1. 新しい事業を始めたら、サイトはどうするか
中小企業の経営者の方とお話していて、こんな言葉をよく聞きます。
「本業は工事なんですが、去年から別の事業も始めまして。今のホームページに載せるべきか、新しく別のサイトを作るべきか、ずっと決められないんです。分けたほうが格好はいい気がするんですけど、費用も倍になるでしょうし」
事業を広げている会社ほど、この迷いにぶつかります。そして、答えが出ないまま、本業のサイトの片隅に新しい事業の紹介が1行だけ載っている、という状態が続きがちです。
商品が多いのとは、別の話
似た相談に「扱う商品が多くて、どう載せればいいか分からない」というものがあります。そちらは 扱う商品やサービスが多い会社の、載せ方 に書きました。あちらは、1つの事業の中で品目が多い場合の話です。
この記事で扱うのは、事業そのものが複数ある場合です。工事と飲食、法人向けの卸と個人向けの教室、といった形で、売っているものも相手も違う。この場合は、載せ方の前に「サイトを分けるかどうか」を決める必要があります。
この記事でお伝えすること
結論から書くと、分けるかどうかは、お客様が同じ人かどうかで決まります。この記事では、その判断の仕方と、まとめる場合と分ける場合それぞれの作り方、分ける前に試せること、ドメインの考え方、採用と事業を畳むときの扱いまでを順番に書きます。
2. 迷いが長引く理由
まず、なぜこの判断がなかなか決まらないのかを整理します。
見た目の話から入ってしまう
「事業ごとにサイトがあるほうが、ちゃんとした会社に見える」。この感覚は、よく分かります。大きな会社は、ブランドごとにサイトを持っています。
ただ、そのやり方は、それぞれのブランドに専任の担当者がいるから成り立っています。中小企業で同じ形を取ると、2つのサイトを同じ人が見ることになり、どちらも更新が止まります。見た目の立派さは、公開した日がいちばん高く、そこから下がっていきます。
社内の都合で決めてしまう
もう1つ多いのが、社内の組織に合わせて決めることです。
- 新しい事業の責任者が「自分の事業のサイトがほしい」と言っている
- 本業の取引先に、新しい事業を見られたくない
- 社内で部署が分かれているから、サイトも分ける
どれも理由としては分かります。ただ、どれもサイトを見る側の事情ではありません。サイトを使うのはお客様です。お客様から見て分かれているほうがいいのか、1つのほうがいいのか。そこから考えないと、作ったあとに噛み合わなくなります。
分けたあとの手間を見ていない
分けるかどうかを考えるとき、多くの方が制作の費用だけを比べます。けれども、実際に重いのは公開したあとの手間です。お知らせの更新、営業時間や電話番号の修正、解析の確認。サイトが2つになれば、これがすべて2回になります。
ここを見ずに分けると、1年後に片方だけが古いまま残ります。分けるかどうかは、作る日ではなく、2年目の手間で判断するほうが確実です。
3. 分けるかどうかは、お客様が同じ人かどうか
判断の基準は1つです。その2つの事業を使うのは、同じ人か、違う人か。
お客様が同じなら、1つにまとめる
同じ人が両方を使う、あるいは片方を使った人がもう片方も使いそうな場合は、1つのサイトにまとめるほうが向いています。
- 外壁の塗装と、屋根の修理 ― どちらも同じ家の持ち主が頼む
- 飲食店と、そのお店の焼き菓子の通販 ― 来店したお客様が、贈り物に買う
- 税務の相談と、会社設立の手続き ― 創業する人が、両方を必要とする
この場合、1つのサイトにあれば、片方を見に来た人に、もう片方を紹介できます。分けてしまうと、その紹介の機会がなくなります。お客様からすれば、同じ会社に2つのサイトがあること自体が、少し分かりにくくもあります。
お客様が違うなら、分ける
反対に、相手がまったく違う場合は、分けたほうが向いています。分かりやすいのは、法人向けの事業と個人向けの事業が同じ会社にある場合です。
たとえば、工場向けの部品加工と、個人向けの手作り教室を同じ会社がやっているとします。同じサイトにあると、工場の購買担当の方は教室の案内を見て「この会社は本業に集中しているのか」と感じるかもしれません。教室に来たい方は、トップに並ぶ設備や加工精度の話を見て、自分の来る場所ではないと感じるかもしれません。どちらの人も迷うのです。
言葉づかいも、写真の雰囲気も、問い合わせの方法も、2つの事業では違ってきます。1つのサイトで両方に合わせようとすると、どちらにも合わない中間のサイトになります。
どちらとも言えないとき
実際には、きれいに分かれない場合もあります。お客様は一部重なるけれど、主な相手は違う。そういうときは、それぞれの事業のお客様が、もう片方を知って得をするかどうかで考えてください。
得をするなら、まとめる側に寄せます。知っても関係がない、あるいは混ざると不安になるなら、分ける側に寄せます。それでも決まらない場合の考え方は、第7章に書きました。
| お客様の関係 | 1つにまとめる | 分ける | 向く例 |
|---|---|---|---|
| 同じ人が両方を使う | 向いています。片方を見に来た人に、もう片方を紹介できます | 向きません。紹介の機会が消え、更新の手間だけが2倍になります | 外壁塗装と屋根修理/飲食店と焼き菓子の通販 |
| 一部が重なる | まずはこちら。事業ごとのページを作り、入口を分けます | お客様の反応を見てから、あとで分けても間に合います | 税務相談と会社設立の手続き/リフォームと不動産仲介 |
| まったく違う人 | 向きません。言葉も写真も中間になり、どちらの人も迷います | 向いています。会社の信用はコーポレートサイトに、案内は事業サイトに置きます | 工場向けの部品加工と個人向けの教室/法人向けの卸と店舗の小売 |
表の向く例は、判断の目安として挙げたものです。迷ったら真ん中の行、つまり1つにまとめて事業ごとの入口を作る形から始めてください。あとから分けるほうが、あとからまとめるより手間が小さく済みます。
4. 1つにまとめるときの作り方
1つにまとめると決めた場合の作り方です。ポイントは、1つのサイトの中で、事業ごとの道を分けておくことです。
トップで事業を並べ、それぞれの入口を作る
トップページの上のほうで、事業を横に並べます。2つなら2つ、3つなら3つ。それぞれに一言の説明と、その事業のページへのリンクを付けます。
ここで大事なのは、並べる順番と大きさに意味を持たせることです。売上の大きい本業を先に置くのか、これから伸ばしたい事業を先に置くのか。決めるのは経営者です。全部を同じ大きさで並べると、読む人には何の会社なのかが伝わりにくくなります。
事業ごとのページを、1つのサイトのように作る
それぞれの事業のページは、そこだけで完結するように作ります。検索から来た人は、トップを通らずに事業のページへ直接着地するからです。
- その事業で何をしているか、誰向けか
- 料金の目安と、対応できる範囲
- その事業の実績や事例
- その事業専用の問い合わせの入口
このくらいが揃っていれば、事業のページが小さなサイトとして機能します。1つのサイトにまとめても、読む人は自分に関係のある事業だけを見て判断できます。
事業ごとに問い合わせ先を分ける
見落とされやすいのが、問い合わせの受け口です。フォームが1つしかなく、電話番号も1つだけだと、受けた側でまずどの事業の話かを確かめることになります。
フォームに「どの事業についてのお問い合わせか」を選ぶ欄を1つ設けるか、事業ごとにフォームを分けます。電話も、担当が違うなら番号を分けて書いておきます。受けた瞬間に担当へ渡せる形にしておくと、返信の速さが変わります。
会社の情報は、共通で1つにする
会社概要、代表のあいさつ、所在地、採用の情報。これらは事業ごとに作らず、1つにまとめます。事業ごとに会社概要があると、どれかを直し忘れたときに、同じ会社なのに情報が食い違うという状態が起きます。
5. 分けるときの作り方
お客様がまったく違うと判断して、分けると決めた場合です。このときは、2つのサイトにそれぞれ違う役割を持たせるのが基本になります。
コーポレートサイトは、会社の信用を伝える
会社そのもののサイト、いわゆるコーポレートサイトの役割は、会社として信用できるかを確かめてもらうことです。見に来るのは、取引を始める前の会社、金融機関、求職者、すでに取引のある会社の担当者です。
- 会社概要、沿革、代表のあいさつ
- 事業の一覧と、それぞれの事業サイトへのリンク
- 採用の情報
- 取引先向けのお知らせ
ここでは、細かいサービスの案内や料金は扱わなくても構いません。それは事業サイトの役割です。
事業サイトは、お客様に向けた案内に集中する
事業サイトは、その事業のお客様だけを見て作ります。言葉づかいも、写真も、問い合わせの方法も、その相手に合わせます。法人向けなら仕様や対応範囲を詳しく、個人向けなら料金や予約の方法を分かりやすく。相手が1種類に決まっているので、迷わずに作れます。
相互にリンクする
分けたサイトどうしは、必ず行き来できるようにしておきます。事業サイトのフッターには「運営会社」としてコーポレートサイトへのリンクを、コーポレートサイトには事業の一覧から各事業サイトへのリンクを置きます。
これがないと、事業サイトだけを見た人には、どんな会社がやっているのかが分かりません。運営会社が見えることは、それだけで安心材料になります。
分けたときの費用と手間
分けると、手間はほぼ2倍になります。
- ドメイン ― 別のドメインを取るなら、契約と更新が2つになります
- 更新 ― お知らせ、営業時間、電話番号の変更を、2か所で直すことになります
- 解析 ― アクセスや問い合わせの数字を、2つのサイトで別々に見ることになります
とくにドメインの更新は、片方だけ忘れるとそのサイトが止まります。契約をどこで誰の名義にするかは 独自ドメインとメールアドレスは、どこで何を契約すればいいか にまとめてあります。分けるなら、この手間を誰が持つのかまで先に決めてください。
6. 分ける前に試せることと、ドメインの考え方
分けるかどうか決めきれないときに、まず試せる形があります。
同じサイトの中に、事業ごとの場所を作る
いきなり別のサイトを作る前に、今のサイトの中に、事業ごとのまとまりを作る方法です。たとえば、会社のサイトのアドレスの後ろに事業名を付けた場所を用意し、その中に新しい事業のページをまとめます。この形は、サブディレクトリと呼ばれます。
これなら、ドメインは1つのまま、更新も解析も1か所で済みます。それでいて、読む人には事業ごとのまとまりとして見えます。半年ほどこの形で運用してみて、お客様が本当に別の人なのかを確かめる。そのうえで分けるかどうかを決めても、遅くはありません。
3つの形の違い
事業ごとの場所の作り方には、大きく3つの形があります。
- サブディレクトリ ― 会社のドメインの後ろに、事業名を付ける形。1つのサイトの一部として扱われます
- サブドメイン ― 会社のドメインの前に、事業名を付ける形。同じドメインの仲間ですが、別のサイトとして扱われることが多くなります
- 別ドメイン ― 事業ごとに、まったく別のドメインを取る形。完全に別のサイトになります
検索の面から見ると
検索の面では、一般に、サブディレクトリは会社のサイトがこれまで積み上げてきた評価を引き継ぎやすいと言われています。別ドメインは、まっさらなところから始めることになります。サブドメインは、その中間として扱われることが多いようです。
ただし、検索エンジンの扱いは公表されている部分が限られていて、時期によっても変わります。どの形が必ず有利、とは言い切れません。私たちは、検索の有利不利よりも、次に書く運用の面を重く見ることをおすすめしています。
運用の面から見ると
運用の面では、違いがはっきりしています。サブディレクトリは、管理する場所が1つで済みます。別ドメインは、契約も更新も解析もすべて別になります。サブドメインは、ドメインの契約は1つで済みますが、サイトとしては別に管理することが多くなります。
そして、もう1つ大事なのが、あとから形を変えるとアドレスが変わることです。アドレスが変わると、検索からの流入や、他のサイトから張られたリンク、名刺やチラシのQRコードが切れることがあります。何が失われるかは リニューアルでURLが変わるときに、失うもの に詳しく書きました。形を変えるなら、転送の設定までを一緒に計画してください。
7. 採用と、事業を畳むときのこと
最後に、決めるときに見落とされやすい2つの場面と、迷ったときの始め方です。
採用は、会社全体で1つにする
サイトを分けた場合でも、採用の情報は会社全体で1つにすることをおすすめします。事業ごとに採用ページを作ると、求職者はどちらを見ればいいのか迷います。同じ会社なのに、給与や休日の書き方が事業サイトごとに違っている、ということも起きます。
採用ページはコーポレートサイトに置き、事業サイトからは「採用情報」としてそこへリンクする形が収まります。採用のためのページに何を載せるかは 採用のためのホームページ ― 求人媒体との役割分担 に書きました。応募する人は、事業ではなく会社を見て判断しています。
事業を畳んだときのこと
もう1つ、作るときにはあまり考えないのが、事業をやめるときのことです。どの事業も続けるつもりで始めますが、実際には縮小したり、畳んだりすることがあります。
別のサイトにしていれば、畳むときはそのサイトを閉じるだけで済みます。コーポレートサイトから外せば、会社の他の部分には影響しません。
同じサイトの中にあると、少し手間がかかります。事業のページを消しても、トップのお知らせ、実績の一覧、よくある質問、問い合わせフォームの選択肢などに、その事業の残骸が残りやすいのです。畳んだあとも、その事業についての問い合わせが届き続ける、ということも起きます。同じサイトにまとめる場合は、事業ごとのページをまとまりで作っておくと、畳むときに消す範囲が分かりやすくなります。
迷ったら、1つにまとめて始める
ここまで読んでも決まらない場合は、1つにまとめて始めてください。理由は単純で、あとから分けるほうが、あとからまとめるより楽だからです。
1つのサイトの中で事業ごとのまとまりを作っておけば、分けるときはそのまとまりを外に出すだけです。逆に、2つのサイトをあとから1つにまとめると、デザインも書き方も揃っていないものを統合することになり、アドレスの転送も2つ分必要になります。
始める順番
- 最初の1か月 ― 2つの事業のお客様が、同じ人か違う人かを書き出す。迷うなら1つにまとめると決める
- 2〜3か月目 ― 今のサイトの中に、新しい事業のまとまりを作る。トップに入口を置き、問い合わせ先を分ける
- 半年後 ― 問い合わせの中身を見て、本当にお客様が別の人かを確かめる。別なら、そこで初めて分けることを考える
この順番なら、最初から大きな費用をかけずに、実際のお客様の反応を見て判断できます。
8. 雄喜晃の伴走:お客様が誰かを確かめるところから、ご一緒します
私たち雄喜晃のホームページ制作では、事業が複数ある会社のご相談もお受けしています。最初にやるのは、デザインでもページ構成でもなく、それぞれの事業のお客様が誰なのかを伺うことです。ここが決まれば、分けるかまとめるかは自然に決まります。
代表の木戸が、ヒアリングから制作、公開後の運用まで直接担当します。新しい事業のまとまりを今のサイトに足すこと、事業ごとの問い合わせの入口を分けること、運用の中で出てきた修正は、月5回までの更新代行として月額の中で対応しています。
料金と条件
- 制作費は0円、月額8,800円(税別)からです。6ページ構成のプランは月額13,800円(税別)です
- サーバー、ドメイン、SSL、保守は月額に含まれます
- 最低契約期間は6ヶ月です。7〜35ヶ月で解約された場合、サイトは非公開になります。36ヶ月以上ご継続いただいた場合は、サイトをお渡しします
月額制がどこで費用を回収しているのかは 「制作費0円」のホームページは、どこで回収されているのか に書いてあります。
私たちがやらないこと
はっきり書いておきます。お客様が同じなのに、サイトを分けることを私たちから勧めることはしません。サイトの数が増えれば契約も増えるので、制作する側には分けるほうを勧めたくなる構造があります。けれども、それで貴社の手間が2倍になるなら、四方良しの関係とは言えません。
もう1つ。新しい事業をどう名付けるか、どう位置づけるかを、私たちが決めることはしません。それは経営判断そのものです。私たちがするのは、判断のための材料を並べることと、決まったあとに形にして、運用の中で一緒に直していくことです。分析や提案だけで終わらせず、公開したあとも見続けます。
「新しい事業を始めたけれど、サイトをどうするか決められていない」という会社は、一度ご相談ください。今のサイトのままで構いませんので、それぞれの事業のお客様を書き出すところからご一緒します。実際にお作りしたサイトは 制作実績、料金と条件は ホームページ制作のページ に載せてあります。
9. まとめ:お客様が同じなら1つに、違うなら分ける
事業が増えたときに、サイトを分けるかまとめるかを決めるために押さえることは、次のとおりです。
- 基準は、お客様が同じ人かどうか ― 見た目や社内の都合ではなく、見る側の事情で決めます
- 同じなら1つにまとめる ― トップに事業を並べ、事業ごとのページと問い合わせ先を作ります
- 違うなら分ける ― コーポレートサイトで信用を、事業サイトで案内を。相互にリンクします
- 分ける前に、同じサイトの中で試す ― 事業ごとのまとまりを作り、半年ほど様子を見ます
- 採用は会社全体で1つ ― 応募する人は、事業ではなく会社を見ています
そして、分ければ手間は2倍になること。事業を畳むときのことまで考えておくこと。迷ったら1つにまとめて始めることです。あとから分けるほうが、あとからまとめるより、はるかに楽に済みます。
まずは今日、それぞれの事業のお客様を、紙に1行ずつ書いてみてください。同じ人が並ぶのか、まったく違う人が並ぶのか。それだけで、答えの半分は出ます。
ぜひ一度、お話を聞かせてください。事業が増えても迷わないサイトの形を、一緒に作っていきましょう。