1. 「せっかくなら、ネットでも買えるようにしたほうがいいですか」
中小企業の経営者の方とお話していて、こんな言葉をよく聞きます。
「ホームページを作り直すなら、ついでにネットでも買えるようにしたほうがいいんでしょうか。周りでも通販を始めたという話を聞くので、うちもやらないと置いていかれる気がして」
ホームページの相談をしていると、この質問は本当によく出ます。商品を作っている会社、店頭で物を売っている会社、部品や資材を扱っている会社。業種を問わず、付けられるなら付けたほうが得なのではと考えるのは自然です。
ただ、ネットショップは「付ければ売れる」ものではありません。そして、付けると毎日の仕事が増えます。在庫を合わせる、注文を確かめる、梱包して送る、届かないという問い合わせに答える。ホームページの一機能に見えて、実際には小さな売り場を1つ増やすのに近い話です。
この記事で書くこと
- 向き・不向き ― 付けて効く会社と、見積もりのほうが合う会社
- 増える手間 ― 在庫・発送・問い合わせを誰が持つか
- 付ける場所 ― 自社サイトに付けるか、既存のショップサービスに出すか
- 必要な表示 ― 通信販売をするときに載せるもの
- 小さく試す方法 ― 全部の商品を載せる前に、確かめること
2. 付けて効く会社と、見積もりのほうが合う会社
最初に、そもそも付けるべきかどうかを見ます。判断は、扱っているものの性質でほぼ決まります。
付けて効く会社の条件
ネットショップが効きやすいのは、次の条件がそろっている会社です。
- 値段が決まっている ― 商品ごとに価格が1つに決まり、お客様ごとに変わらない
- 規格がそろっている ― 色やサイズの選択肢が決まっていて、注文の時点で中身が確定する
- 送れる ― 大きさ、重さ、温度、壊れやすさの点で、普通の配送で届けられる
- 繰り返し買われる ― 消耗品や食品のように、一度買った人がまた買う
- 遠くから欲しい人が、すでにいる ― 「遠方なので送ってもらえませんか」という電話やメールが、今もときどき来ている
いちばん大事なのは最後の条件です。すでに「送ってほしい」と言われているなら、需要が見えている状態です。ネットショップは、その人たちの手間を減らす仕組みになります。逆に、そういう声が一度もないなら、ショップを付けても、そこに人が来る理由をこれから作ることになります。
問い合わせ・見積もりのほうが合う会社
反対に、次のような商売では、カートに入れて買ってもらう形が合いません。
- 現場を見ないと値段が出ない ― 工事、修理、設置が伴うもの
- 1件ごとに中身が違う ― 特注品、名入れ、加工の仕様が毎回変わるもの
- 相談しながら決める ― どれを選べばいいか、お客様が自分では決めにくいもの
- 会社同士の取引が中心 ― 見積書、請求書、締め日と支払日といった、取引の決まりで動いているもの
こうした商売で無理にショップを付けると、カートに入れられる形に合わせるために、商品の説明が実態から離れていきます。「〇〇円から」と載せた商品に、実際には条件で大きく違う金額の注文が入る。結局、注文のあとに電話で確かめることになり、手間が増えるだけです。
この場合に整えるべきなのは、ショップではなく、見積もりや相談の入口です。料金の目安の出し方は ホームページに料金を載せるか、載せないか に書きました。カートの代わりに、条件つきの料金と、見積もりを頼みやすいフォームを置くほうが、お互いに話が早くなります。
両方ある会社は、商品ごとに分ける
実際には、両方を扱っている会社も多くあります。たとえば、規格品の消耗品は値段が決まっているけれど、本体の設置は見積もりが要る、という形です。
この場合は、規格品だけをショップに載せ、それ以外は見積もりの入口に分けるのが素直です。全部をショップに載せようとしたり、全部を見積もりにしたりせず、商品ごとにどちらの形が合うかを決めます。
| 質問 | 「はい」なら | 「いいえ」なら |
|---|---|---|
| 値段は、注文の前に1つに決まるか | ショップ向き。たとえば瓶詰めの食品、規格の消耗品 | 見積もり向き。たとえば設置工事つきの設備 |
| 注文の時点で、中身が確定するか | ショップ向き。選ぶのが色とサイズだけ | 見積もり向き。たとえば名入れや寸法の指定が毎回違う |
| 普通の配送で送れるか | ショップ向き | 店頭での受け取りや、配達の相談の形が合う |
| 「送ってほしい」という声が、今すでにあるか | 需要が見えている。小さく始める価値がある | ショップを作っても、人を呼ぶところから始まる |
| 梱包と発送を誰がやるか、決まっているか | 始められる | 決まるまでは始めない |
5つのうち、最後の質問が「いいえ」なら、ほかが全部「はい」でも始めないほうが安全です。売れたあとに回らなくなるのが、いちばん信用を落とすからです。
3. 「売れるかどうか」の前に、増える手間を数える
ショップを付けるかどうかを考えるとき、多くの方は「売れるかどうか」から考えます。ただ、先に考えてほしいのは売れたときに何が起きるかです。注文が入ると、次の仕事が毎回発生します。
在庫を合わせる
店頭でも売っている商品をネットにも出すと、同じ在庫を2か所で売ることになります。店頭で最後の1つが売れたのに、ネットでは「在庫あり」のまま。そこに注文が入ると、お詫びの連絡をすることになります。
在庫の数を、誰が、いつ、どこで合わせるか。これを決めないまま始めると、売り越しが起きます。最初はネット用の在庫を、店頭とは分けて取り置いておくと、合わせる手間が減ります。
注文を確かめて、送る
注文が入ったら、内容を確かめ、支払いを確かめ、梱包して、発送の手配をして、お客様に発送の連絡をします。1件ごとに、これだけの作業があります。
見落としやすいのは、梱包の資材と置き場所です。箱、緩衝材、送り状。少量でも、置く場所と補充する人が要ります。そして、何日以内に発送するかをサイトに書いた以上、その日数を守る人が要ります。担当者が休みの日はどうするか、繁忙期に重なったらどうするかも、先に決めておきます。
問い合わせに答える
ネットで買ったお客様は、顔が見えないぶん、問い合わせが来ます。
- 届かない ― 発送したか、いつ届くか
- 違うものが届いた・壊れていた ― 交換か返金か
- 注文を変えたい・取り消したい ― どこまでなら受けるか
- 買う前の質問 ― サイズ、使い方、贈り物の包装
これらに、いつまでに、誰が答えるかを決めておく必要があります。問い合わせが増えたときの社内の決め方は 問い合わせが増えたあと、社内で何を決めておくか にまとめてあります。ショップの問い合わせも、考え方は同じです。
商品ページを作り、直し続ける
ショップの商品ページには、写真、説明、価格、送料、届くまでの日数が要ります。商品を足すたびに作り、値段が変わるたびに直します。店頭なら口で説明できることを、全部文字にする作業です。思ったより時間がかかります。
手間を、1件あたりの時間で考える
これらの手間は、1件あたりの時間で考えると判断しやすくなります。注文を受けてから送り終えるまでに、1件で何分かかるか。その時間を、1件あたりの利益と並べてみてください。売上だけを見て始めると、忙しくなったのに手元に残らないということが起きます。
4. 自社サイトに付けるか、既存のショップサービスに出すか
付けると決めたら、次は「どこに」です。大きく分けて3つの形があります。特定のサービスを勧めることはしませんが、形ごとの違いを並べます。
買う人がすでに集まっている場所なので、見つけてもらいやすい形です。その分、同じ商品を扱う店と並んで値段で比べられやすく、売り場の作りや決まりは、出店先に合わせることになります。
決済や在庫の仕組みは用意されていて、見せ方にもある程度の自由があります。人を呼ぶのは自社の仕事になるので、ホームページやSNSから案内します。
見た目も導線も自由になります。ただし、決済の安全、預かる個人情報の管理、仕組みの保守まで、自社側で背負う範囲が広がります。
中小企業が最初に試すなら、②で小さく開いて、ホームページからリンクする形がいちばん身軽です。①は、売れ筋がはっきりしていて、比べられても選ばれる理由がある商品で検討します。
ホームページと、ショップの役割を分ける
②や①の形を取る場合、ホームページとショップは別の場所になります。このとき、ホームページは会社と商品の話をする場所、ショップは買う場所と役割を分けます。
ホームページには、商品が生まれた経緯、作り方、使い方、会社のこと。ショップには、価格、在庫、送料、購入の手続き。ホームページで商品を知った人が迷わず買えるように、商品ごとにショップの該当ページへリンクします。トップページに「オンラインショップ」とだけ書いてショップの入口に飛ばすと、そこで商品を探し直させることになります。
選ぶときに比べること
どの形にするかは、次のことを並べて決めます。
- 費用の形 ― 月額の費用、売れるたびの手数料、決済の手数料。売れなくてもかかる費用と、売れたときだけかかる費用を分けて見る
- お客様の情報 ― 買ってくれた人に、あとで案内を送れるか。送れる範囲はどこまでか
- やめるとき ― 別の形に移るとき、商品データやお客様の情報を持ち出せるか
- 日々の手間 ― 商品の登録や在庫の更新を、社内の誰が、どの画面でやるか
最後の項目は、実際に担当する人に管理画面を触ってもらってから決めるのが、いちばん確かです。
5. 通信販売をするときに必要な表示
ネットで物を売ると、それは通信販売になります。通信販売をする事業者は、サイト上に一定の事項を表示することが求められる場合があります。ここでは一般的な話にとどめます。
「特定商取引法に基づく表記」
ネットショップのページの下のほうに、「特定商取引法に基づく表記」というリンクを見たことがあると思います。通信販売をするときに、事業者の情報や取引の条件を示すためのページです。
載せる内容としては、一般に次のようなものが挙げられます。
- 事業者の情報 ― 事業者名、住所、電話番号、責任者の名前など
- 価格と送料 ― 商品の価格、送料、そのほかにかかる費用
- 支払い ― 支払いの方法と時期
- 引き渡し ― 商品をいつ届けるか
- 返品・キャンセル ― 受けるかどうか、受けるならその条件
何をどこまで載せるかは、売るものや売り方によって変わります。業種によって違うので、所管の窓口や専門家に確認してください。ショップ作成サービスには表記のひな形が用意されていることもありますが、ひな形を埋めれば足りるかどうかも、自社の売り方に照らして確かめる必要があります。
住所と電話番号が載ることを、先に知っておく
表記には、事業者の住所や連絡先が含まれます。自宅で事業をしている方は、自宅の住所をサイトに載せることになるかもしれないということです。どう扱えるかは状況によって違うので、始める前に確認しておくと、あとで慌てずに済みます。
売るものによっては、別の決まりがある
食品、お酒、化粧品、中古品などは、通信販売の表示とは別に、許可や表示の決まりがある場合があります。店頭で売れているから、ネットでもそのまま売れるとは限りません。売るものごとに、所管の窓口で確かめてから始めてください。
個人情報の扱いも、書き足す
ネットで注文を受けると、お客様の名前、住所、電話番号、メールアドレスを預かることになります。問い合わせフォームだけのときより、預かる情報が増えます。プライバシーポリシーに、注文の情報を何に使うかを書き足しておきます。書き方は ホームページのプライバシーポリシーに、何を書くか にまとめてあります。
6. まず小さく試す方法
付けると決めても、最初から全部の商品を載せる必要はありません。小さく試して、回るかどうかを確かめてから広げます。
3〜5品から始める
最初に載せるのは、「送ってほしい」と言われたことがある商品から、3〜5品にします。全部の商品の写真と説明を用意しようとすると、それだけで公開が何ヶ月も遅れます。欲しい人がいると分かっている商品で、受注から発送までの流れを一度通すことが先です。
扱う商品が多い会社の載せ方は 扱う商品やサービスが多い会社の、載せ方 に書きました。ショップに載せる順番も、同じ考え方で選べます。
カートの前に、注文の受付から始める
ショップの仕組みを入れる前に、ホームページの問い合わせフォームで注文を受け付ける形から始める方法もあります。商品と価格をページに載せ、フォームで注文を受け、確認のメールを返して、支払いと発送の案内をする。手作業ですが、どれくらい注文が来るか、どんな質問が来るかが分かります。
この形でも、ネットで注文を受けて送る以上、通信販売にあたる場合があります。前の章の表示は、この段階から用意しておいてください。
店頭受け取りの予約から始める
送る手間を避けたいなら、ネットで取り置きの予約を受けて、店頭で受け取ってもらう形もあります。梱包と発送がないので、在庫と受け渡しの流れだけを確かめられます。季節の商品や、数が限られる商品に向いています。予約をネットで受けるときの考え方は 予約をネットで受けるか、電話のままにするか にまとめてあります。
期間を決めて、数字で振り返る
小さく始めるときは、3ヶ月なら3ヶ月と、見直す時期を先に決めておきます。見る数字は、売上だけではありません。
- 注文の件数 ― どの商品が、何件
- 1件あたりの作業時間 ― 受注から発送の連絡まで
- 問い合わせの件数と中身 ― 何を聞かれたか
- ホームページからショップへ移った数 ― 商品ページのリンクが押されたか
これを見て、広げる、このまま続ける、やめる、のどれかを決めます。やめるという判断も、小さく始めたからこそ軽くできます。ホームページで何を測るかは ホームページを作ったあと、何を測ればいいか に書きました。
7. ショップを付けたら、ホームページ側で整えること
ショップを始めたら、ホームページ側にも手を入れます。ショップだけを作って、ホームページがそのままだと、両方の効き目が落ちます。
商品ページから、ショップの該当ページへ
ホームページの商品紹介のページに、ショップの該当商品へのリンクを置きます。「この商品はオンラインショップで購入できます」の一文と、ボタン。商品を知った人が、その場で買える道を作ります。
送料と届くまでの日数を、ショップの外にも書く
買う前の人がよく気にするのは、送料と届くまでの日数です。ショップの中にしか書いていないと、ホームページで商品を見た人は、それを確かめるためにショップを探しに行くことになります。ホームページのよくある質問にも、送料の考え方と発送までの日数を書いておくと、同じ質問に何度も答えずに済みます。
法人向けの入口は、別に残す
ショップを始めても、まとめて買いたい会社のお客様や、特別な注文をしたいお客様はいます。そういう方を、ショップのカートに無理に誘導しないでください。「大口のご注文・法人のお取引はこちら」として、見積もりの問い合わせを別に残しておきます。ショップと見積もりの両方の入口がある状態が、両方を扱う会社には合っています。
8. 雄喜晃の伴走:付けるかどうかの判断から、ご一緒します
私たちがやること
私たち雄喜晃のホームページ制作では、「ショップを付けたい」というご相談をいただいたとき、まず今、送ってほしいという声がどれくらいあるかと、注文が入ったら誰が送るかを伺います。そのうえで、付けるか、見積もりの入口を整えるか、小さく試すかを一緒に整理します。
ホームページ側では、商品を紹介するページ、ショップへの導線、送料や発送までの日数を書いたよくある質問、法人向けの見積もりの入口を作ります。ショップを始めたあとに商品が増えたり、価格が変わったりしたときの書き換えも、月5回までの更新代行の中で反映します。
料金と条件
料金は制作費0円、月額8,800円(税別)からです。6ページ構成のプランは月額13,800円(税別)です。サーバー、独自ドメイン、SSL、保守はすべて月額に含まれます。
最低契約期間は6ヶ月です。7〜35ヶ月で解約された場合、サイトは非公開になります。36ヶ月以上ご継続いただいた場合は、サイトをお渡しします。
私たちがやらないこと
在庫の管理や梱包・発送、注文への対応を、代わりに引き受けることはしません。そこは日々の商売そのものなので、貴社の中で回る形を一緒に考えるところまでがお手伝いです。また、特定商取引法に基づく表記などの文面について、法律上の判断をこちらで下すこともしません。載せる内容は、所管の窓口や専門家にご確認ください。ショップの売上の見込みや、検索の順位をお約束することもいたしません。
実際にお作りしたサイトは 制作実績、料金と条件は ホームページ制作のページ に載せてあります。神戸市北区鈴蘭台を拠点に、2025年10月から活動しています。「ネットでも売るべきか、ずっと迷っている」という方は、一度ご相談ください。
9. まとめ:売り場を1つ増やすつもりで決める
ホームページにネットショップを付けるかどうかを決めるときに押さえることは、5つです。
- 付けるかどうかは、扱うものの性質で決める ― 値段が決まり、中身が確定し、送れるものはショップ向き。現場を見ないと値段が出ないものは見積もり向き
- 売れる前に、手間を数える ― 在庫、発送、問い合わせを、誰がいつやるか
- 最初は、身軽な形で ― 既存のショップサービスで小さく開き、ホームページからリンクする
- 表示は、始める前に確かめる ― 特定商取引法に基づく表記など。業種によって違うので、所管の窓口や専門家に
- 3〜5品から、期間を決めて試す ― 数字を見て、広げるか、やめるかを決める
ネットショップは、ホームページの一機能に見えて、実際には売り場を1つ増やすことです。売り場を増やすなら、そこに立つ人を先に決める必要があります。
今日できることを1つ挙げます。この1年で「送ってもらえませんか」と言われた回数と、その商品を思い出して、書き出してみてください。1件も出てこなければ、ショップより先に整えることがあります。何件か出てくれば、その商品が最初の3品です。
付けるか付けないかを一人で決めかねている、という方は、一度ご相談ください。