1. 「作品の写真は、きれいに載せているんですけどね」
設計事務所の方とお話していて、こんな言葉をよく聞きます。
「竣工写真はプロに近い出来で載せているんです。見た人からは『素敵ですね』と言われる。でも、そこから相談につながらない。うちに頼むと何が違うのか、伝わっていない気がするんです」
設計事務所のサイトは、写真がとてもきれいです。それでも相談が来ないのは、写真が答えていない質問が残っているからです。初めて家を建てる人や、初めて店を出す人にとって、設計事務所はそもそも「何をしてくれるところか」が分かりにくい存在です。写真が美しいほど、「うちの予算では無理そう」「敷居が高そう」と感じて閉じる人もいます。
工務店の記事とは、別の話です
以前、業種別に載せるものを整理した記事(士業/工務店/飲食/運送)で、工務店のサイトについて書きました。そこでは、施工事例に金額を入れること、小さい工事も受けるかを書くこと、建設業の許可番号を載せることを挙げています。
設計事務所は、似ているようで立場が違います。施主と結ぶのは設計と監理の契約で、工事そのものは工務店と結ぶのが一般的な形です。施主から見ると、契約の相手が2つになります。ここが分からないまま、サイトを閉じる人が多いのです。この記事では、その立場の違いから来る「設計事務所ならではの載せるもの」を書きます。
この記事で書くこと
- 施主が設計事務所のサイトで確かめている4つのこと
- 作品を、敷地や予算の「条件」と、それへの「答え」で書く方法
- 設計料の考え方の示し方
- 相談から引き渡しまでの流れと、工務店との分担
- どこまで相談できるか、資格や登録をどう書くか
2. 施主が確かめているのは、4つのこと
設計事務所のサイトを見に来た人が、問い合わせの前に確かめていることは、だいたい4つに収まります。
- この人に頼むと、何が違うのか ― 工務店やハウスメーカーに直接頼む場合と比べて、何が変わるのか
- 費用は、どう考えればいいのか ― 設計料はいくらくらいで、工事費とは別にかかるのか
- 工務店とは、どういう関係なのか ― 工事は誰がして、何かあったら誰に言えばいいのか
- どこまで相談していいのか ― 土地が決まっていなくても、予算が少なくても、話を聞いてもらえるのか
作品の写真は、1つ目にしか答えていない
作品の写真は、1つ目の質問の半分に答えています。「こういうものを作る人だ」という雰囲気は伝わります。ただ、「自分の条件で頼んだら、どうなるのか」までは伝わりません。
残りの3つは、写真では答えられません。文章と流れの図で答えるしかない。ここが空いているサイトは、比べる段階で後回しにされます。
初めての人ほど、聞く前に調べている
設計事務所に相談する人の多くは、家を建てるのも、店を出すのも初めてです。何を聞けばいいのかも分からないので、聞く前にできるだけ調べようとします。
「設計料って何に払うお金ですか」「工務店は自分で探すんですか」。相談の場でなら、毎回答えている質問のはずです。毎回答えていることを、先にサイトに書いておく。それだけで、相談の入口がかなり広がります。
3. 作品は「条件」と「答え」で書く
ここがこの記事でいちばん大事なところです。作品のページに、写真と一緒にその仕事の条件と、それにどう答えたかを書いてください。
写真だけだと、「うちとは違う」で終わる
広い敷地に建つ、開放的な家の写真。読む人は「素敵だな」と思うと同時に、「うちの土地は狭いし、予算も違う」と考えます。条件が書かれていない作品は、読む人が自分の条件と重ねられません。
逆に、「間口が狭く、奥に長い敷地」「隣家が迫っていて、南に窓が取れない」「予算に上限があり、面積を削る必要があった」と書いてあれば、似た条件の人は「この人なら、うちの土地でも考えてくれそうだ」と受け取ります。
1件に書く項目を、決めておく
項目を決めておくと、書くのが楽になります。たとえば次の5つです。
- 敷地と建物の条件 ― 敷地の広さや形、周りの建物、道路との関係。住宅なら延床面積の目安と階数
- 施主の要望 ― 家族構成や暮らし方、店なら業態と席数。最初にどんな話があったか
- 予算の幅 ― 金額を出せるなら幅で。出せない場合は「予算に上限があった」「ローコストを優先した」のような書き方でも構いません
- 難しかった点 ― 条件と要望が、どこでぶつかったか
- どう答えたか ― 間取り、窓の位置、素材、工事の順番。設計として何を選んだか
| 項目 | 写真だけの紹介 | 条件と答えで書いた紹介 |
|---|---|---|
| 敷地と建物 | 明るいリビングの写真と「〇〇の家」という名前だけ | たとえば「間口が狭く奥に長い敷地。両隣の建物が近く、南側に大きな窓が取れない」 |
| 施主の要望 | 書かれていない | たとえば「共働きのご夫婦と小学生2人。家族が集まる場所を明るくしたい」 |
| 予算 | 書かれていない | たとえば「総工事費の上限が決まっていたため、面積を抑えることを優先」 |
| どう答えたか | 「光と風を感じる住まい」という一文 | たとえば「2階に居間を置き、天窓と吹き抜けで光を下の階へ落とした。廊下をなくして面積を抑えた」 |
右の列は、読む人が自分の条件と重ねて読める書き方です。写真はそのままで構いません。写真の下に、条件と答えを数行足すだけで、作品が「うちの場合」の材料になります。中身は貴社の実際の仕事で書いてください。
写真は、竣工写真だけにしない
竣工写真は、いちばんきれいな瞬間です。それとは別に、考えた跡が見える写真を1〜2枚添えると、設計事務所らしさが伝わります。
- 手描きのスケッチや、打ち合わせで使った模型
- 図面の一部(間取りが特定されて困らない範囲で)
- 着工前の敷地の様子
- 工事中の、構造や下地が見える段階
こうした写真は、「この人は、どう考えて形にするのか」を見せてくれます。
施主の許可と、住まいが分かる情報
住宅の作品は、住んでいる方がいます。載せる前に、何をどこまで載せてよいかを施主の方と確かめてください。外観の写真や地名から、家の場所が分かってしまうことがあります。所在地は市区町村までにとどめる、表札や車のナンバーが写っていないか確かめる、室内の私物が写り込んでいないか見る。このあたりは、事務所の中で決まりにしておくと迷いません。
1件の書き方の型と、掲載の許可の取り方は 実績ページに何を書くと、次の依頼につながるか に詳しく書きました。設計事務所の場合は、その型に「条件」と「答え」を足すと考えてください。
4. 設計料の考え方を、どう示すか
いちばん空いていることが多く、施主がいちばん聞きにくいのがここです。
「何に払うお金か」から書く
設計料が分かりにくいのは、何に対して払うのかが見えないからです。工事費なら材料と手間だと想像がつきますが、設計料は形がありません。
まず、設計料に含まれる仕事を書いてください。たとえば、要望を聞いて間取りを考える、図面を描く、工務店から見積もりを取って中身を確かめる、工事が図面どおりに進んでいるかを現場で確かめる。こうした仕事を、施主の言葉で並べるだけで、「何に払うのか」が見えてきます。
金額の決まり方を書く
設計料の決め方は、事務所によって違います。工事費に対する割合で考える事務所もあれば、面積で考える事務所、仕事の量で積み上げる事務所もあります。どれが正しいということではありません。貴社がどの考え方で決めているかを書いてください。
書き方は、たとえばこういう形です。
「設計・監理料は、総工事費の〇%を目安にしています。ただし、工事費が小さい場合は最低〇〇万円からお受けしています(数字は架空の例です)」
数字は、貴社の実際の数字で書いてください。ポイントは、決まり方と、最低の金額と、例外が一緒に書いてあることです。これがあれば、読む人は自分の計画でだいたいいくらになるかを見当できます。
工事費とは別にかかるものを書く
施主がいちばん驚くのは、あとから「それは別です」と言われることです。設計料と工事費のほかに、別にかかる費用があるなら、先に書いておいてください。
- 地盤の調査や、敷地の測量
- 役所などへの申請にかかる手数料
- 家具やカーテン、照明器具、外構など、工事の範囲に入らないもの
- 遠方の現場に通うための交通費
どれが別になるかは、事務所や計画によって違います。「別になることがある」と書いておくだけでも、あとの説明が楽になります。
相談やプラン提案が、有料か無料か
もう1つ、書いておきたいのが最初の相談とプランの提案に、費用がかかるかどうかです。初回の相談は無料、プランの提案から有料、という事務所もあれば、提案までは無料という事務所もあります。
施主は「話を聞いたら、断れなくなるのでは」と心配しています。どこから費用が発生するか、その手前で止めたらどうなるかを書いておくと、相談のハードルが下がります。条件つきで料金を出す考え方は、ホームページに料金を載せるか、載せないか にまとめてあります。
5. 相談から引き渡しまでの流れを、施主の手間で書く
費用の次に分かりにくいのが、流れです。設計事務所に頼むと、何が、どの順番で、どれくらいの期間で進むのか。ここも図にすると伝わります。
段階ごとに「施主がすること」を書く
流れを書くときは、事務所がすることより、施主が何をするかを中心に書いてください。施主が知りたいのは、自分がいつ、何を決めて、いつお金を払うのかです。
たとえば、要望と予算の幅を伺い、敷地を一緒に見に行きます。施主がすることは、今の暮らしや困っていることを話すことです。
たとえば、間取りの案を見ていただき、進めると決まったら設計・監理の契約を結びます。
たとえば、素材や設備を一緒に決め、図面をもとに工務店から見積もりを取ります。金額の中身は事務所が確かめます。
たとえば、施主と工務店が工事の契約を結びます。工事中は、事務所が現場で図面どおりかを確かめます。
たとえば、完成の確認に立ち会い、鍵を受け取ります。住み始めてからの不具合の連絡先も、ここで決めておきます。
各段階の右側に、施主が気にしていることへの答えを置いています。期間の目安を書く場合は、貴社の過去の仕事から「相談から着工まで、住宅でおよそ〇ヶ月」のように、実際の数字で書いてください。
期間は、幅と理由で書く
期間も、施主が知りたいことの1つです。家を建てる人は引っ越しや入学から、店を出す人は開店の日から逆算しています。
正確な期間は言えなくても、過去の仕事の幅と、長くなる理由は書けます。「打ち合わせの回数で変わります」「申請に時間がかかる計画があります」。理由が書いてあれば、読む人は自分の計画に当てはめて考えられます。
店舗の場合は、開店日から書く
店舗の設計を受けている場合は、流れを別に書くと親切です。店舗の施主は、家賃が発生してから開店するまでの期間を気にしています。物件が決まる前から相談できるか、貸主との調整を手伝えるか、開店の何ヶ月前に相談すればいいか。住宅とは段落を分けて書いてください。
6. 工務店との分担を、はっきり書く
施主から見ると、設計事務所と工務店の関係は外から見えにくいものです。
工務店は、誰が選ぶのか
まず書いておきたいのは、工務店の選び方です。事務所によって、やり方が違います。
- 複数の工務店から見積もりを取って、施主と一緒に選ぶ
- よく組んでいる工務店に、まず見積もりを依頼する
- 施主が知っている工務店でも、相談に応じる
どれでも構いません。貴社がどうしているかを書いてあることが大事です。施主の中には「知り合いの工務店に頼みたいけれど、設計事務所に頼むと使えなくなるのでは」と心配している人がいます。
監理で何をするかを、施主の言葉で書く
「工事監理」という言葉は、施主にはほとんど通じません。何をするのかを、施主にとっての意味で書いてください。
「工事中は、図面どおりに進んでいるかを現場で確かめます。施主の方が現場に行けない間も、私たちが代わりに見て、写真でご報告します」
このくらいの書き方で十分です。設計事務所に頼む理由の1つが、工事を施主の側に立って見てくれる人がいることだとすれば、ここはもっと書かれていい部分です。
何かあったときの窓口を書く
工事中に気になることがあったとき、住み始めてから不具合が出たとき、施主は誰に連絡すればいいのか。窓口が決まっていないと、施主は工務店と事務所の間で迷います。
「工事中のご相談は、まず私たちにご連絡ください」「引き渡し後の不具合は、工務店と私たちの両方にお知らせください」。書き方は事務所ごとに違っていいので、どちらに言えばいいかを1行で書いておいてください。
設計と施工を両方する場合
設計と施工を一緒に請け負っている事務所もあります。その場合は、契約の相手が1つで済むことが分かりやすさになります。そのかわり、工事中の確認をどうしているかを書いておくと安心につながります。
7. どこまで相談できるか、資格と登録をどう書くか
最後の2つです。どちらも短く書けますが、空いていると問い合わせが止まります。
相談できる範囲を、具体的に並べる
「どこまで相談していいのか」は、施主が遠慮しているところです。相談できる段階と、受けている仕事の大きさを並べてください。
- 土地探しの段階から ― 土地が決まる前でも、候補地を一緒に見るか
- 中古住宅の改修 ― 新築だけでなく、今ある家を直す相談も受けるか
- 小さな仕事 ― 部屋1つの改修、店舗の内装だけ、家具だけ
- 予算が限られている場合 ― 優先順位を一緒に決めるところから相談できるか
- 受けていない仕事 ― 大きな建物、遠方の現場など。受けないものも書いておく
受けていない仕事も書いておくと、合う人だけが連絡してくるようになります。サービスのページの組み立て方は サービス紹介のページは、どの順番で書けばいいか にまとめてあります。
資格と登録は、意味を一行添えて書く
設計事務所のサイトには、建築士の資格や、事務所としての登録を載せておきたいところです。誰がどの資格を持っていて、事務所はどこに登録しているか。施主にとっては、安心して任せられるかを確かめる材料になります。
書き方のコツは、名前と番号を並べるだけにしないことです。資格の名前は、施主には違いが分かりません。「どんな建物を設計できる資格か」を一行添えると、読む人に意味が伝わります。資格の載せ方全般は 資格・許認可・受賞歴を、ホームページにどう載せるか に書きました。
なお、建築士事務所の登録や、その表示のしかたには決まりがあります。何をどこにどう書くかは、所管の窓口や業界団体に確認してください。制度の中身は、この記事では書きません。
設計する人の、顔と考え方
設計事務所は、人で選ばれる仕事です。施主は、何度も打ち合わせを重ねる相手がどんな人かを知りたがっています。
代表や設計者の写真、経歴、なぜこの仕事をしているのか、設計で大事にしていること。とくに「大事にしていること」には、具体的な行動を添えてください。「暮らしに寄り添う設計」より、「最初の打ち合わせでは、今の家の困っているところを全部伺います」のほうが、どんな人かが伝わります。書き方は 代表挨拶のページに、何を書くか にまとめてあります。
8. 雄喜晃の伴走:作品を、条件と答えの形に整えます
私たち雄喜晃は、「原稿をご用意ください」とは申し上げません。設計事務所の場合は、作品1件ずつについて、敷地の条件、施主の要望、難しかった点、どう答えたかをお話で伺い、こちらで文章に整えます。設計料の考え方、相談から引き渡しまでの流れ、工務店との分担も、貴社の実際の進め方を伺ったうえで文章と図にします。
写真は、貴社で撮っていただいた竣工写真や、手元のスケッチ・模型の写真を整えて載せます。作品ごとに、どの写真をどの順で並べるかも一緒に考えます。
料金と、契約の条件
料金は制作費0円、月額8,800円(税別)からです。6ページ構成の場合は月額13,800円(税別)です。サーバー、独自ドメイン、SSL、保守は月額に含まれ、月5回までの更新代行も同じ月額の中です。新しい作品が竣工したときの追加も、ご連絡いただければこちらで反映します。
条件も先に書いておきます。最低契約期間は6ヶ月です。7〜35ヶ月で解約された場合、サイトは非公開になります。36ヶ月以上ご継続いただいた場合は、サイトをお渡しします。
私たちがやらないこと
貴社の設計料そのものを決めることはしません。料金は経営の判断なので、私たちがするのは、決まった考え方を施主に伝わる形に組み直すことです。
また、建築士事務所の登録や表示が決まりに合っているかの判断は、私たちはしません。そこは所管の窓口や業界団体で貴社に確認していただくようお願いしています。また、実際にない作品や、施主の声を作文して載せることもしません。
実際にお作りしたサイトは 制作実績、料金と条件は ホームページ制作のページ に載せてあります。神戸市北区鈴蘭台を拠点に、2025年10月6日に設立した会社です。
作品の写真は揃っているのに、相談につながっていないという方は、一度ご相談ください。
9. まとめ:写真の下に、条件と答えを足す
設計事務所のホームページで押さえることは、4つです。
- 作品は条件と答えで書く ― 敷地、要望、予算、難しかった点、どう答えたか。読む人が自分の条件と重ねられるように
- 設計料は、何に払うかと決まり方で書く ― 含まれる仕事、決まり方、最低の金額、別にかかるもの、どこから費用が発生するか
- 流れと分担を、施主の手間で書く ― いつ何を決めて、誰と契約して、何かあったら誰に言うか
- 相談できる範囲と、人を見せる ― 小さな仕事や予算が限られた相談を受けるか。資格と登録、設計する人の考え方
そして、事務所の登録や表示に関わるところは、所管の窓口や業界団体に確認してください。
まず、今日できること
サイトに載せている作品から1件を選んで、その仕事の条件を5行で書き出してみてください。敷地、要望、予算、難しかった点、どう答えたか。書き出した5行を写真の下に置くだけで、その作品は「素敵な家」から「うちの場合の材料」に変わります。
自社の作品や進め方を、施主に伝わる形にしたいという方は、一度ご相談ください。