1. 「自社製品を作ったので、会社のサイトに1ページ足せばいいですか」
下請けの仕事をしてきた町工場の経営者の方とお話していて、こんな言葉を聞くことがあります。
「うちの加工の技術を使って、自分たちの製品を作ってみたんです。会社のホームページに『新製品』のページを1つ足しておけば、それでいいですかね。今のサイトは、取引先の方に見てもらうために作ったものなんですが」
1ページ足すこと自体は、悪い始め方ではありません。ただ、その前に1つだけ確かめておくことがあります。製品を見に来る人は、今のサイトを見に来ている人と同じ人かということです。
たいていの場合、違います。下請けの仕事のページを見に来るのは、取引先の担当者や、外注先を探している会社の人です。製品を見に来るのは、買おうとしている個人や、店に置くかどうかを考えている人、記事にしようとしている記者です。知りたいことも、使う言葉も、まったく違います。
この記事の役割
下請けの仕事が中心の会社が、法人の取引先に向けて技術や設備をどう見せるかは、下請けの仕事が中心の会社に、ホームページは効くのか にまとめてあります。この記事は、その反対側です。下請けの町工場が自社製品を始めたとき、製品のためにサイトに何を置くかを書きます。製品は、消費者向けのものでも、法人向けのものでも構いません。
この記事で書くこと
- 下請けの仕事のページと、製品のページを分けるかどうか
- 製品が生まれた理由と、技術の背景の書き方
- どこで買えるか、いくらか
- 品質や素材を、言い切らずに事実で書く方法
- 取材や取扱店の募集の窓口と、下請けの取引先への配慮
2. 見に来る人が、まったく違う
先に、2つのページを見に来る人を並べておきます。違いが見えると、分けるかどうかの判断がしやすくなります。
| 比べること | 下請けの仕事のページ | 自社製品のページ |
|---|---|---|
| 見に来る人 | 取引先の担当者、外注先を探す会社の設計や購買の人 | 買おうとしている個人や会社、店に置くかを考える人、取材する人 |
| 探すときの言葉 | 加工の方法、材質、精度、対応できる大きさ | 製品の名前、用途、贈り物、困りごとの言葉 |
| 知りたいこと | 設備、品質の管理、納期、試作から量産までの流れ | 何に使えるか、どこで買えるか、いくらか、手入れの方法 |
| 問い合わせの中身 | 図面を添えた見積もりの依頼 | 購入、取扱のご相談、取材のご依頼 |
| 写真に求めるもの | 設備、加工の様子、部品の寄り | 使っている場面、手に持った大きさ、工場の中だけでは伝わらない暮らしの中の姿 |
2つのページで重なるのは、同じ工場で作っているという一点です。読む人も言葉も違うので、同じページの中で両方に話すと、どちらにも届きにくくなります。
同じページで話すと、両方に届きにくい
下請けの仕事のページに製品の紹介を混ぜると、取引先の担当者は「この会社は本業から離れていくのか」と感じるかもしれません。逆に、製品を見に来た人は、加工の精度や設備の一覧を読まされて、何の会社なのか分からなくなります。
同じ会社でも、話す相手が違えば、ページを分けたほうが伝わります。分け方には、いくつかの形があります。
3. ページを分けるか、サイトを分けるか
3つの形
- 同じサイトの中に、製品の入口を作る ― トップに「自社製品」の入口を置き、その先に製品のページをまとめる。始めたばかりで、製品が1〜2点のときに向いています
- 同じドメインの中に、製品のためのページ群を作る ― 製品ごとのページ、買える場所、よくある質問などをひとまとまりにし、見た目も製品に合わせる
- 製品のためのサイトを別に作る ― 製品の名前で探されるようになったとき、売り場を持つとき、会社とは別の印象で見せたいとき
どれを選ぶかは、製品が会社の名前で探されるか、製品の名前で探されるかで決めると分かりやすくなります。始めたばかりの製品は、まだ名前で探されません。会社のサイトの中に入口を作り、反応を見てから分けるほうが、手間も費用も少なく済みます。事業ごとにサイトを分けるか1つにまとめるかの考え方は、事業が増えたとき、ホームページを分けるか、1つにまとめるか に詳しく書きました。
どの形でも、行き来の道は残す
サイトを分けたとしても、製品のページから会社の情報へ、会社のページから製品への道は残しておいてください。
製品を見に来た人にとって、「どこの工場が作っているか」は信用の材料になります。会社の所在地や沿革が1クリックで見られるだけで、聞いたことのない製品でも安心して買えるようになります。取引先の担当者にとっても、自社製品があることは、技術を持っている会社だという裏付けになります。
トップでの知らせ方
製品を始めたことをトップで知らせるときは、「お知らせ」の1行だけで終わらせず、製品の入口を目に見える場所に置きます。ただ、トップの最初の画面を製品で埋めると、取引先の担当者が迷います。本業の説明は最初の画面に残し、その下に製品の入口を置くくらいがちょうどいいと思います。トップのどこに何を足すかは、新しいサービスを始めるとき、ホームページのどこに何を足すか にまとめてあります。
4. 製品が生まれた理由と、技術の背景
製品のページでいちばん読まれるのは、意外にも製品の説明そのものより、なぜ町工場がこれを作ったのかという話です。
きっかけを、事実で書く
製品が生まれたきっかけは、たいてい工場の中にあります。たとえば、加工で出る端材をどうにか使えないかと考えた。社内で使っていた道具を、取引先の人に欲しいと言われた。仕事が少ない時期に、自分たちの技術で何ができるかを試した。
こうしたきっかけを、脚色せずに、起きたとおりに書いてください。物語らしく整えようとすると、どこかで話が大きくなります。小さなきっかけでも、事実であれば読む人に届きます。
技術の背景は、使う人にとっての違いで書く
町工場の技術は、取引先に向けて書くと「公差」「加工の方法」「材質」の話になります。製品を買う人に向けては、その技術が、使う人にとって何を変えているかの言葉に直します。
- たとえば「部品の加工で使っている精度で作っているので、蓋がすっと閉まる」
- たとえば「取引先の部品と同じ材料を使っているので、屋外に置いても錆びにくい」
- たとえば「1点ずつ人の手で仕上げているので、縁の手ざわりがやわらかい」
上の例はすべて架空です。加工の工程を段に分けて見せる方法や、手元の写真の使い方は、職人の技術を、ホームページでどう伝えるか に書きました。製品のページでは、工程の説明を長くしすぎず、使う人にとっての違いを先に、工程はその裏付けとして後に置くと読みやすくなります。
作っている人の顔を出す
誰が作っているかが見えると、製品の印象が変わります。顔写真が難しければ、手元の写真と名前、担当している工程だけでも構いません。下請けの仕事では表に出ることのなかった職人の方が、製品の作り手として名前を出せることは、社内の励みにもなります。載せる前に、本人の了解を取ってください。
5. どこで買えるか、いくらか
製品を見に来た人が、次に探すのはどこで買えるかです。ここが書いていないと、気に入ってもらえても買われません。
売り場は、3つの形がある
- 自社で売る ― サイトから注文を受ける、工場で直接売る、電話やメールで受ける
- 取扱店で売る ― 店や、ほかの会社のネットの売り場に置いてもらう
- 両方 ― 自社でも売り、取扱店にも置く
自社で売る場合は、注文を受けてから発送するまでの手間が増えます。在庫の管理、梱包、発送、問い合わせ、返品への対応。売れるかどうかの前に、増える手間を誰が引き受けるかを決めてください。サイトに売り場を付けるかどうかの判断は、ホームページに、ネットショップを付けるかどうか にまとめてあります。通信販売をする場合は、表示しなければならない事項があります。業種や売り方によって違うので、所管の窓口や専門家に確認してください。
取扱店の一覧を載せるとき
取扱店で買えるなら、店の名前と地域の一覧を載せます。載せる前に、店の了解を取ってください。取扱が終わった店が残っていると、そこへ足を運んだ人が困ります。一覧には更新した日を添え、半年に一度は見直します。
店によって置いている製品が違うなら、そのことも書いておきます。「店によってお取り扱いの製品が異なります。お出かけの前に、各店にお問い合わせください」。この一行で、行ったのに無かった、という行き違いが減ります。
価格の書き方
製品の価格は、載せてください。価格が分からない製品は、比べる候補に入りません。
- 消費者向けの製品 ― 税込の価格で書きます。送料がかかるなら、送料の決まりも近くに
- 法人向けの製品 ― 1個あたりの価格と、数量で変わる場合の決まりを書きます。見積もりで出す場合は、見積もりに要る情報を
- 取扱店で価格が違う場合 ― 自社で売る価格を書き、「取扱店での価格は、各店にお問い合わせください」と添えます
価格の表示の仕方には決まりがあります。とくに、取扱店に価格を指定するような書き方は、取引の決まりの上で問題になる場合があると言われています。書き方に迷うときは、専門家に確認してください。
6. 品質や素材は、言い切らず事実で書く
自社製品を作ると、品質の良さを強く書きたくなります。長年の技術で作ったのだから、自信があるのは当然です。ただ、強い言葉ほど、読む人には届きにくくなります。
言い切る言葉が、信用されにくい理由
「最高品質」「一生使える」「日本一の精度」。こうした言葉は、読む人が確かめられません。確かめられない言葉は、どの製品にも書いてあるので、読み飛ばされます。
もう1つ、言い切る言葉には根拠が求められます。根拠を示せない最上級の言葉や、効き目をうたう言葉は、表示の決まりの上で問題になることがあります。食品や化粧品、体に触れる道具、子ども向けの製品などは、とくに決まりが細かい分野です。品目によって違うので、所管の窓口や専門家に確認してください。
事実に置き換える
言い切る代わりに、読む人が自分で確かめられる事実を書きます。
| 言い切りがちな書き方 | 事実に直した書き方 | 直した理由 |
|---|---|---|
| 最高品質の素材 | たとえば「本体はステンレス、取っ手は国産の木材。どちらも取引先の部品に使っているものと同じ材料です」 | 何でできているかが分かると、読む人が自分で比べられる |
| 一生使える丈夫さ | たとえば「部品の交換で修理できるつくりです。交換の部品は、工場でお受けします」 | 年数は約束できない。直して使える仕組みなら書ける |
| 職人の精密な技術 | たとえば「仕上げは1点ずつ手で行い、出荷の前に全数の寸法を測っています」 | 何をしているかを行動で示すと、読む人が場面を思い浮かべられる |
| 安心・安全 | たとえば「試験をした場合は、その条件と結果。試験をしていない場合は、使い方の注意を具体的に」 | 何をもって安全と言っているかが分からない言葉は使わない |
| 環境にやさしい | たとえば「加工で出た端材を使って作っています」 | 範囲の広い言葉より、やったことを書く |
真ん中の列は、どれも形容詞ではなく、素材・仕組み・行動・条件で書いています。中身は、貴社の製品の事実で書いてください。試験や認証は、実際に受けたものだけを、受けた条件と一緒に載せます。
寸法、重さ、手入れ、保証
事実として書けるものは、ほかにもあります。
- 寸法と重さ ― 箱の大きさではなく、製品そのものの大きさ。手に持った写真があると伝わります
- 手入れの方法 ― 洗えるか、使ってはいけない洗剤、しまい方
- 保証と修理 ― 何が保証の範囲で、どこまでなら直せるか、修理の受け付け方
- 作れる数 ― 1点ずつ作っているなら、注文から届くまでの目安と、品切れになることがあるかどうか
町工場の製品は、直せることそのものが強みになることがあります。作った工場が修理も受けられるなら、それを書いてください。
7. 取材や取扱店の窓口と、下請けの取引先への配慮
問い合わせの窓口を、目的で分ける
製品を始めると、下請けの仕事とは違う問い合わせが来るようになります。購入、取扱のご相談、取材のご依頼の3つです。今の問い合わせフォームに全部が入ってくると、見積もりの依頼と混ざって返事が遅れます。
- 購入のお問い合わせ ― 在庫、届くまでの日数、贈り物の包装など
- 取扱のご相談 ― 店や会社が置くかどうかを考えるための問い合わせ。卸の価格、最低の数量、資料の送り方を書いておきます
- 取材のご依頼 ― 連絡先と、製品の写真を貸し出せるかどうか。工場の中を撮影してよい範囲も、決めておくと返事が早くなります
取扱店を募集するなら、どんな店に置いてほしいかも書いておきます。置いてほしくない売り方があるなら、それも。取材を受けて記事になったあとの載せ方は、新聞やテレビに取り上げられたら、ホームページにどう載せるか に書きました。
下請けの取引先への配慮
ここは、町工場ならではの話です。自社製品を始めることを、取引先がどう受け取るかを先に考えておいてください。
- 取引先の製品とぶつからないか ― 同じ分野の製品を作ると、取引先から見て競合になることがあります
- 取引先の図面や技術を使っていないか ― 取引の中で預かった図面や、取引先と一緒に作った技術は、取引先のものである場合があります。契約の中身を確かめ、迷うときは専門家に相談してください
- 取引先の名前を、製品の宣伝に使わない ― 「〇〇社の部品を作っている工場」と書くには、相手の了解が要ります
- 本業への影響を心配させない ― 製品は別の担当や別の時間で作っている、本業の納期は変えない、といった事実があれば、下請けの仕事のページに一言書いておきます
取材を受けるときも、同じです。記事の中で取引先の名前が出ないように、取材の前に伝えておきます。大事な取引先には、サイトに載せる前に、製品を始めたことを直接伝えておくと、あとで驚かせずに済みます。
8. 雄喜晃の伴走:製品の入口を、本業のページと分けて作ります
私たちがやること
私たち雄喜晃は、自社製品を始めた町工場のサイトを作るとき、製品を見に来る人と、本業を見に来る人を分けて考えるところから始めます。
- 入口の形を決める ― 会社のサイトの中に製品の入口を作るか、製品のページ群にするかを、製品の数と売り方を伺って一緒に決めます
- 製品の話を伺って文章にする ― 製品が生まれたきっかけ、技術の背景、素材や手入れの事実を伺い、言い切らない言葉で書き起こします
- 窓口を分ける ― 購入、取扱のご相談、取材のご依頼を、本業の見積もりの依頼と混ざらない形に整えます
- 写真を整えて載せる ― 製品や工場の写真は、貴社で撮っていただいたものをお預かりして、明るさや向きを整えて載せます
月5回までの更新代行が月額に含まれているので、取扱店が増えたとき、価格が変わったとき、新しい製品が加わったときも、ご連絡いただければこちらで反映します。
料金と条件
料金は制作費0円、月額8,800円(税別)からです。6ページ構成のプランは月額13,800円(税別)です。サーバー、独自ドメイン、SSL、保守はすべて月額に含まれます。
最低契約期間は6ヶ月です。7〜35ヶ月で解約された場合、サイトは非公開になります。36ヶ月以上ご継続いただいた場合は、サイトをお渡しします。
私たちがやらないこと
- 撮影はお受けしていません。写真は、貴社で撮っていただいたものを整えて載せるところまでです
- 品質や効き目を、根拠なく大きく書くことはしません。素材や試験の内容は、貴社で確かめていただいた事実だけを載せます
- 表示の決まりや、取引先との契約の判断はしません。迷うところは、専門家に確かめていただきます
- 売上や検索の順位、問い合わせの件数をお約束することもしません
実際にお作りしたサイトは 制作実績、料金と条件は ホームページ制作のページ に載せてあります。2025年10月に設立し、神戸市北区鈴蘭台を拠点にしています。
「自社製品を作ったけれど、今のサイトにどう載せればいいか分からない」という町工場の方は、一度ご相談ください。
9. まとめ:同じ工場の、別の入口として作る
自社製品を始めた町工場のサイトで押さえることは、5つです。
- 見に来る人が違うことを前提にする ― 下請けの仕事のページと、製品のページは分ける。どの形でも、会社と製品の間の行き来は残す
- 製品が生まれた理由を、事実で書く ― 技術の背景は、使う人にとっての違いの言葉に直す
- どこで買えるかと価格を書く ― 自社で売るか、取扱店か。取扱店の一覧は了解を取り、更新日を添える
- 品質や素材は、言い切らず事実で ― 素材、仕組み、行動、条件で書く。表示の決まりは所管の窓口や専門家に
- 窓口を目的で分け、取引先に配慮する ― 購入・取扱・取材の窓口を分け、取引先の名前や技術の扱いを先に確かめる
自社製品は、町工場の技術を、取引先の外にいる人に見てもらえる数少ない機会です。本業の信用を守りながら、製品の入口を別に作る。それがサイトでできることです。
まず、今日できること
製品について、これまでに受けた問い合わせや、見本を見せたときに聞かれたことを書き出してみてください。どこで買えるか、いくらか、何でできているか、手入れはどうするか。その答えが今のサイトのどこにあるかを探すと、足すべきページが見えてきます。
自社製品の載せ方で手が止まっている方は、一度ご相談ください。