1. 「父の代に作ったサイトが、そのまま残っていて」

中小企業の経営者の方とお話していて、こんな言葉をよく聞きます。

「父から会社を継いで、半年になります。サイトは父の代に作ったままで、代表挨拶も父の写真のままなんです。名前だけは直してもらったんですが、読み返すと、今のうちとは違うことが書いてある気がして。どこから手を付ければいいのか」

会社を継いだ直後は、やることが山ほどあります。取引先へのご挨拶、社内の体制、金融機関とのやりとり。ホームページは後回しになりがちです。そして、代表者の名前だけ直して、中身は先代の会社のまま、ということがよくあります。

ただ、サイトを読む人は、そこに書かれていることを今の会社の約束として受け取ります。書いた人が先代でも、読む人には関係ありません。

この記事の役割

代表が交代したときに、名前や写真を直す場所の一覧は 移転・社名変更・代表交代のときに、サイトで直すところ にまとめました。直し漏れを防ぐための記事です。

この記事は、その先の話です。継いだ人の目で、サイトの中身をどう読み直すか。先代のころの言葉や約束が今と合っているか、先代を頼りにしてきたお客様にどう伝えるか、何から変えるか。その順番を書きます。

なお、事業承継の手続きや、税金・株式の扱いはこの記事では扱いません。業種や会社の状況によって大きく違うので、税理士や司法書士などの専門家にご相談ください。

この記事で書くこと

  • 先代の名前と顔を、どう直すか
  • 先代のころの約束が、今の体制と合っているか
  • 先代の言葉づかいと、会社の考え方の扱い
  • 先代の人柄で来ていたお客様への伝え方
  • 新しい方針を、急に全部変えない順番
  • 名義とアカウントが、先代個人のままになっていないか

2. まず、表に出ている「先代の名前と顔」を直す

最初に手を付けるのは、読む人の目にいちばん入るところです。ここは作業としては単純ですが、どう書くかを先に決めておくと、あとで迷いません。

代表者名・代表挨拶・写真・沿革

直す場所は、大きく4つです。

  • 代表者名 ― 会社概要、フッター、プライバシーポリシーなど、名前が入っている表記
  • 代表挨拶 ― 文章と署名。先代の言葉のまま残っていると、いちばん目立ちます
  • 写真 ― 挨拶のページだけでなく、採用のページや会社紹介の集合写真
  • 沿革 ― 代替わりの年が入っていないと、今の代表がいつからなのか分かりません

細かい場所の一覧は、先ほどの記事に譲ります。ここでは、継いだ人が迷いやすいところだけを書きます。

先代をどう扱うかを、先に決める

直し始める前に、先代の立場をサイトでどう書くかを決めてください。会長として残るのか、相談役になるのか、完全に退くのか。

決めずに進めると、あるページでは先代の名前が消え、別のページでは残る、ということが起きます。先代ご本人とも一度話して、どこまで名前を出すかを確かめておくと、あとで行き違いがありません。

代表挨拶は、急いで書き上げなくていい

継いだばかりのころは、会社の方針もまだ固まっていないことが多いと思います。その状態で長い挨拶を書くと、半年後には書き直したくなります。

おすすめは、まず短い就任の挨拶に差し替え、半年から1年たって書き直す形です。短い挨拶には、いつ、誰から、何を引き継いだかと、これからも変わらないことを書けば十分です。代表挨拶の中身の書き方は 代表挨拶のページに、何を書くか にまとめてあります。

沿革には、代替わりを1行で足す

沿革の最後に、代替わりの年と一言を足します。「〇〇年、代表取締役に△△が就任」。そこに、先代のもとで何年、何を担当してきたかを一言添えると、今の代表がどんな人かが伝わります。

先代の時代の出来事は、事実のまま残してください。代替わりした会社の沿革の書き方は 会社の沿革と創業のいきさつを、ホームページでどう伝えるか に書きました。

3. 先代のころの「約束」が、今と合っているか

ここがこの記事でいちばん大事なところです。名前と写真を直したら、次はサイトに書いてある約束を、1つずつ読み直してください。

約束は、人に付いていることがある

サイトには、思っている以上に約束が書かれています。保証の年数、対応する地域、営業時間、連絡したらいつ来てくれるか。

そして、その中には先代ご本人が守っていた約束が混ざっていることがあります。たとえば「24時間受付」と書いてあるのは、先代が夜も携帯で電話を取っていたからかもしれません。「代表が必ず現場に伺います」は、先代の働き方そのものです。

書いてある言葉は同じでも、守る人が変われば、守れるかどうかも変わります。今の体制で、明日から同じことができるか。この目で読み直してください。

保証は、過去に約束した分がある

保証の書き方を変えるときは、とくに気をつけてください。サイトの保証の内容を新しくしても、先代のころに仕事を受けたお客様は、当時の条件を前提にしています。

新しい条件は、いつ以降のご契約から当てはまるのかを書き添えます。過去の分をどう扱うかは、契約書や保証書の中身によって違います。判断に迷うときは、専門家に確かめてください。保証の書き方そのものは 保証やアフターサービスを、ホームページにどう書くか にまとめてあります。

対応エリアと営業時間は、人の数で変わる

代替わりのころは、人の入れ替わりが起きやすい時期でもあります。先代と一緒に長く働いてきた方が退くこともあります。

人が減れば、回れる範囲も、電話を取れる時間も変わります。サイトに書いてある範囲と時間が、今の人数で回せるかを確かめてください。回せないなら、広げたまま無理をするより、正直に狭く書き直すほうが、お客様との行き違いが起きません。

表:先代のころの約束を、今の体制で読み直す(例はすべて架空)
サイトの書き方今の体制で確かめること直し方の例
たとえば「24時間受付」夜の電話を、誰が取っているか。先代の携帯に転送されていないか「お電話は平日8時〜18時。それ以外はフォームで受け付け、翌営業日にご連絡します」と受け方を分けて書く
たとえば「代表が必ず現場に伺います」今の代表が、すべての現場に行けるか「現場の確認には、経験のある担当者が伺います」と、今できることに合わせる
たとえば「工事後10年保証」保証書の中身と同じか。過去のお客様にどう約束しているか条件を変えるなら、いつ以降のご契約からかを書き添える
たとえば「〇〇県全域に対応」今の人数で、遠い地域まで回れているか市町村名で書き直し、遠い地域は「ご相談ください」に分ける
たとえば「年中無休」実際に休んでいる日がないか定休日を決めたなら、定休日をはっきり書く

左の言葉は、先代のころには守れていた約束かもしれません。問題は言葉ではなく、今の体制で守れるかどうかです。守れない約束を残しておくより、守れる範囲で書き直すほうが、長くお付き合いのあるお客様にも誠実です。

4. 先代の言葉づかいと、会社の考え方

約束の次は、言葉です。ここは急いで変える必要はありませんが、一度は読んでおいてください。

「私が」で書かれた文が、あちこちに残っている

先代が自分で原稿を書いていた会社では、代表挨拶以外のページにも、先代の一人称が残っていることがあります。サービスのページに「私が責任を持って仕上げます」、よくある質問に「私の経験では」。

読む人は、その「私」を今の代表だと受け取ります。サイトの中で「私」と書かれている文を、全部探してください。見つかったら、「当社が」に直すか、今の代表の言葉として書き直すかを決めます。

理念は、書き換えずに受け取り方を添える

先代が作った経営理念や社訓が載っていることもあります。言葉が古いと感じても、すぐに外すのは慎重に考えてください。社員や古くからのお客様にとっては、その言葉が会社そのものということがあるからです。

外さずに残すなら、作られた年と、今の会社がその言葉をどう受け取っているかを一言添える形があります。新しい理念を作るのは、会社の方針が固まってからで遅くありません。

古くなった数字

「創業30年」「施工実績500件」のような数字は、書いた年から動いていないことがあります。代替わりの年は、サイトの数字を今の数字にそろえるよい機会です。数え直せない数字は、無理に残さず、確かめられる範囲の書き方に変えてください。

5. 先代の人柄で来ていたお客様に、どう伝えるか

長く続いている会社には、会社というより先代という人に頼んでいたお客様がいます。この方々への伝え方は、サイトだけで済ませないことが大事です。

サイトより先に、直接お伝えする

古くからのお客様には、サイトで知る前に、手紙や訪問、電話で直接お伝えするのが筋です。サイトで知った、というのは、長いお付き合いのある方にとって寂しいものです。

サイトの役目は、その後にあります。話を聞いたお客様が、改めて確かめに来る場所として整えておきます。まだ直接お伝えできていない方が、たまたまサイトを開いて知ることもあります。どちらの場合も、そこで不安にならない書き方にしておきます。

お知らせは、変わらないことから書く

代替わりのお知らせは、何が変わるかより先に、何が変わらないかを書いてください。お客様がいちばん気にしているのは、そこです。

「このたび、代表取締役が〇〇から△△に代わりました。電話番号、担当の者、これまでにお引き受けした工事の保証は、これまでどおりです。先代の〇〇は会長として、引き続き相談に乗ってまいります」

変わらないことが分かれば、お客様は安心して続きを読めます。変わることは、その後に、理由と一緒に書きます。

先代の居場所を、事実の範囲で書く

先代が会社に残っているなら、そのことを書いておくと、お客様は安心します。ただし、実際にしていないことは書かないでください。「引き続き現場を見守ります」と書いて、実際には引退されているなら、問い合わせたお客様をがっかりさせます。

先代ご本人と相談して、本当にしていただけることだけを書きます。何も書かないほうがよい場合もあります。

6. 新しい方針は、急に全部変えない

継いだ直後は、変えたいことがたくさん見えると思います。サイトの見た目を一新したい、ロゴを変えたい、新しいサービスを打ち出したい。その気持ちは大切です。ただ、一度に全部を変えると、古くからのお客様が戸惑います。

一度に変えると、何が起きるか

サイトを開いたら、見た目も、言葉も、サービスの並びも変わっていた。古くからのお客様は、「別の会社になったのか」と受け取ることがあります。

とくに、先代のころからのお客様は、サイトを頻繁には見ていません。久しぶりに開いたときに何もかも違っていると、知っている会社だと分からなくなります。変えること自体ではなく、変える速さが問題です。

変える順番を決める

おすすめの順番は、こうです。

図:継いでから、サイトを変えていく順番(時期はあくまで目安)
① 継いですぐ ― 事実を直す

代表者名、写真、短い就任の挨拶、沿革の1行。そして、今の体制で守れない約束の書き直し。ここは待たずに直します。事実と違うことが書いてあるのは、どの段階でも困るからです。

あわせて、名義とアカウントを確かめる(第7章)
▼
② 数ヶ月のうちに ― 言葉を直す

先代の一人称、古くなった数字、今は扱っていないサービスの説明。お客様や社員と話しながら、今の会社の言葉に少しずつ置き換えます。

▼
③ 方針が固まってから ― 見た目と打ち出しを変える

新しいサービス、ロゴ、サイトの作り直し。何を変え、何を残すかが自分の言葉で話せるようになってからにします。代表挨拶の書き直しも、ここで合わせて行います。

先に③をやると、方針が変わるたびに作り直すことになります

①は時期を待たない作業、③は方針が決まるのを待つ作業です。あいだの②は、急がずに少しずつ進めて構いません。

作り直すか、直すだけで足りるかの判断は リニューアルすべきか、直すだけで足りるか に書きました。代替わりのタイミングでも、同じ考え方が使えます。

変えたことは、理由と一緒に書く

方針を変えるときは、なぜ変えたのかをサイトで一言伝えてください。「より多くのご依頼にお応えするため、受付をフォームにまとめました」。理由が書いてあると、古くからのお客様も納得しやすくなります。

理由のない変更は、「先代のやり方を否定した」と受け取られることがあります。先代を立てながら変える、という書き方ができると、社内にも外にも角が立ちません。

7. 名義とアカウントが、先代個人のままになっていないか

最後に、目に見えないところです。ここは、先代がお元気で、話ができるうちに確かめてください。

先代個人に付いているものを探す

ホームページのまわりには、いくつもの契約やアカウントがあります。その中に、先代個人の名前や、先代個人のメールアドレスで登録されたものが混ざっていないか、見てください。

  • ドメインとサーバー ― 登録者や連絡先が、先代の名前や個人のアドレスになっていないか
  • メール ― 会社のメールの管理者が、先代だけになっていないか
  • Googleビジネスプロフィール ― オーナーが、先代の個人のアカウントになっていないか
  • SNS ― 会社のアカウントに、先代の携帯番号でしか入れない状態になっていないか
  • 制作会社との契約 ― 窓口や連絡先が、先代の携帯番号のままになっていないか

支払いが、先代個人のカードになっていないか

見落としやすいのが支払いです。ドメインやサーバーの更新料が、先代個人のクレジットカードで払われていることがあります。

先代が引退してカードを整理したとき、更新の支払いが止まり、サイトやメールが止まる。こういうことが起きます。支払いの名義と方法も、一覧に入れて確かめてください。

名義を移すには、今の名義人の手が要ることが多い

名義や管理者を移す手続きは、多くの場合、今の名義を持っている方ご本人の操作が要ります。パスワードを知っているだけでは進まないこともあります。

だからこそ、先代が会社にいて、話ができるうちに進めておくのがいちばん楽です。何を確かめればよいかの一覧は ホームページのドメインやアカウントは、誰の名義になっているか にまとめてあります。

承継の手続きの一覧には、入っていないことが多い

事業承継の準備では、株式や登記、銀行の手続きなど、確かめることの一覧が作られることが多いと思います。ただ、ホームページまわりの名義は、その一覧に入っていないことがよくあります。専門家にご相談するときも、話題に上らないことがあります。

手続きそのものは専門家にお任せして、サイトまわりの名義の確かめだけは、社内で一覧に加えておいてください。

8. 雄喜晃の伴走:継いだ方の言葉で、中身から見直します

私たち雄喜晃のホームページ制作では、代替わりのご相談をいただいたとき、まず今のサイトを、継いだ方と一緒に読むところから始めます。

私たちがやること

  • 約束の読み直し ― 保証、対応エリア、営業時間など、サイトに書かれた約束を一覧にし、今の体制で守れるかを伺いながら書き直します
  • 先代の言葉を探す ― 「私が」で書かれた文や古くなった数字を、ページをまたいで探し出します
  • 就任の挨拶と、お知らせの文面を整える ― 継いだ方からお話を伺い、変わらないことから伝わる文面にします
  • 写真の差し替え ― 貴社で撮っていただいた写真を、大きさや明るさを整えて載せます
  • 少しずつの書き換え ― 月5回までの更新代行が月額に含まれているので、言葉を数ヶ月かけて直していくときも、ご連絡いただければ反映します

料金と条件

料金は制作費0円、月額8,800円(税別)からです。6ページ構成のプランは月額13,800円(税別)です。サーバー、独自ドメイン、SSL、保守は月額に含まれています。月5回までの更新代行も、同じ月額の中です。

最低契約期間は6ヶ月です。7〜35ヶ月で解約された場合、サイトは非公開になります。36ヶ月以上ご継続いただいた場合は、サイトをお渡しします。

私たちがやらないこと

事業承継の手続き、税金や株式、登記についてのご相談は、私たちの仕事ではありません。税理士や司法書士などの専門家にお願いしてください。保証の条件を変えるときの、契約上の扱いの判断も同じです。

また、継いだことを機に、サイトの作り直しをお勧めすることもしません。名前と約束と言葉を直せば足りるなら、そう申し上げます。先代のころからの言葉を、こちらの判断で消すこともいたしません。何を残すかは、継いだ方が決めることです。

「会社を継いだが、サイトは先代のころのまま、どこから見直せばいいか分からない」という方は、一度ご相談ください。実際にお作りしたサイトは 制作実績、料金と条件は ホームページ制作のページ に載せてあります。神戸市北区鈴蘭台を拠点に、2025年10月6日に設立した会社です。

9. まとめ:名前の次に、約束と名義を読み直す

二代目として会社を継いだとき、ホームページで見直すことは、5つです。

  • 先代の名前と顔を直す ― 先代の扱いを先に決め、挨拶はまず短く。沿革には代替わりを1行足す
  • 約束を、今の体制で読み直す ― 保証・対応エリア・営業時間。先代ご本人が守っていた約束が混ざっていないか
  • 先代の言葉を探す ― 「私が」の文、古くなった数字。理念は書き換えずに受け取り方を添える
  • 変わらないことから伝える ― 古くからのお客様には、サイトより先に直接。お知らせは変わらないことを先に
  • 変える順番を決め、名義を確かめる ― 事実、言葉、見た目の順に。名義と支払いは、先代と話せるうちに

名前と写真を直すのは、始まりにすぎません。サイトに書いてあることは、今日からは継いだ方の約束として読まれます。一度、先代の書いた文を、今の自分の約束として読み直してみてください。

今日できることを1つだけ挙げます。自社のサイトを開いて、「24時間」「必ず」「無料」「保証」「全域」の言葉が出てくる場所に印をつけてみてください。そこに書かれた約束が、今の体制で守れるかどうか。それが、見直しの最初の一歩になります。

何から直せばいいか迷っている、という方は、一度ご相談ください。