1. 「選ぶだけで金額が出る、あれを付けたい」
中小企業の経営者の方とお話していて、こんな言葉を聞くことがあります。
「同業のサイトで、部屋の広さとか回数を選ぶと金額が出てくるやつがあって。ああいうのがあると問い合わせが来やすいんですかね。うちにも付けたいんですが」
いわゆる「料金シミュレーション」です。条件をいくつか選ぶと、その場で料金の目安が表示される仕組みです。見た目にも分かりやすく、付けたくなる気持ちはよく分かります。
ただ、これはどの仕事にも合うものではありません。条件を選べば金額が決まる仕事なら、読む人の手間を減らせます。一方で、現地を見ないと金額が決まらない仕事に付けると、画面に出た数字が「この金額でやってくれるはず」という約束として受け取られます。あとで見積もりを出したときに、話がこじれる原因になります。
この記事で書くこと
- 料金シミュレーションで、読む人の側に何が起きるのか
- 向く仕事と、向かない仕事の見分け方
- 出た金額が「約束」と受け取られないための、結果の書き方
- 入力項目の数と、聞き方
- 結果を見たあと、何をしてもらうか
- 作るのが大げさなら「料金の早見表」で足りること
料金をサイトに載せるかどうか、そのものの判断は ホームページに料金を載せるか、載せないか にまとめてあります。この記事は、載せると決めたあとの「載せ方の1つ」としての話です。
2. 料金シミュレーションで、何が起きるのか
先に、料金シミュレーションが読む人にとって何をしているのかを整理します。
読む人は、自分の条件で位置を測りたい
料金のページを開く人が知りたいのは、正確な見積もりではありません。自分の場合は、だいたいどのあたりになるのかです。
料金表が載っていても、自分の条件に当てはめるのは読む人の仕事です。表を上から読み、自分の条件の行を探し、オプションを足し算する。料金シミュレーションは、その作業を代わりにやってくれる道具です。選ぶだけで答えが出るので、表を読むのが苦手な人にも届きます。
料金表・見積もりフォームとの違い
料金にまつわる仕組みは、だいたい3つに分けられます。
- 料金表・早見表 ― 条件と金額を表で並べる。読む人が自分で当てはめる
- 料金シミュレーション ― 条件を選ぶと、その場で目安が出る。当てはめる作業を画面が代わりにやる
- 見積もり依頼のフォーム ― 条件を送ってもらい、こちらが金額を出して返す。人が判断する
料金シミュレーションは、この真ん中にあります。料金表より手軽で、見積もりフォームより早い。そのかわり、人が間に入らないまま、数字だけが相手に届きます。ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。
見積もりフォームで何を聞くかは 見積もり依頼のフォームは、何をどこまで聞けばいいか に書きました。料金シミュレーションの入力項目を考えるときにも、同じ考え方が使えます。
付けた会社の側で、起きること
うまく合っている場合、問い合わせの前に金額の話が済んでいます。「シミュレーションで〇万円くらいと出たので、その前提で相談したい」という連絡が来るようになります。
合っていない場合は、逆のことが起きます。画面で見た金額を覚えたまま連絡が来て、見積もりを出した瞬間に「話が違う」となります。同じ仕組みでも、仕事との相性で結果が反対になるのが、料金シミュレーションの難しいところです。
3. 向く仕事と、向かない仕事
付けるかどうかは、見た目の好みではなく、貴社の仕事の金額がどう決まるかで判断します。
向くのは、条件で金額が決まる仕事
次のような仕事は、料金シミュレーションと相性がいいです。
- 単価と数量で決まる ― 部屋数、面積、枚数、人数、回数を掛け算すれば金額が出る
- メニューの組み合わせで決まる ― 基本の料金に、オプションを足していく形
- 月額や回数のプランで決まる ― 何を選ぶかで金額が決まり、現場ごとの差がほとんどない
共通しているのは、お客様が自分で答えられる条件だけで、金額がほぼ決まることです。広さや人数や回数は、お客様が知っています。知っている条件で計算できるなら、画面に任せても話はずれません。
向かないのは、現地を見ないと決まらない仕事
反対に、次のような仕事は向きません。
- 状態を見ないと分からない ― 傷み具合、下地の状態、配管の位置など、開けてみないと分からないもの
- 現場の条件で大きく動く ― 搬入経路、駐車場所、足場の要否、周りの建物との距離
- 1件ごとに中身を設計する ― 何を作るかを話し合って決める仕事
こうした仕事でも、お客様は「だいたいいくら」を知りたがっています。ただ、お客様が答えられる条件だけでは、金額が決まりません。決まらない部分を画面が勝手に埋めると、出てくる数字は当たりません。
見分けるための、1つの問い
迷ったら、直近の見積もりを10件ほど並べて、こう問いかけてみてください。
「最初の電話で聞いた条件だけで出した金額と、現地を見たあとの金額は、どれくらい違ったか」
ほとんど同じだったなら、料金シミュレーションは向いています。現地を見て大きく動いたことが何度もあるなら、向いていません。その「大きく動いた理由」こそ、画面では聞けない条件です。
たとえば、ハウスクリーニングの「エアコン台数×単価+オプション」、教室の「コース×回数」、月額制のプラン。条件を選べば、ほぼ同じ金額になります。
たとえば、不用品の回収で「荷物の量」までは選べるが、階段作業や駐車場所で金額が足される場合。出せるのは下限と、よくある帯までです。
たとえば、雨漏りの修理、古い建物の改修、特注の製作。お客様の答えだけでは中身が決まらず、出た数字が実際とずれます。
分かれ目は、仕事の種類ではなくお客様が自分で答えられる条件だけで、金額が決まるかどうかです。同じ業種でも、メニューの組み方によって①にも③にもなります。③の場合は、無理に計算させず、金額がどう決まるかと過去の例を載せるほうが伝わります。
向かない仕事は、何を載せればいいか
③に当たる場合でも、何も出さないわけではありません。金額の決まり方を文章で書き、過去の例を規模と金額で3つほど並べる。これで、読む人は自分の位置をおおよそ測れます。画面が数字を断言しないぶん、話がずれにくい形です。
4. 出てきた金額は「約束」と受け取られる
料金シミュレーションを付けると決めた場合に、いちばん気をつけるところです。
画面に出た数字は、確定した金額に見える
料金表の数字は「表に書いてある値段」として読まれます。ところが、自分で条件を選んで出てきた数字は、自分のために計算された金額として読まれます。ここが大きな違いです。
自分の条件で出た数字なので、読む人はそれを覚えて連絡してきます。見積もりがその数字より高かったとき、「高い」ではなく「言われた金額と違う」という受け取り方になります。金額そのものより、話が変わったことに不信感を持たれます。
結果の画面に、必ず添えること
これを防ぐには、結果の数字のすぐそばに、次のことを書いておきます。
- 目安であること ― 「概算の目安です。正式な金額は、お見積もりでお伝えします」
- 前提にした条件 ― 選ばれた内容を、結果と一緒にもう一度表示する
- 含まれないもの ― 交通費、処分費、材料費、追加の作業など、計算に入っていないもの
- 金額が変わる条件 ― 「階段での作業」「駐車場が無い場合」など、足されることがあるもの
- 税込か税別か ― どちらで計算しているかを、数字の横に書く
- いつ時点の料金か ― 料金を改めたときに、古い数字と区別できるように
大事なのは、これを小さな注意書きで画面の下に置かないことです。数字と同じ目線の高さに置きます。読む人が数字を覚えるとき、同時に目に入る場所です。
幅で出すか、1つの数字で出すか
結果を1つの数字で出すと、約束に見えやすくなります。迷ったら、幅で出してください。「〇万〜△万円」と出せば、読む人は最初から「この間のどこか」と受け取ります。
1つの数字で出すなら、「〇万円〜」のように下限であることを示し、よくある金額の帯を添えます。下限だけが記憶に残る問題は、料金表でも料金シミュレーションでも同じです。
| 見るところ | 約束に見えやすい書き方 | 直した書き方 |
|---|---|---|
| 金額 | たとえば「お見積もり金額:48,000円」 | 「概算の目安:45,000〜55,000円(税込)」と幅と税の扱いを書く |
| 条件 | 金額だけが表示され、何を選んだかが消えている | 「3LDK・エアコン2台・平日」のように選んだ条件を並べ直す |
| 含まれないもの | 書いていない、または画面の一番下に小さく | 「駐車料金・高所作業は含みません」と金額のすぐ下に書く |
| 変わる条件 | 「状況により変動します」だけ | 「3階以上でエレベーターが無い場合は加算があります」と何で変わるかを書く |
| 見出しの言葉 | 「お見積もり結果」「あなたの料金」 | 「料金の目安」と書き、見積もりという言葉を使わない |
左の書き方が悪いわけではありませんが、読む人の頭の中で「この金額でやってもらえる」に変わりやすい形です。右のように直すと、同じ数字でも「目安を見た」という受け取り方になります。数字や条件は、貴社の料金で置き換えてください。
表示のルールについて
料金の示し方には、表示に関するルールがあります。実際より安く見える示し方や、条件を分かりにくく書くことは、問題になる場合があります。どこまでがよくて、どこからがいけないかは業種によって違うので、所管の窓口や専門家に確認してください。少なくとも、含まれないものと変わる条件を数字の近くに書いておくことは、読む人にとっても親切です。
5. 入力項目は、いくつまでにするか
料金シミュレーションは、質問が多いほど正確になります。ただ、多すぎると最後まで答えてもらえません。
金額に効く項目だけを聞く
入れる項目は、金額が変わるものだけにします。聞いても金額が変わらない項目は、今は要りません。それは見積もりの依頼を受けたあとに聞けば済みます。
目安としては、3〜5問くらいに収まるのが扱いやすいところです。それを超えるなら、料金の組み方が複雑すぎるか、そもそも現地を見ないと決まらない仕事の可能性があります。その場合は、第3章の図の②か③に戻って考え直してください。
「分からない」を選べるようにする
お客様が答えられない質問が混ざると、そこで手が止まります。どの質問にも「分からない」を用意してください。
「分からない」が選ばれたときは、幅を広めに出すか、その項目を除いた目安を出します。結果の画面に「〇〇が分からない場合は、お見積もりの際に確認します」と添えれば、話は先に進みます。
単位ではなく、身近なもので聞く
「何平方メートルですか」と聞かれても、答えられない人は多いです。「6畳の部屋で何部屋分くらい」「軽トラックの荷台でどのくらい」のように、お客様が思い浮かべられるもので聞きます。専門用語も、見た目の言葉に直します。
名前や連絡先を、結果の前に聞かない
いちばん避けたいのが、結果を見せる前に名前やメールアドレスを入れさせる作りです。目安を知りたいだけの人は、そこで帰ります。連絡先を渡すと営業の連絡が来る、と思うからです。
連絡先を聞くのは、結果を見て「この先に進みたい」と思った人にだけでいい。それが第6章の話です。
6. 結果のあとに、何をしてもらうか
料金シミュレーションは、結果を出して終わりではありません。目安を見た人に、次に何をしてもらうかまで決めておきます。
結果のすぐ下に、次の一歩を置く
結果を見た人は、2つに分かれます。「思ったより高い」と思って離れる人と、「この範囲なら頼みたい」と思う人です。後者のために、結果のすぐ下に、次の一歩のボタンを置きます。
ボタンの言葉は、押したあと何が起きるかが分かるものにします。「お問い合わせはこちら」より、「この条件で正式な見積もりを依頼する」「現地確認の日程を相談する」のほうが、押す人の迷いが減ります。ボタンの言葉の決め方は 「お問い合わせはこちら」のボタンを、何と書き、どこに置くか に詳しく書きました。
選んだ条件を、フォームに引き継ぐ
見積もり依頼のフォームに進んだとき、選んだ条件をもう一度入力させないようにします。同じことを2回聞かれると、それだけで送るのをやめる人がいます。
条件をフォームに引き継げない作りなら、せめて結果の画面に「この内容をメモして、フォームの備考欄に貼り付けてください」と書いておきます。受け取る側も、相手がどの数字を見て連絡してきたのかが分かるので、最初の返信が書きやすくなります。
電話を選ぶ人の道も残す
画面で目安を見たあと、電話で直接聞きたい人もいます。電話番号を置くなら、受けられる時間と、電話で伝えてほしいことを添えます。「シミュレーションの結果画面をお手元にご用意ください」と書いておくと、電話口での説明が短くなります。
「高い」と思った人にも、一言を
離れていく人にも、伝えられることがあります。安くなる条件です。「平日のご依頼」「複数箇所をまとめて」「繁忙期を避けて」など、金額が下がる条件を結果の近くに書いておくと、選び直してもう一度試す人が出てきます。
7. 作るのが大げさなら、「料金の早見表」で十分
ここまで読んで、「うちには少し大げさだ」と感じた方もいると思います。その感覚は、たいてい合っています。
早見表で、たいていのことは足りる
料金シミュレーションがやっていることは、結局、条件と金額の対応を見せることです。条件が2つか3つなら、表にすれば済みます。
縦に1つ目の条件、横に2つ目の条件を並べ、交わるところに金額を書く。その下に、足される条件と含まれないものを箇条書きで添える。これが「料金の早見表」です。読む人は、自分の行と列を指でたどれば金額が分かります。
早見表のほうが、向いている理由
- 全体が一度に見える ― 自分の条件だけでなく、隣の条件との差も見える。「1部屋増えるといくら上がるか」が分かる
- 直すのが楽 ― 料金を改めたとき、表の数字を書き換えるだけで済む
- 約束に見えにくい ― 自分のために計算された数字ではなく、表の数字として読まれる
- 印刷やPDFにも使える ― チラシや会社案内にも同じ表を載せられる
計算の仕組みは、料金を改めるときに手間が増える
料金シミュレーションは、計算の式の中に料金が埋まっています。料金を改めるとき、ページの文字を直すだけでは済まず、計算の中身まで直す必要があります。直し忘れると、料金ページには新しい金額、シミュレーションには古い金額、というずれが起きます。
作ったあとの直しまで含めて、続けられるかを考えてください。料金を年に何度も見直す商売なら、早見表のほうが続きます。
プランが複数あるなら、比べる表と合わせる
月額のプランや、松竹梅のようなコースがある場合は、早見表とプラン同士を比べる表を合わせて使えます。何が含まれていて、何が違うのかが並んでいれば、読む人は自分で選べます。比べる表の作り方は ホームページに「比較表」を載せるかどうか にまとめてあります。
早見表から始めて、足りなければ足す
順番としては、まず早見表を載せ、問い合わせの中身を見てから判断するのが無理のない進め方です。「表の見方が分からない」「自分の条件がどこか分からない」という問い合わせが続くようなら、その時点で計算の仕組みを考えれば十分です。最初から大きく作るより、手戻りが少なく済みます。
8. 雄喜晃の伴走:料金の見せ方は、過去の見積もりから一緒に決めます
私たちがやること
私たち雄喜晃は、料金のページを作るとき、貴社の過去の見積もりを一緒に見るところから始めます。条件だけで金額が決まる部分と、現地を見ないと決まらない部分を分け、早見表で足りるのか、計算の仕組みが要るのか、金額の決まり方を文章で書くほうがいいのかを決めます。
形が決まったら、結果や表の近くに置く「目安であること」「含まれないもの」「変わる条件」の文面を、貴社の言葉で一緒に書きます。表や結果の画面がスマートフォンで崩れないかも確かめます。
料金と条件
料金は制作費0円、月額8,800円(税別)からです。6ページ構成のプランは月額13,800円(税別)です。サーバー、独自ドメイン、SSL、保守は月額に含まれます。月5回までの更新代行も同じ月額の中なので、料金を改めたときの表の書き換えも、ご連絡いただければこちらで反映します。
最低契約期間は6ヶ月です。7〜35ヶ月で解約された場合、サイトは非公開になります。36ヶ月以上ご継続いただいた場合は、サイトをお渡しします。
私たちがやらないこと
貴社の料金や単価そのものを決めることはしません。価格は経営の判断だからです。私たちがやるのは、決まった料金を、読む人が自分の位置を測れる形に組み直すことです。
また、現地を見ないと決まらない仕事に、無理に計算の仕組みを付けることはおすすめしません。出た数字が約束になってしまうからです。料金の見せ方を変えたからといって、問い合わせの件数や検索の順位をお約束することもいたしません。
「料金を載せたいが、表にすると分かりにくく、計算させるのも不安だ」という方は、一度ご相談ください。実際にお作りしたサイトは 制作実績、私たち自身の料金と条件は ホームページ制作のページ に載せてあります。神戸市北区鈴蘭台を拠点に、2025年10月から活動しています。
9. まとめ:計算させる前に、金額の決まり方を見る
ホームページに料金シミュレーションを置くかどうかを決めるときに押さえることは、5つです。
- 向くのは、条件で金額が決まる仕事 ― お客様が答えられる条件だけで金額がほぼ決まるなら、置いてよい
- 現地を見ないと決まらない仕事には置かない ― 金額の決まり方と、過去の例を書くほうが伝わる
- 出た数字は約束と受け取られる ― 目安であること、選んだ条件、含まれないもの、変わる条件を数字のすぐ近くに
- 入力は金額に効く項目だけ ― 「分からない」を選べるようにし、連絡先は結果のあとに
- 大げさなら早見表で十分 ― 全体が見えて、直すのも楽。足りなくなってから足せばいい
料金シミュレーションは、便利な道具です。ただ、貴社の金額の決まり方に合っているときだけ、役に立ちます。合っていないのに置くと、画面が貴社の代わりに約束をしてしまいます。
今日できることを1つだけ挙げます。直近の見積もりを10件並べて、最初に聞いた条件だけで出した金額と、最終の金額がどれくらい違ったかを見てみてください。違いが小さければ早見表から、大きければ金額の決まり方を書くところから始めるのが近道です。