1. 載せるなと言われ、載せろと言われる

中小企業の経営者の方とお話していて、こんな言葉をよく聞きます。

「料金はサイトに載せないほうがいいと言われてきたんです。案件ごとに違うので。ただ最近、問い合わせの前に金額を聞かれることが増えて。載せたほうがいいんでしょうか」

これは、どちらの助言も間違っていません。載せないと問い合わせが減り、載せると安い客しか来ない。この二択に見えるので、答えが出ないまま何年も空欄のままになります。

ただ、実際には二択ではありません。金額そのものを出すか隠すかではなく、どういう形で出すかという話です。この記事では、その形を3つに分けて、それぞれ何が起きるかを並べます。

雄喜晃自身は、月額8,800円(税別)、6ページ構成なら13,800円(税別)、制作費0円、最低契約期間6ヶ月。これを全部サイトに公開している立場で書きます。隠していない側が書く記事なので、公開して実際に何が起きたかも含めてお伝えします。

この記事で書くこと

  • 載せたくない3つの理由に、それぞれ答える
  • 「価格はお問い合わせください」が落ちる場所
  • 金額ではなく、条件つきの数字を出す方法
  • 高くなる条件と、安くなる条件の書き方
  • 安い客しか来ない問題を、料金を隠さずに解く方法

2. 載せたくない理由は、たいてい3つ

料金を載せたくない理由をお聞きすると、ほぼこの3つに収まります。1つずつ答えます。

①案件ごとに違うから、出せない

これは事実です。工事でも、士業でも、制作でも、条件次第で金額は何倍にも動きます。1つの数字で言い切れないのは、そのとおりです。

ただ、ここから「だから何も書かない」に飛ぶのが早すぎます。読む人が知りたいのは、正確な見積もりではありません。自分がだいたいどのあたりにいるのかです。

「10万円の世界なのか、100万円の世界なのか」

これが知りたいだけです。幅のある数字でも、幅が分かれば判断できます。正確に出せないことは、何も出せない理由にはなりません。

②競合に見られる

見られます。これも事実です。ただ、2つ申し上げたいことがあります。

1つ目。競合は、載せていなくても金額を知っています。同じ地域で同じ商売をしていれば、相見積もりの場で必ず並びます。お客様が教えてくれます。隠すことで守れているのは、競合に対してではなく、お客様に対してだけです。

2つ目。競合に見られることの損と、金額が分からないという理由で候補から外されることの損を、同じ天秤に乗せてください。前者は値段が揃うだけですが、後者は問い合わせが来ません。

もちろん、業種によっては相場の崩れ方が激しく、公開が不利に働く場合もあります。その場合は、後で書く「条件つきの数字」の幅を広く取るという手があります。全部隠すか全部出すかの二択ではありません。

③安い客ばかり来る

これがいちばん本音に近い理由だと思います。金額を出すと、金額だけで選ぶ人が来る。説明を聞かずに「もっと安いところがあった」と言われる。

ここも事実です。ただ、料金を隠しても、安い客は来ます。来るタイミングが商談の後ろにずれるだけです。時間をかけて説明して、見積もりを出して、そこで初めて「予算が合わない」と分かる。隠したことで、こちらの時間が消えています。

安い客しか来ない問題は、料金を隠すことでは解けません。断る条件を書くことで解けます。これは第6章で詳しく書きます。

3. 「価格はお問い合わせください」は、比較の段階で落ちる

いちばん多いのが、この一行だけが書かれている状態です。何が起きるかを具体的に書きます。

3社を見ている人の、頭の中

ホームページで業者を探している人は、まず3社くらいを並べます。そのとき、それぞれのサイトを開いて、料金のページを探します。

  • A社:「一般的なご依頼で30万〜60万円」と書いてある
  • B社:「30万円から」と書いてある
  • C社:「価格はお問い合わせください」と書いてある

この人は、どこに連絡するでしょうか。3社見ている人は、金額が分かる2社で話を進めます。C社は「あとで聞けばいい」と思われたまま、連絡されません。

厳しい言い方になりますが、比較の段階で落ちた会社は、落ちたことに気づけません。問い合わせが来なかった、という事実だけが残ります。アクセス解析を見ても、料金ページで離脱した人の理由までは分かりません。

さらに言えば、金額を聞くために問い合わせをする、という行為そのものが面倒です。名前とメールアドレスを書いて、営業の連絡が来るのを承知で送る。その手間を払う価値があると判断されるのは、すでに有力候補になっている会社だけです。1社目の比較段階では、まず払われません。

「お問い合わせください」が機能する例外

例外はあります。次のような場合は、書かないほうが素直です。

  • 公共工事や元請けからの下請けのように、金額が入札や取引条件で決まる商売
  • 1件ごとに設計から始まり、数字の幅が10倍を超える商売
  • 単価ではなく、人員や期間で見積もる商売(それでも「人日単価」は出せることがあります)

この場合でも、金額の代わりに「決まり方」を書くことはできます。「お見積もりは、現地を拝見したうえで平米数と工法から算出します」と書いてあれば、読む人は自分の規模から見当がつきます。空欄とは違います。

4. 金額ではなく、条件つきの数字を出す

ここが抜け道です。出すのは金額そのものではなく、条件がついた数字です。

数字を出す前に、1つ決めること

先に決めることがあります。この数字を見て、誰に連絡してきてほしいのか。

安くてもいいから件数を増やしたいのか、高くても合う人だけに来てほしいのか。ここが決まっていないと、数字の書き方が決まりません。数字は、来てほしい人に向けた合図です。

条件つきの数字とは

形はこうです。

  • 「〇〇の場合は、△万円から」
  • 「一般的なご依頼で、□万〜□万円」
  • 「月額□円、最低6ヶ月から」

共通しているのは、数字の前に条件が置かれていることです。条件があるので、条件が違う人は「自分は違う」と分かります。これが、単なる「30万円から」との差です。

図:料金の見せ方を3つに分けると、起きることが変わる
① 載せない
価格はお問い合わせください

金額が分からないので、比較の段階で候補から外れます。問い合わせをくれた人だけが残るので、残った人の質は高く見えます。ただし、落ちた人はこちらから見えません。

比較の段階で、名前が消える
② 下限だけ載せる
30万円から

候補には残ります。ただし、30万円で済むと思われたまま商談に入るので、見積もりを出した瞬間に落ちます。そのぶんの説明の時間が消えます。

候補には残るが、見積もりで崩れる
③ 条件つきで載せる
一般的なご依頼で30万〜60万円。高くなる条件は〇〇

読む人が自分の位置を測れます。高くなる条件に自分が当てはまると分かった人は、その前提で連絡してきます。金額の話が商談の前に終わっています。

自分の位置が分かるので、話が早い

3枚目がいちばん損が少ない形です。②から③への差は、金額の桁ではなく幅と条件を添えたかどうかだけです。①を選ぶ場合も、金額の代わりに「決まり方」を書いておくと、空欄とは違う状態になります。

過去の実例を3つ出す

条件つきの数字より、もっと伝わるのが実例です。実際にお受けした案件を3つ、規模・内容・金額で並べてください。

  • 木造2階建て(延床30坪)/外壁と屋根の塗り替え/98万円
  • 鉄骨3階(延床60坪)/外壁のみ、足場を含む/142万円
  • 木造平屋(延床20坪)/屋根のみ/52万円

3つあると、読む人は自分がどの行に近いかを探します。1つだと基準にならず、5つを超えると読まれません。3つがちょうどいい数です。

社名は出さなくていい

実例を出すときに止まる理由は、だいたい「お客様の名前を出していいか」です。社名は出さなくて構いません。規模と内容と金額だけで、読む人の判断材料になります。

「兵庫県内/製造業/従業員25名」のように、属性だけを書けば十分です。許可を取って社名まで出せるなら、そのほうが強くはなりますが、許可待ちで公開が止まるほうが損です。実績の書き方そのものは 実績ページに何を書くと、次の依頼につながるか にまとめてあります。

下限だけ書くときの注意

「30万円から」のように下限だけ書くのは、いちばんよく見る形で、いちばん軋みます。

理由は単純です。「30万円から」だけだと、30万円で済むと思われます。そして実際の見積もりが70万円になったとき、相手の中では「2倍以上だった」という記憶になります。金額が高いのではなく、言っていたことと違うという受け取り方になるのが問題です。

対処は2つのどちらかです。

  • 上限も書く ― 「30万〜80万円」
  • よくある帯を書く ― 「30万円からお受けしています。実際にご依頼の多いのは50万〜60万円です」

後者のほうが使いやすいです。下限は残しつつ、実際に多い金額を正直に書く形になります。問い合わせの入口を広く保ったまま、期待のずれを防げます。

5. 高くなる条件と、安くなる条件を書く

ここがいちばん効きます。料金ページで足すものを1つだけ選ぶなら、これです。

高くなる条件

金額が上がる条件を、箇条書きで並べてください。

  • 3階以上で、足場の組み方が変わる場合
  • 既存の造作を撤去する必要がある場合
  • 繁忙期(3月・12月)のご依頼
  • 文章と写真を、こちらで用意する場合

読んだ人が、自分が当てはまるかどうかを自分で判断できます。当てはまる人は、高くなる前提で連絡してきます。この時点で、金額の話が商談の前に半分終わっています。

安くなる条件

同じ分量で、下がる条件も書いてください。ここを書かない会社が多いのですが、片方だけだと脅しに見えます。

  • 文章と写真を、貴社側でご用意いただける場合
  • 複数件をまとめてご依頼いただく場合
  • 工期に余裕がある場合(閑散期に回せる場合)
  • ページ数を減らせる場合

安くなる条件を書くと、読む人が自分で安くする方法を見つけます。「写真はうちで撮ります」と言って連絡してくる人が出てきます。これは、こちらが提案する前に合意ができている状態です。

書くと、問い合わせの中身が変わる

高くなる条件と安くなる条件を書くと、件数より先に中身が変わります。

  • 「3階建てなので高くなると思いますが」と前置きして連絡が来る
  • 「写真は自社で用意できます」と書いて連絡が来る
  • 条件が合わない人は、連絡してこない

3つ目が大事です。合わない人が来なくなるのは、損ではありません。こちらの時間が空きます。問い合わせの件数を目標にすると見落としますが、見るべきは商談になった件数です。アクセスは増えたのに、問い合わせが増えない と同じ構造で、数字の置き方を間違えると判断を誤ります。

6. 安い客しか来ない問題は、断る条件で解く

第2章で残した話に戻ります。料金を公開すると安い客が来る、という問題です。

断る条件を、先に書く

解き方は、料金を隠すことではありません。お受けできない条件を書くことです。

  • 「最低のご依頼額は〇万円です。それ以下のご依頼はお受けしていません」
  • 「〇〇市から車で1時間以内のエリアに限らせていただいています」
  • 「最低契約期間は6ヶ月です」
  • 「お見積もりの金額のみで比較されるご依頼には、お力になれないことがあります」

これを書くと、条件に合わない人は連絡してきません。料金を隠すより、こちらのほうが確実に効きます。金額を隠しても、その人は問い合わせをしてきて、商談の最後で合わないと分かるだけです。

雄喜晃も「最低契約期間6ヶ月」を公開しています。これを見て離れる方はいますが、離れてもらったほうがお互いに損がありません。6ヶ月払う前提がない方に、月額の形を勧めても合わないからです。

書き方の温度

断る条件は、書き方次第で印象がまったく変わります。拒絶ではなく、合う人を探している文章として書いてください。

「価格でお選びいただく場合は、より安くお受けしている会社があります。私たちがお役に立てるのは、公開したあとも一緒に直していきたいという会社です」

このくらいの温度が収まります。断る条件は、選ぶ基準でもあります。読んだ人は「この会社は何を大事にしているのか」を受け取ります。安く断るのではなく、合う人に向けて書く。これだけで、同じ内容が違って読まれます。

7. 置き場所と、書き換えの段取り

内容が決まったら、残りは置き場所と運用です。ここを決めておかないと、数字が古くなったまま残ります。

料金ページを別に作るか、サービスページに入れるか

目安はこうです。

  • 料金の形が1つ、または2つだけ ― サービスページの中に入れる。ページを分けると、わざわざ移動させることになります
  • 料金の形が3つ以上、または条件の説明が長い ― 料金ページを独立させる。「料金」でサイト内を探す人がいるので、ナビゲーションに置きます
  • どちらの場合も ― サービスページには必ず金額を1行書いて、詳細は料金ページへ送る

最後の1行が抜けている会社が多いです。サービスページだけを読んで帰る人がいます。その人の目に金額が1度も入らないのは損です。

月額制・サブスク型の料金の書き方

月額で受けている場合は、総額と期間を必ず併記してください。月額だけを書くと、安く見えすぎて、あとで齟齬が出ます。

  • 「月額8,800円(税別)、最低契約期間6ヶ月」
  • 「6ヶ月で52,800円(税別)。制作費は0円です」

月額は、読む人の頭の中で勝手に小さく見積もられます。12ヶ月、36ヶ月でいくらになるかまで書いてあるほうが、信頼されます。自社に不利に見えても、書いたほうが商談がもつれません。

月額と一括を同じ土俵で比べる考え方は ホームページの費用は、3年で並べないと判断できない に、3年と5年の総額で並べてあります。5年なら一括のほうが安くなるという、自社に不利な数字も含めて出しています。あわせて、月額制で何が回収の原資になっているかは 「制作費0円」のホームページは、どこで回収されているのか に書いてあります。

値上げしたときに直す場所

料金を公開すると、値上げのときに作業が発生します。ここで必ず取りこぼしが出ます。旧料金が残っているページを、全部探してください。

  • 料金ページ、サービスページ
  • トップページの料金に触れている箇所
  • よくある質問の回答の中
  • ブログや記事の本文の中(ここがいちばん残ります)
  • 公開しているPDF(会社案内、サービス資料、見積書のひな形)
  • チラシ、名刺の裏、封筒
  • 外部のポータルサイトや、紹介されているページ

PDFとチラシの中の文字は、サイト内検索では出てきません。画像に焼き込まれた文字も同じです。値上げのときは、紙とPDFを別のリストにして潰してください。

やり方は1つだけ決めておくと楽になります。料金を書いた場所を、1枚の表にして残す。書き換えのたびにその表を見れば済みます。社名や住所が変わったときの直し方と同じ考え方で、移転・社名変更・代表交代のときに、サイトで直すところ にも同じ落とし穴を書いてあります。

8. 雄喜晃の伴走:自社の料金を、全部公開しています

私たち雄喜晃は、自社の料金をサイトに全部出しています。月額8,800円(税別)、6ページ構成なら13,800円(税別)、制作費0円、最低契約期間6ヶ月。7〜35ヶ月で解約した場合はサイトを非公開にする、36ヶ月以上ご契約いただいた場合はサイトを譲渡するという条件まで書いています。

公開して何が起きたかもお伝えします。金額を見て離れる方はいます。ただ、連絡をいただいた方との商談で、金額の話から始まることがなくなりました。金額は読んだうえで連絡してきてくださるので、最初から中身の話ができます。商談の時間が短くなり、合わない案件に時間を使わなくなりました。

ですから、貴社の料金ページを作るときも、数字を決めるところから一緒に考えます。ただし、やらないことを書いておきます。私たちは、貴社の料金そのものを決める立場にはありません。価格は経営の判断なので、こちらが「この金額にしましょう」と決めることはしません。やるのは、決まった金額を読む人に伝わる形に組み直すことと、高くなる条件と安くなる条件を一緒に言葉にすることです。それから、他社の料金を調べて並べる調査だけの依頼も受けていません。調べた表だけが残っても、貴社の判断は変わらないからです。

「料金を出すべきか迷ったまま、何年も空欄になっている」という会社は、一度ご相談ください。実際にお作りしたサイトは 制作実績、私たち自身の料金と条件は ホームページ制作のページ にそのまま載せてあります。公開した側の実物を見ていただくのがいちばん早いと思います。

なお、料金を出すと問い合わせの件数が動きます。増えたあとに社内で何を決めておくかは 問い合わせが増えたあと、社内で何を決めておくか にまとめてあります。出す前に、返す体制のほうを先に見ておくと安心です。

9. まとめ:隠すか出すかではなく、条件を添える

ホームページに料金を載せるかどうかを決めるために必要なことは、3つです。

  • 条件つきの数字にする ― 「一般的なご依頼で□万〜□万円」。幅があっても、幅が分かれば判断できます
  • 高くなる条件と、安くなる条件を書く ― これがいちばん効きます。読む人が自分の位置を測れます
  • 安い客は、断る条件で止める ― 料金を隠しても止まりません。お受けできない条件を書くほうが確実です

この3つで、「載せないと減る、載せると安い客が来る」という二択から抜けられます。隠すか出すかではなく、どう添えるかの問題です。

今日できることを1つだけ挙げます。直近で受けた案件3件を、規模・内容・金額で紙に書き出してみてください。社名は要りません。その3行が、そのまま料金ページの中身になります。並べてみると、高くなった理由と安くなった理由も見えてきます。

ぜひ一度、お話を聞かせてください。貴社の数字を、どこまでどう書くかを決めるところからご一緒します。