自分の代で、終わるかもしれないので」
「息子は別の仕事をしているし、社員に継いでもらうかも、まだ決めていないんです。あと何年やれるか、というところで。今さらホームページを作っても、と思ってしまって」
長く会社を続けてこられた社長の方から、こうしたお話を伺うことがあります。何十年も、名刺と電話と、取引先との信用で仕事を回してこられた。その方が「今さら」と感じるのは、もっともなことです。
この記事は、作ることを勧めるための記事ではありません。作らないという判断にも、筋が通っている場合があります。そのうえで、残りの数年と、そのあとの会社のことを考えたときに、判断の材料になることを並べます。
この記事の役割
近いテーマの記事が2つあります。先に役割を分けておきます。
- 継いだあと ― 会社を継いだ方が、先代のころのサイトをどう見直すかは 二代目が会社を継いだとき、ホームページで最初に見直すところ に書きました
- 閉じるとき ― 店を閉める、事業を譲るときの、サイトとドメインの止め方は 店を閉める・事業を譲るとき、ホームページとドメインをどうするか にまとめています
- この記事 ― その手前の、まだ何も決まっていない数年の間に、サイトを持つかどうか、持つならどう持つかの話です
なお、事業承継やM&Aの手続き、税金や株式の扱いは、この記事では扱いません。会社の状況によって大きく違うので、税理士や司法書士、取引のある金融機関など、専門家にご相談ください。
この記事で書くこと
- 作らないという判断が合う場合
- その数年の仕事を、取りこぼさないために
- 継ぐ人が決まっていなくても、会社の実在を示す
- 継ぐ人・買い手・取引先が、サイトを見るとき
- 作るなら、大きくせず、更新の少ない形で
- やめるときの段取りを、先に決めておく
2. 作らないという判断が、合う場合
先に、作らなくてよい場合を書きます。次のような状況なら、今からサイトを作らなくても、困ることは少ないと思います。
- 仕事が、決まった取引先だけで回っている ― 新しいお客様を受けるつもりがなく、取引先とは電話と顔で話が通じている
- 新しい依頼を、すでにお断りしている ― 紹介があっても受けられない。新しい人に見つけてもらう理由がない
- 閉じる時期と段取りが決まっている ― 取引先への連絡も済んでいて、会社のことを外に説明する場面がこの先ない
この3つに当てはまるなら、無理に作る必要はありません。サイトにかける時間とお金を、残りの仕事と、取引先への引き継ぎに使っていただくほうが筋が通ります。
「まだ決めていない」ときは、3つを確かめる
一方で、「当てはまるようで、当てはまらない」と感じる方もいらっしゃると思います。新しい依頼も、来れば受けている。継ぐかどうかは、まだ決めていない。閉じると決めたわけでもない。
お話を伺っていると、この「まだ決めていない」というところにいらっしゃる社長の方に、よくお会いします。その場合は、次の3つを確かめてから判断してください。
- その数年に、新しい仕事は来るか
- 会社のことを、外の人に確かめられる場面はあるか
- 会社のあとを考える人が、外から会社を見ることはあるか
ここから、1つずつ見ていきます。
3. その数年の仕事を、取りこぼさない
数年は、短くない
「あと数年」という言い方には、少し控えめな響きがあります。ただ、仕事の時間として見ると、数年は短くありません。その間にも、新しいお客様や、久しぶりの取引先から連絡が来ます。
紹介された人は、名前で調べる
長く続いてきた会社ほど、仕事は紹介で来るものです。そして、紹介された人は、連絡する前に会社の名前を検索することがよくあります。電話番号を確かめるため、どんな会社かを見ておくため、場所を調べるため。
そこで何も出てこないと、紹介してくれた方に連絡先を聞き直すか、そのまま連絡をためらうか、どちらかになります。紹介してくれた方の顔をつぶしてしまうことにもなりかねません。
久しぶりの取引先は、連絡先を探している
もう1つは、昔の取引先です。担当者が代わった、何年かぶりに同じ仕事を頼みたい。そういうとき、相手の手元にあるのは、古い名刺か前任者のメモだけ、ということがあります。電話番号や住所が変わっていればなおさら、外で確かめられないと連絡がつきません。
受けられる量だけ、受ければいい
誤解のないように書いておきます。サイトを持つことは、仕事を増やすこととは別です。人手が限られているなら、受けられる範囲だけを書けば十分です。
- 対応する地域を絞る ― 遠方はお受けしていない、と書いておく
- 受けている仕事を書く ― 今は修理だけ、これまでのお客様の点検だけ、など
- 返事の目安を書く ― 少人数なので、折り返しは翌営業日になる、など
これだけでも、合わない依頼は減り、合う依頼は取りこぼしにくくなります。
4. 継ぐ人が決まっていなくても、会社の実在を示す
会社が今もあることを、外から確かめられるか
取引の場では、相手の会社のことを外から確かめる場面があります。新しく取引を始めるとき、担当者が上司に報告するとき、金融機関とやりとりをするとき。そのとき、会社の名前で検索して、所在地や事業の中身が出てくるかどうかが見られることがあります。
創業したての会社が、説明の道具としてサイトを持つ話は 創業したての会社に、ホームページは本当に必要か に書きました。長く続いた会社でも、事情は似ています。長く続いてきたことを、外の人は知らないからです。
「引退」は、サイトに書かなくていい
ここで大事なことを1つ。継ぐ人が決まっていない段階で、サイトに「代表の引退を考えています」といったことを書く必要はありません。決まっていないことを書くと、取引先や社員に余計な心配をかけます。
サイトに書くのは、今、会社がどんな仕事を、どこで、誰とやっているかという事実だけです。それが、今日も会社が続いていることのいちばんの説明になります。
載せておくと、説明が早いもの
- 会社概要 ― 社名、所在地、代表者名、創業の年、事業の内容
- 仕事の中身 ― 何を、どんなお客様に、どの範囲でやっているか
- これまでの仕事の例 ― 取引先の名前を出さなくても、仕事の種類と規模で書ける
- 連絡先と受付の時間 ― 電話番号、メール、地図
どれも、新しく何かを作るというより、今の会社をそのまま書き写す作業です。
5. 継ぐ人・買い手・取引先が、サイトを見る
継ぐかもしれない人が、会社を外から見る
継ぐかどうかを考えている家族や社員は、会社の中のことはある程度知っています。ただ、外からどう見えているかまでは知らないことが多いものです。自分たちの会社がどう説明されているかを見て、継いだあとのことを考える材料にします。
社長の頭の中にしかない、仕事の範囲や得意なこと、長いお付き合いの理由。それが文章になって外に出ているだけで、継ぐ人にとっては手がかりになります。書き出す作業そのものが、引き継ぎの準備にもなります。
譲る相手を探すなら、相手も外から見る
社外の方に事業を譲ることを考える場合、相手の候補は、話を聞く前後に会社のことを外から調べることがあります。そのとき、事業の中身が事実で書かれているかは、話の入り口として役に立ちます。
ただし、譲る話そのものの進め方や、どこまで情報を出すかは、専門家と相談しながら決めることです。サイトに「譲渡を検討しています」と書くことはおすすめしません。サイトはあくまで、今の会社の事実を書く場所です。
取引先は、会社のこれからを気にかけている
長い付き合いの取引先ほど、口には出さなくても、会社のこれからを気にかけていることがあります。そこで、会社の情報が今の内容で整っていることは、小さな安心材料になります。何年も前のままのサイトや、何も出てこない状態より、続いている会社に見えます。
「私が」より、「当社が」で書いておく
継ぐ人のためにできる、小さな工夫があります。サイトの文章を、社長個人の言葉と、会社としての言葉に分けて書いておくことです。
代表挨拶は、社長ご自身の言葉で構いません。ただ、サービスの説明や約束ごとまで「私が伺います」「私が責任を持ちます」と書くと、代表が代わったときに、あちこちを書き直すことになります。人に付いている約束と、会社として続けられる約束を分けて書く。それだけで、継いだ人がサイトを見直すときの手間がずっと少なくなります。
6. 作るなら、大きくせず、更新の少ない形で
3つの持ち方
あと数年を見据えたとき、サイトの持ち方は大きく3つに分かれます。
決まった取引先だけで回り、新しい依頼を受けない場合に向いています。紹介された人や久しぶりの取引先が、会社を外から確かめる手段はなくなります。
何の会社か、どこで何をしているか、連絡先と地図。更新はほとんど要りません。継ぐ人が決まったら、そこから書き足せます。
継ぐ人が決まっていて、その人が更新を引き受ける場合に向いています。社長お一人で更新を続けるつもりなら、負担が大きくなります。
迷ったら②から始めてください。②から③へは、継ぐ人が決まってから広げられます。①を選ぶ場合も、名刺の電話番号が今のものか、Googleマップの情報が合っているかだけは確かめておくと安心です。
1ページで足りる
あと数年を見据えるなら、まずは1ページで十分です。何の会社か、どこで何をしているか、どんな仕事を受けているか、連絡先と地図。会社を説明するのに要るものは、1ページに収まります。1ページに載せる項目と、あとから増やす順番は 1ページから始めて、あとから増やす進め方 に書いてあります。
更新の少ない書き方
社長お一人で回しているなら、更新の手間はできるだけ減らしたいところです。書き方で減らせます。
- 日付の入る情報を減らす ― 「今年で創業○年」より「○年創業」。年が変わっても直さずに済む
- お知らせの欄は、置かないか目立たせない ― 何年も前の日付のお知らせが、いちばん古く見える
- 値段は、変わりにくい形で書く ― 細かい金額表より、見積もりの決まり方を書く
- 写真は、人より仕事を写したもの ― 人が代わっても使い続けられる
初めに大きくお金をかけない
最初にまとまった制作費をかけると、「何年使えば元が取れるか」が気になります。あと数年という見通しなら、なおさらです。初めの費用を小さくして、使う年数に合わせて払う形のほうが、判断しやすいと思います。ただし、月額で払う形の場合は、やめるときにサイトがどうなるかを、契約の前に確かめてください。これは次の章で書きます。
7. やめるときの段取りを、先に決めておく
ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。作るなら、終わり方を先に決めておく。始める前に決めておくと、あとが楽になります。
名義を、会社のものにしておく
ドメイン、サーバー、メール、Googleビジネスプロフィール。サイトにぶら下がっているものの名義や、登録しているメールアドレスが、社長個人のものになっていないかを確かめてください。支払いが社長個人のカードになっている場合も同じです。
社長がお一人で何もかも管理していると、継ぐ人や譲る相手に渡すとき、社長ご本人の手が要ります。名義の確かめ方は ホームページのドメインやアカウントは、誰の名義になっているか に、一覧の作り方も含めてまとめました。
終わり方は、3つに分かれる
会社のこれからによって、サイトの終わり方は変わります。今はどれになるか分からなくても、それぞれの場合に何をするかだけは決めておけます。
| 会社のこれから | サイトとドメインの扱い | 今のうちに決めておくこと |
|---|---|---|
| 家族や社員が継ぐ | たとえば、そのまま引き継ぎ、継いだ人の言葉で少しずつ書き直す。ドメインは同じものを使い続けられる | 名義と支払いを会社のものにする。ログインの情報を、継ぐ人が分かる場所に残す |
| 社外に事業を譲る | たとえば、相手が同じ屋号で続けるなら、ドメインごと渡すことがある | どこまで渡すかは、譲る話の中で決める。名義が社長個人のままだと、渡す手続きが進みにくい |
| 会社を閉じる | たとえば、お知らせを載せる期間を置いてからサイトを小さくし、最後に止める | いきなり消さない。ドメインを手放すと、第三者が取得できる状態になるので、手放す時期を急がない |
どの場合も、最初にやることは同じです。名義と支払いを会社のものにして、ログインの情報を一か所にまとめておく。これだけ済んでいれば、どの終わり方になっても慌てずに済みます。
閉じる場合と譲る場合の具体的な順番は、店を閉める・事業を譲るとき の記事に図で書きました。お知らせの文面や、メールを止める順番もそちらにあります。
月額制なら、やめたときの条件を先に聞く
月額でサイトを持つ場合は、解約したときに、サイトとドメインがどうなるかを、契約の前に聞いてください。非公開になるのか、データを渡してもらえるのか、ドメインの名義はどちらにあるのか。あと数年という見通しがあるなら、なおさら大事な質問です。何を聞けばいいかは 月額制のホームページを解約したら、サイトはどうなるのか に整理してあります。
誰に連絡すればいいかを、紙1枚にしておく
最後に、紙1枚でできることです。サイトについて何かあったとき、誰に連絡すればいいかを書いておきます。制作会社の連絡先、ドメインの契約先と更新日、ログインの情報の保管場所。社長とすぐに連絡がつかないときにも、ご家族や社員が困らないためのメモです。
8. 雄喜晃の伴走:数年の間を、小さく支えます
私たち雄喜晃のホームページ制作では、こうしたご相談をいただいたとき、まず会社のこれからについて、今わかっている範囲を伺うところから始めます。決まっていないことは、決まっていないままで構いません。
私たちがやること
- 今の会社を、そのまま書き写す ― お話を伺い、仕事の中身や範囲、長いお付き合いの理由を文章に起こします
- 小さく、更新の少ない形で組む ― 1ページから始め、日付の入る情報を減らした書き方にします
- 会社の言葉で書く ― 代表挨拶は社長ご自身の言葉で、サービスの説明は会社としての言葉で、分けて書きます
- 写真を整える ― 貴社で撮っていただいた写真を、大きさや明るさを整えて載せます
- あとから書き足す ― 継ぐ方が決まったら、その方の言葉を足していきます
料金と条件
料金は制作費0円、月額8,800円(税別)からです。6ページ構成のプランは月額13,800円(税別)です。サーバー、独自ドメイン、SSL、保守は月額に含まれています。月5回までの更新代行も、同じ月額の中です。
最低契約期間は6ヶ月です。7〜35ヶ月で解約された場合、サイトは非公開になります。36ヶ月以上ご継続いただいた場合は、サイトをお渡しします。
この記事のテーマでは、ここが大事なのでもう一言添えます。あと数年でやめる可能性があるなら、7〜35ヶ月で解約した場合はサイトが非公開になるという条件を、先にご承知おきください。続けられそうな年数と、この条件が合うかどうかは、ご契約の前に一緒に確かめます。合わない場合は、そう申し上げます。
私たちがやらないこと
事業承継やM&Aの手続き、税金や株式についてのご相談は、私たちの仕事ではありません。税理士や司法書士、取引のある金融機関など、専門家にお願いしてください。事業を譲る相手を探すお手伝いもしていません。
また、「今のうちに作っておかないと」と、作ることをお勧めすることもしません。2章に書いたような、作らなくてよい状況でしたら、そう申し上げます。
「自分の代で終わるかもしれないが、それまでの仕事と、会社のあとのことは気になっている」という方は、一度ご相談ください。実際にお作りしたサイトは 制作実績、料金と条件は ホームページ制作のページ に載せてあります。神戸市北区鈴蘭台を拠点に、2025年10月6日に設立した会社です。
9. まとめ:残りの数年と、そのあとのために、小さく持つ
あと数年で引退するかもしれないとき、ホームページについて考えることは5つです。
- 作らない判断も、筋が通っている ― 決まった取引先だけで回り、新しい依頼を受けないなら、無理に作らなくていい
- その数年の仕事を取りこぼさない ― 紹介された人も、久しぶりの取引先も、名前で会社を確かめる
- 会社の実在を、事実で示す ― 引退のことは書かず、今の仕事と所在地と連絡先を書く
- 小さく、更新の少ない形で持つ ― 1ページで足りる。日付の入る情報を減らし、会社の言葉で書く
- 終わり方を先に決める ― 名義と支払いを会社のものに。継ぐ・譲る・閉じる、それぞれでやることを決めておく
ホームページは、会社をこの先もずっと続けるためだけのものではありません。今日まで続いてきた会社を、外の人にきちんと説明しておくためのものでもあります。残りの数年がどうなっても、その説明が無駄になることはないと思います。
今日できることを1つだけ挙げます。会社の名前で一度検索して、出てきた電話番号と住所が今のものかを確かめてみてください。違っていれば、そこが最初に直すところです。合っていれば、作るかどうかは、ゆっくり考えていただいて構いません。
何をどこまで用意すればいいか迷っている、という方は、一度ご相談ください。