1. 「人を雇えば、外注費がかからないと思って」
中小企業の経営者の方とお話していて、こんな言葉を聞くことがあります。
「毎月、制作会社に払っているお金を考えると、いっそデザインができる人を1人雇ったほうがいいんじゃないかと思うんです。チラシも作ってもらえるし、ホームページも社内で直せるし」
気持ちはよく分かります。外に払うお金は、毎月の請求書で目に見えます。社内に人がいれば、すぐ頼めて、事情も分かってくれる。雇えば、外注費がそのまま浮くように見えます。
ただ、ここで比べているのは、外注費と給与の金額だけです。1人に任せたあとに起きることは、その計算に入っていません。この記事では、雇うかどうかを決める前に見ておきたいことを、順番に並べます。
先に立場を書いておきます。私たちは制作を請ける側です。そのうえで、雇うのが合っている会社もあると考えています。雇うな、という記事ではありません。雇うなら、どこまでを社内に置き、どこからを外に出すかを先に決めておく、という記事です。
この記事で書くこと
- 「外注費がかからない」の計算に、入っていないもの
- 1人に任せると、辞めたときに止まる理由
- ホームページの仕事だけで、1人分の量があるか
- デザイン・文章・写真・仕組みの管理は、別の力であること
- 社内の人が得意なことと、外に任せることの分け方
- それでも雇うなら、引き継げる形にしておく方法
社長や社員がツールで自分で作るかどうかは ホームページを自分で作るか、頼むか に、本業を持った人が兼任で窓口を受け持つ話は 社内に、ホームページの担当者を決めるかどうか に書きました。この記事は、制作そのものを仕事にする人を、新しく採用するかどうかを扱います。
2. 「外注費がかからない」の計算に、入っていないもの
まず、お金の比べ方から見直します。具体的な金額は会社ごとに違うので書きませんが、比べるときに入れておくものは共通しています。
給与のほかに、かかるもの
人を雇うと、給与のほかにもかかるものがあります。
- 教える時間 ― 会社のこと、商品のこと、お客様のこと。制作の腕があっても、ここは社内の誰かが教えます
- 道具 ― パソコン、デザインのソフト、写真の加工のソフト。多くは月ごと・年ごとに払い続けるものです
- 採用そのもの ― 求人を出す、面接をする、合わなければもう一度探す
- 相談相手がいない分の遠回り ― 社内に同じ仕事の人がいないと、詰まったときに1人で調べることになります
4つ目は、金額にしにくいものです。制作会社の中なら隣の人に聞けば済むことを、社内に1人だけだと自分で調べ続けることになります。1人で働く制作の人は、腕より先に、相談できないことで遅くなります。
外注費は、消えるのではなく形を変える
雇ったあとも、外に払うお金がゼロになるとは限りません。サーバーやドメインの契約、ソフトの利用料は残ります。社内の人が苦手な部分、たとえば問い合わせフォームの仕組みや、表示が崩れたときの直しを、結局は外に頼むこともあります。
つまり、外注費が給与に置き換わるのではなく、給与に外注費の一部が上乗せされる形になることがあります。
比べるなら、年単位で
比べるときは、月の金額ではなく数年で並べてください。採用にかかったもの、教えた時間、道具の費用、残った外注費を、外に頼み続けた場合と並べます。外に頼む形どうしを並べる考え方は ホームページの費用は、3年で並べないと判断できない にまとめました。雇う場合も、同じ物差しで並べると判断がしやすくなります。
3. 1人に任せると、辞めたときに止まる
お金より大事なのが、この話です。
中身を知っているのが、1人だけになる
社内の1人がホームページを作り、直し、管理するようになると、サイトがどう作られているかを知っているのは、その人だけになります。どのページをどこで直すのか、画像の元のデータはどこにあるのか、どのアカウントで何に入るのか。社長も他の社員も、知らないまま日々が回ります。
回っているあいだは困りません。困るのは、その人がいなくなった日です。
辞めるのは、悪いことではない
社員が辞めるのは、どの会社でも起きることです。辞めた人が悪いのではありません。1人にしか分からない形にしていたことのほうが、会社の側の課題です。
とくに制作の仕事は、腕が上がるほど外からも声がかかります。育てた人ほど、出ていく理由も増えます。これは、雇う前から分かっていることです。
止まるのは、作業より「どうなっているか」の把握
辞めたあとに困るのは、更新の作業そのものではありません。作業は、次の人や外の制作会社にお願いすれば進みます。困るのは、どうなっているかを誰も説明できないことです。
- ドメインやサーバーが、誰の名義で、いつ更新なのか
- 管理画面に入るIDが、その人の個人のメールアドレスで作られていないか
- 問い合わせのメールが、その人の受信箱にだけ届いていないか
- 作ったときのデータが、その人のパソコンの中にしかないのではないか
どれも、本人がいるうちならすぐに答えが出ることです。辞めたあとだと聞きにくくなり、調べるのに長くかかることがあります。担当が替わるときに何を引き継ぐかは ホームページの担当者が辞める・異動するときの引き継ぎ に詳しく書きました。制作まで1人に任せている会社ほど、引き継ぐものが多くなります。
4. ホームページの仕事だけで、1人分あるか
次に、仕事の量の話です。ここは、雇ってから気づくことが多いところです。
作る時期と、そのあとの時期で量が違う
ホームページの仕事は、作る時期に大きく膨らみ、公開したあとは小さくなります。作る時期には、構成、文章、デザイン、写真、仕組みと、毎日やることがあります。
公開したあとは、お知らせの追加、実績の追加、料金や営業時間の書き換え、月に一度の確認。大事な仕事ですが、毎日朝から夕方まで埋まる量になる会社は多くありません。
空いた時間に、別の仕事が入る
仕事が空くと、その人には別の仕事が回ってきます。チラシ、名刺、社内の資料、展示会の準備、SNS。どれも頼みやすいので、自然に増えます。
それ自体は悪いことではありません。ただ、気づくとホームページがいちばん後回しになっていることがあります。急ぎの印刷物や資料が先になり、外に頼んでいたときより更新が遅くなる、ということも起きます。
雇う前に、仕事を書き出して数える
雇うかどうかを決める前に、ホームページまわりの仕事を書き出してみてください。
- 毎月あること ― お知らせ、実績の追加、月1回の確認、問い合わせの数を見る
- 年に数回あること ― 料金や商品の入れ替え、採用の時期のページ、季節の写真の差し替え
- 数年に一度あること ― 作り直し、大きなページの追加
- ホームページ以外で頼みたいこと ― チラシ、名刺、資料、SNS
それぞれに、今どのくらいの時間がかかっているかを書きます。外に頼んでいるものは、やりとりにかかっている時間も入れます。書き出してみて1人分に届かないなら、雇うより、外に頼む範囲を見直すほうが合っていることが多いと思います。逆に、ホームページ以外の仕事まで含めて1人分を超えるなら、雇う理由になります。その場合も、次の章で書く「別の力」の話は残ります。
5. デザイン・文章・写真・仕組みの管理は、別の力
「デザインができる人を雇えば、ホームページは全部できる」と考えがちです。ここが、いちばん見落とされるところです。
ホームページには、4つの力が要る
ホームページを作って続けるには、少なくとも4つの力が要ります。
色や書体、写真の置き方、スマートフォンでの見え方。見た目を整えるだけでなく、読む人が次にどこへ進むかを決める力です。
何の会社か、何ができるか、いくらか、どう頼むか。現場の話を聞き出し、読む人の言葉に直す力です。
現場や商品をどう撮るか、手元の写真からどれを使うか、明るさや大きさをどう整えるか。デザインとは別の目が要ります。
サーバー、ドメイン、SSL、フォームの届き先、不具合への対応、検索エンジンへの登録。目に見えにくいのに、止まると全部が止まる部分です。
4つとも、ホームページには欠かせません。ただ、4つを同じ深さで持っている人は多くありません。デザインが得意な人に文章と仕組みまで求めると、どれかが手薄になります。
求人票に全部書くと、合う人が来にくい
4つを全部求人票に並べると、応募が来にくくなります。来たとしても、どれか1つが得意で、残りは「やったことはある」という人かもしれません。それが悪いのではなく、4つを全部1人に求めること自体に、無理があるのです。
雇うなら、4つのうちどれを任せたいかを1つか2つに絞ってください。残りは、社内の別の人か、外に任せる前提で考えます。
仕組みの管理を1人で抱えると、いちばん危ない
4つの中で、とくに1人に持たせたくないのが仕組みの管理です。デザインや文章は、出来ばえが目に見えるので、社長も他の社員も気づけます。仕組みの管理は、うまくいっているあいだは何も見えません。
ドメインの更新を忘れる、フォームの届き先が辞めた人のアドレスのまま、ソフトの更新が止まって古いまま。こうしたことは、止まって初めて気づきます。そして、止まったときに直せるのが辞めた本人だけ、ということが起きます。ドメインやアカウントの名義を一覧で確かめる方法は ホームページのドメインやアカウントは、誰の名義になっているか にまとめました。
6. 社内の人が得意なことと、外に任せることを分ける
ここからが、この記事でいちばんお伝えしたいことです。雇うか、雇わないかの二択で考えるのではなく、仕事を分けて、どこを社内に置くかを決めるという考え方です。
社内の人が得意なこと ― 材料集めと、現場の言葉
社内の人にしかできないことがあります。
- 材料を集める ― 終わった仕事、現場の写真、新しく始めたこと。社内にいるから、すぐに手に入ります
- 現場の言葉を拾う ― お客様によく聞かれること、お礼で言われること、現場で使っている言い回し
- 早く気づく ― 料金が変わった、担当者が替わった、営業時間が変わった。サイトのどこが古くなったかに、真っ先に気づけます
これは、制作の腕とは関係ありません。外の制作会社がどれだけ腕を持っていても、貴社の現場の言葉は社内からしか出てきません。
外に任せること ― 仕組みと保守
逆に、外に任せたほうがいいのは、止まると困るのに、1人で抱えると危ない部分です。
- サーバー・ドメイン・SSL ― 更新日や設定を、会社として切らさないようにする
- フォームと届き先 ― 問い合わせが届き続けるようにする
- 不具合と保守 ― 表示が崩れた、つながらない、といったときに直す
- 作ったときのデータ ― 個人のパソコンではなく、続けて管理できる場所に置く
外の会社でも担当者は替わります。ただ、担当が替わったときにどう引き継ぐかを、頼む前に確かめておけます。社内の1人に持たせるより、続けて守りやすい部分です。
間にあるもの ― デザインと文章
デザインと文章は、会社によってどちらに置くかが変わります。
| 仕事 | 社内に置くと良いこと | 外に任せると良いこと | たとえばの分け方 |
|---|---|---|---|
| 材料集め | すぐ手に入る。現場に近い | 外からは集められない | 社内。兼任の担当が受け持つ |
| 現場の言葉 | お客様の言い回しをそのまま拾える | 聞き出して、読む人向けに直せる | 言葉は社内で拾い、直すのは外と一緒に |
| デザイン | チラシや名刺と揃えやすい | ホームページの見え方に慣れている | 型は外で作り、日々の差し替えは社内でも |
| 写真 | 現場に居合わせて撮れる | 選ぶ・整える目がある | 社内で撮り、選んで整えるのは外 |
| 仕組みと保守 | すぐ触れる | 1人に偏らない。更新を切らさない | 外。名義と控えは会社で持つ |
線の引き方に正解はありません。ただ、材料集めは社内、仕組みと保守は外という両端を先に決めると、間にあるデザインと文章の置き場所も決めやすくなります。
チラシや資料も含めて作る仕事が多い会社なら、デザインを社内に置く理由があります。お客様向けの文章が多い会社なら、文章の得意な人を置く理由があります。何を雇うかは、何を社内に置くかを決めてからでも遅くありません。
雇わずに、社内の役割を決めるだけで足りることもある
書き出すと、社内に置きたいのは材料集めと現場の言葉だけだった、ということもあります。その場合は、今いる社員の誰かが兼任で受け持てば足ります。範囲の決め方は、冒頭で挙げた担当者の記事に書きました。
7. それでも雇うなら、引き継げる形にしておく
書き出した結果、雇う理由がはっきりしている会社もあります。その場合に、雇う前と雇ったあとで決めておくことを書きます。
名義と届き先は、人ではなく会社に
いちばん先にやることです。ドメイン、サーバー、管理画面、GA4やサーチコンソール、SNS。どれも、雇った人の個人のメールアドレスではなく、会社のアドレスで持つようにします。入社した最初の週に決めておくと、あとで移す手間がかかりません。
パスワードも、本人の頭の中やパソコンの中だけにある状態にしないよう、社内で持ち方を決めておきます。
作り方を、書き残してもらう
雇った人には、作ることと同じくらい、どう作ったかを書き残すことを仕事として頼んでください。
- どのページを、どこで直すか
- 画像や元のデータを、どこに置いているか
- 毎月やっていること、年に一度やっていること
- 困ったときに、どこに問い合わせるか
書き残すのは面倒な仕事です。だからこそ、評価の中に入れて、時間を取ってもらう必要があります。
1人にしない ― 控えと、外の相談先
雇った人が1人だけなら、社内に控えを1人決めます。控えは同じことができなくて構いません。問い合わせを読んで回せる、外の相談先に連絡できる、どこに何があるか分かる。この3つで足ります。
そして、仕組みと保守だけは外に置いておくのも1つの手です。社内の人が辞めても、サイトそのものは止まりません。
雇う前に、任せることと任せないことを決める
採用の前に、次のことを紙に書いておくと、求人の中身がはっきりします。
- 任せること ― 4つの力のうち、どれか。ホームページ以外に何を頼むか
- 任せないこと ― 料金や載せる・載せないの判断、外の会社との契約の判断
- どう見るか ― 何をもって仕事ができていると見るか
応募してきた方を見るときは、作ったものを実際に見せてもらい、その説明を聞いてください。説明の分かりやすさから、書き残す力があるかも見えます。
なお、雇用の形や働き方の決まり、業務委託で頼む場合の扱いは、会社の規模や業種によって違います。決める前に、所管の窓口や専門家に確認してください。
8. 雄喜晃の伴走:社内の方が材料を、私たちが仕組みと保守を
私たち雄喜晃のホームページ制作は、この記事の第6章の分け方をそのまま形にしたものです。材料と現場の言葉は貴社から、仕組みと保守は私たちが受け持つ形でお受けしています。
私たちがやること
- 仕組みと保守を受け持つ ― サーバー、独自ドメイン、SSL、保守は月額に含まれています。社内の方が替わっても、サイトの土台は止まりません
- 材料を受け取って載せる ― 社内の方から写真と一言を送っていただければ、文章を整えてページに載せます。写真は、貴社で撮っていただいたものを整えて載せます
- 更新を代わりに行う ― 月5回までの更新代行が月額に含まれているので、社内の方は操作を覚えなくても、材料を送るだけで更新が進みます
- 社内に置くもの、外に出すものを一緒に分ける ― 第4章の書き出しを、お打ち合わせの中で一緒にやります
料金と条件
料金は制作費0円、月額8,800円(税別)です。6ページ構成のプランは月額13,800円(税別)です。サーバー、独自ドメイン、SSL、保守は月額に含まれます。月5回までの更新代行も、同じ月額の中です。
最低契約期間は6ヶ月です。7〜35ヶ月で解約された場合、サイトは非公開になります。36ヶ月以上ご継続いただいた場合は、サイトをお渡しします。
私たちがやらないこと
- 貴社の採用を、私たちが判断することはしません。人を雇うかどうかは、経営の判断です。私たちは、雇う場合も雇わない場合も、外に出す部分を受け持つ立場でお話しします
- 社内の材料集めを、私たちが代わりに務めることはしません。現場の言葉は、社内の方にしか集められないからです
- 検索順位や問い合わせの増加をお約束することもしません。お約束できるのは、決まったことを形にし、止めずに続けることです
実際にお作りしたサイトは 制作実績、料金と条件は ホームページ制作のページ に載せてあります。神戸市北区鈴蘭台を拠点に、2025年10月6日に設立した会社です。
「人を雇うか、外に頼み続けるかで、ずっと迷っている」という方は、一度ご相談ください。
9. まとめ:誰を雇うかより先に、何を社内に置くかを決める
ホームページのために、社内でデザインや制作ができる人を雇うかどうか。決める前に押さえることは5つです。
- 外注費は、消えるとは限らない ― 給与のほかに、教える時間、道具、残る外注費がある。数年で並べて比べる
- 1人に任せると、辞めたときに止まる ― 困るのは作業より、どうなっているかを誰も説明できないこと
- 1人分の仕事量があるかを数える ― 作る時期と、公開したあとでは量が違う。書き出してから決める
- 4つの力を1人に求めない ― デザイン・文章・写真・仕組みの管理は別の力。任せるものを絞る
- 材料集めは社内、仕組みと保守は外 ― 両端を決めてから、間にあるデザインと文章の置き場所を決める
人を雇うことが悪いのではありません。1人にしか分からない形にしてしまうことが、あとで困る原因になります。雇うなら、名義は会社に、作り方は書き残し、控えを置く。それだけで、辞めた日にサイトが止まることは防げます。
まず、今日できること
ホームページまわりの仕事を、毎月・年に数回・数年に一度の3つに分けて書き出してみてください。書き出した紙を見れば、雇う理由があるのか、外に頼む範囲を変えれば足りるのかが見えてきます。
ぜひ一度、お話を聞かせてください。貴社の中に何を置き、外に何を任せるかを決めるところからご一緒します。