1. 「同業がみんな書いているので、うちも」
中小企業の経営者の方とお話していて、こんな言葉をよく聞きます。
「同業のサイトを見ると、どこも『無料相談』『お見積もり無料』と大きく書いてあるんです。うちも見積もりでお金はもらっていないので、書いたほうがいいんでしょうか。ただ、書いたら冷やかしばかり来そうな気もしていて」
迷うのはもっともです。「無料」と書けば、連絡の敷居は下がります。お金がかかるかどうか分からない、という理由で手が止まっていた人が、連絡できるようになるからです。
一方で、「無料」の二文字は、思っているより大きな約束です。何が無料で、どこから費用がかかるのかが書かれていないと、読む人は「全部無料」と受け取ります。そのずれが、あとでもめごとや、仕事にならない相談の山になって返ってきます。
この記事で書くこと
- 起きること ― 「無料」と書くと、良い面と困る面の両方が出る
- 無料の範囲 ― 相談の回数、時間、現地調査、見積もりの作り直しをどう書くか
- 安心材料 ― 「しつこい営業はしません」は、実際にやっていることだけ書く
- 書かない選択 ― 無料と書かないほうが合う会社もある
- ボタンとの関係 ― ボタン、ページ、フォーム、返信の言葉を揃える
オンラインで相談を受ける場合の段取りは オンライン相談を、ホームページでどう受け付けるか に書きました。この記事は、受け方に関わらず「無料」という言葉をどう扱うかに絞ります。
2. 「無料」と書くと、何が起きるか
先に、書いたときに起きることを並べておきます。良いことだけでも、悪いことだけでもありません。
敷居が下がり、迷っている人が連絡できる
いちばんの効き目はこれです。問い合わせの前で手が止まる人の多くは、連絡しただけでお金がかかるのではないかと心配しています。「無料」と書いてあれば、その心配が1つ消えます。
特に、初めて頼む人ほど効きます。相場も流れも分からないので、どこで費用が発生するのか見当がつかないからです。
何が無料か分からないと、あとでもめる
困るのは、無料の範囲が書かれていないときです。たとえば、次のような食い違いが起きます。
- 現地調査 ― 「見積もり無料」と書いてあったのに、遠方の交通費を請求された
- 2回目の相談 ― 1回目は無料だったが、2回目から有料だと後で言われた
- 見積もりの作り直し ― 条件を変えて何度も出し直してもらったら、途中から費用がかかった
- 相談の中身 ― 無料のつもりで具体的な設計や書類の作成まで頼んでしまった
どれも、こちらからすれば当然の線引きです。ただ、書いていない線は、読む人には見えません。見えない線を後から示すと、相手には「話が違う」と映ります。
仕事にならない相談が増える
もう1つは、冷やかしや、相見積もりの数合わせのための相談が増えることです。無料なら、とりあえず聞いておこう、という人も連絡してきます。
これ自体は悪いことではありません。ただ、受ける側の時間には限りがあります。仕事につながらない相談に時間を取られて、本当に頼みたい人への返事が遅れるなら、本末転倒です。
「無料」は、何も書かないより約束が大きい
まとめると、「無料」と書くことは、敷居を下げる代わりに、範囲を説明する責任を負うということです。範囲を書けるなら、書いたほうが得をします。書けないなら、後の章で書く「書かない選択」も考えてみてください。
3. 何が無料で、どこから費用がかかるのかを書く
ここが本題です。「無料」と書くなら、その隣に範囲を書きます。範囲は、だいたい4つの線で決まります。
線は4つ:回数、時間、現地調査、作り直し
- 相談の回数 ― 何回目までが無料か。「初回のみ」なのか「ご依頼を決めるまで」なのか
- 相談の時間 ― 1回あたり何分までか。長くなったときにどうなるか
- 現地調査 ― 見に行くのは無料か。対応する地域の外はどうか。交通費や駐車場代は誰が持つか
- 見積もりの作り直し ― 何回まで出し直すか。図面や詳しい設計が要る段階からは有料か
全部を書く必要はありません。貴社の仕事で、実際にもめそうな線だけを選んでください。現地に行かない仕事なら、現地調査の線は要りません。
| 線を引く項目 | 書き方の例 | 書かないと起きること |
|---|---|---|
| 相談の回数 | たとえば「ご依頼を決めていただくまでのご相談は、何度でも無料です」または「初回のご相談は無料です」 | 2回目以降の扱いが分からず、後で有料と伝えると揉める |
| 相談の時間 | たとえば「1回60分までを目安にしています」 | 長時間の相談になり、ほかの方への返事が遅れる |
| 現地調査 | たとえば「〇〇市・△△市内の現地調査は無料です。それ以外の地域は、交通費を事前にお伝えします」 | 遠方の交通費が後出しの請求に見える |
| 見積もりの作り直し | たとえば「お見積もりの出し直しは2回まで無料です。図面の作成が必要な場合は、作業の前に費用をお伝えします」 | 条件違いの見積もりを何度も求められ、断りにくくなる |
数字は貴社の実際の受け方に合わせてください。大事なのは、有料になる場面があるなら、作業の前に金額を伝えると書いておくことです。それだけで「後から請求された」という受け取られ方を防げます。
無料の「中身」も一行添える
回数や時間に加えて、無料の中で何をするかを一行書いておくと、読む人の期待が揃います。
例:「無料のご相談では、お困りごとを伺い、進め方と費用の目安をお伝えします。具体的な設計や書類の作成は、ご依頼をいただいてからになります」
これがあると、無料の中で具体的な答えまで求められたときに、角を立てずに線を引けます。「そこから先はご依頼いただいてからになります」と、書いてあることをそのまま伝えればいいからです。
有料になる場面は、先に伝えると書く
無料の範囲を超えることは、実際には起きます。そのときの扱いを先に書いておきます。
- 先に伝える ― 「費用がかかる場合は、作業の前に金額をお伝えし、ご了承をいただいてから進めます」
- 依頼したら差し引くか ― 有料の調査や相談の費用を、正式なご依頼のときに差し引くなら、そう書く
- 断っても費用はかからない ― 見積もりのあとにお断りいただいても、費用はかからないと書く
3つ目は、読む人にとっていちばん大きな安心になります。見積もりを頼んだら断れなくなると思っている人は、少なくありません。
業種によって、「無料」にするものが違う
何を無料と書くかは、業種によって変わります。目安は、お客様が最初に踏み出す一歩が何かです。
- 工事・リフォーム ― 現地調査とお見積もり。交通費と、図面が要る段階の扱いを書く
- 士業・相談業 ― 初回の相談。時間と、書類の作成は含まないことを書く
- 教室・サロン ― 体験や見学。回数と、当日に費用がかかるもの(材料など)を書く
- 製造・加工 ― 図面を見ての概算。試作やサンプルが有料かどうかを書く
同じ「無料」でも、指しているものがまったく違います。「無料相談」とだけ書くより、「現地調査・お見積もりは無料」のように、無料のものの名前を書くほうが、読む人は迷いません。
4. 範囲は、どこに書くか
範囲を決めたら、置き場所です。1か所に書くだけでは読まれないことがあります。読む人の目に入る場所に、短く何度か書きます。
- ボタンのすぐ下 ― 一文だけ。「現地調査・お見積もりは無料です(〇〇市内)」
- 料金のページ ― 無料の範囲と、有料になる場面をまとめて書く
- よくある質問 ― 「相談だけでもいいですか」「見積もりのあと断れますか」に答える
- フォームの送信ボタンの近く ― 送る直前の不安に、もう一度答える
- 自動返信と、最初の返事 ― 「ご相談は無料です。費用がかかる場合は事前にお伝えします」と繰り返す
料金ページの組み立て方は ホームページに料金を載せるか、載せないか にまとめてあります。無料の範囲も、料金と同じページで読めるようにしておくと、読む人は1か所で判断できます。
初めて連絡する人向けに、流れと費用をまとめたページを作る方法もあります。何を書くかは 「初めての方へ」のページは、要るのか。要るなら何を書くか に書きました。
5. 「しつこい営業はしません」は、やっていることだけ書く
無料と並んでよく見るのが、「しつこい営業はいたしません」「無理な勧誘は一切ありません」といった一文です。これも効く言葉ですが、扱いには注意が要ります。
「しつこい」は、人によって違う
困るのは、「しつこい」の線が、読む人によって違うことです。こちらは1回のお電話のつもりでも、相手にはしつこく感じられるかもしれません。抽象的な約束は、受け取る側が自分の基準で読みます。
そこで、形容詞ではなく、実際にしていることを書きます。
- 連絡の手段 ― 「こちらからお電話することはありません。ご返信はメールでお送りします」
- 連絡の回数 ― 「お見積もりをお送りしたあと、こちらからのご連絡は一度だけにしています」
- 断り方 ― 「お断りの際は、メールで一言いただければ結構です。理由は伺いません」
どれも架空の例です。貴社が今、実際にやっていることだけを選んでください。
書いたら、全員が守る
この一文は、会社としての約束です。営業の担当者が別にいるなら、その人も同じ約束を知っている必要があります。書いてあることと違う対応が一度でもあると、サイト全体の言葉が信じられなくなります。
守れるかどうか分からないなら、書かないほうがましです。書かずにおいて、実際の対応で信用を積むほうが、ずっと傷が浅く済みます。
「相談だけでも構いません」も、約束になる
「ご相談だけでも構いません」「まだ決まっていなくても大丈夫です」という一文も、よく効きます。これも約束です。相談だけで終わった方に、あとから契約を急かす連絡をしないところまで含めて、守れるかどうかを確かめてから書いてください。
安心材料を、盛らない
「完全無料」「一切費用はかかりません」「どんなご相談でも」のように、言葉を強くしたくなることがあります。強い言葉ほど、例外が一つあったときに嘘になります。遠方の交通費が1回でも発生するなら、「一切」は書けません。言葉は、いちばん例外の多い月でも守れる強さにしてください。
6. 「無料」と書かない、という選択
ここまで書き方を並べてきましたが、「無料」と書かないほうが合う会社もあります。同業が書いているから、という理由だけで決めなくて構いません。
書かないほうが合う場合
- 相談そのものが仕事の価値になっている ― 話を聞いて方向を示すこと自体が商品なら、無料と書くとその価値が見えにくくなる
- 現地調査に手間や費用がかかる ― 無料にすると、調査だけで終わる依頼が増えて回らなくなる
- すでに仕事にならない相談が多い ― 件数より、合う方からの連絡を増やしたい
- 価格で選ぶお客様を増やしたくない ― 「無料」の言葉は、安さを探している人の目にも留まりやすい
初めての方や、迷っている方が連絡しやすくなります。そのぶん、無料の範囲を隣に書く手間がかかります。範囲を書けるなら、いちばん敷居の低い形です。
売り文句にせず、説明として置きます。費用の心配は解けますが、無料を探している人の目には留まりにくくなります。
相談そのものが価値になる仕事に向きます。件数は減りやすいので、金額と、依頼したときの扱いをはっきり書くことが条件です。
どれが正しいということはありません。費用について何も書かない、という4つ目の形だけは避けてください。貴社の仕事と、増やしたいお客様に合わせて選びます。例の金額や時間は架空です。
書かない代わりに、事実を小さく書く
無料と大きく書かないことと、費用について何も書かないことは違います。何も書かないと、読む人は「お金がかかるかもしれない」と考えて止まります。
そこで、事実だけを、目立たせずに書いておきます。
例:「お問い合わせへのご返信や、お見積もりの作成に費用はかかりません。現地での詳しい調査が必要な場合は、作業の前に費用をお伝えします」
売り文句ではなく、説明として置く形です。ボタンを「無料相談」にしなくても、ボタンの下や料金のページにこの一文があれば、費用の心配は解けます。
有料にするなら、料金と決まりを書く
相談を有料にする場合は、何分でいくらか、いつ払うか、正式に依頼したら差し引くかを書いておきます。有料と書いてあるほうが、相談に来る人の本気度は揃いやすくなります。そのぶん、金額が分かることがいっそう大事になります。
7. ボタンの文言と、表示のルール
最後に、ボタンの言葉との関係と、表示のルールについて書きます。
ボタンに「無料」を入れるなら、押した先と一致させる
「無料で見積もりを頼む」というボタンは、押されやすい言葉の1つです。ただし、押した先と約束が一致していることが前提になります。
- ボタンが「無料見積もり」なのに、押した先のフォームに「現地調査費がかかります」と小さく書いてある
- ボタンが「無料相談」なのに、返事の文面で「まずは有料の診断から」と案内される
どちらも、読む人には約束違反に見えます。ボタン、ボタンの下の一文、フォーム、自動返信、最初の返事を、同じ言葉でつないでください。ボタンの言葉の決め方は 「お問い合わせはこちら」のボタンを、何と書き、どこに置くか に、見積もりのフォームで何を聞くかは 見積もり依頼のフォームは、何をどこまで聞けばいいか にまとめました。
表示のルールは、一般論として押さえておく
「無料」のように、お客様にとって有利に見える言葉は、表示のルールにも関わります。たとえば、無料と大きく書きながら、実際には条件つきで費用がかかる場合、その条件の示し方によっては、景品表示法などの表示に関するルール上の問題になることがあると言われています。
どこまでが問題になるかは、業種や書き方によって違います。気になる表現があるときは、所管の窓口や専門家に確認してください。ここでお伝えできるのは、条件があるなら、無料の文字の近くに、読める大きさで書いておくという一般的な心がけまでです。
書いたあと、問い合わせの中身を見る
無料の範囲を書いたら、数ヶ月は問い合わせの中身を見てください。「相談だけ」の連絡がどれくらいあるか、範囲を超えた依頼でもめていないか。件数より、中身が変わったかどうかを見ます。
問い合わせは来るのに仕事につながらないときの切り分け方は 問い合わせは来るのに、仕事につながらない に書きました。無料の範囲を変えたときは、ボタンの下、料金のページ、よくある質問、自動返信のすべてを同じ日に直してください。
8. 雄喜晃の伴走:「無料」と書くかどうかは、受け方を伺ってから決めます
私たち雄喜晃は、ホームページに「無料」の文字を入れるかどうかを、先に決めてかかることはしません。貴社が実際にどう相談や見積もりを受けているかを伺ってから、書くかどうか、書くならどこまでを書くかを一緒に決めます。
私たちがやること
相談の回数や時間、現地調査に行く範囲、見積もりの出し直しの扱い、有料になる場面を伺います。そのうえで、ボタンの言葉、ボタンの下の一文、料金のページ、よくある質問、フォームの送信前の一文、送信完了の画面の文面までを、同じ言葉でつながる形に組み立てます。
公開したあとに無料の範囲を変えたときは、ご連絡いただければ、関わるページをまとめて書き換えます。
料金と条件
私たち自身の料金も、無料の部分とそうでない部分を分けて書いています。無料なのは制作費で、0円です。そのうえで月額8,800円(税別)、6ページ構成のプランは月額13,800円(税別)がかかります。サーバー、独自ドメイン、SSL、保守は月額に含まれ、月5回までの更新代行も同じ月額の中です。
最低契約期間は6ヶ月です。7〜35ヶ月で解約された場合、サイトは非公開になります。36ヶ月以上ご継続いただいた場合は、サイトをお渡しします。
私たちがやらないこと
貴社が実際にはしていない安心材料を、文面に書き足すことはしません。「しつこい営業はしません」「一切費用はかかりません」のような言葉も、実際の受け方と合っている場合にだけ使います。
無料にするか有料にするか、範囲をどこまでにするかは、経営の判断なので貴社に決めていただきます。また、表示が法律の上で問題ないかを判断することはできません。気になる表現は、専門家に確認していただくようお願いしています。「無料」と書いたことで問い合わせが増えるとお約束することもいたしません。
実際にお作りしたサイトは 制作実績、料金と条件は ホームページ制作のページ に載せてあります。神戸市北区鈴蘭台を拠点に、2025年10月から活動しています。
「無料と書くべきか、書くならどこまで書けばいいか決めきれない」という方は、一度ご相談ください。
9. まとめ:無料と書くなら、範囲まで書く
ホームページに「無料相談」「無料見積もり」と書くかどうかで押さえることは、5つです。
- 「無料」は大きな約束 ― 敷居は下がるが、範囲を書かないと「全部無料」と受け取られる
- 線は4つ ― 相談の回数、時間、現地調査、見積もりの作り直し。もめそうな線だけ書く
- 有料になる場面は、作業の前に伝えると書く ― 断っても費用はかからないことも添える
- 安心材料は、やっていることだけ ― 形容詞ではなく、連絡の手段や回数で書く
- 書かない選択もある ― その場合も、費用がかからない範囲は事実として小さく書く
「無料」の二文字を入れるかどうかより、何が無料で、どこから費用がかかるのかが読めることのほうが大事です。そこが読めれば、無料と書いても書かなくても、読む人は安心して連絡できます。
まずは、この1年で「話が違う」と言われかけた場面を思い出してみてください。そこが、書いておくべき線です。