1. 「地元の言葉で書いたほうが、うちらしい気がして」

中小企業の経営者の方とお話していて、こんな言葉を聞くことがあります。

「お客さんは地元の人ばかりなので、ホームページも、ふだん話している言葉で書いたほうがうちらしい気がするんです。でも、取引先や求人を見た人が読んだら、くだけすぎに見えないかとも思って」

この迷いは、どちらももっともだと思います。地元の言葉には、標準的な書き言葉にはない温かさがあります。読んだ瞬間に、店の人の顔や声が浮かぶこともあります。一方で、同じ言葉が、遠くの人には伝わりにくかったり、くだけすぎて見えたりすることもあります。

答えは「使う」か「使わない」かの二択ではありません。使う場所と、使わない場所を分けることで、両方の読む人に届けられます。この記事では、その分け方を書きます。

ほかの記事との違い

文章の口調は、ホームページの文章を、どんな口調で書くか で書きました。「です・ます」と「だ・である」、親しみと硬さの段階、会社の口調を3行のメモにする話です。

地域の会社のサイトで押さえることの全体は、地域で商売をする会社の、ホームページの全体像 にまとめています。

この記事は、その中でも方言や地元らしい言い回しを、どこに、どう使うかに絞った話です。出てくる言い回しの例は、特定の地域を指すものではなく、すべて「たとえば」の架空のものです。

この記事で書くこと

  • 方言が、読む人によって違って受け取られる理由
  • 使う場所と、使わない場所の分け方
  • 見出しのひと言、社長の言葉、お客様の声での使い方
  • 料金・条件・注意事項で使わない理由
  • 意味が通じない人のための補い方
  • 作った言い回しにしないこと、自然な言葉の拾い方

2. 方言は、読む人によって受け取られ方が変わる

地元のお客様には、親しみになる

地元のお客様にとって、ふだん耳にしている言葉は、それだけで安心につながります。「この店の人は、自分と同じ言葉で話す人だ」と感じられるからです。

とくに、店先で顔を合わせる商売や、家に上がって作業をする仕事では、話しやすそうかどうかが、頼むかどうかに関わります。かしこまった文章より、ふだんの言葉が少し混ざっているほうが、電話をかける前の緊張がほぐれることがあります。

遠くの人には、伝わりにくいことがある

一方で、ホームページは地元の人だけが読むものではありません。

  • 遠方の取引先 ― 会社として信頼できるかを見ている。くだけた言葉が多いと、仕事の進め方まで大ざっぱに見られることがある
  • 応募を考えている人 ― 地元の外から応募する人もいる。言葉が分からないと、職場になじめるか不安になる
  • 引っ越してきたばかりの人 ― これから地元のお客様になる人だが、まだその言葉に慣れていない
  • 翻訳ツールで読む外国の方 ― 方言は、翻訳ツールで正しく訳されにくい

同じ文章を、この人たちも読んでいます。地元の人に合わせた言葉が、ほかの人を置いていってしまうことがある。ここが、方言を使うときの難しさです。

同じ言葉でも、意味が違うことがある

もう1つ気をつけたいのは、地域によって意味が変わる言葉です。

たとえば「なおす」という言葉は、地域によっては「片付ける」の意味で使われます。「使った道具は、なおしてから帰ります」と書くと、地元の人は「片付けてくれるんだ」と読みます。ところが、ほかの地域の人は「修理してくれるのか」と読むかもしれません。

「えらい」が「疲れた」「しんどい」の意味になる地域もあります。このように、書いた側は標準語のつもりで使っている言葉が、実は地元の言葉だったということは珍しくありません。方言だと意識している言葉より、こちらのほうが読み違えにつながりやすいのです。

誰が読んでいるかを、先に確かめる

使うかどうかを決める前に、貴社のサイトを誰が読んでいるかを振り返ってください。この1年の問い合わせの相手を思い出すと、だいたいの見当がつきます。地元の個人のお客様が中心なのか、遠方の取引先が多いのか、応募してくる人はどこから来ているのか。

ここで大事なのは、多いほうに全部を合わせるのではないということです。地元のお客様が大半でも、遠方の取引先が1社あれば、その会社も料金や条件のページを読みます。誰に合わせるかは、ページごとに決めます。次の章で、その分け方を書きます。

3. 使う場所と、使わない場所を分ける

ここからが本題です。方言や地元らしい言い回しは、サイト全体に散らすのではなく、使う場所を決めて、そこだけで使うのが扱いやすい方法です。

人の声が聞こえる場所で使う

使って効果があるのは、人の声として読まれる場所です。

  • 見出しのひと言 ― トップやページの見出しに、短く添える
  • 社長の言葉 ― 代表挨拶やインタビューで、話した言葉のまま載せる
  • お客様の声 ― いただいた言葉を、言い回しも含めてそのまま載せる
  • 社員の言葉 ― 社員紹介や採用のページで、本人の話し方を残す

これらは、読む人が「誰かが話している」と分かって読む場所です。方言があると、その人の声として生き生きと伝わります。

情報を伝える場所では使わない

使わないのは、読み違えると困る場所です。

  • 料金 ― 金額、税、含まれるもの
  • 条件 ― 予約、キャンセル、対応エリア、支払い方法、保証
  • 注意事項 ― できないこと、お断りしていること、安全のためのお願い
  • 手続きの説明 ― 申し込みの流れ、問い合わせフォームの案内

ここは、誰が読んでも同じ意味に受け取れる言葉で書きます。親しみより、読み違えのなさを優先する場所です。

説明の文は、その間

サービスの説明や会社の紹介は、その間にあります。基本は標準的な書き言葉で書き、ところどころに地元の言い回しが混ざる程度にとどめます。混ぜるなら、意味が分からなくても話の筋が追える言葉だけにしてください。

図:方言や地元の言い回しを、使う場所と使わない場所(例は架空)
① 使う場所
見出しのひと言・社長の言葉・お客様の声

誰かが話していると分かって読む場所です。方言があると、その人の声として伝わります。意味の補いを添えれば、遠くの人にも届きます。

たとえば、代表挨拶の「」の中だけ話し言葉のまま
② 少しだけ混ぜる場所
サービスの説明・会社の紹介

基本は標準的な書き言葉で書きます。地元の言い回しは、意味が分からなくても話の筋が追える言葉だけにします。

たとえば、段落の終わりにひと言だけ
③ 使わない場所
料金・条件・注意事項・手続き

読み違えると、お客様との行き違いになります。誰が読んでも同じ意味に受け取れる言葉で書きます。

たとえば「キャンセルは2日前までに、お電話でご連絡ください」

分け方の目安は、人の声として読まれる場所か、情報として読まれる場所かです。迷ったら、その文を読み違えたときに困る人がいるかどうかで決めてください。

4. 見出しのひと言と、社長の言葉

見出しは、ひと言だけ添える

トップページの見出しに、地元の言葉を使いたいという相談はよくあります。使うなら、見出しの全部を方言にするのではなく、ひと言だけ添える形をおすすめします。

トップの見出しの役目は、何をしている会社かを一行で伝えることです。そこが方言だけだと、遠くの人には何の会社か伝わりません。たとえば、次のように二段で組みます。

上の段:地元の言葉でのひと言(あいさつや呼びかけなど) 下の段:「〇〇市で、住まいの水まわりの修理をしています」

上の段で親しみを出し、下の段で何の会社かを伝える。下の段があれば、上の段の意味が分からなくても困りません。見出しの組み立て方は、トップページの見出しを、どう決めるか に詳しく書きました。

社長の言葉は、話した言葉のまま

方言がいちばん生きるのは、社長の言葉です。代表挨拶を、ふだん話している言葉のまま載せると、人柄がそのまま伝わります。

ただ、全部を話し言葉にすると、読みにくくなることがあります。おすすめは、地の文は標準的な書き言葉で書き、社長の言葉だけを「」でくくって、話したままにする形です。

たとえば:代表の〇〇は、お客様の家に上がるときの心がけを、こう話します。「〇〇〇〇(地元の言葉でのひと言)」

こうすると、どこが社長の声なのかがはっきりします。方言の部分が分からなくても、前後の文で話の筋は追えます。代表挨拶そのものの書き方は、代表挨拶のページに、何を書くか にまとめています。

5. お客様の声と、社員の言葉

お客様の声は、言い回しも含めてそのまま

お客様からいただいた言葉に方言が入っていたら、標準語に直さず、そのまま載せるほうが伝わります。言い回しが残っていると、本当にいただいた言葉だと感じてもらえます。

逆に、やってはいけないのは、いただいた言葉に方言を足すことです。地元らしさを出そうとして、お客様が言っていない言い回しに書き換えると、それはもうお客様の言葉ではありません。載せる前に、ご本人に文面を確認していただいてください。集め方と載せ方は、「お客様の声」を、どう集めて、どう載せるか に書きました。

社員の言葉は、本人の話し方を残す

社員紹介や採用のページでも、本人の言葉に方言が入っているなら、残してかまいません。地元で働きたい人にとっては、職場の雰囲気が伝わる材料になります。

ただし、採用のページには、地元の外から応募する人も来ます。働く時間、休み、給料、仕事の内容のような条件は、社員の言葉とは分けて、標準的な書き言葉で書いてください。社員の言葉は雰囲気を、条件の欄は事実を伝える。役割を分ければ、どちらの読む人も困りません。

インタビューの形で載せる場合は、聞き手の質問を標準的な書き言葉にし、答えだけを話した言葉のまま残すと読みやすくなります。質問を読めば、答えの中身に見当がつくからです。

6. 料金・条件・注意事項には使わない

読み違えが、行き違いになる

料金や条件の欄で方言を使わない理由は、単純です。読み違えたときに困るのは、お客様と貴社の両方だからです。

地元では、語尾をやわらかくした言い回しで、決まりを伝えていることがあります。話し言葉なら、声の調子で「これは決まりです」という重さが伝わります。ところが文字になると、その重さが消えます。遠くの人には「してもしなくてもいい」お願いに読めることがあります。決まりなら「〜してください」と書くのが、いちばん行き違いが起きません。

意味が変わる言葉に気をつける

第2章で書いたように、地域によって意味が変わる言葉があります。料金や条件の欄でこうした言葉を使うと、意味が逆になることもあります。

たとえば「なおす作業は、料金に含まれます」と書いたとします。地元の人は片付けのことだと読みます。遠くの人は修理のことだと読みます。同じ一文で、料金に含まれる作業が変わってしまうわけです。

こうした言葉は、書いた本人が方言だと気づいていないことが多いものです。地元の外の人に読んでもらうのが、いちばん見つけやすい方法です。

条件にかかわる言葉は、1つに揃える

もう1つ。困るのは、同じ決まりを、ページによって違う言葉で書いている場合です。

「キャンセル」「取り消し」、それに地元での言い方が混ざっていると、読む人は別の決まりだと思うかもしれません。条件にかかわる言葉は、サイト全体で1つに揃えてください。なお、料金や条件の表示には、業種によって決まりがある場合があります。業種によって違うので、所管の窓口や専門家に確認してください。

7. 補う、作らない、拾う

意味が通じない人のために、補う

使う場所で方言を使うときも、意味が通じない人のための補いがあると親切です。補い方は3つあります。

  • すぐ後ろに言い換えを添える ― 「〇〇(地元の言葉で『ようこそ』の意味です)」のように、かっこで添える
  • 前後の文で意味が分かるようにする ― 方言の部分を飛ばして読んでも、話の筋が通るように書く
  • 写真や小見出しで補う ― 何について話しているかが、写真や小見出しで分かるようにする

全部の方言に言い換えを付ける必要はありません。読み違えると話が変わる言葉にだけ付ければ十分です。

表:地元の言い回しを、場所ごとに補う(例はすべて架空)
場所そのまま載せると補った形
トップの見出し地元の言葉のひと言だけが大きく載っていて、何の会社か分からないたとえば、その下に「〇〇市で、水まわりの修理をしています」と一行添える
代表挨拶全文が話し言葉で、どこまでが代表の言葉か分かりにくいたとえば、地の文は書き言葉にし、代表の言葉だけを「」でくくる
お客様の声方言のひと言の意味が、遠くの人に伝わらないたとえば、すぐ後ろに(〇〇は「ありがとう」の意味です)とかっこで添える
作業の説明「使った道具は、なおしてから帰ります」たとえば「使った道具は、片付けてから帰ります」
注意事項語尾がやわらかく、決まりなのかお願いなのか読み分けられないたとえば「車は、指定の場所に止めてください」

上の3つは、方言を残したまま補う場所です。下の2つは、方言を使わずに書き直す場所です。例はすべて架空なので、実際の言葉は貴社の方がふだん話している言葉から選んでください。

作った言い回しにしない

地元らしさを出そうとして、ふだん誰も言わない言い回しを作ってしまうことがあります。これは避けてください。

  • 語尾だけを方言にする ― 標準語の文に地元の語尾だけを付けると、地元の人には不自然に聞こえる
  • 昔の言葉や、強い言い回しを集める ― 今の地元の人が使わない言葉を並べると、お土産の包み紙のような文章になる
  • キャラクターに話させる ― 方言を話す架空のキャラクターを作ると、会社の言葉ではなく作り物として読まれる

地元の人は、作った方言にすぐ気づきます。親しみを出すつもりが、かえって距離を感じさせることになります。地元の言葉を使う目的は、地元らしく見せることではなく、貴社の人の声を伝えることです。

社長や社員の、自然な言葉を拾う

では、どの言葉を使えばいいのか。答えは、社長や社員が、ふだん実際に話している言葉です。拾い方は、難しくありません。

  • お客様と話している場面を思い出す ― 電話の受け答え、現場でのあいさつ、帰り際のひと言
  • 打ち合わせの雑談を書き留める ― 原稿を考えているときより、雑談の中に出てくる言葉のほうが自然
  • よく言う決まり文句を集める ― 何度も言っている言葉は、もうその会社の言葉になっている

拾った言葉は、地元の人に読んでもらって、不自然でないかを確かめます。あわせて、地元の外の人にも読んでもらい、意味が通じるかを確かめます。両方に読んでもらうと、使う言葉と補う言葉が決まります。

地区の呼び名や地元での通称は、方言とは少し違いますが、同じように扱えます。地名の書き方は 地名や駅名を、ホームページにどう書くか にまとめました。

8. 雄喜晃の伴走:お話の中の言葉を、使う場所に置きます

私たち雄喜晃のホームページ制作では、最初のお打ち合わせで伺った話し方の中から、使える言葉を拾います。社長や社員の方がお客様にどう話しているか、よく言う言葉は何かを伺います。

私たちがやること

伺った言葉の中から、地元らしい言い回しを候補として並べます。そのうえで、この記事で書いたように、どこに使うかを一緒に決めます。見出しのひと言にするのか、代表挨拶に残すのか、使わないのか。

料金や条件、注意事項のページは、誰が読んでも同じ意味に受け取れる言葉で整えます。使う場所の方言には、必要に応じて意味の補いを添えます。地元の外の人が読んで意味が通じるかも、こちらで読み返して確かめます。

料金と条件

料金は制作費0円、月額8,800円(税別)からです。6ページ構成のプランは月額13,800円(税別)です。サーバー、独自ドメイン、SSL、保守は月額に含まれます。月5回までの更新代行も同じ月額の中なので、お客様の声や社員の言葉が増えたときも、原稿を送っていただければ、言い回しを残したまま載せます。

最低契約期間は6ヶ月です。7〜35ヶ月で解約された場合、サイトは非公開になります。36ヶ月以上ご継続いただいた場合は、サイトをお渡しします。

私たちがやらないこと

貴社の方が言わない方言を、こちらで作って足すことはしません。地元らしさを出すために、語尾だけを方言にしたり、キャラクターを作ったりすることもしません。基準は、貴社の方がふだん話している言葉です。

お客様の声を作文することも、いただいた言葉に言い回しを足すこともしません。また、方言を使うことで検索の順位が上がる、といったお約束もしません。

実際にお作りしたサイトは 制作実績、料金と条件は ホームページ制作のページ に載せてあります。神戸市北区鈴蘭台を拠点に、2025年10月から活動しています。「地元の言葉を使いたいけれど、遠くの取引先や応募者にどう見えるかが心配」という方は、一度ご相談ください。

9. まとめ:声には地元の言葉を、情報には誰にでも通じる言葉を

方言や地元らしい言い回しをホームページに使うときに、押さえることは5つです。

  • 方言は、読む人によって受け取られ方が変わる ― 地元のお客様には親しみ、遠くの人には分かりにくさ
  • 使う場所と使わない場所を分ける ― 人の声として読まれる場所で使い、情報として読まれる場所では使わない
  • 見出しはひと言、社長の言葉は「」の中で ― 意味が分からなくても、話の筋が通るように
  • 料金・条件・注意事項は、誰にでも通じる言葉で ― 地域で意味が変わる言葉に、とくに気をつける
  • 作らずに、拾う ― 社長や社員がふだん話している言葉から選ぶ

方言は、使えば親しみが出て、使わなければ硬くなる、という単純な話ではありません。どこで使うかを決めれば、地元のお客様にも、遠くの人にも届く文章になります。

今日できることを1つ挙げます。自社のホームページの料金と注意事項のページを、地元の外の知り合いに読んでもらってください。意味を聞き返された言葉が、最初に直すところです。

ぜひ一度、お話を聞かせてください。貴社の人の声を、伝わる場所に置くところからご一緒します。